おほつごもりからさんがにち

あけましておめでとうございます。
って誰に向かっていってるのか……


大晦から三が日の今日までのことをメモしておきます。


2011年12月31日


晦日は、新丸ビルの某アクセサリー店でクリーニングに出していたピアスを受け取ってから日比谷シャンテガス・ヴァン・サントの「永遠の僕たち」を観た。


難病少女と死に魅入られた少年の果敢ないラブストーリーであえていえば、セカチュー並みにありがちな話なのではあったが、主人公の少年の親友が特攻隊員の幽霊ヒロシ、という設定が気になってつい観に行ってしまいました。特攻隊の文化史というか表象史みたいなのに興味があったから。


ヒロシはアメリカ人であるところのイーノックと夜ごと何の違和感もなく撃沈ゲームをやっているのだが、イーノックに「今や日米関係はすごいクールだぜ」と言われてもピント来ないっていうのが……ヒロシはまだ戦争が続いていると思いながらアメリカ人の少年と親友やってたのか? 44年に予科練を主席で卒業して、戦死する前に遺書に階級を少尉と記すことは、軍制上ありえたのか? とかつっこみどころは多いです。ま、それは置いておいて。


要するに死んだ特攻隊員といのは、望まない死、不可避の死、強いられた死の表象であって、両親の交通事故死で死に魅入られ、愛した女子が脳腫瘍でいくばくもない、という主人公には見えて当然のものなのかも。


案の定というか、予感が中って、最後、少女が死ぬ前に和解を促すのはヒロシなんだな、自分が渡せなかったラブレターを見せて教訓を垂れたりしてさ……そして、彼女が死んだことを告げる寒々しい冬のアメリカの田舎の風景にオーバーラップしてヒロシの遺書(ラブレター)が朗読される。

まただ。また、やられてしまった。この手のことは許さないぞ、いつもつも思っていたのに。


特攻隊員の遺書は、いつからか、たぶん戦後のある時期から、もはや戦争の不条理を訴える弾劾の言葉ではなくてポエトリーになっていたんだよなぁ。私が小学生の頃『きけ わだつみのこえ』を読んでいた頃、すでにそうだったような。


書いた人がすでに亡いという前提によって清められた言葉は、美しく、無垢に冬景色にかぶせて朗読される。それは、ほとんど実際には書くことも、渡すことも許されなかった類の純然たるラブレターだった。実際に、特攻隊員が書いた遺書がどんな矛盾と苦悩と制約に満ちていたかはもはやどうでもいいのだ、たしかに。それは甘美で悲しく、ひっそりとしている、はず、いや、「べき」なのである。


こうした演出を聞き、観ながら、私はいつもの複雑な罠にはまっていた。たとえ、書くことそのものを(当時の国家権力的モラルが)許さなかったであろう、かくも甘やかなラブレターが我々のささやかな想像力を動員して構築したフィクションという枠組みを借りて、65年の時を経て正当なものとして表現することは無言の者となった彼らにとってなんらかのサルベージ、救済、代弁なのか? 単に、無知な我々の感傷的消費なのか? これは、小学生の頃から私が落ち続けてきた罠である。彼らの尊厳を保つ行為なのか、彼らの尊厳を忘れる行為なのか?


加瀬亮の英語は、敵性語のはずなの妙ににうまかったぜ。


映画館を出ると、人気のない日比谷の西の空には、まだ微かな茜色が残っていた。


新年の目標は、月に1本は映画館で新作映画を観ること! に決定。無理目だけど。



1月1日


元日は久しぶりにおじこが家に来た。


うちは華人の家系なので目出度いときは豚、っていうことで例年正月は角煮を作っておくのだが、去年の暮れのスーパーではバラのブロックが売ってなくて、しかたなく鶏手羽と大根と玉子の煮物にした。でも、八角を入れて中華風にお目出度く。

スパークリングワインで乾杯して、鶏手羽を20本ばかり食べて、皿を骨で山盛りにしました。それから、おじこがソーテルヌのシャトー・デュケムの次ぎくらいに良い貴腐ワインをお年玉にくれたので、アイスクリームを食べながら一杯いただきました。BGMは最近聴くようになったパフュームです!


途中で地震が来て、去年の話。去年の地震て、馬鹿あぶり出し効果あったよね……とか。うちの会社でもパニクって馬鹿なこと言い出す管理職続出で、それと闘った私も軽い躁状態になっちゃったんだっけ。


夕食はお雑煮。うちは典型的な東京の街場風。今年は野菜不足克服のため、白菜も入れてみた。あと、たけのことしいたけも。美味しかったです。


年賀状は3枚しかきてなかった……


1月2日


アップルのオンラインストアで初売りをチェックしたものの、予想通りというか、大した値引きはしてなくて、これならヨドバシで5%でもポイント還元してもらったほうがいいや、ということで何も買わず。

午後は、父の老人ホームに行きました。お土産は、つるっとして喉に詰まる危険が少なそうなくず餅で。


帰り道、風が強くて木枯らしのようだった。


そろそろご馳走なれした胃袋を元に戻すべく、夕食はダイエット用寒天入りの雑炊。



1月3日


おじこから借りた想田和弘「選挙」のDVDを観る。


笑える。傑作!


これから、各党は候補者を公募するときは、この作品を見せて、それでも応募するというやつだけを選抜するように。っていうか、これを見て、それでもやります!っていうやつはかなりヤバイので、逆に落としたほうがいいのか……


老人会のラジオ体操の場面と、妻が「妻って言っちゃだめ。家内と言え」と強要されてるあたりが……なんとも、苦笑い。あと、夜帰宅する車の中で「負けたらうちはもう終わりだから」とか「おせっかいな人にあれこれ指示されてうざい」的な文句を妻がぶつぶつ言って、候補者の旦那が一生懸命慰めてるところとか、最高だね。


あと一回英語字幕付きで見てみるか。外国人が見たら「これは本当に政治キャンペーンなのか?」と不思議だろうねぇ……


おしるこを作りました。お餅はよもぎ餅で。おいぢい。


by風花

選挙 [DVD]

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殉国と反逆―「特攻」の語りの戦後史 (越境する近代)

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JPN(通常盤)

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