集英社新刊案内 vol.3 2012年3月16日〜4月5日刊行
表紙は本多孝好、はじめて尊顔を拝しました。裏面は“東京バンドワゴン”シリーズの紹介記事だが、ああいうものを推薦する人って山崎パンの宣伝に出る松たか子くらい信用ならない。まあでももともと松たか子より信用できそうもない人が名を連ねているので(小西真奈美・ピーコ・JUJU<誰だ?>・中井美穂<第一作の帯でTV化希望と書いてた>)TVショッピング並みの広告か。
この月、数軒の書店でねじめ正一の新刊「商人」を捜して見つけられなかった。にんべんの社員が買い占めたのかな?毎朝の研修で使うとか。加納朋子の文庫新刊があって、でも文藝春秋の単行本で急性白血病の闘病記などが出ていて、まあわたしってあまりいい読者ではないのだけれどちょっとこういうのって同じ月でびくっとしますね。
集英社文庫2月刊 田中啓文 茶坊主漫遊記
- 作者: 田中啓文
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 文庫
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ま、もちろんわたしは田中啓文に過度の期待をしているわけで短編集「蹴りたい田中」中のエビラビラや表題作の脱構築=アンチドラマぶりに驚き慌て、ここにはなんだか分かんないけど近代文学が果たすべき使命、深く重くえげつなく非常に危険なものが寓意の形であらわされている(らしいかな)と変に感じてしまい、でもなんだあれはあれで感服してみてもどこか櫃のすみに仕舞い忘れておけばよかったのかなあ。「ハナシが…」シリーズとかと同じ系譜なのかこのたびの漫遊記、どうみてもテレビドラマの原作程度の出来さえ確保できずに終了している。エビラビラも蹴りたい…も強く暗くドラマを拒否するえぐみがあった。秩序を壊すというほどではないが、世の常識のタガを外すみたいな、下品で間抜けに脱構築さすある種の膂力に感心した─架空インタビューで田中の作品として「世界の中心で愛を叫んだらのけ者」というギャグはうれし悲しすぎてすてきに泣けたし。
田中啓文の今後には全く期待はしていないが、分かりやすすぎてぎょっとしてでもポストモダン小説の傑作をいっぱい読みたくて、でもすてきな作品を継続して表わしてくれる作家はなかなかいないものだな。