気まぐれ読書手帖

2017-04-23

ディリュージョン社の提供でお送りします (★★★★☆)

物語を現実世界で体験できる新しいエンターテインメント「メタブック」を提供する会社―ディリュージョン社で働く新人エディターの森永美月と、天才作家と名高い手塚和志。突如舞い込んだ「不可能犯罪小説を体験したい」という厄介な依頼に、完璧な台本と舞台を用意する二人。しかし怪しい手紙や殺意ある事件、と不測の事態が続き…。リアル殺人鬼が登場人物の中にいる!?
久しぶりのはやみね作品。設定がとにかく私の好み。物語を現実世界で体験できる、だなんて素敵。残念なのは主人公の美月と相性があまり良くなかったこと。本を読まない、というのは各個人の好みの問題だから仕方ないと思う。でも手塚とかとの話で分からないことがあったら「本を読まないので分かりません」っていう答えはどうよ。こういう会社に勤めてるんだから少しは勉強すれば?と突っ込みたくなる。それにまったくもって空気の読めない発言の数々にイラッとしてしまった。怪我人の応急処置ができるところとか最終的には事件の真相を解き明かしたこととかは素直にすごいなと思いますけど。
どこからがメタブックでどこからが現実なのか。曖昧な境界線の中で導き出された真相は哀愁が漂っていてほろ苦いものでした。やっぱり「老い」は怖い、佐々木さんが不安になってしまうのも仕方ないよね。手塚のキャラが好きだったのでシリーズ化するならまた読みたいです。

2017-04-22

ニアデッドNo.7 (★★★★☆)

ニアデッドNo.7 (電撃文庫)

ニアデッドNo.7 (電撃文庫)

目覚めた少年は、何者でもなかった。“再葬開始”の合図と共に、いつの間にか持っていた火の粉を纏う刃を振るい、異形の敵を倒すのみ。“境死者No.7”―赤鉄。それが、彼に新たに与えられた名だった。なぜ自分は戦うのか―。No.6である美しき少女・紫遠と共に、訳のわからぬまま死闘に身を投じる赤鉄は、やがてある事実にたどり着く。No.7の称号を持つ“先代”がいたこと、そして自分がその人物に殺され、No.7を“継承”したことを…。第18回電撃小説大賞“大賞”受賞作『エスケヱプ・スピヰド』のコンビで贈る、現代ダークファンタジー開幕!
初の九岡作品。魅力的なキャラも多いし、物語の雰囲気も好みなので追いかけていきたいなと思いました。 死んでいるわけでもなく、かといって生きているわけでもない中途半端な存在である境死者。境死者は代替りであり、前任者が本当に愛した人間を殺すことで後継者にすることができる、という設定が後になって重みを増してくる。赤鉄と緋霧の邂逅が甘酸っぱくて素敵。距離を縮めたい赤鉄と自分の宿命を痛い程自覚しているからこそ距離を置く緋霧。あこれが普通の恋愛小説だったら…と何度思ったことか。
メインヒロインである紫遠も優しい子で、猫グッズを集めているのを見ると普通の女の子と一緒ですね。姿は子供なのにメンバーの中では最古参である緑狗も好きです。亡くなったメンバー宛てに秘かに届くはずもないと分かっていながら別れの手紙を書いてるところとかジーンときました。他のメンバーの存在も気になるので早く続きが読みたいです。

2017-04-20

掟上今日子の婚姻届(★★★★☆)

掟上今日子の婚姻届

掟上今日子の婚姻届

忘却探偵・掟上今日子、「はじめて」の講演会。壇上の今日子さんに投げかけられた危うい恋の質問をきっかけに、冤罪体質の青年・隠館厄介は思わぬプロポーズを受けることとなり…。美しき忘却探偵は呪われた結婚を阻止できるのか!?
語り部は厄介、やはり彼が一番今日子さんの隣がしっくりくるなと。今回の厄介の災難は付き合った相手を破滅させてしまうという女性からプロポーズされてしまったことから始まる。今日子さんと厄介の恋人ごっこは見てるこっちも面白かった(笑)前にたとえ記憶はなくしても身体で覚えていることもある、みたいなことを今日子さんが言っていたのを思い出しました。今日子さんにとって厄介ってどんな存在なのかな、リセットされてしまうならただの依頼人でしかないんだろうけど。今日子さんの記憶の謎もいつかわかるといいな。
私が厄介みたいな冤罪だらけの人生だったら引きこもりになってます。自分の今までの冤罪の経験を冷静に分析している厄介がすごい。他人の破滅を願うって空しくないか?しかも自覚しているだなんて尚更。厄介はきっぱりと断って正解だったと思います。

2017-04-19

デート・ア・ライブ フラグメント デート・ア・バレット(★★★★☆)

「…わたしに名前はありません。空っぽです。貴方のお名前は?」「わたくしの名前は、時崎狂三と申しますわ」隣界と呼ばれる場所で目覚めた記憶喪失の少女エンプティは、時崎狂三と出逢う。彼女に連れられ辿り着いた学校には準精霊と呼ばれる少女たちがいた。殺し合うために集まった一〇人の少女たち。そしてイレギュラーの空っぽの少女。「わたしは狂三さんの連れで囮…囮ですか!?」「ああ、囮が嫌ならデコイでも」「同じ意味じゃないですか!」これは語られるはずのなかった時崎狂三の物語。さあ―私たちの新たな戦争を始めましょう。
狂三メインのスピンオフ。本編ではあまり語られていない隣界が舞台。準精霊という存在を初めて聞いた気がする。どのキャラも個性的だったので、バトルロワイヤルであっさりと消えていくのは惜しいなと。個人的にはイサミと彩眼の友情関係が好きでした。彩眼の願い通り次があるのなら殺し合いなんてする必要のない平和な世界で友情を育んでほしいものです。
狂三にしては情緒不安定な部分が多いな〜と思ったらそういう仕掛けだったとは…。士道のモテっぷりは隣界でも噂されてるんですね(笑)二頁たっぷり使っての「きひひひ」は驚いた、ここからが狂三の本領発揮。狂三は本命キャラではありませんが、それでも面白いなと思いました。まだ続きがあるようなので追いかけていきたいです。

2017-04-18

一○一教室(★★★★☆)

一○一教室

一○一教室

カリスマ教育者・松田美昭がつくった全寮制一貫校・私立恭心学園。高い進学実績を誇り、ひきこもりや反抗まで“治る”と話題の学校で、一人の高校生が心臓麻痺で死んだ。健康だったはずの彼がなぜ…?一度も開けられない棺、異様に礼儀正しい生徒たち―。有刺鉄線の生えた、高い壁に囲まれたこの学園で、一体何が起きているのか?青春ミステリで人気の著者が満を持して放つ、爽やかさゼロのダークミステリ!!
首を鳥籠に閉じ込められている少年の表紙が印象的。正に「壮絶」という言葉がぴったりな内容だった。教育者・松田美昭が掲げる教育論に何一つ賛同できない。「体罰」が必要だと?お前らがやってたのは自分の欲望を満たすためのただの憂さ晴らしじゃないか!死んでいった生徒は紛れもなく被害者だよ。
もう駄目だな、と思ったのは両親までもが松田に毒されていること。英人は両親からも教師からも殺されたということですよね。こいつらは子供と同じ目にあったらいいんじゃないかな。そんな中での救いは保健室の先生である金尾先生が生徒思いだったこと。ラストは幸せそうな小川と唯香見れて良かったです。拓也も幸せになったし。松田のどうしようもなさは変わらずなのね…。ゆとり世代の私にとって色々と突き刺さるお話でした。