「化石の荒野」
ほとんど印象のなかった映画でしたが、やはり、それほどの傑作ではなかった。テレビの2時間スペシャル程度の出来栄えでした。監督は長谷部安春です。
主人公で捜査一課の刑事が、突然襲われ、そのまま注射を打たれ眠らされる。目がさめると側に死体があり、主人公は、殺人犯として指名手配される。
濡れ衣を晴らすために逃避行をしながら、真相に迫っていくというのが物語の本編ですが、様々に絡んでくる不気味な組織や、殺人者たち、さらには大物政治家も絡み、物語は、雪山に隠された5000キロの金塊を見つけるという目的へと突き進んでいく。
という本編ですが、絡んでくる組織の関連がいまひとつわかりにくいし、大物政治家たちの目的は台詞では見えるけれども、あまり、重みがない。浅野温子扮する女の存在もいまひとつ浮き上がらない。
主人公たちが実は兄弟だったという真相も、別にどうでもいいという脚本になっている。結局、脚本が原作を読み込めなかったために、おそらく原作が持っていたであろうサスペンスの繰り返しの面白さが映像にならなかったという感じですね。
というわけで、ヒットしたテーマ曲を改めて聞いて思い出したかなという印象でした。
「カムイの剣」
これはなかなかの傑作。和の様式美を徹底的に取り入れた絵作りがとにかく美しい。監督はりんたろうです。
影絵の場面のようなカットに、突然飛び込んでくる悪者。その悪者に一瞬で殺される母と祖母。帰ってきた子供の次郎は親殺しの汚名を着せられ逃亡、途中で出会った不気味な僧天海に忍術指南を受け忍者となる。こうして物語は始まる。
実は天海は、次郎の父が秘密を持っていたキャプテンキッドの財宝のありかを探らんとしていたのだ。天海の正体を知った次郎は抜け忍となり、追っ手をかわしながら、父の残した秘密を探る旅に出る。
追っ手を倒すスピーディな映像に、きらびやかに染まる美しい画面がとにかく素晴らしく、2時間以上あるにもかかわらず全く退屈しない。物語は日本を出てアメリカまで行くのには正直驚いたが、それも、さらりと受け取れてしまう作劇のうまさ。
次郎の出生の秘密なども絡んで、物語はどんどん膨らみ、クライマックスは天海との一騎打ちとなる。江戸時代から明治に変わる過渡期を背景に描かれる壮大な物語は、若干荒唐無稽ながら、色彩美で押してくる感性は素晴らしいという他ありません。当時、アニメだからと避けた作品ですが、観てよかったです。
とにかく花札の絵札のごとき美しい色彩で描かれる画面に引き込まれてしまう。