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古書ほうろうの日々録 このページをアンテナに追加 RSSフィード

4月5日をもちまして、日々録は、http://horo.bzへ移行いたしました。

これまでご覧いただきありがとうございました。新日々録もひきつづきよろしくお願いいたします!

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2007年11月21日 課外授業

koshohoro2007-11-21

水曜日は定休日。

シャッターを閉めた店内で、打合せをしたり、お預かりしている買取りの計算をしたり、本を棚に出したりしています。

今日はいつもの定休日と少し違うことがありました。

写真家中里和人さんが授業を持っている、東京造形大学写真専攻の課外授業、南陀楼綾繁氏をゲストに迎えた「谷根千を見る歩く」の締くくりの場所として、夕方生徒さんたちと共にみなさんで古書ほうろうに来てくださいました。

少し離れた場所で仕事をしていたので、ディスカッションはあまりよく聴こえず残念でしたが、終わった後はみなさんゆっくり棚を見ながら買い物もしてくださいました。

生徒さんたちはこれから何でも吸収できる真新しいスポンジのようで、若いってステキ、と素直に思ってしまいました。

店内、束の間の清々しさで満たされ。

夜の飲みにも誘ってくださいましたが、大量の出張買取りがありみなさん帰ったあとも深夜まで仕事に精を出した一日でした。

(ミカコ)

2007年11月20日

たけうま書房さん、一箱出店中です

f:id:koshohoro:20071119132351j:image:left たけうま書房さんが、ほうろうで一箱の出店を始めて、はや2週間が経ちました。すでに定期的にのぞきにくる常連さんもついているので、良いものはすぐに売れていきます。そこで、この辺で一度「紙上(Web上?)一箱再現」を行いたいと思います。ちょうど一昨日補充にみえたばかりで、いい感じの品揃えなのです。

 たけうまさんの箱は、下の方に並んだ本の上に10枚ほどのCDが置いてある、という構成になってます。まずはそのCDから。


      • Jigs,Reels'n rags/Fiddlin' Ian McCamy & his Celtic Reelers 900円
      • Louie Blue - Film Soundtrack 900円
      • Les Primitifs du Futur/WORLD MUSETTE 900円

World Musette たけうま書房のキーワードのひとつであるロバート・クラムがジャケットを描いている3枚。ギター、バンジョーフィドルなどといった弦楽器が活躍する古き良き音楽たちです。同じミュージシャンが参加しても、それがフランスのものならバンドネオンが入ってミュゼットとなり、アイルランドならノリノリのダンス音楽になるという、まあジャンル分けや呼び名はあまり関係ない「グッド・ミュージック」です。

      • HAVING A GOOD TIME/HUEY 'PIANO' SMITH & HIS CROWNS 800円
      • Hillbilly Boogie!/V.A. 900円
      • &ラ・バンド・デシネー/フェイ・ロフスキー&ラ・バンド・デシネー 1200円

 この辺りも、毛色は違うものの、大筋においては同じような系統の音楽。たけうまさんのCDには、1枚ずつ丁寧なコメントが添えられているのですが、これ読むとついつい「買うしかないよなあ」という気にさせられてしまうところがミソ。たとえばこんな感じ。

 細野さんの新作のサブテキストのようなCD。細野さんもカバーしていたAl Dexter他ゴキゲンなナンバーが並びます。Spade Cooleyも2曲収録。

 女ダン・ヒックスの異名をとるオランダの歌姫フェイ・ロフスキー。ギター、マリンバ、チター、テルミン等を駆使しながらポップス、カントリー、スイングなど(朝鮮民謡アリランも)グッドタイムミュージックを奏でます。


 ほかにも、まだまだ以下のようなものが。たけうまさんの懐の深さを感じさせるラインナップです。

      • FESTA DOS DEUSES/HERMETO PASCOAL E GRUPO 2000円
      • asthmatic worm 800円
      • plunderphonics/John Oswald 1500円
      • Closed On Account of Rabies 〜 Poems and Tales of Edgar Allan Poe 2800円
      • THE LONG VACATION/ピヂンコンボ(トム・コラ、篠田昌己、ロリイ、大熊亘、西村卓也、木村真哉) 1000円

 CDはここまでの2週間で8枚売れているので、このペースだと、今出ているものもきっとすぐに売れちゃうんじゃないかと。


 さて、続いてメインの本ですが、こちらはCDを除いた状態で俯瞰で写真を撮ってみました。背表紙が見えているものはそちらで確認していただくことにして、それ以外のタテに挿してある大型本を紹介しましょう。

f:id:koshohoro:20071119132240j:image


      • The R.Crumb Coffee Table Art Book 6300円
      • Qui a peur de Robert Crumb 2000円
      • The Complete Crumb Comics Vol.10 1600円

 たけうまさん入魂のロバート・クラム3連発。ぼくはこの人について「ジャニス・ジョプリンのジャケット描いた漫画家」という程度の知識しか持ち合わせていなかったのですが、いっときは自分のバンドまで持っていたミュージシャンでもあり、また膨大なSPレコードのコレクションもお持ちなのだそうです。「秋も一箱古本市」でたけうま書房の箱に遭遇しなければ、ぼくはそんなことずっと知らないままだったでしょう。あの日「これはどういう感じの音ですか?」というような質問をしたぼくに、たけうまさんは懇切丁寧にクラムのことを教えてくれました。

古書ほうろう賞」をたけうまさんに、と思ったのは「趣味が重なる部分が多そうだ」というのももちろんそうなのですが、それ以上に「自分の知らない(でも自分の好きそうな)ことをたくさんご存知なんだろうなあ」という気持ちからで、それは、こうしてほうろうに出店してくださっている箱を見ても、ほんとその通りでした。CDの補充など、誰よりもぼくが楽しみにしている始末です。

 まったくの偶然なのですが、たけうまさんとぼくは同い年(学年が同じ)で名古屋出身という共通点がありました。しかも広い名古屋のすぐ隣同士の町(この辺りで例えるなら根津と池之端ぐらい)で、お互い10代を過ごしていたのです。ひょっとしたら駅前の本屋で肩を並べて立ち読みしていたこともあったかもしれません。そんなふたりがまったく違う人生を経て40近くになってこんな風に出会うというのは、なんだか不思議なものです。


Trosper そうそう、ほかの本に隠れて写真にはまったく写っていない、

という絵本についても、ぜひ触れておかなければ。

 ご覧のように、クレジットには何とビル・フリーゼルの名が。まあ彼はジャンルを縦断する異能のギタリストなのでどんなところで名前を見ても驚きはしませんが、ここでは絵本のサントラ?を手掛けています。この本には文章がなく、その代わりにこのCDが付いているんですね。かわいい(と言えなくもない)たぶん子供の象が、妖怪(のようなもの)に不条理に追いかけられ逃げまどう、というお話なのですが、このCDを聴きながら読むと不気味さが倍増するような気も。お値段もお手頃なので、ファンの方は話の種にいかがでしょう。

 わたくしごとですが、昔、昭和女子大人見記念講堂で聴いた、矢野顕子、ナナ・ヴァスコンセロスとのトリオによる演奏は忘れられません。ホールのなかをいろんな音が飛び交っていて、なんとも幸せな時間でした。ビル・フリーゼルというと、魔術師のようなナナといつもの矢野さんとに挟まれて、職人のように黙々とギターを弾いていたこのときのことを想い出します。

 さて。

 本はまだまだあるわけですが、写真も載せたことですし、だらだら書くのはそろそろお終いにします。個人的に一番気に入っているのは、ドクター・ジョン自伝『フードゥー・ムーンの下で』、ルー・リード詩集ニューヨーク・ストーリー』、佐藤伸治詩集『ロングシーズン』、鈴木惣一朗『ワールド・スタンダード・ロック』という並びで、特に、ルー・リード佐藤伸治詩集が隣り合っているのを目にしたときは、とても新鮮な驚きがありました。会期は12月2日(日)までと、まだ2週間ほどあります。今後もまだ補充があるようですし、たけうま的世界に興味を持たれた方は、ぜひ一度お運びください。

 最後にもうひとつだけ。前回の日記「50年前の音楽会」に写真を追加しました。文章よりもこっちがメインなので、ぜひご覧ください。

(宮地)

2007年11月12日

50年前の音楽会

 3週間ほど前から、ショーウインドウで昔のクラシック・コンサートのパンフレットを展示販売をしています。かれこれ50年ほど前、たぶん「コンサート」ではなく「音楽会」と呼ばれていた、よき時代のものです。戦争が終わってまだ10年も経っていないこの時期にこれだけの面々が来日していたということは、知識としては知っていたものの、その証拠をこうして並べてみるとやはり驚きです。そして羨ましい。なかでもうっとりしてしまうのは(東京に限ってではあるのですが)そのプログラムの多彩さ。今現在のように「今年はこのレパートリーで世界中を廻ります」というのではなく、「観光も兼ねて日本でゆっくりしましょうかねえ」という雰囲気があり、そのなかでなるべくたくさん自分の姿を見せてくれようとしていたのではないかと感じます。

 以下、それぞれのパンフレットを概ね年代順に紹介していきますが、そんなわけなので、簡単なデータ以外は「自分ならどのプログラムを聴きたいか」という妄想を中心にお話ししようと思います。本当はパンフレット本体の素晴らしい装幀や、それを手掛けたデザイナーについても言及したいのですが、残念ながら、それについて語るにはぼくの知識が乏しいため、署名があるものについてそれを記すにとどめます。そちら方面に詳しい方がいらっしゃいましたら、ぜひご教授ください。

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*ラザール・レヴィ(1950.11/4,5 日比谷公会堂)

 今回の展示したなかで、最初に行われたのがこの公演。このパンフレットを手にするまで、ぼくはこのピアニストのことを知らなかったのですが、調べてみると、長らくパリ音楽院で教えられていたとのことで、日本の音楽史的には重要な方のようです。ただ、録音を聴いたこともないので、あまり書けることがありません。サンフランシスコ講和条約が1951年ですから、まだ占領下。パンフレットの紙質の悪さからはそういう時代背景が伺えますが、早くも外国から音楽家から来ていたのは驚きです。


*諏訪根自子&原智恵子(10/26,27 帝国劇場

 日付は記載されているのですが、年が書いてありません。たぶんもう少し後の公演だとは思うのですが、原智恵子はレヴィ教授の弟子にあたるそうなので、ここに置きました。おふたりの「東宝藝術家」という肩書きがなんだかすごい。

 原智恵子は「日本におけるクラシック音楽の歴史」みたいな話ではよく登場するピアニストで名前だけは知っていましたが、その演奏については残念ながら知りません。今回調べてみて驚いたのは、ムッシュかまやつでもおなじみの、かの有名なイタリアン・レストラン「キャンティ」と縁のある方だということ(最初の結婚相手がその創業者で、現オーナーは息子だとか)。

 ヴァイオリンの諏訪さんも名のみ知る存在ですが、プログラムにはフランクのソナタも含まれており、楽しみです(あとは、ドビュッシーベートーヴェンの9番)。


エフデイ・メニューヒン(1951.10/13.14.20.21 日比谷公会堂ほか/朝日新聞社f:id:koshohoro:20071116034140j:image:right

 初来日。前半の京都宝塚での公演も含め、すべてコンチェルトの演奏会で、オケは近衛秀麿指揮NHK交響楽団東京で聴ける3つのプログラム(21日はマチネありの昼夜公演というのがビックリ)のなかでは20日のモーツァルト(4番)とブラームスの日が希望といえばそうなのですが、「何が聴きたい」というほどメニューインという人の演奏を知らない、というのが実情だったりもします。もちろん聴いてはみたいのですが。

 前年のレヴィのものに比べると、パンフレットの紙質は断然良くなっていますが、これはメニューインという名前の力なのでしょうかね。





*アルフレッド・コルトー(1952.10/23,24,11/5 日比谷公会堂/朝日新聞社) f:id:koshohoro:20071118205032j:image:right

 ご本人が「長年の希望が達せられ、いよいよ近く日本の高い芸術的社会的教養と、あこがれの風土とを親しく見聞出来ることに大きな期待を寄せています。」というメッセージを寄せているので、初来日ですね。いま調べたら、このとき日本のレコード会社に吹き込んだ音源も発売されているようです。プログラムはD、E、Fとなっているので、きっと他にも演奏会はあったのでしょう。オール・ショパン、オール・シューマン、あれこれという3種類ですが、やっぱりコルトーですから10月23日のショパンを聴いてみたいですね(3番のソナタとバラード全曲、いくつもの小品)。

 表紙は、「K.SAITO」というサインの方によるもので、貝の絵がとても良い雰囲気を醸し出しています。そしてそれを開くと登場する御大の写真!その顔に刻まれた年輪には感銘を受けずにはおられません。余談ですが、1953年秋にソロモンが来日する旨の告知も出てます。


*ジョゼフ・シゲティ(1953.4/6,7,8 日比谷公会堂/上田仁指揮 東京交響楽団毎日新聞社f:id:koshohoro:20071118205345j:image:right

 ここ数年来、もっとも気に入っているヴァイオリンのための曲は、プロコフィエフ協奏曲第1番。テレビで五嶋みどりが弾いているのを観たのがきっかけでした(指揮はヤンソンス)。シゲティさんは、初演者でこそありませんが、友人の作ったこの曲をことあるごとに演奏し、その普及に尽くした人です。

 掲載された、シゲティ本人によるエッセイによると、3度目の来日とのこと。「二十年前私が来たときの日本といまと比べて一番変った印象は日本全体が実に急速にアメリカナイズされたこと。戦争に敗れたことが、大きな原因には間違いないでしょうが、やはりよい面は取り悪い面は捨てる日本人としての自覚が望ましい。」と書かれているので、1933年にも来られているようですが、それが初めてだったのか2回目だったのかはわからないですね(ネット上にこういう記事がありました。2回目のようです)。後述するようにバックハウスのパンフレットにも寄稿されてましたし、シゲティさんは文章書くのがお好きだったんでしょうか。日本の聴衆を褒め讃え、政府の文化政策について苦言を呈していますが、印象に残ったのは「日本の旅先でゆっくりした全然窮屈さの感じられない丹前を着ていると、こんな気楽でいいキモノは世界にないと思います」というくだりでした。これまで「シゲティ」という名前にはとても厳めしいイメージが付きまとっていたのですが、随分感じが変わりました。

 さて、このパンフレットは、東京でのコンチェルトの会だけを集めたもので、それ以前にも、いくつものリサイタルがあった模様。f:id:koshohoro:20071118205541j:image:left東京交響楽団第53回定期、およびF、Gという3つのプログラムの中で選ぶとしたら、ブラームスとベートヴェンを両方やる4月8日ですかね(と思っていたのですが、あれこれ調べてみたら「1953年の来日公演にて、会場で親友のプロコフィエフの死去を知らされ、急遽演奏曲目をプロコフィエフヴァイオリン協奏曲第1番に変更し、さらに最後にアンコールで同曲の第2楽章スケルツォを弾いたエピソードは著名。」という記事がWikipediaに載ってました。出典は記されていないので確認はできていませんが、もし本当だとしたら全日行くしかありませんね)。

 あと、音楽とは全然関係ないですが、アサヒビールの広告のなかの、ビールのジョッキがヴァイオリン弾いてる絵がとってもユーモラスでチャーミング。今だったら消費され尽くしちゃうんじゃないかと思われるこの「ビールくん」。誰が描いたんでしょう。


*ジョゼフ・シゲティ(1953.3/30,31 日比谷公会堂/伴奏:ブソッティー/毎日新聞社f:id:koshohoro:20071119004055j:image:right

 こちらは東京でのリサイタルのパンフレット(「ビールくん」はこっちにもいました)。プログラムはDとE。知らない曲も多く、甲乙付けがたいのですが、あえて選べば30日のDプロ。特に最後に演奏される、シマノフスキー『アレトゥーザの泉』、スクリアビンシゲティ編曲)『三度の練習曲』、ストラヴィンスキーペトルーシュカ」よりロシア舞曲、というのが興味深いです。吉田秀和さんの「壮麗と峻厳−シゲティ第一夜を聴く」という文章が載っているのがうれしい。それによると、最初の夜(3月5日)も日比谷公会堂で、バッハのシャコンヌ、シューベルトラヴェルバルトークという流れだったようです。だとしたら、この日が一番聴いてみたいですね。

 吉田秀和さんの文章は、翌日の毎日新聞の朝刊に掲載されたものだそうですが、とても素晴らしいので最初の部分のみ引用しておきます(こんな文章を終演後せいぜい数時間で書くなんて!)。

 20年前にも私はシゲティをきいた。日比谷の公会堂の一番てっぺんの席だった。そうして私は高等学生だった。音の細かな印象というものはどうしてその時の感激に比べて消えやすいのだろうか?私が若くて音楽をきくのに非常に未熟だったからかも知れないーー今だって未熟なことに変りはないけれども。あの時私はひどく疲れた。そうして感激はそれより強く烈しかった。

 今夜も同じである。感激はものを書くのにふさわしくない状態であるだろう。だが感激を失うように、薄めるように努力した末に来るものが、必ずしも本当に冷静で慎重な状態であるとは限らない。むしろ感激の中で慎重を学ぶこと心の底から深くゆすぶられていてしかも目ざめていること、私にはこれこそこの上なく好ましい。


ブダペスト弦楽四重奏団(1954.3/12,13 日比谷公会堂/日本放送協会f:id:koshohoro:20071119004323j:image:right

 驚愕の1954年、幕開けはブダペストカルテットの2度目の来日(前回は1952年)。個人的にはルドルフ・ゼルキンと組んだブラームスシューマンの録音が印象に残っているのですが、それよりずっと前のできごと。このパンフレットは2月からの滞在の最後を飾るフェアウェル・コンサートのもので、弦楽器意匠による表紙のデザインが目を惹きます。プログラムにはドビュッシーが入っていたりもするのですが、巻末に掲載されている他の演奏会の評を読むと(山根銀二ほか)、この来日のハイライトは2月の18日から3日連続で行われたベートーヴェン・チクルスだったようです。


*ウィルヘルム・バックハウス(1954.4/9,10,23 日比谷公会堂/毎日新聞社f:id:koshohoro:20071119004525j:image:right

「鍵盤の獅子王」初来日。「日本の音楽愛好家の音楽に対する理解力、鑑賞力そして芸術家に対する厚意については、私の親友ジョゼフ・シゲティ氏等から熱心な話を聞いています。」という本人のコメントとともに、ここでもシゲティさんが文章を寄せています。曰く、「彼は人間が到達出来る最高のテクニックを備え、その豊かな音色は金の玉をころがすごとくにさえわたり、軽妙なタッチは”人間の手”というよりなにか神秘的な神わざのなせるところといった感を与えました」。金の玉って・・・。訳のせいもあるのでしょうけど、なんともいえない表現だなあ。

 さて、3日間すべて違うプログラムで、どの日に行くか迷うところです。ブラームスの作品117や119の間奏曲を含む9日も魅力的ですが、やはりバックハウスと言えばベートーヴェン。オール・ベートーヴェンの10日ということにしておきます(作品10の1、57、81のa、111)。23番と32番が両方聴けるなんてうれしい。パンフレット内の告知によると、5/2-3にもリサイタルコンチェルトの会があった模様なのですが、コンチェルトは何をやったんでしょう。たぶんベートーヴェンなんでしょうけど、もしブラームスの2番の協奏曲だったとしたら、卒倒もの。案外モーツァルトかもしれないけど。


ヘルベルト・フォン・カラヤン(1954.4/14,15,16 日比谷公会堂/NHK交響楽団日本放送協会f:id:koshohoro:20071119004752j:image:right

 ご存知カラヤン初来日の巻は、N響の定期です。で、このパンフレットは第356回定期とその翌日の臨時公演のもの。前半はベートーヴェン。『エグモント』序曲で幕が開いたとおもったら、次はいきなり『運命』!!!。後半は、ソリストにパウル・クリングを迎えてのモーツァルトコンチェルト5番と『展覧会の絵』!。カラヤンらしいといえばほんとそうなのですが、なんだか強烈なプログラムで、お腹が張っちゃいそうです。カラヤンはこの後、4月21日のチャイコフスキーの6番がメインの公演(復刻CDあり)をはさみ、5月の連休明けには3日連続(7、8、9日)で第九を振って帰っていったようです(告知はここまでしかないけど、きっとそうでしょう)。うーん、恐るべき男。

 ところで、今回紹介しているパンフレットの主役たちのなかで、唯一実演に接したことがあるのがこのカラヤンです。小学生のとき、大阪フェスティバル・ホールで聴きました。新大阪の駅とか、ホールの様子などはとても鮮明に憶えているのに、演奏についてはなんも思い出せません。まあそれを克明に記憶しているようだったら、今頃古本屋をしてるってことはないのかもしれませんが。


*ヤーシャ・ハイフェッツ(1954.4/18-5/28 日比谷公会堂、帝国劇場ほか/朝日新聞社f:id:koshohoro:20071119004946j:image:right

 ハイフェッツ氏日本縦断の旅。北は札幌から南は福岡まで8都市15回の演奏。仙台や下関にも立ち寄っています。震災直後の1923年帝国ホテル演芸場!)、1931年に次ぐ、3度目の来日。東京では6つのプログラムすべてを聴くことができたわけですが、4月22日、日比谷公会堂での公演に行きたいと思います。前半がフランクのソナタピアノエマヌエル・ベイ)とモーツァルトコンチェルト5番(指揮者およびオーケストラ記載なし)、後半がバッハ無伴奏シャコンヌと小品あれこれ。黄色の地に黒でHEIFETZと書かれたパンフレットのデザインがかっこいいです。

 さて、ここまでの日付を詳細にご覧になった方にはすでにおわかりでしょうが、この年の4月から5月にかけて、バックハウスカラヤンハイフェッツという御三方は同時に日本に滞在しています。主会場である日比谷公会堂の4月について書き出してみると、こんな感じ。

 4月9日 バックハウス

  10日  〃

  14日 カラヤン

  15日  〃

  16日  〃

  20日 ハイフェッツ

  21日 カラヤン

  22日 ハイフェッツ 

  23日 バックハウス

 どうです。まるでサントリー・ホールみたいじゃないですか。今ならともかく、この時代にこんなことが起きていたなんて、ねえ。全部招聘元が違うので、張り合ったということなんでしょうけど、クラシック好きはお金がいくらあっても足りないようなもんです。もっとも、この頃は「貧乏なクラシック・ファン」というのはごく少数だったのかもしれませんが。


*ヴィルヘルム・ケンプ(1954.11/24 東京体育館/上田仁指揮 東京交響楽団

 59回目の誕生日を翌日に控えたケンプさんの告別演奏会(この「告別」がどういう意味なのかは謎)。ケンプさんは長生きされたし(1991年没)、数えきれないほど来日しているので、これが何回目の来日で、というようなデータは省略(というか調べる根気がなかったです)。プログラムはすべてコンチェルトで、バッハイ短調)、モーツァルト(K.466)、ベートーヴェン(5番)。ぼくの、まったく個人的な印象でしかないのでしょうけど、ケンプさんには独奏曲を弾くイメージが強いので、(コンチェルトを演奏しないなんてことはあり得ないのだけど)ちょっと意外な感じ。弾くにしてもベートーヴェンだったら4番じゃないの、みたいな(4番しか弾かないなんてことももちろんあり得ないのだけど)。


ダヴィッド・オイストラッフ(1955.2/23-3/14 日比谷公会堂、共立講堂ほか/伴奏:ウラジミール・ヤムポリスキ−/読売新聞社f:id:koshohoro:20071119005210j:image:right

 初来日。東京以外にも、名古屋京都大阪福岡で演奏されています。東京では5種類のプログラムが聴けたわけですが、一晩だけなら迷うことなくプログラムA。2月25日の日比谷公会堂でのコンチェルトの夕べ。なんと言ってもプロコフィエフの1番が聴けるのが楽しみ(ほかは、モーツァルトの5番と、チャイコフスキー)。でもよく読んでみたら但書きにこんなことが書いてありました。曰く、「但し東響との共演はプロコフィエフNo.1を除外し、ベートーヴェン作曲『コリオラン』序曲を加える。」。あらまあ。Aプロのもう一日は3月1日の大阪歌舞伎座公演。どちらが近衛秀麿指揮近衛管弦楽団で、どちらが上田仁指揮東京交響楽団かはどこにも記載されていないのですけど、東響が大阪まで出張っていくというのはちょっと考えにくいので、どうやら大阪まで行くしかないようです。まあちょっと遠いですが、2年前に聴いたシゲティの余韻とともに、行ってこようと思います。「つばめ」に乗れるのも楽しみですしね。

f:id:koshohoro:20071119010125j:image:left あと気になるのは、オイストラフさんはこの来日の際に吹き込みも行っているのですが(CDで復刻されています)、そこでの演奏曲目に、ファリャの『七つのスペイン民謡』からの「ホタ」が含まれていることです。プログラムには含まれていませんが、これはいわゆるアンコール・ピースですから、きっとどこかで演奏したことでしょう。それもぜひ聴いてみたいです。

 パンフレット本体についてですが、「R.Yamashiro」というサインがしてあるので山城隆一さんの仕事のようです。落ち着きのある、よいデザインだと思います。あと、このパンフは字も多くて、曲目解説以外にも、別宮貞雄、寺西春雄、井上頼豊、秋山邦晴という方々のエッセイが掲載されています。


*シンフォニー・オブ・ジ・エア(1955.5/3-22 日比谷公会堂、神奈川県立音楽堂ほか/毎日新聞社日本放送協会f:id:koshohoro:20071116033922j:image:right

「こんなオケの名前聞いたことない」と思ったら、トスカニーニ亡き後のNBC交響楽団のことだそうです。今回初めて知りました。指揮者も知らない人で(ウォルター・ヘンドル、及びソーア・ジョンソン)あまり興味は持てなかったのですが、ある年齢より上のクラシック・ファンにとっては、「初の海外オーケストラ来日」ということでモニュメンタルな出来事だったようです。

 しかし、この装幀!。2年前のバックハウスも手掛けた、「Mizu」というサインの方の手になるものですが、美しいとしか言いようがありません。今回展示したなかで、ぼくは断然これが好き。指揮棒を持つ手をあしらった表紙だけでなく、人に似せた踊る音符のイラストや、公演場所を丸で記した日本地図など、内部の隅々に至るまで、この人のセンスが充溢していてため息がでます。デザインに興味のある方は、ぜひ一度ご覧ください。

f:id:koshohoro:20071119005728j:image

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 以上、冗漫な文章にお付合いいただきありがとうございました。ミカコが写真をアップしてからはや3週間以上、早く書かねばと思いながらも筆進まず、延び延びになっていたのですが、ようやく形になりました(というほどのものでもありませんが、まあとにかく。詳細な写真も近日中に公開します)。この間、近所の通りすがりの方、たまたま来店されたデザイナー、写真を見てわざわざ来てくださったお友達などなど、様々な方にこれらのパンフレットを見ていただくことができ、古本屋冥利に尽きる思いです。「オイストラフのこの公演はぼくも聴きに行ったんだよ、背筋をすっと伸ばして弾く人だったなあ」などという、羨ましすぎる思い出話をされるおじいさんにもお会いしました。しかし、「せっかくなので、年内いっぱいぐらいこのまま展示しておこうかなあ」などとも思いはじめた矢先の昨日、とうとう一括で買ってくださる方が決まりました。よって、この展示は11月20日(火)までとさせていただきます。残り1週間ほどですが、興味のある方は、ぜひご来店ください。

(宮地)

2007年11月06日

冬の夜長の酒飲みトーク

『酒とつまみ』+『モツ煮狂い』最新号発売(たぶん)記念!

冬の夜長の酒飲みトーク 酒のつまみにモツ煮はいかが?f:id:koshohoro:20071115010832j:image:right


 2002年に創刊された『酒とつまみ』は「飲兵衛のバカ話だけを集めた、決して人様のお役に立たない雑誌」。口コミで火がつき、いまでは大書店でもフツーに売ってる〈リトルメジャー〉な雑誌となりました。対する『モツ煮狂い』は2006年創刊。「モツ煮をテーマに東京の郊外史を掘り起こす」という深遠な趣旨のもと、モツ煮の名店を紹介しています。カラープリンタ出力・ホチキス留めという体裁で、一部に熱狂的なファンを持つ〈ビッグマイナー〉なミニコミです。

 どちらも新しい号が待たれているのにナカナカ出ない、じゃあ、一緒にイベントをやるコトにして、そのときまでに間に合わせよう――。これが今回のイベントの最大の目的です。果たして当日、会場に無事最新号が並ぶのでしょうか?

 ホッピーを飲みつつ、冬の夜長を一緒にグダグダと過ごしましょう!


出演:大竹聡『酒とつまみ』編集発行人)

   クドウヒロミ(『モツ煮狂い』編集発行人)

進行役:南陀楼綾繁(ライター・編集者)


日時:2007年12月12日(水)

   18:30開場/19:00開演〜酒がなくなるまで

場所:古書ほうろう 

   東京都文京区千駄木3−25−5

   tel./fax 03-3824-3388

   horo@yanesen.net

   http://www.yanesen.net/horo

入場料:1000円(ホッピーセット付き) *入場は予約者優先。


ご予約:定員に達したため、受付は締め切りました。

     ※メールでのお申込みには、古書ほうろうよりご確認のメールを返信させて

     いただいております。もし、2,3日経過しても届かない場合はお手数です

     がご一報ください。


*なお、クドウさん特製の「モツ煮」を先着順で提供する予定です(1杯200円)。品切れ御免です!

f:id:koshohoro:20061115000911j:image

2007年11月05日

十条にシネマカフェオープン!

35ミリ映写機を備えた、シネマカフェがこの9月十条駅前にオープンしました。

2006年5月に「十条子どもイベント 小さな映画会」を運営された柳田さんが、ついに、念願の、大の映画好きもちょっとだけ好きな人も気軽に集える巣のような場所をかたちにされました!

映画の上映はひと月に1本を目処に、一週間程度の上映をされる予定だそうで、上映のない日はカフェとして営業されています。

カフェの担当はフードアーティストのEAT&ART TAROさんという方。宮地と私は上映中の映画に合わせて作られたキューバ料理の特別プレートをいただきましたが、もうものすごく美味しかったです。飲み物の種類も豊富で、ビールはバス・ペールエールの生もあって、嬉しい限り。

11月の上映はもう終わってしまったのですが、1日から5日まで「永遠のハバナ」が上映され、配給元のアクション代表の比嘉世津子さんのトークもあるということで、休みの日に出掛けてきました。

監督自らドキュメンタリーフィクションと呼ぶ手法で、台詞、ナレーションは一切なし。市井の人々の、朝起きて夜眠りに就くまでを追った映像と、街の音、音楽で構成されています。

キューバでの映画祭では、唯一地元のおばちゃんたちがエンドロールで席を立たず(次の上映に向かわず)、拍手を送り続けた作品だそうで、見終わってから自分の中で熟成していくようなじんわりと染み入る素晴らしい作品でした。

上映もカフェも楽しめるお店です。

お出掛けください。

(ミカコ)

Cinecafe soto

東京都北区十条2-27-12 B1

http://www.cinecafesoto.com/

11:00〜23:00(ラストオーダー22:00)

ランチタイム 11:00〜13:00

毎週火曜日定休

2007年11月03日

「影と色彩の魅惑 ワヤン」


東京家政大学博物館 特別企画展「影と色彩の魅惑 ワヤン」

場所:東京家政大学博物館 東京都板橋区加賀1-18-1 埼京線十条駅より徒歩7分

   http://www.tokyo-kasei.ac.jp/hakubutu/

日時:平成19年10月18日(木)〜11月15日(木) 日曜休館

   9時30分〜17時 金曜日は18時まで(入館は閉館の30分前まで)

観覧料:無料

会期中イベント:『ワヤン・クリの実演とガムラン演奏』

         11月14日(水)13時と15時より開催


 インドネシアの影絵芝居として有名なワヤンの展示と実演、ガムラン演奏を見てきました。

 日本でのワヤン研究第一人者である松本亮氏のコレクションから多数のワヤン人形が展示されています。

 半透明に鞣した水牛の革に、何種類ものノミを使い分けて打ち抜くミリ単位の繊細な細工と絢爛な彩色は目を見張る美しさです。

 期間中のイベントは上記の11月14日のみとなってしまいましたが、影絵芝居のワヤン・クリだけでなく、木偶人形芝居のワヤン・ゴレの人形や、中国カンボジアトルコなどの他国の影絵人形や、石版画で刷られた人形の原画も多数あり、展示だけでも贅沢な内容です。一度にこれだけ見られる機会は、そうそうないのではないかと思われます。

 細かい手仕事って、ほんと、いくらでも見ていたい気持ちになります。興味ある方は是非。

(ミカコ)

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