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2009-06-30

「深夜読書のススメ」その7/ブームが出会いになればいい…いとうせいこう・みうらじゅん「見仏記 ゴールデンガイド編」

5月にアマゾンで頼んでおいた村上春樹の「1Q84」が届くまで、ずいぶん時間がかかった。落ち着かない気持ちで本屋に出掛けたら、「仏像コーナー」ができていた。空前の仏像ブームなんだそうである。東京国立博物館の薬師寺展や阿修羅展が大入り満員になり、モデルの「はな」みたいな若くかわいらしい女子がブツへの愛を語っていたり、これは若冲ブームのときに似ているな、と眺めていたら、懐かしい本を見つけた。いとうせいこう・みうらじゅんという仏友2人による「見仏記」、7年ぶりの新刊はゴールデンガイド編。

見仏記 ゴールデンガイド篇

見仏記 ゴールデンガイド篇

既刊のシリーズ4巻は文庫化され累計40万部というから、説明の必要はないと思うけれど、「見仏記」はただひたすら仏像が好きな男2人が仏像(や土産物や周辺の風物)について語り合いながら日本全国はもとより韓国、中国、タイやインドにまで旅するエッセーだ。専門的知識にしばられることなく、仏が作り出す空間を全身で感じながら、ときに妄想を交え、ときに創建当時の人々なりきって味わう。みうらじゅんにとって仏像は超人気ミュージシャンで、極楽浄土からやってきて御堂でコンサートを開いているのだ・・・。三十三間堂の千体仏のダイナミックさを映画「十戒」の海が割れるシーンにたとえたり、当麻寺の邪鬼の踏まれっぷりに感嘆したり、名言は数知れず。何より、一緒に仏に向き合っているような気になるライブ感がいい。彼らと寺を回っていると、寺院の空間はこちらの心の内を映し出す、極めて質の高いインスタレーションでもあることに気づかされる。

そこでゴールデンガイド編。名前とは違い、奈良・京都だけでなく会津や和歌山など「パ・リーグ的渋さ」の仏をセレクトしている。かなりのマニア度なので(会津の3大ころり観音とか)、旅行で見た仏像を思い出しながら読むという楽しみはないかもしれない。白虎隊自刃の地でいかに死ぬかを考えてきた会津の人々に思いをはせ、子供のはしゃぎ声を聞きながら仏を見ている今を天界にいるようだと感じる。西日を御堂に取り込む兵庫県・浄土寺の阿弥陀三尊来迎の光景を見つめ「我々の方はいずれ消滅して西日に照らされてなくなるのだ」と思う。1993年のシリーズ開始からずっと2人の旅に同行させてもらった私には、ロックスターの追っかけみたいににぎやかだった旅が、「メメント・モリ」の道行きになる、その心の変化がとてもよく分かった。しんと心に沁み入るような読後感を、このシリーズで味わうことになるとは!

瞬間風速の強さを競う「ブーム」は、好きではない。上っ面だけもてはやしてどんどん消費している感じがするから。だけどこの2人は、ブーム、最高じゃん!と言うだろうな。それを出会いのきっかけにすればいい、そこから自分の旅を始めればいい、と。小説だって同じだ。今の恐ろしいほどの村上春樹ブームも、もっとほかの作家や作品にまで広がってくれればいいのだけれど。

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