『チェーザレ 破壊の創造者(5)』ほか
買った割には読んでない。厳密には「読んでいるけど読み終えていない」が正しいのか。
そういうわけで今週のn冊。
- 作者: 惣領冬実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/07/23
- メディア: コミック
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今回の目玉は、なんといっても文字通りの(運動会的な意味ではないというニュアンスで)騎馬戦。軍服こそ男を一番美しく見せるといったのは、同じくチェーザレ・ボルジアに惚れて『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)』を書いた塩野七海氏だが、軽装騎兵として騎馬戦に出馬するチェーザレのカッコ良さは、この漫画史上パラマウント記録か。特にフランス代表ガチムチナイトとの一騎打ちシーンは、腐女子でなくともときめくクールさ。
一方で、チェーザレの波乱に満ちた生涯が所々で暗示されるなど、これからも非常に目が離せない一作、といいながら、実は最近になって5巻の出版を確認した私。
にしてもきちんと完結するのだろうか。このスペースだと20巻はかかりそうだが・・・。
あと、チェーザレの「そう それ大事」に吹いた。
- 作者: 石川淳一,松本武洋
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2008/04/01
- メディア: 新書
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登場人物の短い会話と長めの説明文を組み合わせるという手法は、読者の興味を逸らさないとか、あるいは重要度に応じてアクセントを置くという観点からは一役買っているように見えるが、会話文パートでは本来なら省略されるべきでない行間まで省略してしまった感があり、理解できない部分も多かった。おそらく、会計に興味を持ち、この本を理解できる程度の知的レベルがある人ならば、会話文パートがなくても理解できるだろうし、むしろそうしたほうが理解が促されるのではないだろうか。
ちなみに、会計の入門書と銘打っている割には、ネットでは、会計について詳しい人が書いた書評が大勢を占める。そういう人が「いや入門書に最適」とか書いたって説得力ないって。だってあなたたち、入門者として読んだわけでも、入門書として使ったわけでもないでしょ?
ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING)
- 作者: 照屋華子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: 単行本
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この本で凄いなあと思わせられるのは、その具体例の分かりやすさ。途中で挿入される「ダメな例」なんかを見ると、「こんな報告書作ってすいませんすいません」と謝りたくなる「あるある感」。そして、ダメな例が美しく再エディティングされていく際の爽快感といったら、自分の書いた報告書でなくても嬉しくて笑みがこぼれるレベル。是非次は、『ロジカル・イグザンプリング〜人を引きつける具体例を作るスキル』でお願いしたい。
ちなみに、このテの本では『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』がありますが、翻訳がマズイので、私は『ロジカル』シリーズを推します。
『モダンタイムス』〜伊坂幸太郎はペシミストになったのか
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/15
- メディア: 単行本
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相も変わらず伊坂幸太郎という人は読ませる人で、今回も500ページ超をほぼ1日で読んでしまった。amazonレビューなら余裕で5つ星をつけるところであるが、2点ほど気になるところが。
まず、第一は、タイトルに書いたとおり、伊坂幸太郎氏がペシミスティックになっていないか、という点。おそらく、本作のテーマの一つとして、「システム対個人」というものがある。国家をはじめとする自己保存と自己強化を推し進める巨大なシステムの前にあっては、個人というちっぽけな存在はいかに無力であるか、その点が、他のどの作品よりも強調され、著者に認識されているように感じられたのである。「そういうことになっている」という現実の前では、「そういうこと」に流されるしかないのか。このテーマは、伊坂氏が「双子の作品」と呼ぶ『ゴールデンスランバー』にも共通しているが、本作ではより前面に出てきている。
私は、今までの作品を読む限り、伊坂氏は悲観的というより楽観的な小説家だと思っていた。他の作品でも、窮地(というほど窮地でないことが多いが)に陥った主人公が、先々から丹念に集められていた伏線や、あるいは超人的で魅力的な登場人物に助けられてハッピーエンド、という流れが多かったし、そのあたりの演出というかストーリーテリングの上手さが、著者の必殺技であった。例えば、『終末のフール』では、世界の終焉が間近に迫る、つまり「世界が滅亡することになっている」中、それでも負けじと希望を持って生きる人たちが描かれていたし、もうすぐ映画化されるらしい(こちら参照)『フィッシュストーリー』では、場末のバンドが曲にこめたメッセージが世界を救っていた。
一方、『魔王』に始まり、『ゴールデンスランバー』を経て本作『モダンタイムス』に至る作品群においては、主人公達は「世界を変える」とか「あきらめない」といったマッチョさ*1からは程遠く、ほぼ逃げに回っている。もちろんそれは小説の面白さを何ら損なうものではないが、明るい伊坂作品が好きな私にとってはなんとなく寂しいものがある。
第二に、かつての伊坂作品にくらべると、著者お得意の伏線張りが弱い気がする。もちろん、読みはじめからは予想もしえなかった方向にどんどん転がっていき、最終的にどんでん返し、というのは唸らされるのだが、伊坂作品史上最も芸術的な伏線芸を披露した(と、私は思っている)『ゴールデンスランバー』に比べると、かなり地味な作風である。相変わらず奇抜な登場人物や設定から考えると、リアリティを追求したわけでもないと思うのだが。
あと、ついでが4つほど。その1、『魔王』で登場した『死神の精度』の千葉さんを再登場させて欲しかった。その2、挿絵が入れてある特別版があるなら、先に言って欲しかった。というか、私が気づかなかっただけですが。その3、それにしても映画化がどんどん続く人である。『フィッシュストーリー』の前に『重力ピエロ』の公開もあるし。個人的には、『砂漠』を映画化して、サンボ山口さんを主演の一人に迎え入れてあげて欲しい。その4、実は名前が似ていたり、旧帝の法学部だったりと共通点の多い伊坂さん、親近感湧きます。なんていうと怒られるだろうか。申し訳ない。