メロンジュースはロック

 俺は昨夜、栄の安ホテルで夕飯も食べずに考えていた。前回、寸借詐欺類似行為を受けた俺はついつい反逆的な目つきとなってしまった。これはいけなかった。人は簡単に腹を立ててはいけない。常に腹を座らせなければならない。俺はついつい細かいことに腹を立ててしまう癖がある。これがいけない。
 ロックなのか、俺に足りないのはロック魂なのか。己の心にロック魂を植え付けたいのでロックのライブに数年ぶりに参加してみようかしら、と考えて、しかし予定調和的に「○月×日 ?時」にライブをやるという宣告を受けて定時にきっかり盛り上がると言うのは果たしてロックなのだろうか。訳の分からない真夜中に突然発狂しながら唄い狂うのがロックなのではないだろうか?などと思考して、とりあえずロックな答えが出ないので、日記を更新してから壁の薄い部屋で寝るだけ寝た。

 今朝、朝五時前に起き、朝食を食べに松屋へ行く。ソーセージエッグ定食を食べながら、改めて昨日の握手会は良かったなあと思う。人生を充実させるための契機にはなったと思う。最近は友人もいなくなり、着信もメールもない。成人してから結婚式にお呼ばれもせず、つまらん、何らイベント性の無い男で、街で同級生を見掛けても声を掛けないようなそんな男だ。だからこそ刺激になったというか、推しアイドルのぐぐたすやブログを見ていると人に感謝することとか努力することの大切さとか、生きて行く上で基本的なことを改めて学んだというか、それは本当にありがたかった。握手を実際にして思ったことは、金を払わずとも遠方に出かけずとも交流できる人が身近にできれば楽しいだろうな、ということだ。 
 

 さて、日差しの強い中を歩いて名古屋駅に着くと東海道本線笠寺駅へ向かう。駅に着くとヲタたちと共にぞろぞろと電車を出る。そう、本日はHKT48日本ガイシホールでコンサートを行うのだ。ホール前まで到着すると、グッズを売っているのでどうしようかと思ったが買うのは止めた。生写真を交換する者も大勢いたが、私はグッズにはどうも興味を持てない性質のようだ。幼少期、一生遊びつづけるであろうと当時の自分は同じおもちゃで遊びつづけていたが、結局数年後には全く興味が無くなった。そうだ、小林よしのりの歳までアイドルに興味を持ち続けることはないだろうし、数年後には全く興味がなくなってしまっている可能性の方が高い。だからグッズは買わない。今この瞬間に夢を見させてくれる、それで充分だ。
 会場に入り、500円でポテト&ミニドッグを買い求め食す。スタンドに入ると最後部座席であった。ほぼ衝動買いに近い形で最終一般販売の席を確保したのだからこんなものだろう。ドームレベルに比べれば充分メンバーが近いし満足だ。前とその前のヲタの両隣りは空席、なぜか俺の両隣りはしっかりいる。そして隣の隣の奴が「なんだよここ一番後ろかよ!糞席だよ糞席、糞席じゃねえかよ!」と電話しながら叫んでいる。そいつは別の席にいる友人の向けて大声で叫んだりするいわゆる厄介(煩い・邪魔者的な意)という奴だ。何度も糞席糞席というからてめえの近くの席が本当の糞席だ!!と思った


 やがて始まる。HKT48の単独コンサートは初めて観るが皆、若い。最初の曲「青春ガールズ」の時点でフレッシュさに胸が熱くなった。さっしー(指原)の場の空気を寄り戻すあの巧みな話術、素晴らしい。かおたん(松村香織)がスタンドにいたのがびっくりだった。普通にスタンドの前でサイを振ってるヲタにしか見えなかったが。個人的には寸劇で魔女役をやった田中菜津美に注目した。13歳であの大人っぽさ。外見がローカル局でそこそこの年数やってる女性アナウンサーみたいだもの。これからが楽しみだ。


スタンド最後部でも楽しみはあった。まず最初に後ろからメンバーが飛び出してきてアリーナの方へ降りて行ったりとか、箱にメンバーがスタンド前にやってきたりとか配慮があったのがよかった。
一番好きな楽曲は「お願いヴァレンティヌ」。これはいい。「ロックだよ、人生は…」はAKBの曲だけど、歌詞が単純…。ロック魂に火が付かず。最後の「メロンジュース」はロックだったね。これは魂に火が灯った。いいもの観させてもらったよ。