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2012-05-22 LA-MULANA(ラ・ムラーナ)の記事に見る日本のインディーズゲーム業界

[]LA-MULANA(ラ・ムラーナ)の記事に見る日本のインディーズゲーム業界の現状

この文書について

この記事は、はてなブックマークで、見つけた、次の記事の日本語版(原文)を掲載します:

http://la-mulana.com/en/blog/a-gold-rush.html

この記事を僕がツイッターで紹介したところ、開発側公式( http://twitter.com/shoji_nakamura )からリプライが来て、原文を送ってくださったのです。

まず、その原文を掲載し、その後解説、僕の雑感を追加します。

原文

あれから、いろんなサイトがこのニュースを扱ってくれています。
インタビューにも答えています。

Indie Games
http://indiegames.com/2012/05/nigoro_interview.html

Nintendo Life
http://www.nintendolife.com/news/2012/05/interview_nigoro_on_la_mulanas_cancellation


WiiWare市場はもう力がないのかもしれないが、待ってくれていた人には関係のない話だ。

我々はPCでリメイク版LA-MULANAを出す道を選んだが、
可能であればWiiWareでもリリースされてほしいと思っている。
その気持ちが伝わったのか、インタビューが出てから
さっそくいくつかのパブリッシャーが声をかけてくれました。

当然ながら日本の企業からは声もかからないしインタビューも受けてないよ!
これが日本のゲーム業界の状況です。日本ではインディーズゲームの発展は
望まれていないのかもしれない。
やはり海外に出て行くしかあるまい。

我々は、LA-MULANAが海外でリリースされることにより、
日本のインディーズが海外でもリリースできる事例の1つを作り出したいと
思っている。
そのとき、我々と共に活動してくれているのはどこのパブリッシャーだろうか?
LA-MULANAに続けと、まだ眠っている日本の良いインディーズゲームを
発掘してくるパブリッシャーはいるだろうか?

日本のインディーズゲームは掘り出されていない金脈だぞ。
日本では掘り出す人がいないようだから、もう君らが好きに掘り出してくれ!

解説

LA-MULANAとは、Wikipediaの情報が詳しいので詳細はそちらに任せますが、個人的に興味を持っているのは「PC用の(会社に所属しないグループの)個人製作のフリーゲームであり、商業化が決まったもの」という特徴が挙げられます。

日本のインディーズゲームで、商業化が決定したゲームはそれほど多くありません。海外でも展開された例といえば、洞窟物語が僕が知る限り一番有名でしょう。僕のホームグラウンド、ツクール界隈では、僕の知る限り、パレット、コープスパーティーが挙げられます。これらは、それぞれ異なった経緯で商業化へのプロセスが進んでいったように認識しています。

そして、LA-MULANAも、この一つに加えられるべく、開発および交渉が現在進行形で進められているわけです。その前提で上記の文章は書かれています。

本文を乱暴に掻い摘んでまとめるとこうなります、「WiiWare版のリリースは暗礁に乗り上げたが海外のパブリッシャーが声をかけてくれた。でも日本ではインディーズゲームの文化は期待されておらず全然興味を示さない。我々(開発者側)は『日本のインディーズゲームの海外展開』に賭ける。」

同じような内容を日本語で書いた文章が(こちらも開発者NIGORO側執筆)、以下に公開されていると教えてくださいました。興味を持たれた方はこちらも参考になると思います:

http://la-mulana.com/jp/blog/20120522_news.html

(追記 12/05/23 21:50 WiiWare版の日本語版は既に昨年6月にリリースされているそうです。リリースで揉めているのは海外版とのことです。id:Untouchable さんのはてブ情報より。ありがとうございます!)

僕の雑感

商業化を夢見た時期

僕もフリーゲーム作者の端くれだし、一度は商業化なんてことも憧れたことがあります。

現にいくつかのフリーゲームが商業化されている現状です。上記に挙げた例以外にも、「勇者30(原題:30秒勇者)」や、フリーゲーム界隈では馴染みの深い個人主催のコンテスト「3分ゲームコンテスト(通称プンゲ)」発祥の「Every Extend Extra」などが挙げられます。

「Every Extend Extra」が出た2006年、僕は携帯電話用ツクールのサンプルゲームとして「ぼくのすむまち」というエンターブレインFOMA公式サイト「ツクールモバイル@RPG」用の連載RPGの仕事をお請けしており、インディーズと商業の敷居が確実に下がりつつあるのを感じていました。でも、それは一夜の夏の夢でした。このFOMA公式サイトは、不採算から翌年4月に閉鎖が決まり、それ以上の展開はありませんでした。

「商業では出来ないことを目指してこその同人」という思い

その後も、「同人やシェアウェアにするか、可能なら商業化を狙いたい、そんなゲームを作りたい」と色気を起こしている時期が長く続きました。

そこで感じたのは「同人でお金を貰うことになると、確実に売り上げを意識する必要が出てくる。同人の本来のいいところは『商業に縛られずに自由に出来ること』のはずだったのに本末転倒」という結論でした。「売り上げが目的」という人なら問題ないのです。僕の目指すところは違いました。

僕が目指したのは「今の業界が商売としてやろうとしても出来ないものを作りたい」ということでした。今のゲーム業界を見ていて思うのは、続編やシリーズ物、コラボなど保守的な物が多く、完全な新作で広がっている物をあまり見かけません。「全く新しいもの」がフリーでもいいので広がり、認知されていくこと、それによって商業化し、業界が潤う、そういう「博打」が打てるのが、同人のいいところでは無いでしょうか。ゲーム業界に於いても、実験的な制作に予算を割くことなく、既に同人で有名になり一定の売り上げが見込めるコンテンツは魅力的でしょう。

何気ないツイートが生み出した面白い反響

そんなことを考えている僕は、昨年の8月ごろ、こんなことをツイートしました。

ソース:http://twilog.org/ktakaki00/date-110802

以前から友人と酒飲んだりしているとよく言われたのが、「フリーゲームがこれだけ製品化しているのだから、ムンホイにも話が来てもおかしくない、それだけのオリジナリティがあるから」ということ。僕は「ツクール作品だから無理でしょう」と軽く否定していたが。

コープスパーティーは例外として、製品化したフリゲは皆非ツクールだ。一般のゲーム会社がツクール作品に興味を示すというのは考えにくいと思ってきた。これまでは。でも、今のツクールはスクリプト採用しているし他の制作ツールと遜色ない。誰かが前例を作るかも、と思い始めた。

それなら僕もだめもとで動いてみる価値はある、と思い始めた。しかし、最大の問題は、どう動いていいか分からないということ。どこの企業がツクール作品も許容して持ちこみを受け付けているのかなど、僕には何も分からない。知ってる人がいたら誰か教えてください。

半ば、ジョークで書いたのですが、これが興味深い結果になりました。2ヵ月後の10月、ゲーム専門学校の学生さんが、講師たちに実際に相談してくれたのです。彼らは業界OBが多いようで、事情に詳しかったようです。結論は「確かに商業化は困難だが、だからこそ今はフリーや同人の持つ意味が大きくなっている」ということの再認識でした。

この一連のやりとりは、Togetterにまとめられています:

「あるゲーム専門学校生とあるインディーズ制作者の会話 - Togetter」

今のゲーム専門学校の学生さん達がどういうことを考えているのか、今ゲーム業界を目指すのはどういうことなのか、そんなことも分かるため、インディーズ界隈全般や、業界を目指す人からの反響が大きかったです。

改めて、今インディーズゲームの商業化に挑戦する意義

以上から僕自身はインディーズ(フリーゲーム)としてやっていくのが一番、と結論付けたのですが、果たしてそれが唯一の答えでしょうか?僕はだめでも、誰かがブレイクスルーを見つけ出す行動をしてくれるのでは?そういう期待はあります。

そして、今回のLA-MULANAの一連の流れは、その理想と現実を、しっかりと我々に示してくれています。あくまで「採算が取れない」とつっぱねるパブリッシャー側の姿勢。日本では興味を持ってもらえないから海外で興味を持ってもらい、そこから日本に逆輸入できたら……?という風に、様々な可能性に賭け、現実的に行動しているのです。今後の動向に注目されるべきでしょう。

個人の同人、フリーゲーム制作者が商業化を目指すなら

さて。視点を変えて、今度はフリーゲームや同人制作者の視点から「いかに商業化を目指すか」を考えます。

現状商業化されるフリーゲームは「まず海外展開するのが現実的」という選択の結果、言語の敷居の低いアクションゲームが選ばれています。この考えで行くと、RPGは翻訳やローカライズに膨大なコストがかかるため、現実的ではないかもしれません。仮に日本のみの展開を見ても、フリーや同人のRPGの商業化は聞いた事がありません。開発コストが高く、採算が取れないからでしょう。ツクールユーザーには悪い知らせです。

しかし、望みはあります。高い開発コストに見合う、それだけの人気が出てくれば、可能性があるということです。今はツイッターやYoutubeなど、ソーシャルメディアの時代です。どこで人気が出てくるか分かりません。最近ではニコニコ動画を発端にしてフリーゲームが爆発的に注目されることがあります。直近ではIbが顕著な例でしょう。これらはまだ、商業化を掘り出す決定打にはなっていません。しかし今後も、新たなソーシャルの場が作られ続け、何が起きるかは未知数です。

大切なのは、「いつか発掘される」時のためにこそ今、発掘されるに足りるゲームを作ることでしょう。確かに運次第かもしれません。いい物を作ったからといって、必ずしも評判になる保障は無い。しかしいい物を作れば共鳴してくれる人は必ず現れるし、あわよくばその小さな流れが大きな流れになりうる。

そして、フリーゲームや同人の作者が商業化を目指すなら、商業では出来ない、独自性を出したゲームを出していくべきではないでしょうか。商業で出来ることは商業に任せておけばいい。商業で出来ないものに挑戦するからこそ、成功したとき、商業に必要とされるのです。業界でも新しいものを作って実験がしたい、しかし彼らの元では出来ないのです。なぜなら今の商業制作は大規模化しており、たくさんのリソースが必要になっており、博打が打てないのです。フリーゲームや同人なら、それが出来ます。だからこそ、注目されたとき、商業化されうる作品となるのです。

革新的な物を起こそうという野望は決して無謀ではないと信じます。むしろそれがゲーム業界に風穴を開けるために必要だと信じます。そして、今のNIGOROのLA-MULANAでの挑戦は、我々がそれをするための道を、少しでも舗装してくれるものになるでしょう。