「山福印刷」の山福さんたちトーク&ライブ、終了!

盛夏。トークに先駆け、若松のヤマフク印刷を訪ねました。


裏山書房健在。表札には故・康政さんの名が。



康政さんの妻・緑さん、長女朱美さんと。
現在、神奈川在住のおふたり。朱実さんの仕事で、帰省中でした。


「雲のうえのしたで」発見!0号〜3号は、康生さんに印刷していただきました。


康政さん作

康生さん作。

他にも名だたる方々(ナイショ)の作品があちこちに。


歴史を刻んできた印刷機や康政さんの蔵書棚なども拝見したり、
打ち合わせと称した訪問に、おふたりを3時間以上お付き合いさせてしまいました。


そして迎えたトーク当日。山福印刷ゆかりの方やファンが続々集合。


右から、長男・山福康生さん、朱実さん、緑さん、工場長・高橋勝行さん


山福印刷とは、若松とは、いったい何だったのでしょう…?
康政さんやゆかりの方々の著作から山福印刷の仕事を拾い上げ、
略年表を作成し、これをもとにお話を伺うことにしました。

ほんの一部ですが、参考にした資料は、新しいものだけでもこれだけあります。
上野英信、穴井太、鶴島正男、石牟礼道子…そうそうたる方々。


当日は、ほかにも古本や檸檬さん(黒崎)に「天籟通信」や天籟句会アンソロジー
「ほも・くまそ」など、貴重な資料を披露していただきました。



1950年、ガリ版や「なびす工房」として生まれ、今日まで。
印刷、出版、装丁、デザイン、文筆などにわたり、膨大な仕事を成してきた康政さん。
学校の文集や年賀状などでも頼られる街の印刷屋さんでもありました。
なびす工房、ヤマフク軽印刷、ヤマフクプリント、ヤマフク印刷…と名称もいろいろと
変遷したことからも、印刷技術の変動の激しかった時代がうかがい知れます。



数え切れないほどのエピソードがありましたが、いくつか。



筑豊文庫の故・上野英信さんご家族との行き来も頻繁で、親交の厚かった康政ファミリー。
英信さんの一人息子・朱さん(古本アクス)によると、一切お酒が飲めなかった康政さんですが、
酒豪の英信さんとしらふで最後まで付き合える2人のうちのおひとりだったとか。
お酒のお相手は、いつも緑さん。きっぷもよく、明るかった緑さんは、英信さんの妻・晴子さんから
「鉄火場の女」と評されていたそう。いつも笑顔で、笑いの絶えない時間だったそうです。



1976年に康政さんが脳血栓で倒れて以来、山福印刷を実質支えていたのは緑さんと工場長の高橋勝行さん。
とくに緑さんは子育て、康政さんとご両親の介護、経営も経理もされていたとか。
それでもいつも明るく、夫婦仲も良くていつも一緒。
朱実さんは、緑さんの愚痴は一切聞いたことがなく、家族とはこんなものと思って育ったそうです。



絵本作家で版画家の朱実さん。
芝居を目指し上京したものの、いつの間にかイラストレーターの仕事を得て、
ご縁あって版画の道へ。
つい最近、石牟礼道子さんの『水はみどろの宮』(2016年3月、福音館文庫)の挿画を担当。
版画51枚を手がけられました。なんと、親子2代にわたる交流!
手間暇かけて、彫っては刷る…という作業を朝から晩まで繰り返しているうち
「いまやっている作業は、まさに印刷やの仕事じゃないかー」とはたと気づかされたそう。
幼いころから馴染んだ光景が体に染みついているのだろうか。。。と
ご自身も不思議だなぁと語られていました。



途中、60年ぶりというお隣に住んでいたという女性が、康政さんが描いた少女の油絵を披露。
なんでも、ご自身がモデルだったらしく、康政さんが持ってこられたそうです。
このことは緑さんも知らされていなかったらしく、昔話に花が咲いていました。



最後に今夏、印刷やの看板を下ろすと新聞に発表した康生さん。
ちょっとした波紋を投げかけました。


2016年7月10日付 毎日新聞文化欄


気になるこれからについて質問したところ、
「まだ仕事が入ってきているから、しばらく続けていこうと思う。
印刷業のほか、何か別の形で続けていけたら」と。
一同騒然 笑
でもファンとしては、なんとも嬉しい発言でした。



康生さん(細密画が得意!)や朱実さんの上京話なども根掘り葉掘り…
どんな質問にも気持ちよく応じていただきました。



お聞きしたいことはまだ山ほどありましたが、時間切れ、いったん終了。
ファミリーのお話には、時代や生活の匂いがありありと感じられ、
忘れたくない、忘れてはいけない大切な何かを教わったような気がします。


「母の話は面白いから、ぜひたくさんの人に聞いてほしい」と
朱実さんの一声で急きょ企画したこのイベント。
まさにその通りでした!


ファミリーから「楽しかったよ」との感想いただき一安心。
ほんとうにありがとうございました。
歴史はまだまだ刻まれていきます。



さて2部は、朱実さんの歌と末森樹さんのクラシックギター演奏を楽しむ時間。


朱実さんの詩にイマジネーションを受け、末森さんが作曲した曲を中心に。
澄んだ歌声と明るさは緑さん譲り。
ギターの美しい旋律につつまれていました。


終了後は、ご近所「みのり」で打ち上げ。

緑さんはいつも目がキラキラ☆愉快なお話たくさん!


なんと、帰省中の牧野伊三夫さんも参加され、ますますにぎやかに。


恒例!田口画伯の似顔絵。


このたびのイベントでは、古本や檸檬さん、上野朱さん、毎日新聞長谷川記者、
火野葦平資料館館長坂口さん、その他にもたくさんの方にご協力いただきました。
ありがとうございました。


長い長い一日でした。
山福さんや若松に今後ますます注目です!!


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興味ある方は、ぜひ康政さんの著作をお読みください。おススメです。
書店ではお目にかかれず、どれも古本になるかな。
手に入りやすいものもあります。


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山福朱実「ヤマネコ毛布」原画展、ただいま九州を巡回中です。
詳しくは朱実さんのブログで 




(みやした)