くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「もらとりあむタマ子」「RED リターンズ」

もらとりあむタマ子

もらとりあむタマ子
不思議なムードで淡々と描く、いかにも現代的なさめた世界。そんなモダンな物語を、小津安二郎のようなフィックスで、シンメトリーな構図を駆使して描く、何とも一歩抜きんでた映画でした。

監督は山下敦弘。オリジナリティというか、独特の感性を映像に表現する監督としては、近頃ではダントツに近い監督ですが、今回は前田敦子を「苦役列車」に続いて採用して、不可思議なムードを生み出すことに成功した気がします。

映画は秋から始まります。23歳になって、大学をでたにも関わらず、就職もせずに家でごろごろしている主人公タマ子。父は、母と離婚して、一人で田舎でスポーツ店を経営している。

タマ子が何気なく発する冷めたせりふと、無気力な中に妙にさばさばした行動。それが笑いではなくて、苦笑いというユーモアをちりばめ、カメラは、こたつの机の低さから、向こうをうろうろするタマ子を、ふすまとふすまの間にとらえたりする。

近所の写真館の、いかにも中学生という感じの男の子が、彼女らしい女の子と自転車を押して帰ってくるところを目撃して、ほっとした笑いを見せたり、この男の子に、自分の写真を撮らせてみたり、その行動の一つ一つが何ともいえないユーモアを生み出す。

父に再婚の話が持ち上がり、紹介された女性を見に行くタマ子。そして「うちの父親のだめなところは、私にでていけといえないところよ」と、漏らす。

季節は一年たって夏、ある夜、父がタマ子に「この家から出て行きなさい」と告げる。「合格」と答えるタマ子。

写真館の中学生に「私、もうすぐこの町をでる」といってエンディング。

自転車に乗ってくるタマ子を中心に配置した構図をはじめ、室内のカットそれぞれが実にシンプルに組み立てられ、物語のシンプルさをさらに盛り上げる。そんなオリジナリティの中で繰り広げられる、さばさばした物語のムードにほんのりとのめり込んで、何気なくエンディングを迎える。

そんなひとときの充実感を楽しめる、なかなかの佳作だった。


「RED2 リターンズ」
この手の映画に、どうのこうのはない。とにかく、何の脈絡もなく、派手なシーンが次々と展開する。主人公たちは決してピンチにならないし、やたら強い。こういうジャンルが、整然と映画館に流れているという現実をみると、まだまだゆとりがあるなと思いたくなる。

テンポいいアクション音楽が流れる中、映画が始まり、イラストによる場面展開で、小気味よくストーリーが進む。

ベイリーなる科学者が開発した「赤い彗星」という核兵器を奪取し、ベイリーが破壊を行うのを阻止するのがクライマックスになる。

例によって、いきなり主人公フランクが、新たな事件に巻き込まれ、かつてのREDのメンバーが集まってきて、次から次へと迫ってくる危機をくぐり抜けながら、派手な銃撃戦を繰り返していく。

話のつじつまとか、つながりはよくわからないから、途中でやや眠くなってくるのだが、それでも、気がつけばほとんど同じ物語が繰り返されているから、まあ、気楽な映画である。

息抜きにみるにはもってこいの一本だった。後に何も残らないけれど。