神無月サスケの波瀾万丈な日常

神無月サスケのツイッター(@ktakaki00)を補完する長文を書きます。

アドベントカレンダー2日目「サンプルゲームに込めた隠し味、その他」

ツクール公式フォーラムにこの半年間ほど携わり、いろんな記事を投稿して参りましたが、まずはその中から特に役立ちそうなものをピックアップし(フォーラム記事以外も含む)、その後、まだ語られていない内容を記そうと思います。

お役立ち記事ピックアップ

モチベ維持のコツ(記事)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/35/page-2#post-507

イベントコマンドのコツ(スレッド)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/113/

ツクールの数学と心理的要素(命中率、アイテムドロップ率、その他様々)(スレッド)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/238/

ゲームバランスの取り方(記事)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/425/#post-2961

TinyPngによる画像のサイズ大幅削減(ツイート)
https://twitter.com/ktakaki00/status/859674355248152576

「エミールの小さな冒険」の出来るまで

ツクールフォーラムで結構さんざん語りつくしてきたゲーム論ですが、「エミールの小さな冒険」には、まだまだ様々な隠し味を取り込んでいます。この中で皆さんが気づきにくい部分にフォーカスをあててみます。

戦闘中にアクセサリの付け替えが可能

ChangeWeaponOnBattle.js というプラグインを作りましたが、これは本来、二刀流の人の武器、そうでない人は盾も装備可能に、と考えたものです。
このゲームでは盾の部分にアクセサリを持ってきているため、戦闘中にアクセサリの付け替えが可能です。
このため、「敵の攻撃を自分一人に集中」や、「HPが少ない時、ダメージを大幅に減らしたりリジェネが付く」といったアクセサリに適宜戦況に応じて付け替えることが可能なのです。

「他のメンバーの技が使える」アクセサリの存在

主人公は「魔法」仲間は「体術」と「錬金術」が使えます。アクセサリの中には、装備すると、これらが使えるようになるものがあります。
これはどうやって実装しているのかというと、仲間は全員、この3つの技を全て覚えて行きます。しかし、「魔法」しか使えないキャラは、「体術」などを覚えても使えませんね。アクセサリの特徴で「スキルタイプ追加」を行っているのです。
ただしこれだけだと、レベルアップ時に使えないタイプの技も覚えた旨表示されるため、プラグインでそれを抑制しています。
皆さんのご参考になれば幸いですが、少し注意すべき点があります。それは、「自動戦闘」を可能にした場合、自分が使えないスキルタイプの技も候補に入ってしまうため、それらの技を使ってしまうでしょう。よって、その点は考慮してみてください。

「面倒なことをすると、必ずそれなりの見返りがある」システム

このゲームには「楽器」という武器があります。ところが、誰も装備できません。アクセサリ「吟遊詩人の心」を装備することで、初めて可能になります。

わざわざ他のアクセサリを放棄して楽器を装備するのをためらう人もいるでしょう、しかし、実は楽器は、かなりのバランスブレイカーなのです。ダメージこそほとんど与えられないものの、かなりの確率で敵を状態異常(睡眠や混乱)にしてしまうのです。かなり戦略の幅が広がることでしょう。

もうひとつ例を挙げましょう。秘密基地の仲間が、何の効果もない石をくれます。しかし、この石は「光の石」との合成で強化可能で、2回使うと、なんと「全員の状態異常回復、HP回復、戦闘不能の仲間も復活」という、ドラクエの賢者の石を行く、相当強力なアイテムになってしまいます。

これらは、クリアできない人への救済措置の意味もありますが、一見役立ちそうにないものが、大きな効果を発する例になります。

複雑なフラグ管理

お遍路の森の第3札所では、最初あるじが不在です。月見草の丘に倒れており、蘇生アイテムをあるじに使うか、第3札所に戻って報告すればこのイベントは終了です。

ところが、考えてみてください。ここにはプレイヤーによって、いくつもの行動パターンが考えられます。

  • 札所で話を訊く前に月見草の丘に行き、(その時点で)見知らぬ男性を助ける
  • 札所で話を訊く前に月見草の丘に行き、第3札所に相談に行く
  • 第3札所で話を聞いてから月見草の丘に行き、蘇生アイテムで助ける
  • 第3札所で話を聞いてから月見草の丘に行き、あるじの所在を伝える

いずれの場合でも不自然のないように、フラグが組まれています。なお、蘇生アイテムを使って助けた場合に限り、戻った後お礼のアイテムが貰えます。

このように「複数の流れが考えられる場合、総当たりで台詞やイベントを準備する」というのは、大変ではありますが、複数回プレイした人なら、展開の違いに、にやりとするかもしれません。

シンボルエンカウントのコツ

このゲーム、拙作では、初のシンボルエンカウント導入でした。動機は、最近のドラクエ7などのリメイクを見るなどして、ランダムエンカウントからシンボルエンカウントへの潮流を感じたからです。

ただし、シンボルエンカウントは敵が多かったり、逃げにくかったりしたら、ストレスを与えてしまいます。

そこで僕が行ったのは、敵シンボルは、特に宝箱を守るなど、無視することも可能だし、戦闘の準備がしやすい場所に配置しました。また、

  • 「大抵の敵はパーティーより足が遅い(=追いつかれにくい)」
  • 「パーティーが敵より一定以上離れると、諦めて持ち場に戻る」
  • 「パーティーが敵よりかなり強いと、逆に逃げる動作を取る」

といった配慮をしました。

シンボルエンカウントには、やたら敵の数を多くする作者が多いが、若干少な目に作るべき……』手前味噌ですが僕が書いた講座にもそう書き加えています。
https://tkool.jp/mv/guide/006_004k.html#03

締切前一日半でバランスを調整するコツ

締切が迫り、尻に火が付いていましたが、大急ぎでやった調整をここに記します。

上記のシンボルエンカウントで「大体プレイヤーは各敵シンボルと1回は戦うだろう」と想定して、その地点に到着する時の平均レベルを決めます。

「炎の石」「光の石」があり、どの装備またはアイテムに使うかによって、全くプレイヤーの強さが読みづらいですが、「武器と防具に均等に使っていくだろう」と想定して、仲間の状態を推定します。これをもとに敵の強さやスキルを決めるのですが、石を拾わなかったり、使う順番を間違えて苦戦することも考えられます。

このため、「救済措置」は欠かせません。具体的には……

  • 最強装備には及ばないがそれに準ずる強さの装備がお金を払えば手に入る(通常、最強装備は「炎の石」や「光の石」で強化して作る)
  • 前述のような「楽器」「ただの石→妖精の恵みの石」「かんしゃく玉」(パワーアップさせると敵全体にスタン+Debuff)のように普通のプレイヤーなら「不便そうだから」と使わない部分にこっそりバランスブレイカー的な威力の技を入れる。

結果、たった1回の通しプレイだけして納品となりましたが、「救済措置」も功を奏したのか、ゲームバランスに関する文句は聞こえてきません。

マップ:ブラック・ウルフさん担当

僕はマップが得意でないので、仕掛けの多い洞窟以外は、ブラック・ウルフさんにお願いしました。彼は、あまり広すぎるとごちゃごちゃするため、一つの大きな町にするのではなく、場面ごとに区切っていました。こうすることによって、場所が把握しやすくなりますね。

また、彼は以下のようなこともしてくれました:

  • OverpassTile.js を使い立体交差を実現
  • 歩行速度のデフォルトを4ではなく倍の5にしたのも彼の提案です。
  • 広場にある噴水の面白いアニメーションの作成
  • 2番目の洞窟は仕掛けだらけなので僕が描きましたが、

 艶出しとして、オブジェや壁の灯りなどで飾っていただきました。

特に広場の噴水などは、イベントコマンドの移動ルートの「カスタム」をうまく利用して作られており、参考になると思います。

シナリオ:ふうきゅうさん担当

彼の書くシナリオは、とにかくスピード感があります。このゲームの第1章は、ほぼ彼の手によってシナリオが描かれていますので、プレイされた方はそのスピード感が理解できるでしょう。
彼曰く、これは小池一夫の影響だと言います。
1日目の最初はお使いイベントですが、行き先のお店の前で突然爆発。その後も仲間が主人公に助けを求めてくるなど、とにかく「前へ、前へ」と話を進めて行っています。こうすることで、プレイヤーは退屈することなく、スリリングな展開にのめり込めるでしょう。
2日目以降は、ダンジョンがメインになるので、主に僕が台詞を組んでいますが、それでも、ふうきゅう氏は、そのダンジョンに関係ない日に行くと、いろんなキャラクターを出して寄り道要素を加えるなど、相当サービス精神旺盛でした。

まとめ

こうして締め切りにギリギリで間に合った(送信が、締切当日の午後6時過ぎ)。一之瀬様から「サスケさん、お元気ですか?」と心配されたのもいい思い出です。

しかしお二方とも、妥協せずにがんがん出来るところまで、やってくれたことについては、本当に感謝しています。

今回紹介した「隠し味」が、皆様の制作の参考になることを願ってやみません。