「たまには、遠出をしてみよう」、と思い立ち、春休みの旅行の行先はカナダにすることに。アメリカ暮らしは10年を超えるが、実はカナダは初めて。
食べ物、人の温かさ、旅のしやすさ——どれも想像以上で、家族みんな大満足の旅に。今回はアメリカと比べながら、カナダの魅力をざっくりまとめてみたい。
一品にかけられた手間と熱意:カナダ飯が旨いわけ
「カナダの料理にハズレ無し」、これは家族の総意であった。朝食はホテルで調達した和食を食べていたが、昼食と夕食はレストランやカフェで楽しんだ。入念に事前調査をしたわけではないが、どこも「えっ」という美味しさ。アメリカとの違いを一言で言えば、「かかっている手間」が違う、これにつきる。どの料理もアメリカで食べるものと比較すると3工程くらいは多くかけているだろう、というほど手の込んだ料理が多い。美味しさを追求する作り手の熱意を感じる料理が多かった。おまけに最近のアメリカと比較して遥かにリーズナブルな価格。さすが、フランスの文化が深く根付いているだけはある。

東海岸より遥かに近い:下手な米国内旅行よりカナダ
私はカリフォルニア北部に住んでいるので、サンフランシスコの空港まで車を飛ばして、今回はカルガリーまでの直通便を利用した。フライトは3時間ほどであり、カリフォルニアに住むわが家にとっては、アメリカ東海岸に行くよりもずっと近い。
また、さらに最高なのはカルガリー空港側にアメリカの入国審査があり、サンフランシスコでの入国審査をスキップできることだ。これは、アメリカ在住者あるあると思うが、主要空港での入国審査は500人くらい並んでいても何ら不思議はない。また、どこから来たのかわからん奴らを審査するので審査官は大体ピリついており、あまり良い経験をしたことはない。カルガリーの米国入国審査は主要空港とは異なり、対象がアメリカ人とカナダ人にほぼ絞れているからか、入国審査独特の緊張感もなく、列も適正でスムーズに済んだ。
なお、アメリカの自動車免許がそのまま使えるというのもありがたかった。レンタカーを借りるのにわざわざ国際免許をとらなくてもよいのもポイントがでかい。レンタカーが残念ながらクライスラーで運転しにくかったことこの上ないのはご愛嬌か。トランプさんよ、あんな車日本では売れんて。

カナダの人たちの温かさと心配りに感動
アメリカも基本的に人は温かいが、正直ムラがある。が、カナダはどこの店でも店員の対応が素晴らしく、温かみに溢れていた。カフェで飲み物のピックアップ場所がわからなかったので聞いた際は、「わかりにくいのよね、ごめんなさい」と言ってその場所まで連れていってくれた。
また、カナダの人は日本人好みの「丁寧さ」がある。料理の盛り付けやサービング方法なども、見た目だけでなく、食べやすさも考慮した工夫があったりして、「こういう細かい気配りは日本っぽいなぁ」と感じることが何度もあった。
多文化主義の理念は、オーストラリアやカナダでは高く評価されているが、アメリカでは批判的に評価されることが多いと言えよう。
『移民大国アメリカ』
アメリカは強力な建国理念に基づいて作られた国なので、移民を受け入れつつも同化しようという引力が強く働いている国だ。現政権の政策からもわかるように、肯定と否定の間を常に揺れ動いており、これは今後も続くだろう。
一方で、カナダは「モザイク文化(色々な文化がタイルのように並び一つの絵を作る)」という言葉に代表されるように、フランス語を公用語として残したり、多文化共生をありのまま受け入れようという国民性が強いように感じた。多文化を広く受け入れつつ、イギリス的な礼儀正しさも残し、大自然の中で育まれたおおらかさが、カナダ人に温かさと丁寧さをもたらしているのだろう。
価格は3割安、品質は3割高:カナダのコストパフォーマンス
これはあくまでアメリカと比較という話だが、カナダの物価は安い(というか、アメリカが高すぎる)。レストランで食事をするとランチのサンドイッチなどであればCAD13-15というところ。アメリカでは、大体がUSD13-15なので、現在のレートで3割安となる。先述した通り一品にかけている手間が異なるため、一品のクオリティはカナダのほうが圧倒的に高い。なので、一品の価値で考えると半値に近いという印象を受けた。
もちろん、日本と比べるとまだまだ高いとは思うが、アメリカよりも断然お財布に優しい国である。

また行きたくなる国、カナダ
大きなトラブルなく、大満足のうちに春休みの旅行は終わった。色々な国や地域を旅行している家族も、「また行ってみたい!」と声をそろえている。「今度はバンクーバーがいいんじゃない」と行先も決まってしまう始末だ。
食事が美味しく、人も温かく、雄大な自然が楽しめるカナダ。アメリカに住んでいる方には断然おすすめだし、「円安で海外旅行はなぁ」、と二の足を踏んでいる方も、サンフランシスコやロスなどのアメリカの主要都市よりも断然安いので強くおすすめしたい。