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図書館情報学を学ぶ

title photo by Thomas Hawk

2008年02月01日

「場所としての図書館」とメディア

私の「場所としての図書館」論

以前、「次世代の「場所としての図書館」のあり方を自分なりに考えてみました - 図書館情報学を学ぶ」という記事を書いたことがありました。そこでは図書館から「話し合いの場所」としての有用性を見いだして「図書館員が利用者の問題に介入する」というような図書館サービスモデルを提示しました。

今でも「場所としての図書館」に対して強い興味を抱いているのですが、先の記事を書いたときとは少し違う見方をし始めています。

私の理論の欠陥

振り返ってみると、先の記事では図書館員と利用者のコミュニケーションにとらわれすぎて、メディアを利用する場所」という図書館の本性を置いてけぼりにしてしまっているように思います。

先の記事を引用して、G.C.Wさんが『”「場所としての図書館」試論”』という記事を書いています。この記事でG.C.Wさんは私の主張する図書館モデルに、それを実施するスペースの点から、やんわりと反論されているのですが、この反論も「メディア」という観点がすっぽりと私の主張から抜け落ちている点が原因なのだと思います。私としては、決して今までの図書館資料を廃棄するとか、電子化するといったことを前提にしたつもりではないのです。

まあ、要約すると先の記事は本末転倒を起こしていた、ということです^ ^) ;;;;

「場所としての図書館」とメディア

自らの失敗に気づいて、思ったのはバーゾールをはじめとした「場所としての図書館」論者は図書館資料と「場所」とをどのように関連づけているのか、ということです。『電子図書館の神話』はかなり前に読んだ本なので、詳細を思い出せないのですが、まさか私のような失敗を犯しているとは思えませんから、何らかの関連づけはしているはずでしょう。明日辺り再読するつもりですが、誰か知っている方がいれば教えてください - -);;;

まとめ

今後は、メディアとそれを利用する場所としての図書館について、もっと詳しく考察していき、再び自分なりの「場所としての図書館」論を論じられればと思います。

関連記事(自サイト)

関連記事(他サイト)

2007年09月13日

次世代の「場所としての図書館」のあり方を自分なりに考えてみました

『情報の科学と技術』最新号を読んでみた

カレントアウェアネス-R 情報の科学と技術 57(9)
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=4114
「情報の科学と技術」抄録 Vol. 57 (2007), No.9
http://www.infosta.or.jp/journal/200709j.html

雑誌『情報の科学と技術』の最新号に「デジタルコンテンツの進展と図書館という特集が組まれていると聞いて、ざっと読んでみました。全体として、デジタルコンテンツ中心の時代になっても変わらない「場所としての図書館」の機能とは何か、ということが論じられているように思いました。

図書館のインタラクティブ性を阻むのは何か

竹内 比呂也「デジタルコンテンツの彼方に図書館の姿を求めて」
http://www.infosta.or.jp/journal/200709j.html#2

私は竹内氏の論文の「インタラクティブ性」について述べた部分に非常に関心を持ちました。著者はWeb2.0のような「ユーザーとユーザー」「ユーザーと運営者」をつなぐ、双方向的なサービス形態が現在の図書館(この論文では大学図書館)に必要であると主張し、それに続けて「なぜ今までの図書館サービスに双方向性が生まれなかったのか」という疑問を投げかけます。

今までの図書館では、利用者間で積極的なコミュニケーションが生まれることは無かった。それはなぜか?それは、図書館員の匿名にある、と著者は主張しています。

図書館と利用者, あるいは利用者どうしのインタラクティブな関係のコアに位置するのは図書館員である。インターネット上でのインタラクティブな関係の構築はソーシャルネットワークSNS)やネットコミュニティの形成という形で議論されている。ネットワーク上での関係性は, 匿名性はあるにしてもハンドルネームを使うことによって各個人を特定化できることがベースにあることに留意する必要がある。一方, これまでの日本の組織は, 例えば, レファレンスをするのは「レファレンス担当係」であって「特定の誰それ」ではなかった。つまりこれまでは組織の名称はあっても組織内の人間は匿名化されており, 個人を特定化できないようにしてきたが, これからのサービスの基盤としてのインタラクティブな関係性の強化を目ざすのであれば, このようなことでは利用者に受け入れられないのではないだろうか。

つまり、今の図書館には生協の白石さんはいないということでしょうか(笑)

たしかに、今の図書館員には何となく職人気質というか、自分を表に出そうとしない雰囲気を感じます。(あくまで私のイメージですが)このあいだ開かれた「図書館系ブロガーオフ会」でも、図書館員はあまり個人ブログで情報発信しない、という話が出ていたのも思い出します。今までの社会では、サービスを提供している人々はあまり表に出るべきではないという風潮がありました。しかし、現在ではむしろ、サービスの提供者がブログを通して積極的に個性をアピールするということが肯定されるようになってきているように思います。

ブレンディッド・ライブラリアンという新しい概念

著者はさらに、双方向性を備えた次世代の図書館員として、「ブレンディッド・ライブラリアン」という米国の概念を紹介します。

米国の最近の議論では, ブレンディッド・ライブラリアン( blended librarian )という概念も見られるようになっている。ブレンディッド・ライブラリアンとは, 伝統的なライブラリアンシップに適切な情報技術についての知識と技能を持つだけではなく, カリキュラムデザイン, インストラクション技術についての知識や技能を持つ図書館員のことを指している。このような考えが出てくる背景には, 図書館員を教育プロセスの中に統合していかなければ, 図書館員は大学の中でマージナルな存在になってしまうという危機意識がある。

この論文では大学図書館の図書館員として説明していますが、つまり利用者の質問に答えていくというだけでなく、利用者の抱えている問題に積極的に介入して問題解決まで導いていくことのできる図書館員が「ブレンディッド・ライブラリアン」なのだと思います。

論文を読んで考えたこと:ワークショップ的図書館論

他人の問題を理解し、その人が自分自身で解決できるように導いていくことをファシリテーションと呼び、それを担う人のことを一般的にファシリテーターと呼ぶそうです。そして、ファシリテーターの支援のもと、人々が自由に行動して新たな問題解決方法を発見するような手法のことをワークショップと呼びます。ワークショップは、まちづくりの集会や研究会など明確なリーダーが登場しない場所でよく使われており、最近では子どもの創造性を伸ばす体験学習プログラム手法としても活用されています。

竹内氏の論文で挙げられている「利用者どうしのインタラクティブな関係性」とは具体的には、共通の問題を抱えた利用者どうしが席を寄せ合ってコミュニケーションをとる、きわめてワークショップ的な状況のことを指すのだと私は思います。

これまで、図書館員が支援できるのは利用者から提示される質問や資料の要求に答えるだけであり、そのおおもとの問題にはかかわることができませんでした。また、利用者どうしが問題を共有していく、という場面も生まれませんでした。しかし、これからは、利用者の活動に他の利用者や図書館員が参加していく、というサービス形態もあっていいのではないでしょうか。利用者の問題に他の利用者や図書館員が継続的に関わっていくことで、問題に対する理解を深め、コミュニケーションをとっていくことで、図書館員はより本質的な情報提供を行っていく。それはつまり図書館そのものが1つの「ワークショップ」として機能し、図書館員がファシリテーターとして働きかけていくということです。

このような図書館のあり方は一見非現実的であるかのように思えるかもしれませんが、ビジネス支援などは利用者の問題に深く介入していく必要があります。また、それに関連した講演会なども最近では開かれています。このようなサービスが現実に存在し、注目を集めているのを見れば、この方向性も間違いではないと思います。特殊なケースとして扱われていた形態が、全体へと広がっていくだけなのです。

そのようなサービスを展開すれば、「あの図書館でミーティングしていると、図書館員さんがアドバイスしてくれるからあそこでやろう」というような期待を利用者が持ってくれるのではないでしょうか。

そのような期待が多くの利用者から持たれたとき、はじめて図書館は『電子図書館の神話』で提示された「場所としての図書館」の意義を持ち得るのではないかと私は思うのです。

おわりに

以上、論文を読んでいて頭の中で思い浮かんだことを自分なりにまとめてみました。一介の学生が書いた意見なので、実際に図書館に勤めておられる方から見れば穴だらけの論理なのだと思います。ぜひ他の方々も意見を言っていただいて、より良い「場所としての図書館」論がネット上で展開されればうれしいです。

関連記事(自サイト)

資料や人がいなければ「空間への期待」を満たすことはできないのでは? - 図書館情報学を学ぶ

関連書籍

ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書)

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ワークショップ―偶然をデザインする技術

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いずれもワークショップについてわかりやすく説明してくれる好著です。「ワークショップ入門」はワークショップに関する講習で必ず出てくる書籍なので特に読んでいただきたいと思います。

企業での会議などで、いかに良いファシリテーターとなるか、その方法について述べた書籍。ブレーンストーミングなど、実践的な会議手法も紹介されています。会議に参加することの多い人には是非読まれてはいかがでしょうか。

このブログではおなじみの書籍。「場としての図書館」について知りたいのであればこの書籍は必読です!

カテゴリー
言及した本
  • パターン認識と機械学習 上 - ベイズ理論による統計的予測
  • 不平等の再検討―潜在能力と自由
  • 経済学の名著30 (ちくま新書)
  • システムの科学
  • 未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)
  • 図書館資料論 (新・図書館学シリーズ (7))
  • ウェブサイエンス入門―インターネットの構造を解き明かす (コミュニケーションサイエンスシリーズ)
  • 図解 よくわかるデータマイニング (B&Tブックス)
  • Rによるデータサイエンス データ解析の基礎から最新手法まで
  • 集合知プログラミング