くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ローラーガールズ・ダイアリー」「クレイジー・ハート」

ローラーガールズ・ダイアリー

「ローラーガールズダイアリー」
ドリュー・バリモアは映像的なリズムのセンスが抜群なことを知らされる秀作でした。
出だしは、テキサスの田舎町のミスコンの会場、次々と少女たちが舞台でコメントしていく中で舞台裏でシャンプーでとれない髪の染料を必死で流している主人公ブリス(エレン・ペイジ)の姿が交互に描かれ、その合間に画面いっぱいのロゴでメインタイトルなどが挿入されます。背後にアップテンポの音楽が流れ画面に躍動感があふれていきます。この導入部が見事。

そして、どうにもとれなかった真っ青な髪で舞台へ、カットで母親の視線、そして妹が優勝して家族で車にいく場面に変わる。相変わらず、テンポのいい曲がさりげなくバックに流れています。
母の願いを一心に実現していく妹とうってかわって失敗ばかりの姉。ふとしたショップでローラーゲームのパンフレットを手にし、親友と出かけた会場でその魅力にはまってしまいます。そして年齢を偽ってチーム入団テストに。

たぐいまれなローラースケートの才能を見いだされ、小柄でハイスピードな彼女のプレーは見る見るチームで頭角をあらわし、勝ったことのないチームが一勝、また一勝と勝ち進んでいく。プレーシーンの細かいカット割りやクラッシュするシーンなどをとらえる軽快なカメラが何ともリズミカルで、どぎつい迫力よりもモダンなセンスが光る映像になっています。これを見ているだけでもわくわくしてきました。しかも、小柄ながら右に左に走り抜けるエレン・ペイジの姿が何とも可憐。

とはいえ、内緒で出場していたブリスはふとしたことで、両親にばれる。迫ってくる決勝戦、そして一方で迫るミスコンの日。とはいえ、理解ある父親と母親、そしてチームのメンバーの尽力でクライマックスへと進んでいきます。
初恋の男性への思いも断ち切り、試合に臨むブリス、しかし結果は後一歩で敗退。でも次に備えて正式にチームに加わることを決意して終わるのですが、何ともさわやかで、やたら背の高い父親、一見分からず屋ながらちゃんと子供たちを応援する母、そして親友。誰もが物語の一部で見事にとけ込んで、主人公を支えている展開はすばらしい。

エンドシーンはバイト先の豚の張りぼての上に座るブリスの未来を見つめる視線で終わります。
リズム感満点の後味のいいさわやかな青春ストーリーでした。


クレイジー・ハート
一人のひげもじゃの主人公バッド(ジェフ・ブリッジス)が広い荒野の道を車を飛ばし、とある場所で降りる。そこは今回の演奏の舞台であるが、ただのボーリング場である。
今や落ちぶれたかつてのカントリーの有名歌手バッド。酒におぼれ落ちぶれた彼の姿から物語が始まります。

ドサ周りのような舞台を次々にこなしながらのシーンの合間に真っ青な胸のすく荒野のシーンを挿入していく。
今回の舞台のオーナーの姪ジーン(マギー・ギレンホール)が地元地方新聞の記者をしているということでバッドにインタビューを申し込んだところから本編へ入っていきます。

一目で惹かれたバッドは四歳の子供がいると知りながら、愛を語っていきます。そしてはぐくまれていく中で、酒におぼれるバッドの姿に一抹の不安を隠せないジーンの微妙な演技がすばらしい。
ジーンやその息子に親しみを覚えながら、なぜか酒を話せない自分もやるせないバッドですが、従来のこの手の作品とは違って、束自暴自棄で酒を飲むというわけではなく、単に病気としての依存症として描いていきます。

さすがにアカデミー主演男優賞をしただけあって、ジェフ・ブリッジスのアル中演技は見事なもので、やりすぎずやりたらずのきわどい一線を絶妙のバランスで演じていきます。
そして、ちょっとした気持ちで子供を迷子にさせたために二人に破局、ストーリーの展開部分として登場する親友のウェイン(ロバート・ヂュバル)が面にでてきて、バッドの人生が大きく転換します。

ありきたりかもしれませんが、無事酒を断ち、新たに作曲もはじめ、第二の歌手人生に向かい始めた彼の前に、新しい恋人と婚約したジーンが現れる。そして二人で広い荒野を眺めて映画は終わります。
非常に大人の映画であり、大人のラブストーリーです。分かり切ったように落ちぶれていく主人公ではなく、明日に希望を輝かせて終わらせたエンディングの見事さは秀逸でした。