日本フィル第621回定期演奏会

2010年6月26日(土)午後2時開演 サントリーホール
音が原始に還るとき-魂で聴く日露の音楽
井上道義のプログラミングには常に歯ごたえがあります。今回は日本フィルにゆかりの深い伊福部昭ストラヴィンスキーの対比を魅せてくれます。賛美と祈りの歌との協奏では、1979年の初演から30年余、この作品の第一人者である安倍圭子の手(とマレット)は見逃せません。魂の根幹を揺さぶる伊福部作品に受けてたつのは、ストラヴィンスキーの2作品。原始主義によるバレエ音楽火の鳥)から、簡素な編成の「交響曲」の時代へと辿ったストラヴィンスキーの「変化」をお聴き逃しなく。
 
指揮:井上道義
マリンバ:安倍圭子
伊福部 昭:マリンバ管弦楽のためのラウダ・コンチェルタータ
ストラヴィンスキー:ハ調の交響曲
ストラヴィンスキー:バレエ組曲火の鳥》(1919年版)
http://www.japanphil.or.jp/cgi-bin/concert.cgi?action1=preview_details&seq=499

開演1時間前、吹奏楽コンクールの課題曲も手がける作曲家和田薫氏による土曜限定プレトーク「オーケストラ・ガイド」を拝聴する。「音楽は音楽以外なにものも表現しない」とはストラヴィンスキーの言葉。標題音楽は、絶対音楽から喚起される二次的な意味を持つに過ぎないとの解説に頷く。席替えして14時に開演。
 
○伊福部 昭:マリンバ管弦楽のためのラウダ・コンチェルタータ
魔法使いサリーちゃんのママのようないでたちで現れた安倍圭子氏は、マリンバ界の大御所、というより現代マリンバ奏法の創始者にして世界でただ一人の超絶技巧マリンバ奏者というべき存在。両手に2本づつ4本、硬さの異なる3種類のマレットを持ち替えつつ、縦横無尽、自由自在、天衣無縫、人馬一体?に繰り出す演奏はまさしく魔法使いのごとし。*1
使用するマリンバはうれしいMade in Japanのヤマハ製YM-6100*2 下についている共鳴パイプは、低音側の数本が床までの高さでは足りず、工場配管のようにぐにゃりと折れ曲がっているのが、これまたうれしい。
このマリンバと対等に張り合うオーケストラは、コントラファゴットバスクラリネットコントラバス、チューバの低音群による地底から湧き上がるような音の塊に乗って、ティンバレスがリードする土俗的なリズムの反復がマリンバに応える。単一楽章ながらカデンツァ的なマリンバ独奏をはさんで主題が再現されるわかりやすい構成。
木片を叩くというシンプルな動作から、かくも幻想的で、豊かな音楽が生まれることに素直に感動した。アンコールは、日本人なら誰でも知っている「ドナドナ」と、曲も猫の手のような形をしたマレットも自作という「祭りの太鼓」。満場の聴衆はもちろん、オーケストラ、指揮者からも惜しみない拍手喝采が続き、前半でコンサートは最高潮に達してしまったかの様相を呈した。
 
ストラヴィンスキー:ハ調の交響曲
作曲者の言葉をそのまま曲にしたような純粋な純粋音楽。ある意味身もふたもないタイトル、ハ調といいながら調性もメロディもあいまい、ともすれば無味乾燥になりがちなこの曲に、井上道義のヴィジュアルな指揮が躍動感を与える。
しかし、いかんせん15分の休憩を挟んでもなおマリンバの余韻覚めやらず、どこか印象の薄い演奏になったきらいは否めなかった。
 
ストラヴィンスキー:バレエ組曲火の鳥》(1919年版)
ここからようやくオケも目覚めたかのように咆哮し、組曲ながら全編アタッカの演奏で一気にコンサートのフィナーレを飾った。とりわけ、客演主席トランペット奏者のクリストーフォリ氏はキレキレ、ノリノリの快演。ソリストとしてコンチェルトもこなす主席ホルン奏者の福川氏も安定感、透明感ある好演。
この曲の終結部は、どうしても「フェリスタス」(1979年吹奏楽コンクール課題曲)を連想してしまう。それはともかく、カーテンコールで主席ホルン氏が2回も指名されたのと、最後に井上氏が指揮台の上でサッカーのシュートの真似をしたのが印象に残った。

*1:この日は披露されなかったが片手に4本ずつの8本マレットもこなす由。もはや神の領域か?

*2:メーカー希望小売価格2,450,000円(税抜)