くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「焼肉ドラゴン」

kurawan2018-06-22

「焼肉ドラゴン」
とってもいい話、とっても引き込まれる話のはずなのに、あと一歩入り込めない。特に前半部分、娘のエピソードが弱いのは、娘三人を演じた役者の力不足のような気がする。もちろん皆芸達者なのだが、流石に両親を演じた2人の韓国俳優が強すぎた。そのために前半の娘中心のシーンに盛り上がりが弱く、後半、両親のセリフが絡み始めると途端に見せてくれる。全体の出来栄えは普通に終わったという感じです。監督は鄭義信

中学に通う時生が自分の家族を語り始めるところから映画が始まる。彼の家には静花、梨花、美花三人の姉、と両親がいる。戦争で片腕をなくした父と母は韓国人で、戦後この地で焼肉屋を営んで二十年以上が経つ。時は1970年大阪万博が開かれようとする大阪のある場所である。

この日、梨花とそのフィアンセ哲男が口喧嘩して帰ってくる。役所で婚姻届を破ったと怒る梨花。哲男は幼い頃から静花のことがすきで、子供の頃遊んでいて静花に怪我を負わせ、彼女はびっこを引いていることに責任を感じていた。

哲男と梨花の溝は深まり、たまたま立ち寄った韓国人と親しくなった梨花はその男と懇ろになる。また、静花も彼女と親しくなった韓国人と婚約までするが、鉄男の猛アタックで等々哲男と結婚することになる。美花はキャバレーで働く妻子ある男と関係があったが、男はきっぱり離婚して美花の元へやってくる。
時生は有名私立に通っていたが韓国人であるが故のいじめに耐えられず等々自殺してしまう。

やがて万博も終わり、立ち退きを迫られていたこの家族もそれぞれに旅立つ日がやってきた。

哲男と静花は北朝鮮へ、梨花たちは韓国へ、美花は妊娠し日本に残ることになる。どこへ行くわけもなく、リアカーに荷物を乗せた父は、母をリヤカーに乗せこの地を旅立って映画が終わる。

ほんのひと時の、ある韓国人の家族の物語。戯曲としては名作らしく、その空気感もわかるが、所々に舞台劇的な演出を挿入、それと映像の演出部分のかみ合いがうまくいっていない。そのうえ、日本側の俳優が妙にスッキリしすぎていて興ざめ感が消えなかった。いい話のはずなのに、泣かせるところはとことん引きつけてくれるのに、全体が盛り上がらないのが本当にもったいなかった。是非、舞台版を見てみたい。