糖新生のお勉強
解糖系のお勉強の繰り返しになるけど、解糖とはグルコース(炭素数6)がピルビン酸(炭素数3)に代謝されるまでの反応です。
ピルビン酸はそのあとピルビン酸デヒドロゲナーゼという酵素でアセチルCoA(炭素数2)になり、アセチルCoAはオキサロ酢酸(炭素数4)と反応してクエン酸(炭素数6)になります。そのあと、クエン酸はなんだかんだと炭素を手放しながら*1エネルギーを生産し、最終的に炭素数4まで減らしてオキサロ酢酸になります。そこにアセチルCoAがやってきて、というクエン酸→オキサロ酢酸サイクルを、TCAサイクルと呼ぶわけです。
さて、糖新生は解糖系をさかのぼる反応なのですが、その経路には難関が待ち受けています。というのも、解糖系はおおむね可逆的なのですが、三つの不可逆反応が含まれているのです。その三つとは、
- ヘキソナーゼによる「グルコース→グルコース6-リン酸」の反応
- ホスホフルクトキナーゼによる「フルクトース6-リン酸→フルクトース1,6-ビスリン酸」の反応
- ピルビン酸キナーゼによる「ホスホエノールピルビン酸→ピルビン酸」の反応
です。
前のふたつは、それでもそのまま逆行させる酵素が別にあるのですが、最後のホスホエノールピルビン酸→ピルビン酸の反応については、逆行させる酵素がありません。したがって、ピルビン酸から糖新生を行うには、
- ピルビン酸カルボキシラーゼによる「ピルビン酸→オキサロ酢酸」の反応
- ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼによる「オキサロ酢酸→ホスホエノールピルビン酸」の反応
と二段階を踏んで*2、解糖系の中間体に戻って糖新生を行うことになります。
糖原生アミノ酸は、ピルビン酸や、TCAサイクル内の代謝物であるオキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸、フマル酸に代謝されるので、上記の反応によってグルコースまでたどり着くことができます。また、グリセロールもフルクトース1,6ビスリン酸*3に代謝されるので、グルコースになることができます。
ということで「たんぱく質*4はグルコースになりますよ!(あと脂質*5も!)」なわけなんですが、ただそれとは関係なく糖新生で一番重要だと思ったのは、
アセチル-CoAを生成するピルビン酸デヒドロゲナーゼの反応は不可逆であり、アセチル-CoAからの2つの炭素単位がクエン酸回路に入っても、オキサロ酢酸が生じる前に二酸化炭素として2つの炭素原子は消失する。このことは、アセチル-CoA(そして、アセチル-CoAを生じるいかなる基質も同様)はけっして糖新生には使われないことを意味している。
(『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p154)
これでしょう。
アセチルCoAはいくらできても糖新生には使われない。だから、脂肪酸のβ酸化でアセチルCoAたくさん作ってエネルギー産生の準備OK! だとしても、それは以前見たように*6ピルビン酸カルボキシラーゼの活性を増加させてピルビン酸→オキサロ酢酸の反応を促進してTCAサイクルに入るかもしれないし、あるいは寂しくケトン体を生成し続けるかもしれないけれども、どちらにしても血糖上昇には利用されないんです。
図で見ると、アセチルCoAはTCA入るし、TCA入るということはオキサロ酢酸になるから、ついそこからグルコースまで逆行できると勘違いしてしまったけど*7、TCA回る間に炭素2つ消えてもとのオキサロ酢酸に戻るだけなんですね。オキサロ酢酸の量にもピルビン酸の量にも影響与えないんだから、そりゃグルコース増えないわ。