運転室後方の大人たち

 昨日の話。

 小雪舞い散るなか、上中里駅へ。こう頻繁に電車通勤が続くと経済的にはちょっと痛いのですが、ぼくには元を取る方法があります。とくに難しいことではなく、ただ先頭の車両に乗ればいいのです。

 なぜなら、現在京浜東北線の主力車両である209系は、前面が大きな1枚ガラスで、なおかつ運転室と客室を隔てる敷居や扉にも大きな窓が設えられているため、前方の視界が大変良く、ほとんど運転士さんと変わらない景色を見ることができるので。

 しかも、上中里田端間は見所満載。いまは湘南新宿ラインにも使われている、駒込方面からの貨物線を跨いだり、大宮方面への線路が山手線をくぐって出てきたり(昔ながらの小さなトンネルがいい感じ)するのを眺めながら、武蔵野台地の端をアップダウンしていく濃密な3分間。左手には田端操車場も広がり、出番待ちの電気機関車や新幹線を見ることもできるのですが、こちらは、新幹線の高架に視界を大きく遮られてしまっているのが残念。まあ、いつも自転車に乗りながら眺めているんですけどね。

 そんな「先頭車両の一番前」。でも、決していつでも空いているわけではありません。たいてい1人か2人、先客がいます。もちろんみなさん大人なので、かぶりつきということはなく、それとなく立ち、それとなく前方を眺め、表情もいたってクールなものですが、その内心のワクワク感は手に取るようにわかるし、ぼくの勘違いでなければ、密かな連帯感さえあるような気がします。昨日のように雨や雪が降ったときは、ワイパーの関係でどうしても視界が狭くなるのですが、そんな日の、それとないポジショニング争いも、また楽しいものです。

(宮地)