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粗忽者草子

2018-07-31

むすびつき

高柴です


畠中恵さんのしゃばけシリーズ最新作「むすびつき」を読みました。

むすびつき しゃばけシリーズ17

むすびつき しゃばけシリーズ17

今回のテーマは「生まれ変わり」で、短編が5作。

「昔会った人」

広徳寺の寛朝から呼び出された若だんなと妖たちは、高僧から付喪神になっている美しい玉「蒼玉」を見せられる。まだ片言しかしゃべることができないが、「若長」に会いたいと言う。それを聞き、貧乏神の金次がこの蒼玉を知っていると言い出し……。

金次が昔この蒼玉とともに出会った若長は、なんと若だんなが生まれ変わる前の人物。村を救うための旅をしていた若長は今の若だんなとよく似た優しい青年で、金次との約束が胸を打ちました。


「ひと月半」

またまた寝込んだ若だんなのために、兄やたちは箱根湯治に行く決断をした。置いていかれてひと月半、妖たちは暇を持て余して離れでゴロゴロしていたが、そこへとんでもない客が現れる。見たことのない3人の男たちは、それぞれ自分は死神だと名乗る。それだけでもとんでもないが、さらに自分こそは箱根で命を落とした若だんなの生まれ変わりだと言うのだ。こんな剣呑な客たちとやっかいごとになったら兄やたちが戻ったときに恐ろしいことになる。妖たちはそう悟って、なんとか自分たちで解決しようとするが……。

若だんなと兄やたちなしで妖たちが事件解決するお話。にぎやかで面白かったです。


「むすびつき」

金次が生まれ変わる前の若だんなに会ったことが羨ましい付喪神の鈴彦姫は、もしかすると自分も生まれ変わる前の若だんなと縁があったかもしれないと考える。一人だけ若だんなによく似た宮司を思い出し、その星ノ倉宮司がそうに違いないと思いつくが、確証があるわけではないと指摘される。そこで鈴彦姫は自分の本体である鈴が飾ってある五坂神社へ亡くなった星ノ倉宮司のことを調べにいくが……。

不審な死を遂げた星ノ倉宮司と消えた金の行方の謎解きが面白かったです。優しい鈴彦姫は好きなキャラなので、彼女の本体を見られて(?)よかったです。


「くわれる」

若だんなの許嫁於りんとともに離れへ乱入してきたのは、若だんなを「若さん」と慕う美しい悪鬼だった。もみじと名乗る悪鬼とその幼馴染の青刃の話を繋げると、もみじは三百年前に生まれ変わる前の若だんな(若さん)を好いていたらしく、添うなら若さんと決めていた。しかし、親から幼馴染の青刃と結婚するように命じられ、心配する青刃を連れて逃げてきたということらしい。たまたまその場にいた栄吉も於りんも、あまりに無茶苦茶な話にあきれるばかりで信じていないのは救いだったが、そこへさらに厄介ごとが起こる。なんと、悪鬼のもみじと於りんが何者かにさらわれてしまったのだ。人さらいはなぜか栄吉に栄吉の考えた菓子の作り方を寄こせと要求してくるが、若だんなたちは人さらいがもみじに食われないか心配で仕方ない。もみじたちの正体を隠し通しつつ、二人と人さらいを無事に助け出すことはできるのか?

なんせ人さらいが一番ピンチという状況なので緊迫感がない(笑)そこが面白いんですが、於りんちゃんも出てきて楽しい話でした。

しかし、栄吉さんはホントにどうするんだろう??こんなにゆるい感じで進むシリーズなのに、なぜ栄吉さんの餡子はマズイままなんだ……。適当に上達させて幸せにしてあげてくれませんかね?だめか、頑張れ栄吉さん!


「こわいものなし」

猫又のおしろに頼まれ、おしろの知り合いで猫又ダンゴの飼い主のために長崎屋が薬を用意することになった。ダンゴの飼い主の女性は薬のおかげで元気になったが、彼女の長屋の隣に住む夕助にダンゴが話しているのを聞かれてしまう。夕助はダンゴの話を聞き、人は転生できるらしいことを知る。薬を用意した長崎屋も妖と関わりがあると気づいた夕助は転生の話が事実か長崎屋に確かめに来るが、話して聞かせることが面倒になった兄やたちは広徳寺の寛朝に丸投げすることを思いつく。いつもの長崎屋の面々と夕助は一緒に広徳寺へ向かうが、なにやら広徳寺では不穏な騒ぎが起きていて……。

生まれ変わるなら、死ぬことが怖くない。つまり、死ぬのをビクビク怖がらずに好きなことができるとはしゃぐ夕助。今回は神社と寺の関係性もさらっと盛り込まれていて、読みごたえがありました。とりあえず夕助頑張れ。


いつも通りな感じで、安定感があって読みやすかったです。少しずつ時間が進むのもいいですね。次巻が楽しみです。

2018-06-02

花になるらん 明治おんな繁盛記

高柴です


玉岡かおるさんの「花になるらん 明治おんな繁盛記」を読みました。

花になるらん: 明治おんな繁盛記

花になるらん: 明治おんな繁盛記

ちょっと想像と違ったけれど、面白かったです。


あらすじは

幕末京都。呉服屋「高倉屋」の跡取り娘として大切に育てられた勢田みやびは、とんでもなく気の強い肝の座った娘に成長する。父の選んだ人を婿に取り、優秀な婿とともに多くの苦難を乗り越えながら高倉屋を大店へと成長させるが、少しずつ夫と距離ができはじめる。そんなある日、突然まだ働き盛りの夫が急死。そして夫に隠し子がいたことがわかり、みやびは苦しむ。

夫の死後、みやびは息子たちのために店を守ろうと必死に働き、やがて海外にも目を向けるようになる。家のため、京都のため、そして日本のために土俵を海外にまで広げて戦うみやびは周囲から尊敬され、誰からも一目置かれるようになる。だがどんな立場になっても、みやびが悩んだり悲しんだりすることは普通の女性と同じ。母親として、女としてみやびは店を背負いながら激動の時代を生き抜いていく。


 

デパートを作った女性の話だと思って手に取ったのですが、あんまりデパートは関係ありませんでした。

幕末から明治にかけての商人たちの戦いの物語。不平等条約のせいで関税を決める権限が日本に与えられず、輸出や輸入において商人たちは大きなハンデを背負っていた。商人たちはそれでもいいものならば売れるはずと信じて必死に世界に認められるものを作っていたんだなあと素直に感心しました。

しかし、この本は面白いと思う層が限られるかもしれないと思いました。ほぼ京言葉で綴られているのでこれが読みにくい人は多いでしょうし、男性はみやびに共感しにくいかも?

前半はちょっと退屈さも感じましたが、ラストがとてもよかったので読む場合は最後まで読まれることをオススメします。

2018-02-12

上流階級 富久丸百貨店外商部

高柴です


高殿円さんの「上流階級 富久百貨店外商部」を読みました。

上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部

上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部

百貨店の年商の約3割を担うのは、数少ない金持ち相手の外商だ。歴史ある富久百貨店の外商部で働く鮫島静緒は、芦屋川店外商部の紅一点。専門学校を出て地元でずっとお菓子を売っていたが、その「売り出す能力」を見込まれて富久百貨店に引き抜かれ、さまざまなプロジェクトを成功させて外商部へ異動となった。独特の世界に戸惑いながらも、静緒はバイヤーとしての実績を活かしながら外商に新しい風を吹き込んでいく……。



みたいな話。

外商という(残念ながら)馴染のない世界が楽しく、文章も先日読んだ「トッカン」に比べると格段に読みやすくなっていたと思います。

静緒の経歴も面白く、静緒と外商の組み合わせでより話に奥行きが出て読みごたえがありました。


ただ、なんというか「アレ?」と思うことも多かったですね。

第一章では桝家の実家は奈良資産家だったはずなのに、第二章からは実家は京都になってる……のはもう別にいいです。京都に住んでる奈良資産家だっているだろうし、養子に入った家と実家が京都奈良なのかもしれないし。紛らわしいから統一しておいてほしいけど、一章と二章はページ数も離れてるから、うっかり説明しそこなったのかな?と納得できる。

一章の一番最初、「倉橋家には毎月の一日、決まった時間に訪問する」とあって、この一日は月初めの「ついたち」と読むのか、日は決まっていなくて月のうちの「いちにち」なのかと悩みました。でもすぐに、「倉橋家の嫁たちはなぜか一日には遠く離れたこの本家に顔を出す」とあったので、ああ、ついたちでいいんだなと納得。つまり、今は月の初めなわけね、と思っていたら、倉橋家から職場に静緒が戻ると今は月末ってことになってる。

え?違うの?ついたちじゃなかったの?

もう一度最初に戻って何度も読み返す→結局わからない。

もしかしたら倉橋家の嫁たちはものすごい能力があって、外商がいつくるか嗅ぎつけて毎月現れるのかもしれませんが読む方からするとちょっと不親切。

第三章で静緒が清家屋敷に訪問。奥様が「飾り付けた庭の写真を送ったら、娘と孫たちが来週泊まりにくるんですって」と発言した次のページで、長女&その娘、次女、三女(大学生)が勢ぞろい。

……来週泊まりに来る娘と孫って四女??三女まだ大学生なのに??

何十ページも離れていたら、作者の勘違いかなとか忘れてたのかなと思うんですが、次のページで前ページと矛盾する展開があるとちょっと居心地が悪いようなそんな気持ちになります。

しかしこれは担当した編集者も悪いでしょう。作者の意図がちゃんと読者に伝わるように気を配るべきです。こういうよくわからない、わかりにくいところはちゃんと指摘して引っ掛かりをなくす努力をするのが編集者の仕事だと思っていました。実際、他の本でこんなにどうでもいいことで引っ掛かりを感じたことはありません。ちょっと多すぎるように思います。

2018-02-09

トッカン 特別国税徴収官

高柴です


高殿円さんの「トッカン 特別国税徴収官」を読みました。

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

東京税務署で勤務する深樹は、鏡特別国税徴収官付き徴収官でまだまだ半人前。厳しいエリートの鏡に振り回されながら、税金を滞納している人々が持つさまざまな事情に巻き込まれていく。深樹は失敗を重ねながら、出会う人々と自分の人生を見つめ直していくが……。


みたいな感じ。

感想は、うーん、どうなんだろコレ。

まず文章がいちいち野暮ったくて読みにくい。

深樹の心理描写にページ数使うわりにあんまり共感できない。

というか、登場人物誰にも共感できない。みんな極端すぎ。

鏡とか、とりあえず凄そうなインパクトだけ与えてくるけどイマイチ素敵さが伝わってこない。

あと、どうしてもわからなかったのが天敵の女は鏡の前で深樹の実家の秘密を洗いざらい全部ぶちまけたはずなのに、同じページで深樹が自分の過去をばらされずにすんだって言ってるところ。

え?他にすごい秘密があるってこと?でも文脈的におかしくない??

って何度そのページを読み直したかわからない。最後まで読んだ今でも意味がわからない。

そんな調子だから、鏡がやたら「憮然」とした表情をするのにもひっかかる。これって誤用の方の憮然を使ってるんじゃないかと疑ってしまう。

けっこう有名な誤用だと思うけど、憮然の誤用と足元をすくうは他の作者の本や漫画でもしつこく出てきますね。足元をすくうって想像したらおかしいと思うんだけどな。私はいつもここ掘れワンワンのイメージが出てきます。


話の本筋は面白いと思うので、もう少し丁寧に書かれた高窓作品を読んでみたいですね。これはあまりにも雑すぎる。唐突に入り込むラブコメ展開とかキュンどころかゾッとしたし。

2018-01-13

13・67

高柴です


陳浩基さんの「13・67」を読みました。

13・67

13・67

久しぶりに凄い小説を読みました。もうコレ今年一番なんじゃないかなー。まだ1月ですが、あと11か月でこれ以上の本に巡り合えると思えない。

それくらい面白かったです。


舞台は香港で、主人公は警察官のクワン。香港警察きっての切れ者で同僚たちからは名探偵と尊敬される男。そのクワンの警察人生を2013年から1967年へさかのぼりながら描く短編集、いや中編集かな?わりとボリュームがあります。めちゃくちゃ面白いけど、一気に読むのは難しいと思います。


ミステリってトリックをひねりすぎるとなんかトリックだけ浮いて興ざめするし、人物描写に凝りすぎるとあくびが出ます。なかなか自然にトリックと人間を描いて心地よく結末へ導いてくれるミステリに出会うことはないのですが、この「13・67」はそのあたりも素晴らしい。二転三転するハラハラドキドキの展開なのに、登場人物たちもさりげなく魅力的に作り込まれていて読んでいてストレスがまったくない。

「こんな凄い話を書く人がいるなんて、世界って広いな」と感動しました。

ミステリ好きは絶対読んで損はないです。

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