博士のニュース

05/16(月) 劣化ウラン弾の問題点

先の湾岸戦争から今日、劣化ウラン装甲、劣化ウラン弾使用の是非がそこら中で行われています。私も実際どうなんだろうと色々調べる内に実に様々な論を読みました。それこそ核という物に生理的嫌悪を持ってるとしか思えないような感情むき出しの物から、科学知識を駆使した論理的な物まで。

しかしそれらを読んで冷静に劣化ウランという物質その物を学んでいく内に、多くの新聞、ドキュメンタリー番組、書物がかなりいい加減な知識の元に書かれたり作られたりしている事が分かってきました。

ウラン=放射能=核兵器=非人道的=悪者という絶対無敵のロジックが頭にある間は、何を聞いても読んでも無駄です。先ずは先入観を無くし、そもそも劣化ウランとは何なのか?問題があるとしたら何なのか?と言う姿勢が大切なんですよ。

では、いきなり結論から書きますが、劣化ウラン弾が問題のない兵器か?と聞かれたら問題がある。と私は答えます。しかし、それは放射性物質だからか?と聞かれたら、違うと私は答えるしか有りません。

劣化ウランという物を知れば知る程、その放射能から出る放射線で人体が被害を受ける可能性は低いとしか考えられないからです。もし、この放射線で被害を受けるような人では、レントゲン撮影を数回受けるだけで確実に死亡してしまうとしか言いようがないのですよ。

これには異論を唱える人も多いかもしれません。では、劣化ウランは何が問題なのか?これを理解するには、もう一度冷静に劣化ウランとそれに関連する知識を再確認する必要があります。

放射線と放射能の違い

まず誤解がないように説明しなくてはいけませんが、放射線放射能は全く違う物を指す言葉だと理解して下さい。


ここからして混同している人がプロの記者の中にまで居るんですよ・・・・・情けない事ですが・・・・・。


直接人体に影響するのは放射線の方です。アルファ線、ガンマ線、X線、ベータ線と言われている物がそうです。放射能と言う言葉は、放射性物質が放射線を出す性質、もしくは能力の事を指す言葉なんです。放射性物質=放射能、これは間違い有りませんが、放射能が怖いのは放射線を出すからであって、問題はどの様な放射線がどれぐらい出ているか?此処が肝心なのです。

放射能その物が問題有るという判断だといきなり事実を誤認してしまいます。この点を再確認して下さい。

それと此処でちょっと同位体(アイソトープ)という言葉を説明します。同じ元素で、化学的性質は同じなのだけど、その原子核の核子の数が異なる物を、多くの場合同位体と呼びます。まあ、単純に重さが違うと考えて貰うのが分かり安いと思います。

そして重さがちがうと、それらの放射性物質(放射能)としての性質は違う物になります。無論、それ等が出す放射線の種類・エネルギー量・寿命も違ってきます。核分裂物質の場合は分裂の挙動もちがいます。

そして放射毒性よりも化学毒性が上回るのは、唯一ウランだけでだと言う事は、すでに放射化学者、放射線影響学者の間では常識となっています。「放射毒性って何?」と言う人もいるでしょうね、あまり聞き慣れない言葉ですから・・・・まあ、読んで字のごとくなんですが、その物質が出す放射線によって起こる「人体に対する好ましからざる性質」を指す言葉です。この毒性は放射性物質の同位体ごとに異なります

化学毒性は「その元素がもつ化学物質が人体に対して好ましからざる反応を起こす」と言う事です。ちなみにウラン元素の様々な同位体は、化学毒性については全部同じです。この点も凄く重要なので忘れないで下さい。

ウラン濃縮とは

そもそも天然で存在するウランの同位体には3種類があります。簡単に書くと

  • 「重いウラン(238U)」
  • 「軽いウラン(235U)」
  • 「もっと軽いウラン(233U)」

の3種です。しかし、最後の「もっと軽いウラン」は、含有量がもの凄く少ないし、今回の話には関係ないので無視してしまいます(笑)

原爆の原料、原子炉の燃料(核分裂の連鎖反応を起こす)のは「軽いウラン」のことを指します。天然ウラン中での含有量は約0.7%で、残りの99.3%は、核分裂を起こさない(一般的に言って)「重いウラン」なんですね。

そして「軽いウラン」の割合が、天然ウランの(0.7%)よりも大きくしたものが「濃縮ウラン」、小さいものが「劣化ウラン」です。天然ウランよりも「軽いウラン」の割合を高める工程が、「ウラン濃縮」と呼ばれる作業です。

原子炉の設計を特別な物にすれば、天然ウランそのままでも核燃料になりますが、現在我が国で存在する原子炉の殆どがアメリカ型の軽水炉で、すべてが「軽いウラン」の割合を3〜4%にまで高めた「低濃縮ウラン」を使っています。

そして、アメリカ型軽水炉で燃やす低濃縮ウランを製造する過程で「軽いウラン」が0.2〜0.25%の劣化ウランが生まれてしまいます。1トンの天然ウランからは、簡単に計算すると原子炉用の核燃料「低濃縮ウラン」200kgと、廃棄物である「劣化ウラン」800kgが生成されます。

ウラン濃縮はウランをフッ素の化合物である気体にして作業されますが、この劣化ウランガスを還元して金属にもどすと、比重19の重くて硬い固体ができます。この重いと言う特徴を、硬い金属の代表であるタングステン(比重はこれも19ちょっと)の安価な代替品として使ったのが劣化ウラン弾です。

蛇足ですが原爆を作るには、軽いウランの割合が90%以上の「高濃縮ウラン」にしなければ成りません。

劣化ウランというもの

それではまず劣化ウランから出る放射線はいったいどれぐらいの物なのでしょうか?

放射能の強さは、その物質の半減期と関係があります。この両者は基本的に反比例の関係にあって、半減期が長いものは放射能が小さく、短い物の放射能は大きいと言う事になります。

「重いウラン」の半減期は約45億年で、とてつもなく長いので、放射能は勿論低い物になります。「軽いウラン」の半減期は約7億年で、人類の尺度ではこれも長いのですが、放射能は重いウランの6倍もあります。

さて、先に説明しましたが、劣化ウランとはどういった過程で生み出された物だったでしょう?天然ウランから、この軽いウランを抜き出した残りカスという事でしたよね。と言う事は?


至極当たり前の結論ですが、劣化ウランとは天然ウランよりも放射能は低いという事になります


そしてその放射毒性は天然ウランですら科学毒性の方が高いとされているわけですから、劣化ウランが出す放射能が人体に影響する可能性がどれぐらい低い物か分かりますよね? 具体的には劣化ウランの放射線量は天然ウランの百分の一程度です。

「でも、放射能がゼロじゃないんだから、やっぱり人体に害があるんじゃないの?」と思う人が居るかもしれません。他にも「テレビの取材で砲弾の破片なんかをガイガーカウンターで計測したら、自然界における数百倍の放射能を検知していたぞ!!」と言う人もいるでしょう。「安全なウランなどなく、(天然ウランとの)比較自体がナンセンス」と指摘する人もいると思います。

確かにゼロじゃありません、バンバン放射線も出しています。しかしこのレベルで死んでいるのなら、レントゲン写真を数回撮られた事のある人はとうの昔に全滅してるんですよ。レントゲン写真を撮る時に出される放射線は桁が違うんですよ、桁が!