前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

怪獣使いと少年 〜ウルトラマンの作家たち

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版

1993年刊行の増補最新版。特撮・・・特に巨大ヒーロー物には強い想い入れも無いので、今頃4人の脚本家たちの仕掛けていた時限爆弾にショックを受けている。当時ウルトラシリーズには沖縄出身の作家が居て、話の中の端々にあるものは実は、とか大人になってから気づきはあったけど。


ウルトラセブン「ノンマルトの使者」脚本:金城哲夫


地球の先住民は人間ではなかった、人間は元々侵略者でセブンはM78星雲からノンマルトを守る役目を負っていた。自分が間違ってたことを認めることが出来ずにセブンは「敵」の操る怪獣を切り刻み、ウルトラ警備隊はノンマルトの海底都市を発見すると相手には何も通告せずに狂った様にミサイルを乱射して破壊壊滅させる。


帰ってきたウルトラマン怪獣使いと少年」脚本:上原正三


河原の廃屋で暮らす男の子が穴を掘っていると、近所の中学生3人組に宇宙人だろうと執拗にいじめられる。雨が強く降る1年前のある日、地球観測に降りて来た宇宙人に行き倒れの男の子は救われ、その後一緒に暮らしていた。宇宙人は近隣の工場の公害で衰弱して老人の姿になっている。男の子は宇宙人のために帰還する為の宇宙船を掘り出そうとしていた。主人公の郷は事情を知って一緒に宇宙船を探す。近くの町でも男の子は宇宙人だとウワサが広がり、警官や町の人々が竹槍など持って男の子に襲いかかる、やむをえず老人が自分だけが宇宙人だと明かす、即警官に射殺される。しかもこの時、老人は宇宙人の姿に戻っていないのに、男の子の前で3発も撃たれて死ぬ。絶命すると赤い血がミドリに変わった位の表現で姿は老人のまま、川にかかる鉄橋の向こうでは宇宙人に封印されていた怪獣が暴れだす。暴徒は逃げる。郷は老人が殺されて呆然とうなだれているが、仏僧の姿をしたMAT隊長に諭され、町の破壊を食い止めるべく変身して戦う。この回は怪獣と戦うシーンまでが横殴りの雨を降らせて撮っている。


普通の人々の不安と狂気は、やっぱり関東大震災での民族虐殺を連想させる。


当時は再放送だったか、それでも子ども過ぎたのでストーリーの意味は分からなかったと思う。
ウルトラシリーズはウルトラ警備隊やMATのメカ造形や怪獣の形が好きで視てたんだと思う。当時買ってもらったソフビのお気に入りはブルマークのミクラスインドネシア〜沖縄ルート、南方系の神獣を3頭身にした形と愛嬌。ウインダムもゆるキャラだったような、セブンに都合よく使われるカプセル怪獣に感情移入してたかも。


脚本家金城哲夫は「マイティジャック」番組製作後に沖縄へ帰り、日本返還後の沖縄海洋博アクアポリスでの前夜祭と閉会式の演出を手がけていた。


ウルトラマンではジャミラ登場回の「故郷は地球」を書いた佐々木守。後に等身大で作風が暗かったシルバー仮面は、裏番組のミラーマンとの視聴率で勝てず、途中から巨大化して次のアイアンキングへと繋がっていった。当時アイアンキングは相棒の生身の男に毎回助けられて敵をやっつけるという弱いイメージばかり覚えていたけど、ここでも日本の先住民が復讐に起ち上がるなんて設定だったとは。反天皇制 恐るべし。それ以前の68年 植木等の映画無責任シリーズ「日本一の裏切り男」は視てみたい。ムック本の放送禁止テレビドラマのリストに載っていた「お荷物小荷物・カムイ編」もこの人の脚本だった。しかも前シリーズの沖縄人の設定をアイヌに変えただけという。


市川森一ウルトラセブンでは「他人の星(盗まれたウルトラアイ)」など、ウルトラマンAでメインライターに。そういえばウルトラ兄弟が磔にされたり、なにかキリスト教的世界観なのは市川作品に通底するものらしい。初期ウルトラシリーズの脚本家の中では後年一番人気番組を手がけた人だろう。大河ドラマ「黄金の日々」などは当時でも新鮮でオモシロかった。