The Shape I'm In

Words & Music by James Robbie Robertson.
(1970年発表)


(原題直訳 「おれが嵌まる型」*1



From The Band album, "Stage Fright".
名作アルバム度 ☆☆

「ステージ・フライト」 (ザ・バンド





歌詞は、次のURLから
http://www.123lyrics.net/b/the-band/the-shape-im-in.html



名曲度 ☆☆




邦題 「ザ・シェープ・アイム・イン」 (ザ・バンド







Go out yonder, peace in the valley
シャバに出て来た
谷間の安らぎ
Come downtown, have to rumble in the alley
ダウンタウンにやって来た
裏通りで真相を聞かされた
Oh, you don't know the shape I'm in
おゝ、
あんたら、おれの落ち着き先を知らないっていうんだな




Has anybody seen my lady ?
誰かおれの女を見かけたヤツはいないか?
This living alone will drive me crazy
こんなふうに
ひとりで生きるんじゃ
おれは頭がおかしくなっちまうぜ
Oh, you don't know the shape I'm in
おゝ、
あんたら、おれの収まる先を知らないんだな




I'm gonna go down by the water
水辺に行こう
But I ain't gonna jump in, no, no
だけど、飛び込んだりはしないつもりだ
しやしねえって
I'll just be looking for my maker
てめえの死を捜すことになっちまうもんな
And I hear that that's where she's been?
それで、おれが小耳にはさんだ話じゃ
彼女はあっちに行っちまってるってことなんだが
Oh!
なんてこったい!




Out of nine lives, I spent seven
人生が9回あるとして
おれは7回は使っちまった*2
Now, how in the world do you get to Heaven
ってわけで、
どうやったら天国にたどりつけるものやら
Oh, you don't know the shape I'm in
おゝ、
あんたらにはおれの落ち着き先はわかるまい




I just spent 60 days in the jailhouse
おれは監獄で60日を過ごしてきた
For the crime of having no dough
文無しになっての犯行だった
Now here I am back out on the street
いまはこうやって街に戻ってきた
For the crime of having nowhere to go
どこにも行くあてがないという罪を犯してるってわけだ




Save your neck or save your brother
縛り首にはならないようにしないとな、
っていうか、
あんたらの兄弟分を助けてやってくれよ
Looks like it's one or the other
まるで、これじゃ、
これがだめなら、あれにするか
って具合だぜ
Oh, you don't know the shape I'm in
おゝ、
あんたらにはおれの収まるき先はわかるまい




Now two young kids might start a ruckus
ほら
若造ふたりが喧嘩をおっぱじめそうになってるぜ
You know they feel you trying to shuck us
あんたらわかるだろ
あいつら
あんたらがおれたちをペテンにかけようとしてるって思ってるんだ
Oh, you don't know the shape I'm in
あゝ、
おまえら、おれの落ち着き先を知らないのか








Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞





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あんまり自信のない訳だが、
「The Shape I'm In」とは、
(そのまま訳すと「おれが収まるかたち」ということになるが)
これは、出獄した人間が最初に抱く女のことなんだそうだ。


出獄したはいいが、その女のもとにたどりつけない男の歌というわけだ。




Go out yonder, peace in the valley
Come downtown, have to rumble in the alley

シャバに出て来た
谷間の安らぎ
ダウンタウンにやって来た
裏通りで真相を聞かされた



「谷間」the valley と「裏通り」the alley が韻を踏んでいることはおわかりだろう。
(日本語でも同じだが)「谷間」の比喩的な意味で(野球のローテーションの谷間とか)(まさか)また獄に入るということでの(これは)束の間の「安らぎ」peace なのかもしれない。
(あ、女性の胸の谷間や、美脚の起点の狭間を思い浮かべた野郎もいたかもしれませんですねー。甘〜いの大好きは、自然のこと、ナチュラルなことなので、堂々と欲望でも願望でも希望でも切望でも待望でも何某のでも(恥じることなく、照れることなく)望んでしまおうゾ! That's all right!♪


ところで


Come downtown, have to rumble in the alley
Oh, you don't know the shape I'm in

ダウンタウンにやって来た
裏通りで真相を聞かされた
おゝ、あんたら、おれの落ち着き先を知らないんだ


の「rumble」は「ramble」かと思っていた。


Come downtown, have to ramble in the alley
Oh, you don't know the shape I'm in

ダウンタウンにやって来た
裏通りをほっつき歩く
おゝ、どっかにやれる女はいないだろうか


と(わたしもオトコなので)そういうふうに聴いていた。
しかし、URL先の歌詞では「rumble」(もめごと、喧嘩、騒ぎを起こす)となっていた。でも、それじゃ次の(この歌の)キーになるラインにつづかないじゃないか。オンナがいなくて腹いせに喧嘩するのかい、昔の高校生じゃあるまいし・・・・・
(と思ったら)「rumble」には(もうひとつ全然違う意味があって)(風聞やら評判などの)「真相を突き止める」「見抜く」といった意味が辞書にあって、おゝ、これだと思った。



Come downtown, have to rumble in the alley
Oh, you don't know the shape I'm in

ダウンタウンにやって来た
裏通りで真相を聞かされた
おゝ、あんたら、おれの落ち着き先を知らないんだ


・・・・これだと「have to」もよくわかるし、次のキー・ラインにもスムースにつながる。しかも、次の連、その次の連にも(しっかりと)文脈を貫いてつづいていく)、すなわちコンテクスト(一貫した脈絡)も聴こえてくる。

つまり、この歌は、


Oh, you don't know the shape I'm in
あゝ、おまえらみんな、おれの女がどうしちゃったのか知らないのか


と歌いながら、つづいていく(出獄した男の)歌なのだ。


女がどこにいったのかわからない。
どうやら死んだらしいという話も聞く、
野球に喩えれば、人生はもう8回って感じになってきている。
もちろん、現役でバリバリやれるうちの8回だ。
しかも(ラッキーセブンのはずの)7回裏は監獄に放り込まれていたようだ。
窃盗で60日の懲役、というから(試合は)それまでも負け試合の人生だった(という途中経過も報じられる)
残りの2イニング、せいぜい縛り首にならないよにしないとな。
みんな、よろしく頼むぜ。
・・・となって、そこで



Oh, you don't know the shape I'm in
おゝ、あんたらにはおれの収まるき先はわかるまい



と(そのまえの「天国には行けそうもない」というスタンザ(=連)と同じように)「the shape」が(単に)情婦から(自分の)人生のかたちになってくる。
そして、シャバの姿がリアルに映し出される。
これは歌の前半の裏通り(に戻っているの)だろうか・・・・



Now two young kids might start a ruckus
You know they feel you trying to shuck us

ほら、若造ふたりが喧嘩をおっぱじめそうになってるぜ
あんたらわかるだろ、
あいつら、
あんたらがおれたちをペテンにかけようとしてるってわかってるんだ



という(よくワケのわからない)シーンになる。
しかし、これはシャバの構図だ。

まず、ふたりの若いのが互いにイキリ立って言い争ってる。
この「young kids」は(当時のロックを支えていた)聴衆だ。
その彼らは感じている、つまり、わかっているのだ、
「you」(「あんたら」とこの歌で)呼びかけられる大人たち、
(それはこの歌の主人公を獄に入れた「you」、あんたら、街の人間、でもある)
その大人たちが「おれたち」us をたぶらかそうとしてる、ってことを
あの「若造」たちは感じているんだぜと歌っている。
歌の主人公も(この歌を歌い演奏しているザ・バンドも)ここでは聴衆の側に身を寄せて「us」おれたちと歌っている。
(これまでにも何度か「us and them」という対立の構図は(おもにイギリス社会にふれるかたちで)語ってきた)
「shuck」といういのは(ステージ上では)ひょっとして「fuck」と歌ってしまうかもしれない響きの言葉だが、(辞書を引くと)(この歌の中で使うと)なかなか深い味わいの出る言葉だ。

shuck 
名詞としては(トウモロコシや豆や栗などの)皮や殻。
それが転じて「役に立たないもの」「つまらないもの」「まやかし」「ハッタリ屋」「前科者」(フーン、「前科者」かァ、なるほどネ)にまで意味が広がる。

そして大人たち、シャバの世界は(若者の)皮や殻などは必要としない、要るのはひたすら「実」(「み」であり「じつ」である)だけだ。
(ところが若い人間には「皮」や「殻」は必須だ。誰だったか(若者文化を)「ホーケイ文明」と言ったヒトがいた、ホラ、「金魂巻」のあの「ナベゾ」、渡辺なんとかというヘタウマのイラスト描くヒト)

その「若いガキども」young kids の「皮を剥ぐ」というのだが、
この「引っ剥がす」が「shuck」という語の動詞的な意味になっている。
ほかに「(つまらないものを)捨て去る」、「からかう」、「いじめる」といった意味があるが、これは「割礼」の儀式や「包茎」を「からかったり」「バカにしたりする」ことに通じるものだろう。
また、「だます」、「ペテンにかける」という意味もあるそうだが、これは大人の社会、つまりシャバの世界が(若い連中を何とか言いくるめて)(若者の皮や殻を除去して)若い労働力をなんとか実用化しようとするということに通じている。
ハッハッハッ、諸君、わたしの目はごまかせないよって、これ、ザ・バンド(ディランの一時期のバックバンドとして有名かつ重要なグループ、バンド名がザ・バンドというめっちゃ偉そうな名前のバンドです。The Whoにも匹敵(笑い))のロビー・ロバートソンの曲なんですけどネ。(どうだロックはすごいだろッって感じ!?)

そして、この歌の主人公は(彼の属する社会によって)皮を剥がれ、実用に供されたが、それがうまく適わず、「前科者」になって、こう歌う・・・・



Oh, you don't know the shape I'm in


1)あゝ、おまえら、おれの落ち着き先を知らないのか

2)おゝ、おあめらにはおれの収まるところはわかるまい

3)なんだよ、おまえら、わかってねえなあ、おれがピッタリくるかたちってもんがよォ

4)あゝ、あんたらにはおれの落ち着くとこはわかりゃしねえよ



答えは、歌の主人公、ザ・バンドの聴衆、(これを書いている)わたし、(それを読んでる)あなた、によってそれぞれでしょう。上記以外の答えのお持ちの肩も、ハイ、みなさんご一緒に、よ〜ッ



Oh, You don't know 
The shape I’m in.


きのうは自分でもよくわからなかったが、(いや、さっき書きはじめたときも実は自信がなかったが)いま、この歌は(こういう歌なのだと)(自分なりに)よくわかった。これを読んだあなたはいまその現場に立ち会ったことになるわけです。Thanks for reading.

けっこうスゴイ歌じゃないですか。☆を増やしておきましょう。


そして、(歌の主人公と一緒に)なる
ほど、シャバというのは、そういうところなのだとよくわかる。

ずっとシャバにいるとわからないが、「獄」という外、あるいは「外=国」なんかから帰って来た人間の「目」というのは(たまには)借りてみる価値はあるだろう。

で、もいっちょう(数学的な)オモロイことを言っておくと、
現実は、ザ・バンドはこの歌を(ステージ上で)自分たちの聴衆に向けて「you」と歌うかっこうになって演奏しているということ。そういう量子的なゆらぎも見落としてはならないだろう。その瞬間にべつの意味が生じ(そして消え)るのだ。


何事も peace in a valley. とかネwink


*1:早い話が「女」のことですヨ。

*2:これはベースボール的な発想か? ラッキーセヴンにはならなかったのか(苦笑)