つまらない栄養学の大切さ

ちなみに、これをアップするきっかけとなった高橋先生の講演では、 機能性表示食品の宣伝は問題も多いし、宣伝で思い込むほどの効果はない。だから、(専門家たる栄養士としては)まずは「適切な食事」を示しましょうよ。 適度に動く、寝る、食べるの健康管…

高橋久仁子先生の講義を聞いた

先日、群馬大学の高橋久仁子先生の講演を聞く機会がありました。実のところ高橋先生の話を聞くのはこれが2回目で、1回目である、今から1年ほど前の放送大学面接授業については、講義の1週間後くらいに内容をノートにまとめていたのでした。 ところが、いつか…

みんな大好きマクガバン!

ってひょっとしたらこれのことではあるまいか。誰でも全文読めるよー。pdfでもkindleでも読めるよー。これで5000ページ論争とか元禄時代論争とか解決じゃん! て喜んでいたら、以前読んだ素晴らしい記事の前の記事に、ちゃんと注で公式へのリンクが貼ってあ…

東京栄養疫学研究会の動画を見て反省した話。

先日聞いた講演が素晴らしかったので、東京栄養疫学研究会のアップされている講義の様子を見る。 まだ2014年の春季会の1全部と2の冒頭しか見てないのですが、佐々木先生はどうやらものすごく熱弁家で、講義がとても面白い。たぶん予備知識なく見ても、引き込…

単なる同意文

日本人の食事摂取基準の基本とかけ離れた内容の栄養摂取になってしまうような食事を推奨する食事健康法を不特定多数の人に推奨し、宣伝するのは公衆衛生上問題のある行為です。 栄養士の皆様は、くれぐれもお近づきならないようお願いしますとともに、一般の…

国立健康・栄養研究所の一般公開セミナーに行った話。

最近全然お勉強してないなー、という反省の意も込めて、第16回国立健康・栄養研究所一般公開セミナー『「日本人の食事摂取基準」の改定をふまえた食事と身体活動』*1に行く。 冒頭、理事長が挨拶で「本当はここに来ていない(食事なんか気にしないという)人…

ついでに、箸でつまめる卵について

牛乳とタマゴの科学 (ブルーバックス)作者: 酒井仙吉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/05/21メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る 箸でつまめるほどしっかりしているタマゴ、というのを見るけれども、著者は少なくとも卵白部分については、…

紅茶の淹れ方論争

大英帝国の遺産である茶は、イギリスでその力を維持している。ミルクなしで飲むものもいる。おそらくジャスミンの香りのするアールグレイを選んで、レモンの薄切りを加えて飲むだろう。しかし大多数の人間はミルクを加える(カップにミルクと茶のどちらを先…

ついでに、母乳と乳児の腸内細菌の話

ついでなので、『食物心理学――価値観と欲求の科学』の腸内細菌にまつわるところを読んで、気になったところを。 母乳栄養児の場合、ビタミンK2を合成できないビフィズス菌が全体の99.2%も占めているが、人工栄養児の場合、19.1%に過ぎず、ビタミンK2産生菌…

腸内細菌の話

人間は料理をする・下: 空気と土作者: マイケル・ポーラン,野中香方子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2014/03/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 以前から細々と読んでいる『人間は料理をする』の下巻には発酵を扱う…

料理の効用

人間は料理をする・上: 火と水作者: マイケル・ポーラン,野中香方子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2014/03/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る (リチャード・ランガムは『火の賜物』*1のなかで)料理の発明…

ネフローゼ症候群の食事療法についての歴史

先日、久しぶりに開いた臨床栄養学のネフローゼ症候群のページには、このような記述があったのでした。 食事療法の原則はこれまで高タンパク、低塩分とされてきたが、平成9年(1997)の改訂で軽度のタンパク制限、減塩食に変わった。 (『新しい臨床栄養学』…

『和食;日本人の伝統的な食文化』から、気になったところを適当に。その1

すでに先日の日記でも引用しましたが、最近農水省の日本食文化テキストブック『和食;日本人の伝統的な食文化』なるものをちまちまと読んでおります。 事の次第 昨年末ごろに、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたというニュースがありまして、ちょっと…

マクガバン報告って!(農水省の日本食文化テキストによると!)

以前書いたように、マクガバン報告については少々の権威が来たところでゆるがないのですが、農水省さまの日本食文化テキストなるものを読んでいたところ、 その結果、アメリカ人の食生活に警鐘を鳴らしたのが1977年のアメリカ上院に提出された「マクガバン報…

香辛料の使い方

ヨーロッパ人が十五世紀以降東南アジアにやってきたおもな動機は、スパイスや香木に代表される熱帯の香辛料、金などを手に入れるためである、と説明されることが多い。(略) これまで、現代の使用方法をもとに考えてスパイスその他の香辛料は肉の保存や香り…

生体膜は、食事脂質の脂肪酸組成を反映する

身体のあらゆる生体膜は、食事脂質の脂肪酸組成を反映する。 (「ジャパニーズ・パラドクス」*1) たんぱく質などはアミノ酸レベルまで解体されたのち再構築される。豚由来だろうが魚由来だろうが蛇由来だろうが、たんぱく源となった食品のアミノ酸組成など…

アスパラガスのアスパラギン酸

「疲労回復にいいよー。アスパラギン酸って、栄養ドリンクに書いてあるでしょ。アスパラガスから抽出されます」 と言ってアスパラガスを並べている八百屋さんがいらっしゃいました。アスパラギン酸が疲労回復にいいのかどうかはとりあえず置いておいて、アス…

カルシウムの吸収について

先日取り上げた『最新栄養学』*1には、いくつかの食品についてのカルシウム吸収率が載っている表があるのですが、そこに載っていた白菜とブロッコリーがすごかった*2。 svサイズ(g) カルシウム含量(mg) Ca吸収率(%) 吸収可能なCa量(mg)/sv 牛乳 240 300 32.1…

カルシウムとリンについて

以前「乳糖不耐症があるからって、牛乳否定しないでね!」というのを書いたのですが、そちらの記事におおむね以下のようなコメントをいただきました。 おおざっぱな数字として、牛乳100gあたりに含まれるカルシウムは120mg、リンが100mgである。 吸収率はと…

そういえば過去にもやった、たんぱく質の摂取について

とあるblogのコメント欄で、「日本人男性のたんぱく質必要量は60g、牛丼で言えば3杯なのだから、気をつけなければ不足する。プロテインでも如何か」なる旨のコメントを見かけて、疑問点が3つ沸き起こったのでした。 たんぱく質60g必要とはいかなる出典か 牛…

脚気が想像以上に怖かった

栄養士を養成する学校でも、また管理栄養士の参考書でも、栄養学史に軽く触れることがあるのですが、そこでは3人の日本人が登場します。栄養研究所を作った佐伯矩、食事によって脚気を予防した高木兼寛、脚気を予防する成分オリザニン(=ビタミンB1)を発見…

ミルクアルカリ症候群について

20世紀の初め頃に、 胃潰瘍の治療のために、 牛乳とマグネシウム製剤とを、 一緒に飲むという治療がありました。 マグネシウム製剤には、酸を抑える働きがあります。 牛乳は栄養を付け、粘膜を保護する、という目的ですね。ところが、その治療を受けた人の中…

チアミナーゼ論文からのどうでもいいメモ

「昆虫チアミナーゼの研究*1」より この実験は、アフリカの蚕で強力なチアミナーゼが見つかったことから、じゃあ日本で食べられている昆虫はどうなのかというので、 クロスズメバチの幼虫の大和煮 いなごの佃煮 アシナガバチの幼虫 の3種類について調べたも…

食物由来のチアミナーゼ活性について

『卑弥呼は何を食べていたか*1』によると、古代日本の貴族社会ではビタミンB1(チアミン)不足による脚気が流行っていたそうです。これはもちろん、玄米ではなく精米した白米食に移行したことによるものなのですが、それだけでなく、魚介類の生食が大きく影…

はじめて月刊『学校給食』が待ち遠しくなった日

ふだんは適当に流し読みをする*1月刊『学校給食』なのですが、今日手にした3月号は創刊700号記念とかで、学校給食の歴史、献立の歴史を振り返っていて、これがなかなかに面白いものであったのでした。 なのですが、次号の予告を見るに、4月号はもっと期待で…

塩分過多の近代性

人類が最初に手にした調味料は塩です。調味料というより生命維持に不可欠なミネラルです。(略)乾燥した貝類もタンパク源だけでなく塩の摂取手段として貴重です。東京北区中里貝塚でカキの養殖を行っていた縄文人は、乾燥したカキを塩の摂取源として交易に…

納豆のプリン体について

先日会った親戚が言うには、納豆はプリン体が多いのだそうです。 わたくしは一応、社会的には栄養学の専門家の一員であるということになっているので、親戚の間でも、このような話題が出たときに顔を見られるくらいの認知のされ方をしています。ですがたいて…

切り餅3切れと普段のご飯の比較

今、切り餅を3切れ焼いています。これは、ここ数日暴食の気があるので軽くすまそうとの目論見であるのですが、果たして目的に適ったものなのでしょうか。 サトウの切り餅の成分表示を見ると、1切れ(50g)あたりの炭水化物量は26.3gとあります。一方、日本標…

誤解していた地産地消

どうやら、地産地消というのは、今までその土地で食べてきたような伝統食の栄養学的な欠点の改善を、それまであまり栽培されてこなかった農産物をとり入れることで、地元の生産物だけでも十分な栄養バランスが確保できることを目標にした取り組みであったよ…

罰は効果的でない、と行動科学はいう。

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで作者: カレンプライア,Karen Pryor,河嶋孝,杉山尚子出版社/メーカー: 二瓶社発売日: 1998/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (5件) を見る まったく詳しくないので、単…