
今日は明治四十年代に出版されていた講談速記本のカタカナ表現についてです。
講談速記本についての解説はこちら。
静かさを表現する『シーン』っていうを漫画で最初に使ったのは手塚治虫らしいですけど、僕は漫画にあんまり興味ない。
だから確認したことはないです。
それじゃ文章の上で最初に使われたのは何時か、僕が知る一番古い『シーン』は講談速記本に出て来たもので、寂静ってい言葉に振られたルビです。
これが明治の三十年代、シーンと地の文にそのまま書かれてるもので、一番早いのは明治四十年代ですね。真剣に探せば、さらに古いのが出て来そうな感じです。
当然ながら講談速記本には、バーンとかドカーンとかも存在していました。
というわけで今日は、百年前の講談速記本に出てくるカタカナ語を紹介して行きたいと思います。
ウウムムウーモガモガムニャムニャアッ美味い、モウ一杯酌いでくれー」
酒を飲みすぎて眠りこけている人の寝言、羨しいですね。
ヂャンヂャン、ガーンガーン、ガンガンガンガン
これはお寺の鐘を突いてる音です。
煩悩が消えます。
ボシャボシャグニャグニャ囁きますと、とみはニンミャリ打ち笑い、
男と女の内緒話、すごく心が温まります。
少し物騒な喧嘩を表現するカタカナ語です。
「ヤッ、オーウッ」
ビューッ、ブーン、そいつをボーンシャッ、オーッ
後藤又兵衛が丸太を振り回してる。
すごく喧嘩の雰囲気が出ていますね。
エイッと両方からブーンと一つ引き叩きますと、刀持つ奴らがワッと行って三十五間、張り飛ばされ、ウワードーンと打ッ倒れます。ビュー、ブーン、ドーン、ウヮーッとうなる。
後藤又兵衛が常人を虐待してる様子です。
エイヤッウーンと力を入れて、揺り動かすと、グワラグワラカッサカッサとさしもの大松も根こそぎ引き抜かれました。
サッカサというのは松の葉っぱの音、松を引き抜いて人を殴るというのは豪傑の基本です。
ビューッ、ブーン、ビューッとまるでステッキでも振り回すように、リュウリュウ風車もよろしくと大きな松を弄びますので、この枝先に当った奴は、ブーンと二三間は中空へ跳ね上げられてしまいます。
後藤又兵衛が引き抜いた松を弄びながら人を空中に跳ね飛ばします。
ドシンバカリッブッ倒れました
倒れました。
エイヤエイヤとボールでも投げる気で、ドシーンバッカリドーンズシーン、モー
モー。
ガラガラガッチャアと云えば敵が吃驚する
ガラガラガッチャアっていうのは人の声、敵をビックリさせるために後藤又兵衛が出した声です。
一応は人を殺さないようにしようという配慮が感じられますが、これ以後は殺してばっかりです。
家の内ではヤーッ、ドスーン、エイッ、ウーン、キャッと云うはげしい叫び声が聞えまして、身内のものがズンズン殺られます
家の中で身内の者が、後藤又兵衛によってズンズン殺されています。
くやしいですね。
エッサ、エッサ、ヨッサヨッサ、チャリンチャリン
これは後藤又兵衛が踊りながら人を殺している場面、関りたくないですね。
又兵衛「エッ、グズグズ吐さず表へ出ろッ、ウムウムウーンヨイチョッ」
ウムウムウーンヨイチョッと、後藤又兵衛が怒ってるんですけど、当然ながら怒らせた人間はすぐに殺されます。
又兵「シャアババ馬鹿奴ッ」
ツツと身を良せてポーンと蹴り上げると、此奴は金玉を蹴られてヤッチンブルブルと五六回舞ったかと思うとドシーン、つぎに斬り込む一人は、引ッ担いで庭園に投げ付けると、手水鉢の角に当って身体粉粉になって死んでしまった。
乙「ヒャッ、こここいつぁ人間技じゃねぇ。ソレ逃げろッ」
手水鉢の角に当って身体粉粉とか最悪ですね。
ウワーア豪いことがあび申したでござるか。どうもこは豪いものでござるか、こうこうとね申すかちう。しゃうちゅうもてくうか、バーア、エカパー
西郷隆盛の絶叫、さすがの僕も意味が分らない。
これらの表現、全てが百年以上も前のものばかり、しかもたった一人の人間によって創造されています。
どうしてこれ程までに偉大な仕事を、たった一人の人間が為し得たのか、分析したいと思いますが、ぶっちゃけた話をすると、話を引き延ばすためです。
まず講談速記本は、だいたい一冊七〜八万文字って決まっています。
ページが足りないと本が薄くなるので売れない。だからこの文章量は守る必要があります。
次に人気のあるキャラが登場する書籍は、売り上げの為だいたい4巻本になります。漫画の連載を引き延すのに似てますね。
4巻本だと三十万文字前後、だいたいドグラマグラよりちょっと少いくらいですけど、これを後先考えずにしゃべる。
結果的に話は破綻、人間は疲労して足許覚つかず、ウワーアウムウムウーンヨイチョッこうこうとねしゃうちゅうもてくうかバーアエカパーです。
というわけで今日は講談本に出てくるカタカナ語についてのお話でした。
講談速記本のことは他にも書いてるので興味のある人はどうぞ。