「ウルトラ女学生読本」のこと

 
 公園の梅の木は、一面に初夏の若葉で包まれている。
 葉の色とそっくり同じ色の実が見つかる。梅干や梅酒をつくれる実になるのに、もうしばらく時が必要だ。
 「青梅も十三七つ月よ哉
 小林一茶の俳句で、文化九年の句。


 聞き手が三國一朗による「証言・私の昭和史」(全六巻)は、1969年に単行本として學藝書林から刊行された。
 旺文社版の1984年刊の「証言・私の昭和史1」に「ムーラン・ルージュの灯」と題したインタビューがあり、伊馬春部(伊馬鵜平)と森繁久弥の二人に、三國一朗が聞いている。

 ―― 森繁さんは、ムーランとのそもそものご縁は、いつごろからということになりますか。 森繁 それが、生えぬきのムーランといっちゃあれでございますけれども、生えぬきのムーランのファンでございまして、この昭和六年にムーランが杮落(こけらお)としをしたときはまだ早稲田の学生でございまして、ずーっとムーランに通っておりましてほれこんでしまいました。  444ページ
 昭和六年(1931)の12月30日に「ムーラン・ルージュ」が新宿で旗上げした時の「プログラム・ナンバー1」に、中村正常作、吉行エイスケ演出の「ウルトラ女学生読本」が演目の一つに記されている。

証言・私の昭和史 (1) (旺文社文庫)

証言・私の昭和史 (1) (旺文社文庫)