くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラスト・センテンス死者への裁き」「アイスドラゴン」「夜

kurawan2014-10-17

「ラスト・センデンス 死者への裁き」
スウェーデン映画祭の一本、監督はヤーン・トロエルという人である。
非常に、良質な作品ですが、いかんせん眠かった。
オープニングタイトルバックの、水に流れる枯葉のカメラ映像が、恐ろしいほどに美しい。水の透明度が尋常ではないのである。そのうっとりする映像に続いて、物語は、教授で新聞社の編集長トルグニィのお話になる。時は1944年、ヒットラーがヨーロッパで権力を振るっている。それを辛辣な文章で批判するトリグニィの姿。

私生活では、妻プシカと溝ができ、友人アクセルの妻マヤと不倫関係にある。

時は1933年に移り、ヒトラー率いるドイツがソ連と戦争を始め、フィンランドもその傘下におき、火の粉を浴びないために、画策するスウェーデンの閣僚たち。一方、トルグニィはあいかわらずのヒトラー批判で、ドイツからも圧力がかかる。

やがて、プシカが死に、物語は再び1944年、死んだ母親やプシカが喪服の亡霊となって現れたり、シュールな展開も見せる。

ラストは、ヒトラーの死を見たいと言いながら、トルグニィはベッドで「ヒトラーは死んだか」と訪ね、娘たちが「死んだ」と答えたのを聞いて安心して息を引き取りエンディング。冒頭の水のシーンになる。

クオリティの高い作品ですが、どうもテンポが平坦で、なんども眠気が襲ってきた。しかし、一見の価値のある一本でした。


「アイスドラゴン」
いわゆる一人の少年の冒険物語。監督はマッティン・ヘーグタールである。
鯨が泳ぐシーンに始まり、真上からとらえるカメラアングルで、主人公の少年ミックが博物館に入るところから映画が始まる。この開巻のカメラアングルが実にうまい。
飲んだくれでヘビメタの父、優しい兄と暮らすミック。ゾンビ映画が大好きで、鯨の歌を聴くのが好きな少年である。

ある日、兄が逮捕され、父も生活力がないため、ミックはレイおばさんのところへ一時引き取られる。そこで、二人の男の子と一人の東洋系の女の子と仲良しになり、初恋と、友達との友情を経験、四人で冒険するというのが、本編。
いわゆる「スタンド・バイ・ミー」的な流れで、四人はお互いに信頼試合、ふざけあい、友情と初恋を育んでいく

しかし、しばらくして再び児童福祉課の人がやってきて、正式な里親の下に連れて行かれる。しかし、そこで、半ば虐待されたミックはひとり脱出、例おばさんのところへ戻ってくる。そして三人の友達と自前のドラゴンのそりを作り、脱出。しかし、途中でそりが大破して、仕方なく戻ってくる。当然、また里親のところへ行かされるのを、友達や霊おばさんの近所の叔父さん二人の協力で阻止しようとするが、結局、ミックは自ら本心を表現し、薄い氷の上を歩いて氷の下に落ちる。ところが、氷の下を泳いできた鯨に助けられ、おじさんたちの掘った氷の穴から脱出して、ファンタジックなハッピエンド。

70分余りの作品ですが、スピード感あふれる展開と、軽快なタッチが楽しい一本。御伽噺のようなメルヘンチックな作品ですが、時に大胆なカメラアングルや、スローモーション、ハイスピードなど映像テクニックを駆使した画面作りがなかなか楽しい一本でした。


「夜のたわむれ」
シュールな作品で、ブニュエルベルイマンを兼ね備えたような一本。面白く見ることができたが、この制作年で、かなりの性描写は、さすが北欧映画である。監督はマイ・セッテリングという人です。

映画が始まると、目隠しをした女、その後ろから男が一軒の豪邸に入ってくる。どうやら二人は婚約者のようである。

男の名前はヤンと言い、ドアをくぐるたびに、少年時代の姿に戻り、この家で母と暮らした日々が回想される。
過去と現代を交錯させ、ヤンが女性とのSEXが不遇になっている原因を語り、終盤で、母の存在に決別するべく、家を爆破してエンディングとなる。

過去のシーンで、大勢の前で出産するシーンや、その周りに楽器を鳴らして馬鹿騒ぎするシーンが、現在の結婚のシーンに繰り返されたりする。

母親に弄ばれる少年時代のヤンの姿や、可愛がってくれた祖母との別れのシーンなど、丁寧に思い起こせば、具体的な物語も見えてくるが、それぞれの描写は、ちょっとすっ飛んでいるから、その現実離れした演出も楽しい作品。

一つ一つのエピソードが、シュールながらきっちりと組み立てられた形になっている緻密さは、さすがに評価できる一本で、映画の本に度々出てくるだけの作品だと思います。ただ、字幕がかすれてしまって、見えないところが多々あり、わかりにくいところもあったのが残念。