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図書館情報学を学ぶ

title photo by Thomas Hawk

2010年11月27日

「大規模デジタル化時代における『知』との接点」(第12回 図書館総合展フォーラム)

id:humotty-21 さんより依頼を受けて図書館総合展フォーラム「大規模デジタル化時代における『知』との接点」の記録を担当したので、本ブログに掲載します。

イベント概要

大規模デジタル化時代における『知』との接点−Wikipedia電子書籍Twitterの潮流をライブラリアンはどう受け止めるか

http://d.hatena.ne.jp/sogoten/20101102/p23

はじめに

  • 司会:
    • このフォーラムの趣旨はウェブ上に存在する知識の活用をみなさんと一緒に考える
    • 予定調和的なものではない
    • みなさんぜひディスカッションに参加していただきたい

渡辺智焼 / 「Wikipediaからみた、教育と研究 - Wikipediaの教育-研究利用を巡って」

  • ウィキペディアは無視できない存在になっている
  • 便利(すぐ使える、わかりやすい、無料、大規模でカバー範囲が広い)
  • メディアとしての特性を知って、リスクについての想像力を養う方がよい
    • 全面的に禁止よりもよいのではないかと思う
  • 恐れられているほど悪くはないが、使い方を間違えると痛い目も見るかも
  • マスメディアや学術情報
  • メディアリテラシー
    • 誤り、偏り、虚偽のリスクをかぎわける嗅覚-批判的に受け止める想像力
    • 組織や運営体制、編集方針への理解
    • マスメディアや、学術資料を利用する際にも有益
  • ウィキペディアの仕組みと方針
    • 誰でも投稿でき手誰でもかきかえられる
    • 担当編集者のような存在はいない
    • 気が向いたら投稿するというスタイルですべて成り立っている
    • ウィキメディア財団も同様
      • 非常に責任感のある方が多いので、気が向いたらという言葉のイメージとは異なる熱心さ、きっちりとしている
    • そのため、関心が集まっている項目については比較的信頼性が高い、検証可能性がある
    • しかし、関心が集まらない主題については品質にムラが出がち、真偽のチェックが難しい
    • 特定の説や立場を主張するのではなく、それらを説明するだけにとどめる
    • 信頼できる資料に基づいて、出典を明記する
      • マスメディアや学術資料に拠っている
  • ウィキペディアの利害関係
    • 悪人と呼べる人はそう多くない
    • 宣伝、情報操作印象操作をしたがる人は割合として増加した
    • ウィキペディア参加の動機は、知識の共有-間違いの訂正-プロジェクトの理念への賛同-参加者のつながり
    • オンラインサーベイによると、研究機関の人間や大学の先生等の専門家の参加が多い
    • 執筆者も管理者も優秀であって金銭的報酬は無い
    • 主に寄付でなりたっているため、広告主への気遣いはない
  • 信頼性に関する調査
    • Natureに載った調査では、英語版は専門的学術百科事典や総合百科事典と比べ少し劣るか、遜色ない
      • 例外的に薬品の副作用の記述は専門的なレファレンスと比較して著しく劣っている
      • 英語版対象なので日本語版にはあてはめられない
      • ただし少なくともウィキペディアが信頼性のないメディアだと必ずしもいえないことがわかる
  • 透明性の力
    • 各投稿者の過去の行動記録
    • すべてのページのすべての”版”(誰がいつ、何を書き変えたか)
    • 各投稿者の自己紹介のページや連絡用のページ
    • 各項目についての議論のページ
      • →気がかりな点・人については調査可能
      • プログラムによるレーティングの取り組みも存在
  • 最後に
    • 短期的には「賢い読者」になることが重要
    • 長期的には「優れた情報資源」を構築していく手助けをしていく

長谷川 / 「図書館利用者の本音と建前、ライブラリアンの本音と建前」

  • Wikipediaに対する反応
    • 図書館利用者は、大いに歓迎
    • ライブラリアンは大いに困惑
    • ライブラリアンはどう受け止めるか……
      • サービス領域拡大のチャンスは、歓迎すべき
      • しかし、対応するとなると、悩みの種は多い
  • 1:悩みの種
    • Wikipedia、電子書籍、ツイッターは図書館業務のどこに納まるのか?
    • サービス:どこが提供するか?
      • 業務:どこが収集やメンテナンスを担当するか?
      • 予算:どこの予算で購入するか
    • 図書館の資料と仕事の範囲はどこまでか?
      • 良いメディアであることは分かるが、自分たちはいったい何者なのかを常に問われている
      • 狭い範囲への残留VS生き残りのための範囲拡大
      • 本来、図書館自身が決めること
      • 結局、業務(組織、予算、人員)の枠組みで決まる
    • 蔵書構築の役割は蔵書のパブリックドメイン
      • 結局Wikipediaと同じことを考えている
      • 目録標準化や目録データ蓄積は、評価されるべき
      • その蓄積がGoogleやカーリルに活かされている
  • 2:蓄積した王書と職員の現状
    • 専任職員は28%減っている
    • 専門性への理解の実態:大学の他部門15部門のうち14位……
  • 4:
    • どこまでが図書館員の対象領域となりうるか?
    • 効果的な利用支援はなんなのか?

[ 清田 / 「現場の実情にあわせた情報技術の可能性と課題と - 集合知と編集知を融合させるために、マイニング探検会の経験に基づいて」 ]

  • Wikipediaを工学的な観点で
  • 関心分野
  • 自由回答文の分析
    • 52名の方からの自由回答分を言選ウェブで分析
  • -主な観点
    • -情報サービス提供者と利用者のどちらからの観点か
    • -媒体としての性質はどうなのか?
    • -期待と危惧
      • -可能性-利用価値
      • -信頼性-危険性
  • (4つの乗り物の写真を示し)分類してみてください
  • Wikipediaの有用性は?
  • なぜWikipediaを使うのか?
    • 多数の参加者による編集
    • 半定系データ
    • 外部情報リソースの連携
    • 項目の組織化
  • Wikipediaの知見

パネルディスカッション

  • 司会:
    • Wikipediaは必ずしも信頼性があるわけではないという懸念
      • 信頼性はユーザーが評価ができればいいのでは
      • 量が質に転化する
    • そもそも「信頼性」とは何か?(信ぴょう性、正確性、確実性、いろいろある)
      • 立場に依って信頼性も変わるのでは?
    • 信頼性についてのみなさんの意見をきかせていただきたい
  • 渡辺:誤り・かたより・虚偽がないところが一義的なのではないか?項目をもとに論文やレポートをまとめようとするとそういったものがあると本質的でないところでひっかかってしまう。Wikipediaの狙いは多くの人が入ってくることで信頼性を高めようとしている。これが少数のアマチュアであったら信頼性ははるかに低くなるだろう。
    • また、信頼性を保証するわけではないのは確かだが、それは学術論文等の世界でも同様の問題が起こっているのではないかと思う
  • 長谷川:抽象的に信頼性の問題を説明しても大学生はわかってくれないだろう。具体例を示して丁寧に説明し、Wikipediaをとっかかりのメディアとして理解してくれるようにすれば使い分けてくれるだろう。信頼性そのものについて懸念は抱いていない
  • 清田:信頼性はやはり意見の多様性を尊重し、他のメディアと比較併用できる手段が提示できることにあるだろう。後者が実現されればもちろん信頼性は向上される。
    • たとえばリッテルナビゲーターではJapan Knowledgeの項目を検索結果と併せて表示している。このような工夫が必要だろう。
    • Twitterについてもデマが流れたりするなど信頼性の問題があるが、後に誤報であることが流れていく等、独自に信頼性を担保するような工夫がなされている。
  • 司会:Wikipediaの信頼性の担保に継続的な項目の更新があるが、例えばどういった項目が更新されやすいのか?
  • 渡辺:事実に関する項目は比較的更新されやすいが、概念や理論に関する項目は、どう噛み砕いて解説するかを考えていかなくてはならないため、更新が遅くなってしまうという点がある
  • 司会:各ツールの特徴と使い方を熟知して示す役割は誰が担うのか?図書館員なのか?
  • 渡辺:やはり図書館員がやっていくべきであり、どこの場面で活用していくのかを抑えていくスキルは必要なので、項目を書けるほどのスキルを持った図書館員が現れていかないと。また、大学の先生にも協力を仰いでいく必要がある
  • 参加者:研修など大学間での連携などはどうか
  • 清田:内部の職員だけでは難しいので、外部から協力者を要請するなどの解決策が必要だと思う。その際には個々の図書館員がTwitterなどのコミュニケーションツールを使うことでゆるやかな連携ができるのではないか。
  • 参加者:有名大学の学生がWikipediaに積極的に投稿していくという運動を行っているというニュースが英米であったが、そのように団体でWikipediaの活動に参画していく例は既に存在するのか、またそのメリットとデメリットは何か?
  • 渡辺:言及されていたのはアメリカの例。公共政策分野の授業の課題として複数の大学が連携して行った。またNIHの職員がその種の講習を行う活動を行っている。日本では日本土木学会などが先生が学生にレクチャーしながらWikipediaに投稿していくという試みがある。またウェブ学会ではライセンスを工夫して査読論文の成果をWikipediaに反映することができないかと考えている
    • また、ウィキメディア主催のイベントでは学術機関との連携をいかにするかというディスカッションがあった
    • メリットとデメリット。専門家をつい尊重してしまう。Wikipediaでは公平に参加するので流れがそぐわないこともある。また、参加にあたって人格やコミュニケーションに関する衝突が起こることもあるだろう。
  • 司会:Wikipediaは既に構築された知識を公開するという狙いがあり、それが最も蓄積されているのは大学などの学術機関である。オープンアクセスなどの普及によって間接的にWikiepediaの活動に参画することになるだろうと個人的には思う
  • 参加者:教育の場面でWikiepediaをいかに使うかについて。Wikipediaを使うなと言うと後に専門家になった学生がWikipediaに参画する意欲を削ぐのではないか。それよりかは、Wikipediaを使ってもいいが自分も書き込めというような参画への導入を意識した教育実践であるほうがいいのでは。また、提案としてWikipediaへの活動を促進するためのサンドボックスなどは必要なのではないか?
  • 渡辺:Wikipediaのソフトはオープンソースであり、項目もフリーライセンスなのでどちらも自由に使える。これらを活用したサンドボックス事業をウィキメディア財団が率先してやるべきという意見だと受け取ったが、それについては一理あると思う
  • 参加者:Twitterについて。ライブラリアンがどう受け止めるか
  • 長谷川:Twitterについては情報源として、ソーシャルツールとして使っているが、後発のツールになるほど使い方の想像がしにくくなっている。組織で使うのは難しいのではないか。あまりにも多くの使い方ができるので、ノウハウの共有ができないのでは。そういう点でWikipediaとは違う性質なのではないかと思う。
  • 清田:ちょっとした操作で情報の発信者にも利用者にもなれるのがTwitter。ただの一過性のブームとの声もあるが、ブームにもたまごっちのようにいずれ誰も使われないものとジーンズのように後々も使われ続けるものの2つがある。TwitterやWikipediaなどの新しいメディアは後者になっていくのではないかという期待を持っている
  • 参加者:問題点の一番大きなところは静的な知から動的な知に変わっていくことにあるのでは。今までの図書館はアーカイブが重要だったが今では異なる。そこにライブラリアンがどう受け止めるかという問題の根幹があると思う
  • 清田:Twitterなどはあまり過去を辿りにくいメディアだが、レコードとしては残っているしいずれ参照できるようになる。そういった過去のレコードをどう活用するかという点が図書館が取り組むポイントなのかもしれない
  • 司会:レコードが残っているといってもTLを再現するのは難しい。それをどう解決して静的にも扱えるようにするかは課題だと思う

参考記事(他サイト)

カテゴリー
言及した本
  • パターン認識と機械学習 上 - ベイズ理論による統計的予測
  • 不平等の再検討―潜在能力と自由
  • 経済学の名著30 (ちくま新書)
  • システムの科学
  • 未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)
  • 図書館資料論 (新・図書館学シリーズ (7))
  • ウェブサイエンス入門―インターネットの構造を解き明かす (コミュニケーションサイエンスシリーズ)
  • 図解 よくわかるデータマイニング (B&Tブックス)
  • Rによるデータサイエンス データ解析の基礎から最新手法まで
  • 集合知プログラミング