日本フィル第623回定期演奏会

2010年9月11日(土)午後4時開演
サントリーホール
指揮:アレクサンドル・ラザレフ【日本フィル首席指揮者】
ピアノ:上原彩子
プロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクト Vol.5】
チャイコフスキーバレエ音楽白鳥の湖》より
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
プロコフィエフ交響曲第5番

第623回定期土曜限定プレトーク「オーケストラ・ガイド」
11日土曜日定期演奏会開演前の午後3時10分から15分程度 大ホール舞台上にて
一柳富美子氏(ロシア音楽学者)
http://www.japanphil.or.jp/cgi-bin/concert.cgi?action1=preview_details&seq=574

プロコフィエフ交響曲第5番を初めて聴いた時の奇妙な感覚は衝撃的だった。メロディーはきれいだし、形式的にも特に奇をてらったところはないにも関わらず。その後も何十・何百回と繰り返し聴いたがその感覚は変わらない。プロコフィエフはいったい何を考えてこの奇妙な音楽を書いたのか。長年の謎を解消すべく、サントリーホールに向かった。
土曜日恒例のプレトークによれば、やはりというべきかプロコフィエフの作品は「美しくてヘンテコな音楽」。プロコ氏自身、自分の音楽の特徴を、古典性と革新性、トッカータ性と叙情性、そして諧謔性という相矛盾する5つであるとしていた。革命を逃れて日本経由で南米に渡ろうとしたが結局アメリカに亡命、フランスを経由して、最後はロシアに帰国した経歴も波乱万丈に満ちている。国内外で自らの才能が認められないまま帰国したプロコフィエフは、すでに15歳も年下のショスタコーヴィチが第5交響曲で成功を収めていたことを意識してか、同じ番号の交響曲に特に力を注いだ。その傍らなぜかSF風の小説を書くなど、奇才ぶりを示すエピソードには事欠かない。*1 以上はプレトークの受け売り。なんとなく謎が解けた気分でコンサートに臨むことができた。
この日の指揮者、マエストロ・ラザレフは大企業の重役のような堂々たる風貌。指揮棒を使わず、大きな身振り手振りでエネルギッシュにオケをリードしていた。特にメインの交響曲第5番は、音量やリズムの変化にメリハリを効かせた怪演でプロコ節を余すところなく演じ切り、聴衆を飽きさせなかった。
演奏後のお立ちはなぜかフルートとクラリネットの2名のみ。ホルン、トランペットもよかったが、今回は、打楽器と低音群(特にテューババスクラリネットコントラファゴット)を指名してほしかった。
日フィル定演では珍しいアンコールは、オペラ「戦争と平和」から「ワルツ」。交響曲第5番との関連性も指摘されるこの曲をアンコールに選んだ意図はわかるが、なんとも鈍重なロシア風ワルツに聴衆の反応は微妙..せっかく交響曲で盛り上がった会場の熱気に水を差した感は否めなかった。どうせアンコールをやるなら、ピアノ協奏曲第3番のあとで上原彩子のピアノを聴きたかったところ。もしくは「白鳥の湖」のワルツをアンコール用に取っておく手もあったか。*2

*1:日本語では唯一「プロコフィエフ短編集」が読めると聞き、さっそくアマゾンで発注。

*2:この日、この曲の後、盛り上がった聴衆の一部が間違って拍手してしまう一幕があった。