kurakenyaのつれづれ日記

2016-11-30 この20年の貨幣数量説

みなさん,こんにちは


7講は,主に貨幣数量説についてです.貨幣量が2倍に慣れば,物価が2倍になるという単純な話なのですが,なぜかこれを信じない人がいるのはなぜでしょうか? 


つの重要理由には,貨幣数量説は明らかに短期的には成り立っていないという観察事実があります.


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というわけで,日銀通貨供給量M3(彼らはマネーストックという言葉を使う)を見ても,過去15年間に通貨供給は1000兆円から1300兆円まで増加しているからには,もし貨幣数量説が成り立っているなら,少なくとも30%ほどのインフレが起こっているはずです.明らかに,デフレが起こってきたことからすると,通貨流通速度が低下してきていると考える他はありません.


上の日銀グラフは2002年で切れているのですが,統計をテキトウに継ぎ接ぎして,もっと遡ることもできます.それを見ても,1993年くらいからは一貫してM3に当たる,マネタリーベース通貨供給は1.5倍を超えて増加しています.日本GDPがこの間,ほとんど一定であるからには,最近20年以上も続くデフレというのは,いかにも不思議です.明らかに貨幣数量説は成り立っていません.


おまけに,期待インフレ率(BEIと呼ばれる)もまた1%をはるかに下回っています.期待インフレ率は,インフレ調整された国債と,通常国債金利から推定されますが,少なくとも債券ディーラーたちは,近くインフレが起こるとはまったく予想していないのです.実際M3の2−3%をはるかにこえる増加にもかかわらず,期待インフレが低いのは,経済学にとっては完全なナゾです.もちろん黒田総裁には予測できなかったでしょう.


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というか,これはそもそも黒田さんという程度の人の問題ではなくて,過去のどの偉大な経済学者にも予測不可能だったことだと言えます.もちろんミルトン・フリードマンや,あるいはもっと最近ポール・クルーグマンを含むすべてのケインズ主義者にも,こうした現象予測できないものでした.


ここから何が結論できるのか?  バカらしくて面白くもない命題ですが,「経済は我々の現存知識理解を超えて複雑であり,何かを予測したり,いわんやコントロールできる状態にはない」ということなのでしょう.


通貨供給量からではないなら,インフレ予測が実際にはどのように形成されるか,という問題はあまり重要であるのですが,現在経済学はその答を持っていないし,もっと根本的な行動科学者も含めて,我々の経済についての知識は,未だに中世錬金術瀉血療法の医学程度のものなのでしょう.



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2016-11-22 おカネという不思議

18歳から考える経済と社会の見方

18歳から考える経済と社会の見方



みなさん,こんにちは


6講以降は,おカネの話です.貨幣というのは「価値が無いのに,価値がある」みたいな謎かけの不思議さもあるので,メジャー経済学者は一筆書いてみたくなるものなのでしょう.ケインズ始め,多くの経済学者が,貨幣と実物経済関係について書いています



確かにおカネは不思議ものですが,財の交換に特化した商品だと見ると,それほど変わったものではないとも考えられます.何がそうしたおカネになるのかという,進化ゲーム理論的な考察は難しいのでしょうが


僕が学生時代に軽く読んでいたガルブレイスの本だったかに,アメリカ南部ではタバコ通貨として使われていた話が載っていました.南部ではプランテーションが盛んだったからでしょう.理論的にはどんな商品でも通貨になりえるはずですが,金・銀・銅が多いのは,装飾具としての内在的価値・希少性・不易性などのためです.


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原始的な交換経済では,金属がそのままその場での交換に使われますが,信用経済に発展すれば,金属所有権を化体する有価証券紙幣が主流になります.その後はさらに,預金でも同じ決済業務ができるので,つまり銀行預金自体が,おカネと見なしてかまわないわけです.


これはしかし,けっこう難しくて,あまり理解されていない点です.なぜって貨幣から紙幣までは物理的に見えるが,預金残高というのは単なる抽象的な数値でしかないので,それがおカネであると考えるのはけっこうに高度な抽象的な思考必要からです.これがわかるだけでも,おそらくは大学の「金融論」とかの,最初の数時間に値するように思います


実際にヨーロッパ人預金通貨だと考えるようになったのは,おそらくは19世紀の時点であって,それ以前は「預金紙幣であるとは,まったく考えられていなかったわけです.実際,これはこれで,けっこう大きな視点の転換です.


似たような話ですが,例えば,アリストテレス時代には,力というのはすべて接触によってしか伝えることが不可能だと考えられていたようなものです.その場合重力電磁力などのように媒体のない力の伝達は不可能だということになりますが,そんなことを言うやつは今はいない.つまり力の伝達についての常識が変化したのです.同じように,通貨=交換媒体というもの銀行預金が含まれるというのは,間違いなく人類史上の,一つの思考進歩です.


で,現代通貨供給量であるM1,M2など,なんでもいいのですが,それらには必ず預金通貨量が含まれています.例えば,日本では,市中に出回っている現金が100兆円なのに,銀行預金は1300兆円もあるのですから,交換媒体の主流は圧倒的に預金なのです.まあ,こんなことはビジネスの実務を知っている人にはアタリマエのことですが,,,


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さて現代の「貨幣論」の学者たちが注目しているのは,ビットコインなどの暗号通貨で,これは国家強制力を廃しても残る「自然的秩序」としての通貨でしょう.当然ながら日本では,ほとんど流行らないと思いますが,それでも長期的には,だんだん両替手数料の有利さから普及が進むのではないかと思います.驚いたことに,すでにアルトコインにしても10種類を超えて,数多くが取引されています


オーストリア学派金本位制の復活を唱えています.それはそれで理論的には納得できるのですが,ケインズ全盛のこの時代に,国家通貨管理権を放棄するというのはありそうにもないのが残念です.同じように,暗号通貨が主流になるとも思われないのですが,脱税麻薬取引,ランサムなど犯罪取引ニーズからすれば,ドル紙幣に代わって,zcashなどの完全な暗号通貨が使われることは間違いありません.


暗号通貨が主流化することはないのでしょうがISウィキリークスのように,アメリカという領域国家と併存することは可能でしょう.中国のような全体主義国家はさておき,少なくとも,主要な国家暗号通貨禁止しなければ,そのうち金融先物市場なども整備されて,暗号通貨の利用はそれなりに維持されるでしょう.


暗号通貨国家通貨と併存する時代になるということなのでしょう.この本を書く際に調べてみると,中世オランダでは少なくとも500以上の通貨世界中から持ち込まれていたようです.とすると,それらの硬貨金属鋳造し直す業務も,それなりに繁栄ます中世と同じように,これからは多くの暗号通貨流通するようになるのかもしれません.



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2016-11-10 国債の日銀引受

みなさん,こんにちは


僕を含めて,ほとんどの人がクリントン大統領になるのだろうと思っていたら,トランプ大統領とはあまりに意外!! 本当に驚きました.


しかし考えてみると,メキシコ移民中国から輸入品(昔は日本からクルマなど)が高卒白人労働者賃金を下げているのは間違いのない事実であり,そうした白人アメリカ人はこれ以上の移民貿易否定したいということなのでしょう.


確かにアメリカで反映しているのはアップルグーグルアマゾンなどのテック企業であり,そこで働いているのは例外なく高学歴の持ち主であり,そうした比較優位を生かせない労働者にとっては,自由貿易移民も大変な不利益です.


最近Brexitという現象があったり,ヨーロッパでも中東移民への排斥運動は高まっています.それに,今さら言うまでのないことですが,そもそも日本はまったく移民受け入れをしていないことからすると,人びとがいかよそ者を嫌うものなのか=自国伝統大事にするのかがわかります.民主党のような汎世界主義というのは,メディア従事者には受けても,実は多くの庶民の心の中ではあまり納得できないものなのでしょう.



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さて5講目はアベノミクス. 3つの矢は,「機動的な財政出動」,「大胆な金融政策」,「規制緩和」ですが,2012年からといえば,もう4年前というほどの長さです.この間に財政出動を続けることはできないし,マイナス金利などの大胆な金融政策黒田バズーカも弾切れということになってきたようです.


規制緩和の方は,確か特区をつくるとか言ってましたが,案の定それはまったく実現せず,「一応総活躍社会」のようなスローガンだけが残っているのは,いつもながらの政治の常です.ここでは金融緩和の1.公開市場操作,2.金利の引き下げについてだけ,少し書いてみましょう.


1. 巷間に存在している1000兆円の赤字国債を,どんどんと日銀が買い入れるというのが大胆な金融政策です.日銀は単に金融市場国債を買い入れているだけでなくて,さらに,去年から今年に発行された赤字国債なんかはほとんど100%日銀が買い取っています.つまり赤字国債日銀引受が起こっているのです.この額はそのまま,日銀にある銀行口座などの資金量の増加=マネタリーベースの拡大になっていて,2012年の120兆円から,2016年夏には400兆円にもなっています.



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図は日銀統計サイト作成した,マネタリーベースの拡大の様子です.実にはっきりと金融緩和政策が表れています.ここまでやって,デフレが続いているというのも実に不思議.明らかに貨幣数量説がまったく成り立っていない!


2. マイナス金利ヨーロッパでもそれ以前から試されていたので,特に大きな効果を持ちえないことは明白です.マイナス0.5%なら人びとは銀行預金を預け続けるかもしれませんが,マイナス5%になれば,他の保管金融機関に頼んで,1―2%ほどの保管料を支払うことになるため,おそらくマイナス2%くらいがマイナス金利限界のはずです.


ということで,金融緩和限界であることからは,各種の規制が緩和されるべきなのですが,,,(よく解雇規制の緩和などが議論されています.余談ですが,これは僕自身が一番困る=ヤバイと感じる規制緩和ですね,,,ハハハ)


それはさておき,どんな規制緩和があり得るのでしょうか? 例えば,Airbnbuberの利用が典型的ものになります.あるいは,ZMPなどのようにこれまでの自動車会社ではない自動運転ソフト会社が,急速に圧倒的に大きくなることもありでしょうか.


日本人なら誰もが理解していることですが,日本企業はここ30年以上もソニーパナソニックNTTドコモなど,プレイヤーが完全に同じでまったく新陳代謝がありません.アップルグーグルアマゾンフェイスブックなどはすべてここ20年に急速に巨大化した世界企業ですが,こうした新興の世界企業日本には一社もないのです!!


さて,この世には未来にどんな企業が圧倒的になるのかを予測できる賢人などいません.だから,「あれこれのような(例えばグーグル企業が出現するためには,これこれの規制をなくすべき」という命題証明的に成り立たせるのは不可能です.全般的規制撤廃以外には,方法はありません.


テスラはすでに「オートパイロット」で交通事故死を起こして,ドライバーが死んでいます.あるいはこれからは,まちがいなく誰か通行人を巻き添えにするはずです.そこで,どうすべきか?? (ところで,僕は自動運転よりも高齢認知症ドライバーの方がはるか危険になって来たように思うのですが,,,)


ここで常識人であれば,全員が全員,「正しい規則を作って,自動運転を過度に抑制しないような仕組みを作るべき」だといいます.そうした仕組みというのは道路交通法のような公法システムのことです.別に新規道路交通法はなくても,民事的に運転者自動車会社責任を負うということで,判例法的に法システム形成されることも,ごく抽象的には可能なはずです.


もちろん,こうした民事的な解決というのは日本ではまったく想定されていません.有識者という人がいるなら,すべて全員がなんらかの公法システム策定議論しているに違いないのです.しかし,なぜそもそもすべてを公法的な枠組みで処理する必要があるのか,あるいは私法的な枠組みが機能しないところだけを,公法で処理するという発想ではだめなのか?? 


話が完全に脱線してしまいましたが,「今実行されている活動以外は,原則として許されない」なら,新しい活動を行う企業は生まれません.「原則的にどんな活動も許されるが,明白な危険存在するときにだけ,規制することが検討される」という「clear and present danger」の発想しかないはずですが,これはまったく受けないですね,,,,ザンネン 



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2016-11-08 リカードの等価定理

みなさん,こんにちは


最初の3講では,長期的な経済成長について書きましたが,4講と5講はケインズ経済学について少し.



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ケインズ経済学世界を圧倒したのは,世界恐慌に際して,経済学者が無策だったからだとされています.で,『一般理論』は大人気になり,それをモデル化してベストセラー教科書経済学』を書いたのが,ポール・アンソニーサムエルソンだということになっています.マクロ経済学歴史的な展開を見ると,間違いなくその通りです.


さてケインズ経済学によると,不況に対しては2つの処方箋があって,1.公共事業の増加,2.市中金利の引き下げと,それによる銀行貸出=民間投資の増加,です.どちらにしても,確かに誰かの所得を引き上げるということになります.市中の貨幣量(マネタリーベース)が一定であっても,公共事業発注やその流通速度を上げるということは可能だし,あるいは銀行乗数の増加で貨幣量を増やすことも可能からです.


ここでは,財政出動について書くことにしましょう.

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政府財政出動のためには,増税,あるいは国債の発行か,あるいは新規通貨の発行以外の方法はありません.増税によると,消費者可処分所得が減って,消費を減らすことになるために,望ましいとは考えられません.また新規通貨の発行はインフレを呼ぶので,結局は国債の発行に頼ることになります.


新古典派リカードバロー等価定理によると,国債の発行をすれば,市民は将来の増税を予想するので,増税国債の発行は同じ結果を生むはずです.しかし,ここで論争が生じます.おそらくケインズ主義者は,人間行動の観察に忠実で,人びとはそれほど長期の見通しを持っていないという「行動経済学」的な立場をとります.対して,新古典派的な「完全合理性」を信じるなら,確かに国債の発行と増税は同じ結果を生むことになります.


僕の勝手主観では,おそらく一時的生産は確かに増加するという意味で,ケインズ主義は正しいと思います.問題は,その後に生じる政府赤字の償還,これは現実には,長期的なシリョリッジによるインフレをどう評価するのか? という点です.


そうした緩やかなインフレは望ましいと考えるなら,ケインズ主義による財政出動は(少なくとも大不況時には)望ましいということになります.もし,インフレがすべて個人財産への課税であり,財政民主主義に反する活動だと否定するなら,ケインズ的な財政政策否定されることになると思います.


人びとが,景気が良くなったと「感じる」こと,さらにその後で「インフレ生活が苦しくなった」と感じること自体効用をどう評価するのか? あるいは評価すべきなのか? そうした問題は,経済学ではあまり議論されていません.


あえて言うなら,こうした「政府活動自体のinconsistency」というのは,政治哲学議論されるべきことだと思います.さて,もし政府好景気の「幻想」を抱かせることができるとするなら,それをどう評価すべきなのか??


人は希望がなくては生きられないでしょう.とすると,やはり政府は人びとに好景気希望を与えるべきなのか?? あるいは,もともとそうしたことが無理であるなら,(ガンの告知のように)そのように告げるべきなのか?? ある意味で,white lieの状況に似ています.社会哲学的に難しい問題です.


皆さんも,ちょっと考えてみて下さい.


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2016-11-04 3講 技術革新

18歳から考える経済と社会の見方

18歳から考える経済と社会の見方



みなさん,こんにちは


11月1日の段階で,すでにハロウィーンの飾りが一斉に撤去されると同時に,スターバックスではもうクリスマス・ソングが流れています.こういうのを過剰なcommercialism , consumerismというのでしょうか.あまり気になりませんが,あるいはある種の人たちは「やり過ぎ」という風に感じるのでしょう.



さて分業,国際貿易と来て,3講は技術革新になります. 現代社会がなぜ中世よりも豊かなのかといえば,つまり技術が異なるからだということになるでしょう.産業革命イノベーションについては色んな角度から,いろいろなことが言えると思います.ここでは,現存の有名な歴史家であるネスポメランツの『大分岐』について.


なぜイギリス産業革命が始まったのか? という究極の問いについては,多くの答えがあるのでしょうが最近話題の一つは,ポメランツによる「二つの偶然説」です.


1. イギリスには広大な植民地があって,それが機械化によって生産性の上がった繊維産業販売先になった.植民地がなかったフランスオランダでは,同じ規模の技術革新費用がペイしなかったために,そうしたイノベーションが起こる余地がなかった.


2. イギリスでは地表近くに石炭があり,掘り出すのに労力がほとんど必要なかった.これが石炭の利用による蒸気機関を生み出すインセンティブになり,他国に先駆けてコークス利用の製鉄産業が勃興した


というような説明です.まあ,なるほど,そうかもしれないという理由です.これは伝統的な歴史学に基づく仮説であると言えます.





僕が最近読んだ中でもっとありそうだと考えているのは,グレゴリークラークの『10万年世界経済史』です.こっちは偶然ではなく,12世紀から500年間に渡って,イギリス人コンスタント遺伝的に変化=進化して,より資本主義的に適合的な長期の時間選好,高い知性などが集団に広まったというものです.


こっちのほうはpolitically incorrectですが,そうしたことがあっても自然主義的には不思議ではないということになるでしょうか.




10万年の世界経済史 上

10万年の世界経済史 上


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さて,どういう理由からイギリス産業革命が始まったのかはさておき,最近僕が感じたことを一つ.


戦後から1990年代までのイギリス経済はおそらく大停滞期にあって,僕の印象ではイギリス産業特に良い印象はありませんでした.ある時(確か1990年くらい),アメリカ外国通の友人が,「あん中古品しかない,ボロい国」というようにイギリスのことをけなしていました.当時,たしかイギリス産業生活水準というのは,あまりパッとしないイメージでした.


しかし21世気に入ってからは,ダイソンジャガー・ランドローバーなどイギリス工業が再び戻ってきたのを感じます.実際にイギリスの一人あたり所得は42000ドルにまで急速に増加してきていて,これはフランスと同じで,アメリカの50000ドルよりもわずかに低いだけです.ちなみにグーグル先生によると,日本は38000ドル香港は55000ドルくらい.


英語が有利だということを差し引いても,金融業だけでなく,工業生産などが盛り返してきているのは間違いありません.イギリスは「大いなる没落」から脱出しつつあるのでしょう.国家栄枯盛衰は,実に興味深いものです.


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