RSS化される情報は、できるかぎり細分化されるべきだと思う
日本のサイトでも、RSSを配信している企業は増えはじめた。しかし、その配信形態についてはまだまだ向上の余地がある。RSSに含まれる情報の粒度について考えてみたい。
付加価値が明確でないRSSは、対価を得られない
たとえば日本の大手メディアサイトで、いちはやくRSS配信に取り組み始めたasahi.comだが、RSSフィードは全てのジャンルのニュースが混合されたものしか取得することができない。
- これでは、読み手は自分の好きなニュースだけを追いかけることはできないし、流れる情報の量は個人が消化しきれない量になってしまう。
- さらに全ての情報がRSSアイテムのフォーマットに統一されるため優先順位を判断することも難しい。
- 当初はモノめずらしさでasahi.comのRSSを購読してみたが、まともに読める量と形式ではないので購読を止めてしまった、そんな人も多いのではないか。まぁおれのことなんだけど。
- その一方でもちろん、RSSには「再利用が容易」だという特徴もある。
- 上のRSSを読み込んで、URLとかキーワードとかで自動分類して、カテゴリごとに細分化したRSSを作って再配信する、というような仕組みを作るのは難しくない。
- この場合消費者にとっての付加価値は、RSSを配信しているニュースサイトそのものではなく、むしろそれを利用しやすくする再利用サービス側で生まれる。
- 当然ながら、消費者との接点は、付加価値の大きさ分だけ再利用サービス側に奪われることになる(もちろん商用利用は禁止されているので仮定の話だが)。
- 消費者が享受する「好きなニュースが簡単に読める」という付加価値への対価がトラフィックという形で支払われるとすれば、asahi.comは、消費者が利用しやすい形での情報配信を実施していないことで自らその機会を逸していることになる。
- (このへんの話は「remixが可能になるということは、消費者との接点がコンテンツクリエータから切り離されるということ」で書いたことと一緒だな。。)
RSSの付加価値のひとつは、自分のほしい情報「だけ」を読めること
- では、RSSで提供できる付加価値とはなんなんだろうか?
- 簡単に、安全に、欲しい情報を収集しつづけられる、というとこからさっくり箇条書きにするとこんな感じだろうか?
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- 簡易性
- 購読/停止/閲覧とかが、きわめて簡単。メールよりイイ。
- 安全性
- 個人情報に伴う心配がない。メールよりイイ。
- 特定性
- 「ほしい情報だけ」を取得できる。WEBよりイイ。コンテンツや広告てんこもりメルマガよりイイ。
- 継続性
- 一度購読すれば、あとは勝手にPUSHしてきてくれる。WEBよりイイ。
- 簡易性
- これらの組み合わせが、RSSによって消費者にもたらされる価値だ。
- しかし特定性についてだけは、規格そのものによるメリットはなく、配信側の考え方によって大きく変わってくる部分だ。ひとつのフィードやアイテムに雑多な情報を混ぜることもできるし、細分化することもできる。
イラナイ情報は、イラナイ。情報提供側は、細分化された選択肢を用意すべき。
- 例えば、化粧品のバーゲンの情報が欲しい時は、クルマの情報は要らないだろう。
- CMの最新情報だけが欲しい人からすれば、メールマガジン編集部のつぶやきなんてうるさいだけだ。
- 世の中にはおもしろいBlogがいくらでもあるのに、なんで仕事で嫌々ひねりだされたマンネリな呟きを読まされなきゃいけないんだ?
- イラナイものは、イラナイ。いるものだけが、ほしい。
- しかし、情報の出し手にとって、情報をパーソナライズするコストが高かった(メールマガジンを、一人一人の関心にあわせてパーソナライズしていくコスト、もしくは細分化した大量のメールマガジンをそれぞれ作成/配信/管理するコスト、WEBページをパーソナライズしていくコスト、、)せいで、企業が行う情報配信においては、こんな当り前のことが忘れ去られがちになっている。
- 特定のニューストピック、特定の商品、特定の芸能人、特定の求人情報、特定の地域、、、。
- RSSでは情報の生成部分だけ工夫すれば、こうした「特定の」情報だけを配信しつづけることはたいして難しくない。
- 関心を持った対象「が置いてあるサイト」についての最新情報ではなく、「関心を持った対象そのもの」について継続的な情報取得ができてこそ、付加価値は大きくなるはずだ。
事例:英国の旅行代理店が配信する、出発地-目的地ごとの格安旅行券フィード
- 例えば、最近日経BPのコラムで紹介されていた下記のサイトでは、格安航空券のRSS配信をしている。
Select an airport from the list below to find out what RSS feeds are available.
- これは「格安航空券ぜんぶ」を配信しているのでもなく、「目的地にアメリカを含む格安航空券ぜんぶ」でもない。
- 「グラスゴーからイビザへの格安航空券」というレベルで特定された、最新情報を購読できるのだ。
- 上記のサイトでは、RSSを購読するページにこれらのRSSがまとめられているだけだが、これが適切なコンテンツページ(例えば目的地名を含む旅行記、コラム、検索結果など)から取得できたらなおいいなと思う。
- 旅行への期待が発生した瞬間から、それを実現するための最安の方法を継続的に提案してもらいつづけていれば、正直それ以外のところで情報収集するのが馬鹿らしくなる。
- これは、特定の期待についての最新情報だから価値があるのであって、不特定の情報しか購読できないサイトでは決してもたらされない価値だ。
- RSSの配信は、これくらい消費者に付加価値をもたらすものであってほしい。
そんなわけで、RSS配信を決める前に、粒度だけは検討してみたほうがよさげ。
- もし情報をもっている組織がそのRSS化を考えているのであれば、自社のコンテンツを、どのレベル、粒度まで情報を細分化してRSS化すればいいのか、一度よく考えたほうがいいんじゃないかと思う。
- 単純に、配信の単位を細かくするだけで、よりサイト来訪者のニーズにマッチした情報配信ができるなら、検討の価値はあるだろう。
- サイトのコンテンツやDBのコンテンツからRSSを自動配信できるようにしとけば、いくつRSSを配信したってたいして手間は増えないんだし。
- コンテンツを細分化すると読んでほしい情報が読まれない、みたいな懸念もあるんだろうけど、「この情報もあの情報も読んでほしい!」なんて欲張ったって、どうせ消費者にとって不要な情報はたいして読まれないんだから。(←ちょっとこれは雑すぎるか。)