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旅行人編集長のーと このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-07-28

[]『ニッポンの海外旅行』 19:40 『ニッポンの海外旅行』を含むブックマーク 『ニッポンの海外旅行』のブックマークコメント

 先日、知り合いの編集者から「新書を読んでいたら、旅行人のことが何ページも書いてあって驚いた」というメールが来た。『ニッポンの海外旅行──若者と観光メディアの50年史』(山口誠/ちくま新書)という本らしい。さっそく買い求めて読んでみた。

 この本の主旨を大雑把にいうと、最近の若者は海外旅行に出なくなったのは何故か、どうしたら彼らが旅に出るようになるのかというものだ。若者はケータイインターネットにうつつを抜かしているからだといわれているが、本当はそれが最大の原因なのではなく、海外旅行そのものが変節し、つまらないものになってしまったからではないかと著者は主張する。

 著者がいう、つまらない海外旅行とは、こういう旅である。

 ────「買い・食い」行動を前に押し出してきた『歩かない』個人旅行が、長い独走の果てにたどりついたのは、旅先の日常生活が伝えてきた歴史や文化から切り離され、お金を介した消費行動だけで辛うじて接点を持つ、「個人旅行」が「孤人旅行」と化した、脱文脈化する海外旅行の現状である。

 だから、若者よ、もっと「歩く旅」をしろという。いや、「旅先の歴史や文化に触れる新しい「歩く」旅を魅力的に提示することができれば」、若者の旅に新しい道が開けるかもしれないという。

 しかしねえ、「買い・食い」の海外旅行なんてのは、私が海外旅行を始める以前からすでに主流だったわけだし、それはずーっと主流であり続けているんじゃないのか。にもかかわらず、バックパッカーは、安上がりな旅をしに海外へ出かけたのだ。何も、新しい道を業者に提示されたわけじゃない。もちろん『地球の歩き方』の登場はあったが、ビジネスモデルとして業者がバックパッカー的な「歩く旅」を提案するわけがないのだし(儲からないでしょ、それじゃ)。いったい誰に、歴史とふれあいの新しい歩く旅を提示しろといっているのかわからないが、それだったら先生、あなたが自分でまずおやりなさい。それで効果があれば、先生の主張は正しかったことが証明されるだろう。

 だが、今の(あるいは以前も)若者は本当に「旅先の歴史や文化に触れる新しい「歩く」旅」なんてものに魅力を感じるのだろうか。そこのところが深く疑問なのだがなあ。人々とのふれあいだ、歴史だなんて堅いこといってるから、うんざりするんじゃないのか?「歴史や文化に触れる旅」なんてのはタテマエであって、そういったことと関係なく旅はまずおもしろいのではないか。あえていえば、食うことだって「食文化」なんだし。

 今の若者が旅をしなくなった要因を、ただ旅の状況だけで考えても答えは出ないのではないだろうか。若者たちは、本も読まない、テレビも観ない、山にも登らないし、スキーもしないし、車も買わない、といわれている。海外旅行も若者が興味を失ったものの一つなのだから、やはり旅のあり方だけで語ろうというのは無理があると私は思う。「歴史や文化に触れる旅」なんてのは昔からいわれていることで、そんなのを目標に旅をする優等生ってリアルじゃないね。

 さて、私と旅行人について書かれている部分だが、私については「第3世代バックパッカー」と分類されている。1990年代以降の「日本人探しの旅」をしている旅行者なんだそうだ。その詳細については本書を読んでいただきたいが、私の記述については間違いがあるので、著者に代わって私が訂正をしておく(私に電話で聞くとか少しぐらい直接取材をしなさいよ)。それほどたいしたことじゃありませんよ。

──蔵前が初めて海外へ渡ったのは、慶應義塾大学に在学中の79年のアメリカだった

 違います。大学を卒業後でした。

──沢木(耕太郎)のベストセラー(『深夜特急』)とは違い、蔵前の『ゴーゴー・インド』はなかなか売れなかったという。置くべき棚がない、と体よく断られもした

 そりゃ『深夜特急』と較べたら「売れなかった」かもしれないが、小さな出版社から初めて出した割にはよく売れていたんですよ。「置くべき棚がない」というのは、私が情報センター出版局に持ち込んで出版を「体よく断られ」たときの話で、話を混同している。「のちに蔵前は語っている」と書いてあるが、私、どこであなたにそんな話をしました?

 ちくま新書にラインナップされ、海外旅行を語った本で、私と旅行人がこれほどの紙面を割いて紹介されたのだから、実に光栄なことである。子どもがいれば孫子の代まで伝えたかったほどだ。惜しむらくは、私がもう旅行人を出すのをやめますといった直後だったことである。これもある意味でいいタイミングだったってことですか。

 

yimeiyimei 2010/07/29 00:05 今から20年ほど前、旅行会社ではまだピチピチ(←死後?)の若手だったころ、
勉強の為に旅行関係の書籍を読み漁っていたなかで出会った「ゴーゴー・アジア」。
夢中で読んで、編集長の旅行に対する考え方に共感しました。
私自身は若いころはBPに近い個人旅行や一人旅をしていましたが、概ねBPの方は
旅行会社のツアーに対して偏見のようなものをもっているように思っていましたが、
旅行会社のツアーでも、楽しめればいいんじゃないか、という編集長の考え方に
勇気づけられたような気がしました。
「ゴーゴー・インド」も勿論読み、旅行人は定期購読していました。
「ホテルアジアの眠れない夜」や、「旅で眠りたい」なんかも本屋さんで見つけると
(当時はインターネットとかなかったですから)嬉しくなったり・・・
蔵前編集長の、旅行と、旅先と、出会った人々に対する優しい目線に色々と教えられることが
多かったように思います。

私は現在海外に移り住む9年前まで、ずっと定期購読していたのですが、今日久しぶりに、
本当に久しぶりにこちらのサイトにお邪魔して、休刊のことを知ってびっくりしました。
9年間ご無沙汰していながら寂しいなんて言うのはムシがいいかもしれませんね。
私も気がつくと結構いい年になっているので、若い時ほど無理がきかない、というのはもう納得です。
今日、本当に久しぶりにこちらのサイトにお邪魔したのですが、イトヒロさんがお亡くなりになった
こともただただびっくり。 本当に今更ながら、ご冥福をお祈りします。
こういった記事を読みますと、残念ですが、編集長、無理しないでマイペースで活動してください、
と言いたくなります。

旅行人はやっぱり蔵前編集長が好きでやっている、というスタンスが良かったような気がします。
これからも、本の企画があるとのことなので、楽しみにしています。

そういえば、私のパスポートカバーには、旅行人のステッカーが貼ってるんですよね。
あれはお正月のおまけだったでしょうか? かなりボロくなってますが、ずっと使い続けます。

ちょっと前の話題になってしまってすみません。
私は今でも旅行会社に勤めていますが、買うこと(別にブランド品だけが買い物ではない)、
食べること旅の楽しみのひとつであると思います。 楽しみ方は人それぞれ。
旅行業者として、若者が興味をもてる旅行の形態を提供していくことは必要だとは
思いますが、確かに、旅行以外のことにも興味を持たない若者に旅のあり方だけを
問うのは無理がありますよね。

蔵前仁一蔵前仁一 2010/07/29 11:56 yimeiさん、こんにちは。
 旅とはかくあらねばならないという考えが私は好きではありません。トラベラーとツーリストの違いを論じても、たいした意味はない。歴史や文化を学ぶことだけが旅の楽しみではないでしょう。例えば鉄道が好きな人が、幻の鉄道を求めて、普通の旅行者が行かないようなところを旅するのもいいじゃないですか。人それぞれですよね。もちろん鉄道だって文化だという言い方もありますが、それだったら文化じゃないものなんてないわけで、人が作り出したものは全部文化ですからね。歴史と文化を学ぶという構え方は、お勉強スタイルになって、ますます若者を旅嫌いにするんじゃないかと思いますけど。

ステッカーはまだ在庫がありますので、ご希望の際はお申し付け下さい(笑)。

ハクナマタタハクナマタタ 2010/07/29 18:22 ステッカーあるんですか?パスポートに貼るなんていいアイディアですね。
入手方法について教えて下さい。

蔵前仁一蔵前仁一 2010/07/30 19:41 ハクナマタタさん
 品切れで旅行人グッズのラインナップから外されていましたが、さっき倉庫で何組かが発見されたので、近日中に旅行人グッズにアップします。よろしくお願いします。

蔵前仁一蔵前仁一 2010/07/30 20:25 アップしましたので、ここからお買い求め下さい。
http://www.ryokojin.co.jp/2f/index.html
「旅行人オリジナルシール」(5枚1組 309円送料80円)

YAMAYAMA 2010/07/30 23:47 表紙に貼った切手、ステッカー、バンダナ、全てが懐かしいです。
かなり長いこと待っているのですが、小川京子さんの本は、いつごろ出版なのでしょう???

そのままそのまま 2010/08/04 11:22 全くの勘違いだと思いますね(その本の著者のことですが)。旅行に限ったことではなく、先行き不安で、お金の使い方に慎重になっているのではないですかね。

私が旅行をし始めたのは1980年代なのですが、その当時、お金がないことに、なんの不安も感じていませんでした。新宿ロフトの前で、帰宅する電車賃もなく、座り込んで夜を明かしたりしていましたが、貧乏だなあと、友人と嘆き合いながらも、老後のことなど、頭をよぎりさえしなかった。

なにしろ、その当時は人手不足の方が大問題で、半端仕事みたいなものがいくらでもあったので、日銭稼ぎはできたんですよね。だから、ちょっと働いて、まとまったお金が入ったら、先のことは考えずに、貧乏旅行に出かけていたわけです。

今はそうは行かないのではないですかね。私はもう中年なので、若者の置かれている現状をよく知っているとは言えませんが、周囲の若者たちを見ていると、今日、まとまったお金があったって、明日のことが不安なので、特に使いたい部分に絞ってお金を使うという感じです。フラリと旅行に出てみる、なんてことはしないような。親が金持ちなら別だけどね。でも、親が金持ちなら貧乏旅行はしないしな。