kurakenyaのつれづれ日記

2010-10-30 葬式に出てみて

一昨日、故郷富山での親戚の葬儀に参列した。それで、「立山」という割と富山では有名な酒を香典返しにもらい、今だらだらと飲んでいる。小生のようなグルメからもっとも縁遠い人間には、とくに味もわからないのだが、、、

葬式というやつは、つまりワケの分からない念仏を聞いて過ごすのだが、昔は、まったく意味が分からないと素直に思っていたが、今はよくわかるようになった。

Jeffrey Miller の近著に「Spent」というのがあって、これはつまり「人間が消費活動をするのは、異性に対して、自分クオリティーの高さを宣伝するためだ」という主張をしている。Millerは昔から、「動物行動のシグナリングゲームは、常にコストを必要とする、でないとコストレスに模倣されてしまい、行為自体の意味がなくなるからだ」というテーマ人間の求愛行動に当てはめている進化心理学者だ。


さて、葬儀は求愛ではないが、結局、自分がいかに故人の死を悼んでいるのか、というシグナリングそのものだ。だから、無意味で長く、辛い念仏を聞くのに耐えることが、その社会性のシグナリングコストになっていると考えれば、ひじょうに分かりやすい。


もちろん、小生自身の葬儀原理主義者だからしたくないが、一般論としては葬儀がムダだとかいう気はしない。特に超自然的な存在を信じていなくとも、自分が死んだら、懇意にしていた人が集まって弔意を示してもらいたい、というのは極めて人間的なのぞみであり、非合理だとかいうものでもないだろう。


今回、故人はすでに扶養家族がいなかったから、誰かを金銭的に助ける必要性と、葬儀に出席するための交通費などとのコンフリクトはなかったのがありがたい。もし、故人の死によって金銭的に困った人がいるのなら、小生は葬儀に出席する交通費用などを彼らに渡すことを選択しなければならないと思っているからだ。


で、そこで初めて出会い、ちょっと一緒に遊んだ故人の7歳の孫(小生のイトコの息子)がいたので、小さな友情の証として今日は彼にDSソフトとLaQというブロックを送った。そういう形でfamily reunion の機会になるのは葬儀の有益な機能なのだろう。


それにしても、土気色をした亡骸が焼かれ、モロい骨だけになり、それをつぶして箱に入れるというのは、人生の有限性そのものを感じさせてくれる。

「出会い、別れ、土に埋もれ、日が沈むように死んでゆく」というB'zの曲があったが、そういった程度のことなのだろう。

2010-10-24 マニングの2D:4D 読んでみた

指の長さの研究で有名なマニングの『二本指の法則』を読んでみた。

マニングは、人差し指対薬指の割合2D:4Dが小さいことは、胎児期におけるテストステロン男性ホルモン)のレベルが高いことを使った研究でたいへんに著名な心理学者である。

この2D:4Dを使った研究は、この10年間にひじょうに広く大量にある。それは、マニング自身が報告している、サッカー選手としての成功や、数学者としての成功など、明らかに男性度が高いほうが成功しそうな職業に限らない。つい最近経済に関して、ロンドン債権トレーダーでは、小さな値=男性性が高い、ほうが職業的な成功の度合いが高いことが報告されている。

こういった耳目を集める内容も本書には含まれていて、読むことが面白いというのは事実だ。しかし、私がむしろ驚いたのは、著者マニングがそういった単なる思い付きの学者ではなく、進化論に基づいた論理を展開している点である。

例えば、男性ペニスの発生過程を調節する遺伝子(homeo-box)は指の発生も調節していることは広く知られている。しかし、著者が指摘するように、この薬指とペニスの調節遺伝子が、進化の過程で生物陸上に上がり、その結果、強い指の骨と相手に精子を確実にメスに送るための外性器が共に必要になったために、相関的な関係があるのだという説はもっともらしい。薬指がよりテストステロンに反応しやすく、毛深いという事実も興味深い傍証となっている。


こういった学者好みの論理は一般受けはイマイチかもしれないが、私のような進化論者にとっては、むしろ報告の信憑性を高めてくれる。

最後に、著者の主張する、皮膚のメラニン量=肌の黒さが病原菌への耐性を高めているという仮説はひじょうに興味深かった。マニングはさらに、この病原菌耐性が、一夫一婦制などの婚姻システムとも相関しているという。一夫多妻競争の高い社会では、男性の平均的なテストステロン濃度があがることになるが、その副作用として免疫力が下がる。その代償として、男性は肌のメラニン量を増やして、病原菌に対抗するようになるのだという。

これが本当なら、集団内においても、肌の色の濃い男性はより乱婚的であり、激しく性的シグナルを送るだろうと予測される。これは一体本当なのか?? 誰か確かめてもらいたいものだ。

というわけで、マニング教授色物ではなく、真の学究の徒であることがわかり、私は大変に驚き、感銘を受けた。皆さんも、ぜひ読んでみてください。

2010-10-14 「第二のマクガバン報告」オススメします

そういえば、先日小生は「ベジタリアニズムは体にも地球にもいいよ」という公開講座をした。正直なところでは、小生は地球温暖化はよくわからないのだが、とにかく、公開講座は対象が一般の方なので、当たり障りのない内容が好まれるので、そういうマーケッティングになる。

で、1時間ほど話したのだが、先日、それに出席していたという方から、「あなたの話していた"THE CHINA STUDY"という本はすでに翻訳されていますよ。」というハガキをいただいた。驚いて、お礼のハガキをだしておいた。

葬られた「第二のマクガバン報告」(上巻) T・コリンキャンベルトーマス・M・キャンベル松田 麻美子 (単行本 - 2009/12/16)

新品: ¥ 1,890

上中下巻のうち、すでに上中巻が発行されていた。変な名前になっていたので、気付かなかった。皆さんにもオススメしますので、是非お読みください。

2010-10-13 hyperbolic discounting etc.

今日仕事地元企業採用担当の方々とのパーティに参加。僕のような世捨て人には話が難しくて、荷が重いぜ、はあー。

ところで、そのパーティの講演にテレビで有名な大物評論家福岡政行さん(だったか?)が登壇、「今後の政治経済」みたいな話をして、サッソウとお帰りになった。さすがに大物は違う、と感心した(バク)。

とまあ しかし、どうでもいい話ではないところでは、今日は南本敬史さんのJournal of Neurophysiology の論文

http://jn.physiology.org/cgi/content/abstract/101/1/437

をダラダラと読んでみた。これはサルマカク)を使った実験で、ある単純な活動を成功させると、報酬(水)が時間をおいて与えられる。その活動の失敗率を計算すると、時間が長くなるに従って、時間選好が確かに、hyperbolic discounting の形をしているというものだ。

ハトやマウス実験でも、hyperbolic discounting が出ていたし、人間への質問でもそのようだ。マカクでもそうなら、ここには何か神経的な基盤があると考えるのが妥当なように思われる。経済理論では、recursive な特性が好まれて、exponential discounting が使われてきたのは周知の事実だが、ここまで何度もhyperbolic discounting の話ばかり実証されているのを見ると、さすがに(哲学としてはともかく科学者としては)そう考えざるをえないというものだ。


昔から考えてきたように、未来の状態の認知能力と関連した回路の何らかの必然的な特性なのか、あるいは、もっと単純にニューロンのつくる回路全般のweber-fechner的な特性なのか、そのへんはよくわからないが、今後の神経科学、行動学、経済学課題だろう。


そういう風に考えてしまうと、今までと違ってマクロモデルは解析的には解けなくなってしまうだろうが、あるいは別の部分の変形や単純化(例えば効用関数のKahneman Tversky model)+数値解析で、面白い経済モデルが量産されるようになるかも知れない。

2010-10-11 日経電子版が7万subscriptionも!

今日すこしばかり近くのモスバーガー仕事をしていたが、そこには日経新聞がおいてあるので、気晴らしになるので時々読んでいる。

それで、今日の記事の中に、日経電子版を購読している有料会員がすでに7万人もいるということが書いてあった。これは、有料メディアモデルで先行するウォール・ストリートジャーナルにも匹敵する成功だという。そういえば、テレビ東京を見ていると、いつも宣伝してますわなー。

なるほど、僕はキンドルを2台持っているし、アンドロイドPCでもキンドルソフトを入れているから、同じように多様なデバイス日経を読むというのは、一つのスタイルとしてありなのかも知れない。

でも、日経にはコアで比較的にリッチななビジネスマン読者がいるが、他の新聞にはそれほどの魅力があるのだろうか? 

確かにテレビニュースは、映像だから閲覧できない。紙のメディアというのは一覧性は高いから、5千万世帯の国で、新聞が5千万部出ているというのは資源のムダだとしても、500万人ぐらいは紙でもあるいは電子版でも読むひとがいても不思議ではないようにも思う。


それでも現在の10分の1の規模でしかない。首相政治家の周りには高給取りの政治部の記者がいつも何十人もとりまいているようだが、どう考えても、あれはムダだろう。専門紙や地方誌のように、もっと独自の独自ネタローカルネタを探してくる方が、いいように思うのだが、、、

おそらく新聞業界は、僕の勤める大学業界と同じ程には危機的な状況が続きそうだ。

2010-10-09 繁栄 by Matt Ridley

今日、小生は職場仕事選書をしていた。で、10月22日に早くもマット・リドレーの『繁栄―明日を切り拓くための人類10万年史 』が上下巻で発売されることを知ったので、皆さんにもオススメします。

繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(上)
著者:マット・リドレー
早川書房(2010-10-22)
販売元:Amazon.co.jp
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原題は「The rational optimist 合理的楽観主義者」で、交易生産の特化は、都市を作り、農業生産に先立って、人類生産性を向上させた。産業革命以後の科学人類の生活は改善し続けているし、地球環境はよくなっている。エネルギー、食料、戦争など、あらゆるタイプの悲観論は2世紀前からあったが、常に外れてきた。今後もアフリカ市場化によって経済は回復し、それに伴って人口爆発など懸念も低下するだろう、のといった重要な指摘をしている本です。

僕は先日 fuyusyaさんとのメールでもこの話をしたのですが、仮にM・フリードマンが言うように、人類生産ポテンシャルの半分しか政府規制によって実現していなくても、また、Boldrin and Levineを読んでからの僕の視点では、政府規制によって半分しか経済成長が実現していなくても、それでも人類は確実に進歩し続けるはずです。

これこそ合理的楽観主義であり、昔からリドレーのファンであった小生は、彼がこういった悲観論の支配する時代に一石を投じたことには、快哉を送りたい。まったくもって Bad news sell! の法則で、世の中が悪くなっているように思っている人が昔から左翼には多いが、そこで安直文明批判、科学批判につながるのがオチというわけです。

リドレーのように、もっとまともなことを言う人が増えて欲しいものです。