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2014-12-31

2014年のコンテンツを振り返って(小説・演劇・映画)

 2014年の足跡を残すべく。

小説――戦争の跫音を


1.ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー
2.嶽本野ばら傲慢婚活
3.絲山秋子『離陸』
次点.高橋弘希「指の骨」

 横浜の棚がつまらない、のは2013年に続き2014年も同じで。読書会で本を読んでいるから、なんとか小説のアンテナを高く持てている。

 誰が書いたってスベらない素材ではあるものの、ハイクオリティでハイリアリティで届けたのが『帰ってきたヒトラー』。今この世に猗爿瓩現れたときに、我々は拒むことはできるのか。戦後70年を目前にしてもっと届いてほしい作品であることは確かだ。
 2位の『傲慢婚活』は、主人公破天荒にして、展開もハチャメチャではあるものの、意外にも世相を切り取った結婚物として突き刺さった。エンタテイメント作家として、もう一度幸福な映像化に出会ってほしい。
 3位は、ポスト村上春樹の可能性を探ろうとした『離陸』。結果として成果は生まれきれなかったのが残念だし、恐らくこの先も彼女の長篇小説において同じような挑戦はないだろう。それにしても、この質の高さに敬意を表す。
 次点の「指の骨」。なぜ、2014年にこの作品が生まれてしまったのか。大東亜戦争をまさに現在の如く伝えてくれた氏の仕事について、強い謎と深い驚嘆しかない。
 

演劇――切り取った“そこ”を


1.維新派『透視図』
2.時間堂『衝突と分裂、あるいは融合』
3.木ノ下歌舞伎三人吉三

 久々に演劇制作として2014年を過ごした一年だった。自分が携わった作品に対する思いを多くに占めつつ、合間合間の観劇となった。

 土地を切り取ることに美しさを感じさせてくれる、維新派本拠地大阪での10年ぶりの公演『透視図』は、川の流るる街を舞台に少年少女が駆け抜ける。これからも定点カメラのように土地を、この世を見つめてほしい。
 『衝突と分裂、あるいは融合』は、3.11以降、原子力問題について、ニュートラルな視点のフィクションは初めて観たかもしれない。議論の可能性/不可能性、人の美しさ/汚さを黒澤世莉さんは俯瞰して見せてくれた。もはや絶対アイスブレイクなんてできないんだけど、それでも「分かり合えないということを分かり合う」という選択を持ちたいな、と。
 『三人吉三』という幕末動乱時代に描かれたハチャメチャな歌舞伎一本をおおよそ5時間で駆け抜ける。観客ももはやアドレナリン全開でのカーテンコール4回は、言うまでもなくキャラクタへの愛だと思う。

映画――何らかの強度


1.『ゼロ・グラビティ
2.『ゴーン・ガール
3.『楽園追放 -Expelled from Paradise-
次点.『ベイマックス

 去年に引き替え多くの作品に触れることもなくおとなしい一年だった。ARISEの最後も見届けられなかったし…。

 去年公開の作品ではあるけれど、今年観たということで。そしてあの映像美と恐怖にかなう体験がなかった。ステロタイプな展開でさえ壊せなかったものがそこにあった。
 既婚者は『ゴーン・ガール』的な体験をやや縮小的に体験をしていらっしゃるんですよね…? やっぱり人間が怖いし、だから傍観者は面白いんだと思う。フィンチャーの暗さが作品に見事に寄与していて文句なしに圧倒される150分だった。
 『楽園追放』は、近未来SFでありながら確かに今を描いていた。時間堂にも感じた「排他的になりがちな現在を見つめる」目線があったからこそ、納得感が強かったんだと思う。これくらい強度のあるのある作品が、もっと伝わればいいなと本当に思う。
 悩んでの次点で『ベイマックス』。日本とアメリカでタイトルも宣伝も違うことが話題だが、「癒し系ロボットもの+ヒーローもの」としてかなり満足度が高い。客席が揃って笑っている作品って幸せです。


 では、また2015年よき作品に出会えますよう。

*小説

傲慢な婚活

傲慢な婚活

離陸

離陸

新潮 2014年 11月号 [雑誌]

新潮 2014年 11月号 [雑誌]

*演劇

鉄腕アトム(1) (手塚治虫文庫全集)

鉄腕アトム(1) (手塚治虫文庫全集)

*映画

ベイマックス マスコットヒーロー ベイマックス

ベイマックス マスコットヒーロー ベイマックス

2014-03-11

2014-03-10

人のセックスを笑う ― 『愛の渦』

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高級マンションの一室に設けられた秘密クラブ、ガンダーラ。そこで開催される乱交パーティーに、ニート池松壮亮)、フリーター新井浩文)、サラリーマン滝藤賢一)、女子大生門脇麦)、保育士中村映里子)、OL(三津谷葉子)、ピアスだらけの女(赤澤セリ)たちが参加する。セックスしたいという共通の欲望と目的を抱えている彼らだったが、体を重ねるのに抵抗を感じる相手も浮上してくる。さまざまな駆け引きが展開する中、ニート女子大生に特別な感情を抱くようになっていく。
シネマトゥデイより)


THEATER/TOPS

 2005年4月というのだから、9年前。ポツドールを観るのは初めてだった。

 既にセミドキュメント*1はやめていたものの、現代口語演劇といういわゆる“リアル指向の演劇”という括りにおいて、注目もされていた*2
 乱交パーティーの会場という一場を切り取った大胆さ、裸の人間を舞台に乗せるという過激さ、裸になっても裸になりきれぬ人間の滑稽さ、次第に欲求やら本音やら開けっ広げに曝露させていく作家/演出家の趣味の悪さ、そしてそれを笑う客席の趣味の悪さ。どろりとした粘度の高そうな何かで劇場は充満していて、客席はどっぷり浸かっていた。

 あれから9年経つけれども、場面場面を今でもよく思い出せるし、本当に悪い悪い空気を堪能したんだなあと思う。

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横浜ニューテアトル

 イセザキモールにある場末の映画館に入るのは初めてだった。
 「ニュー」とつく施設は、往々にして昭和の香りがする。その入口をくぐる時、入ったこともないポルノ映画館(そう『ノルウェイの森』に出てくるような)を想起させた。客席の数は、ちょうどTHEATER/TOPSと同じくらい。設備は古く、空調がごんごんなっていて、それはそれで、この作品に合っているような気がした。

 舞台で表されたそのものが、まるっと映像に詰め込まれていた。大筋の脚本はほとんどそのままだろう。
 裸の役者たちも達者すぎて面白い。別の作品で役者を知れば知るほど、この人が裸になれば的な趣味の悪い楽しみができると思う。『半沢直樹』の近藤(滝藤賢一の出世役)とか裏ではこういうことやってそうじゃない?とか、東京ガスバレエ踊ってたあの子(門脇麦)の騎乗位が激しい!とか。
 着衣時間18分を謳うだけの楽しみはしっかりあると思う。特に「女優名+画像」検索しにくる諸氏は、ぜひ観に行っていただきたい。たぶん、あなたにとっての嘘はないから。

 ストーリーや出来事をある程度知っているからかもしれないが、カメラが見せる画がときどき自分の観たいものと乖離しているようなところがあったように思う。それを舞台との相違と片付ける前に、少しだけ考えてみる。
 ニートから女子大生への感情というのがカメラではあまりに近い感じがしたし、女子大生からニートへの目線があまりに雄弁すぎたように思う。それで、視点/思考が固定されてしまったのが、残念だった。
 三浦監督もそうなりすぎぬよう群像劇的に作っていたとは思うのだけれど、やはり、カメラを通しての門脇麦目線は過激なまでに強かった(意味を持ちすぎた)ということなんだろう。まあ、狙いどおりと言えば、狙いどおりなのか…?
 あと、三浦大輔作品にドヤ感のあるセリフは似合わないんだなあと、はっきり確信したのだった。映画オリジナルのシーンは嫌いじゃないけれど、それでも、あの台詞は…。

 賢者のような朝、じゃなくて21時過ぎのイセザキモールガンダーラから、変な感じで世間に放り出されたような気になって、家路を急いだ。

愛の渦

愛の渦

*舞台脚本。でも、百聞は一見にしかず、です。

ガンダーラ

ガンダーラ

ガンダーラ、それはインドにあるという…。

*1:役者が「演技をしない」「恥をさらす」「プライベートをさらけ出す」という状態で舞台に立つ方法、だったらしい。

*2三浦大輔は、2005年に平田オリザ『S高原から』を演出している。

2014-02-10

オリンピックを見る。

 ソチオリンピックが開催されている。

 始まる前は、「今回は(自分の中で)盛り上がらないな」なんて思っていたのに、初めて見るスノーボードスロープスタイル(スピード感あふれるダイナミックなジャンプ!)が意外と面白かったりして、それなりに堪能し始めている自分がいたりする。
 スタジオからのあれやこれやは小うるさいし気恥ずかしいのでせいぜい半目で見ているし、日本贔屓が過ぎる実況は正直興ざめだけれど、ただ単純に人間がスポーツをしている身体を見るのはそれだけで面白いものだなあ、と再認識させられる。知らない種目であると、なおさら身体や動作を見るから……うん面白い。

   *

 村上春樹氏がときどきスポーツ雑誌「Number」に載っていることがあるけれど、オリンピックに関しても2つのエッセイを発表している。
 ひとつはロサンゼルスオリンピックの「オリンピックにあまり関係ないオリンピック日記」(『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』所収)、もうひとつはシドニーオリンピック「世の中にオリンピックくらい退屈なものはない、のか?」(『シドニー!』の元ネタ)である。

 前者のロサンゼルスの話は、東京にいながら、本当にオリンピックに関係ない日記をオリンピック開催期間に書いている。自身も市民ランナーであるため、マラソンだけはテレビ観戦していたけれど。

 後者の『シドニー!』では、そんなオリンピックに興味がない春樹氏がオリンピックを現地でがっつり観戦し、日々の様子を綴っている。
 文庫購入以後、機会あるごとに繰り返し読み返してきて、いつの間にか村上春樹作品の中でも五本指に入るほど好きな作品になっていた。

 *

 『シドニー!』の白眉は、キャシー・フリーマンの400m走での金メダルシーンだと思う。
 テレビの実況は選手の物語をなんとか叩き込もうと必死に語るが、時にうるさく感じる時さえある。春樹氏の文章は、スタート前の静寂の上を滑り、スタート後の爆発を走りに走り、、ゴール後のキャシーの様子を語る。その語りからは、地元選手(アボリジニーの選手とは言え、だ)の金メダルの直後であるにかかわらず、まるで静寂しか感じられない。そして、徐々に歓喜の音が聞こえてくる。
 まあ、言ってしまえば作家の主観が籠もったシーンではあると思うが、まさに現場を(文章を)体感できる文章として出色だと思う。

 この『シドニー!』は、オリンピック観戦記としてお腹いっぱいになると同時に、オーストラリア旅行記としても満足度が大きい*1。国、街の雰囲気がむっと漂ってきて、2000年のオリンピック期間中のシドニーはこんなんだったんだなあ、とシドニー市民が読んでも面白いんだろうなあ、と思うくらいだ。

 春樹氏の今までの旅行記(というか滞在記)は、ある程度長い期間のものであった。
 しかし、短い日数と言うこともあってテンションの維持がされているが故に、一次的なほかほかの文章(≒作家の眼が捉えたそのもの)が提供されている感じを強く受ける。

 春樹氏が嫌いな人に勧められる春樹作品だと私は推薦したい。

 *

 さっきはスピードスケートショートトラック、いまはアルペン女子スーパー複合が行われている。雪煙を上げて急斜面を下っていく身体が……やはり面白い。あと十数日間見つめたいなあと思う。睡眠時間を削らない程度には。

シドニー! (コアラ純情篇) (文春文庫)

シドニー! (コアラ純情篇) (文春文庫)

シドニー! (ワラビー熱血篇) (文春文庫)

シドニー! (ワラビー熱血篇) (文春文庫)

オリンピック観戦記としても旅行記としても間違いなく20世紀最後の傑作です。

‘THE SCRAP’―懐かしの1980年代

‘THE SCRAP’―懐かしの1980年代

*こちらは1980年代の新聞・雑誌記事がいろいろ載っています。

*1:例えば、サッカーのグループ予選のために、シドニーブリスベーンレンタカーで往復している!

2014-02-08

20140208@YOKOHAMA

 雪に煙る街を散歩しました。

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 予定のない日に雪天の街を歩けるのはなかなか乙なものです。