2007-06-25
小川和也「鞍馬天狗とは何者か 大佛次郎の戦中と戦後」
- 作者: 小川和也
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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コメント 大佛次郎の「戦争責任」を未再刊の作品群を読み解くことによって描き出し、その思想と行動の源泉を(私小説の傾向を強める日本の近代文学の中にあって)「大衆小説」家として、常に「国民」とともにあるという同胞意識の中に求めている。大佛の描く(或いは彼自身の分身たる)鞍馬天狗という存在は、独りの「個」としての存在でありながら、その「個」は社会化されたものである。
鞍馬天狗は常に独りであり、「個」として存在する。だが、その「個」のありかたは、社会と距離を置き、自己の世界に閉じこもるようなものではない。天下国家への関心をもち、社会変革の可能性を信じて疑わない。現実逃避型の「個」ではなく、また、自己の欲望のみを追求する利己的な「個」でもなく、政治状況のなかに身をおき、必要があれば他の「個」と連帯して権力と闘う社会化された「個」である。
戦後民主主義の中でもたらされた高度経済成長は、国民意識の私生活主義化をもたらすが、鞍馬天狗に傾注する小川は、そうした時代の流れには批判的である。一方、「滅私奉公」、つまり「私」を棄てて「祖国」に献身するような愛国心は、さらに危険なものである。「「私」的欲望を超えて「自由」という「大義」に飛び込む覚悟」といった言葉に表れるような、「個」として在りつつも、「物における(の中での)自由」を追求することが、大佛の精神を引き継ぐことであると言えようか。*1
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