怒涛

いろんなことがあった。


転勤をした。

母親の癌が脳へ転移した。
そして半分、死んでしまったようになった。

新しい場所で勤務したと想ったら、2ヶ月で本社への異動が命ぜられた。

彼女も関西の本社へと異動してしまった。
激務のところだった。


いろいろなことを終えて、母親が一旦元気になり
それで、結婚した。


いろいろなことがありすぎて、昨年は僕の人生の中で最も色濃い時間だったように思う。
そしてきっと、今年も色濃い年となることが予見される。

いろんなことが、きっとこれからも起きていくのだろうと思う。



結婚したはいいが、同居していない。


彼女は関西で仕事を持っている。
俺は関東で仕事をしている。



当初は俺が関西へ異動できるという話だったが、それもなくなった。



最近、人生について考えている。


いろいろな問題を置き去りにした結婚だった。


俺は彼女が、本当に好きだった。
だから結婚した。理由なんていうのはこれしかない。




実のところ、彼女と結婚すれば関西にいけるかもしれないというのは
少しだけ期待した話ではあった。



ただ、それはなんというか、邪道というか。
少し引っかかりはあったものではあった。


そんなことの目的のために結婚したいわけではなかったし
関西へ行きたいという希望はあるが、目的と手段が逆のきがして嫌だった。


かといって、彼女をわざわざ縁もゆかりもない地へ招くのも気が引けた。
夫婦としてどうするかという選択をした時に、どうせならお互い地元の関西で働くほうが良いという理由で
希望はしてみたが、それも難しいようだ。(まだゼロではないが)




本当に、どうすればよいのか悩む。




思うに、彼女を関東へ異動させることは人の都合上割と簡単に出来るようだ。


夫婦二人で共働きで、安定した生活をして生きていくことも
選択として有効の気がする。



ただ同時に思うのだ。


夫婦として、人生を選択していく時に、安定して生きていくために生きているのだろうかと。



彼女にも親がいる。

その時に関西に帰りたいといっても帰れないのだ。





俺は新潟へ行って、本当に人生観が変わるほどに美しい自然を見て
いい人達に恵まれて仕事をさせていただいたと思っている。


だがその裏で、ずっと母がガンに侵されているのを
黙ってみていることしか出来なかった。



その苦難を、時を経て彼女にいつか味合わせることになることが目に見えている選択をすべきなのかというと
それは違うと思うのだ。




楽だけど、安定して、本当に欲しいものを捨てた人生か
リスクは伴うが、あるべき姿として人生を進めていくかなら、俺は男として後者を取るべきだと思う。