<蜘蛛と蝶と蛾(続きの1)>

・その日から蜘蛛は蝶のことを待っていましたが、2日経っても蝶が戻ってくることはありませんでした。
 次の日、蜘蛛は夕方から夜中にかけて巣を作り直していました。巣がようやく完成してから、夜空の星を見上げていたとき、蜘蛛はふと、一匹の蛾が網に捕まっているのに気づきました。「今夜は運がいい。」と蜘蛛は思い、さっそく食事にとりかかろうとして、いそいそと縦糸を伝って蛾に近寄っていきました。
 すると蛾はこう言いました。
 「あなた様は心の広いお方だと、蝶から聞いております。どうか私をお助け下さい。」
 蜘蛛は2度も騙されるものかと思い、蛾に言いました。
 「お前は、あの蝶のように美しい翅を持っていないからダメだ。」
 蛾は言いました。
 「私は、蝶からあなた様への届けものを預かっています。ですから、今回はお見逃しください。そうしたら、必ずここに届けものをお持ちいたします。」