くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「世界から猫が消えたなら」「ひそひそ星」「園子温という生

kurawan2016-05-20

世界から猫が消えたなら
評判が良いのでかなりの期待で出かけた一本。確かに映画として非常に良くできています。若干、エピソードが細かすぎる感じがしないわけではありませんが、命、出会い、人生が、重くならずに、非常に綺麗に胸に迫ってくる。監督は永井聡

主人公の僕が自転車に乗っている。突然目の前が歪み転倒。病院で悪性腫瘍が脳にあり、手遅れだと告げられる。取り乱した映像の後、それは幻想と説明され冷静に受け止める。ところが、家に帰ると自分と同じ姿の男が待っていて、悪魔だという。そして、明日、お前は死ぬが、何か一つこの世から消せば1日生き延びると伝えるのだ。そして悪魔が最初に選んだのは電話だった。こうして物語は始まり、電話、映画、時計、猫へ進みながら、過去、思い出、などか語られていく。

電話が消えるとなった時、最後に電話をしたのか元カノ。そして、さりげなくデート。彼女との馴れ初めは、「メトロポリス」を家で見ていた時の間違い電話。僕には映画好きの親友ツタヤがいて、毎日いろんなDVDを見て暮らしていたのだ。しかし、電話が消えた途端、彼女との馴れ初めも消え、僕の彼女は存在しなくなる。

続いて、映画を消すという。映画でつながっていた親友のツタヤとの別れ、さらに時計が消えて父との別れ。しかし、そんな流れの中で見えてくるのが、自分の存在である。母が病気で亡くなり、少年時代に拾ってきたレタスという猫との馴れ初めから、母が病気になった時に父が画策して連れてきたキャベツという猫のエピソードなどが綴られる。

何かが消えるたびに、関わった人と離れる寂しさ。そして、最後に僕が選んだのは、自分の死がわかるという幸せ。猫を消すことはなく、僕は猫と一緒に彼方に自転車で走り去ってエンディング。

とっても素敵な描き方で、重いテーマを映し出した画面は見事なもので、さすがに岡田恵和の脚本がうまい。さりげないテンポで綴られる僕の最後の一瞬の物語はファンタジックでもあり、しんみり考えさせるものもあり、とっても素敵でオリジナリティのあるドラマだった気がします。


「ひそひそ星」
解説に書かれている物語がどこに存在するのかという作品で、園子温監督作品は最近妙な方向に向かっているなと思う。とにかく、ナンノコッチャという映画だった。

家の形をした宇宙船に乗っている一人の女。コンピューターが制御するこの宇宙船で、いろんな星に宅急便を届けているらしい。全編モノクロームで、話す言葉はひそひそと話す。

いく先々に届ける荷物は何かが東日本大震災で失われた遺品のようなものばかりというのが意味があるのだろうが、そう考えると、25年間温めてきたという監督のコメントが意味をなさない。

クライマックスの影絵のような世界が広がる廊下を歩いて届けに行くシーンは美しいのですが、それまでは、やたら登場する寂れた東日本大震災の被災地の映像はあ、どういう意味なのだろうか?とにかく、眠かった。


園子温という生き物」
「ひそひそ星」の解説的なドキュメンタリー。園子温監督の素顔とか、作風の分析とか、考え方とかを、何気なく入れているものの、あまり迫ってくるものもない。監督は大島新である。

芸術的なアトリエの描写、映画撮影の時のいかにも非凡だと言わんばかりの言動。一方で、どこかのオヤジ的な描写など、よくあるカットは続く。まぁ、本来ドキュメントは見ないのですが、「ひそひそ星」の時間の流れで見た一本、特に得るものもなかった気がします。