たけうま書房さん、一箱出店中です

 たけうま書房さんが、ほうろうで一箱の出店を始めて、はや2週間が経ちました。すでに定期的にのぞきにくる常連さんもついているので、良いものはすぐに売れていきます。そこで、この辺で一度「紙上(Web上?)一箱再現」を行いたいと思います。ちょうど一昨日補充にみえたばかりで、いい感じの品揃えなのです。

 たけうまさんの箱は、下の方に並んだ本の上に10枚ほどのCDが置いてある、という構成になってます。まずはそのCDから。

      • Jigs,Reels'n rags/Fiddlin' Ian McCamy & his Celtic Reelers 900円
      • Louie Blue - Film Soundtrack 900円
      • Les Primitifs du Futur/WORLD MUSETTE 900円

World Musette たけうま書房のキーワードのひとつであるロバート・クラムがジャケットを描いている3枚。ギター、バンジョーフィドルなどといった弦楽器が活躍する古き良き音楽たちです。同じミュージシャンが参加しても、それがフランスのものならバンドネオンが入ってミュゼットとなり、アイルランドならノリノリのダンス音楽になるという、まあジャンル分けや呼び名はあまり関係ない「グッド・ミュージック」です。

      • HAVING A GOOD TIME/HUEY 'PIANO' SMITH & HIS CROWNS 800円
      • Hillbilly Boogie!/V.A. 900円
      • &ラ・バンド・デシネー/フェイ・ロフスキー&ラ・バンド・デシネー 1200円

 この辺りも、毛色は違うものの、大筋においては同じような系統の音楽。たけうまさんのCDには、1枚ずつ丁寧なコメントが添えられているのですが、これ読むとついつい「買うしかないよなあ」という気にさせられてしまうところがミソ。たとえばこんな感じ。

 細野さんの新作のサブテキストのようなCD。細野さんもカバーしていたAl Dexter他ゴキゲンなナンバーが並びます。Spade Cooleyも2曲収録。

 女ダン・ヒックスの異名をとるオランダの歌姫フェイ・ロフスキー。ギター、マリンバ、チター、テルミン等を駆使しながらポップス、カントリー、スイングなど(朝鮮民謡アリランも)グッドタイムミュージックを奏でます。


 ほかにも、まだまだ以下のようなものが。たけうまさんの懐の深さを感じさせるラインナップです。

      • FESTA DOS DEUSES/HERMETO PASCOAL E GRUPO 2000円
      • asthmatic worm 800円
      • plunderphonics/John Oswald 1500円
      • Closed On Account of Rabies 〜 Poems and Tales of Edgar Allan Poe 2800円
      • THE LONG VACATION/ピヂンコンボ(トム・コラ、篠田昌己、ロリイ、大熊亘、西村卓也、木村真哉) 1000円

 CDはここまでの2週間で8枚売れているので、このペースだと、今出ているものもきっとすぐに売れちゃうんじゃないかと。


 さて、続いてメインの本ですが、こちらはCDを除いた状態で俯瞰で写真を撮ってみました。背表紙が見えているものはそちらで確認していただくことにして、それ以外のタテに挿してある大型本を紹介しましょう。

      • The R.Crumb Coffee Table Art Book 6300円
      • Qui a peur de Robert Crumb 2000円
      • The Complete Crumb Comics Vol.10 1600円

 たけうまさん入魂のロバート・クラム3連発。ぼくはこの人について「ジャニス・ジョプリンのジャケット描いた漫画家」という程度の知識しか持ち合わせていなかったのですが、いっときは自分のバンドまで持っていたミュージシャンでもあり、また膨大なSPレコードのコレクションもお持ちなのだそうです。「秋も一箱古本市」でたけうま書房の箱に遭遇しなければ、ぼくはそんなことずっと知らないままだったでしょう。あの日「これはどういう感じの音ですか?」というような質問をしたぼくに、たけうまさんは懇切丁寧にクラムのことを教えてくれました。

「古書ほうろう賞」をたけうまさんに、と思ったのは「趣味が重なる部分が多そうだ」というのももちろんそうなのですが、それ以上に「自分の知らない(でも自分の好きそうな)ことをたくさんご存知なんだろうなあ」という気持ちからで、それは、こうしてほうろうに出店してくださっている箱を見ても、ほんとその通りでした。CDの補充など、誰よりもぼくが楽しみにしている始末です。

 まったくの偶然なのですが、たけうまさんとぼくは同い年(学年が同じ)で名古屋出身という共通点がありました。しかも広い名古屋のすぐ隣同士の町(この辺りで例えるなら根津と池之端ぐらい)で、お互い10代を過ごしていたのです。ひょっとしたら駅前の本屋で肩を並べて立ち読みしていたこともあったかもしれません。そんなふたりがまったく違う人生を経て40近くになってこんな風に出会うというのは、なんだか不思議なものです。


Trosper そうそう、ほかの本に隠れて写真にはまったく写っていない、

という絵本についても、ぜひ触れておかなければ。

 ご覧のように、クレジットには何とビル・フリーゼルの名が。まあ彼はジャンルを縦断する異能のギタリストなのでどんなところで名前を見ても驚きはしませんが、ここでは絵本のサントラ?を手掛けています。この本には文章がなく、その代わりにこのCDが付いているんですね。かわいい(と言えなくもない)たぶん子供の象が、妖怪(のようなもの)に不条理に追いかけられ逃げまどう、というお話なのですが、このCDを聴きながら読むと不気味さが倍増するような気も。お値段もお手頃なので、ファンの方は話の種にいかがでしょう。

 わたくしごとですが、昔、昭和女子大人見記念講堂で聴いた、矢野顕子、ナナ・ヴァスコンセロスとのトリオによる演奏は忘れられません。ホールのなかをいろんな音が飛び交っていて、なんとも幸せな時間でした。ビル・フリーゼルというと、魔術師のようなナナといつもの矢野さんとに挟まれて、職人のように黙々とギターを弾いていたこのときのことを想い出します。

 さて。

 本はまだまだあるわけですが、写真も載せたことですし、だらだら書くのはそろそろお終いにします。個人的に一番気に入っているのは、ドクター・ジョン自伝『フードゥー・ムーンの下で』、ルー・リード詩集『ニューヨーク・ストーリー』、佐藤伸治詩集『ロングシーズン』、鈴木惣一朗『ワールド・スタンダード・ロック』という並びで、特に、ルー・リード佐藤伸治の詩集が隣り合っているのを目にしたときは、とても新鮮な驚きがありました。会期は12月2日(日)までと、まだ2週間ほどあります。今後もまだ補充があるようですし、たけうま的世界に興味を持たれた方は、ぜひ一度お運びください。

 最後にもうひとつだけ。前回の日記「50年前の音楽会」に写真を追加しました。文章よりもこっちがメインなので、ぜひご覧ください。

(宮地)