21_21デザインサイト クリエイタートーク 「バーチャルな骨」/中村勇吾+緒方壽人+五十嵐健夫+中谷日出

Reading Design Edgeの山中俊治ディレクションの「骨」展に出展している3人と、NHK解説委員の中谷氏によるプレゼンテーションとクロストーク。まず出展者の3人がプレゼン、それから4人でディスカッションという構成。
橋や建設物のエンジニアをしていたTHAの中村勇吾氏のプレゼンテーション。残念ながらPCの調子が悪いらしく、言葉だけ。地震、風など構築物のシミュレーション、それが破壊される瞬間を想定したことを主としていたためか、静物が揺れ、破壊される、可能性限界がビジュアルとして頭に浮かぶという。今回の展示も力学で見るような構造物のグラフィックを使用している。それが数字の形になっていて、上からゆっくり落ちて破壊されるというものなのだが、今回の展示、最初は違うことをしようとしていたらしい。それはドロップクロック。上からMacBookなど精密機械を落とし、地面に当たる直前からハイスピードカメラで撮影したものを展示するものだ。しかし、費用の関係で断念。山中氏にはネコを落として、とたのまられたという。
次はReading Design Edgeの緒方壽人氏。Docomoの携帯電話、おサイフケータイのプロトタイプを開発しているデザインエンジニアだ。氏のしていることは、ソフトなどの基盤設計とハードのデザインを両方していることに特徴がある。東大工学部卒業後IAMASに入って2つの能力をもっている。プレゼンでは出展している「another shadow」の裏に隠れたシステムを説明してくれた。テーブルに再起性反射材という光の来た方向に入射角関係無しに光が反射する素材を張り、紙を置いたり観客が手を添えて影を作ることによって情報がデジタルで出てくるというものだ。実際にやってみるとよくわかるが、どんなにハイスピードで手を動かしても、影は必ずついてくる、ということがよくわかる。
東大で教えている五十嵐健夫氏は、研究しているコンピュータサイエンスについて発表。ラフに書いた落書きをどうしたら紙面上で動かせるか、開発したアナロジーを紹介。落書きをアニメーションのようにつぶしたり引っ張ったりとできないかと考えたのがきっかけだったという。本来ならばアニメーションというのは何枚もの絵を書かないといけないが、氏の開発した3次元モデリングシステムTeddyならばマウスだけで自分の書いた絵が動く。ラフに書かれた絵は瞬時に3三角形に分割され、大きな形が最小の変化要素に分かれる。そこにプログラムされたピンを打ってそこをドラッグすればその位置にしたがって全体が動くという仕組みだ。
さらにそのラフスケッチを瞬時に3Dにしてくれるソフトも開発。落書きを立体化できる。これはまだ未定だが歯科医や医者などの患者への説明用に利用される可能性もあるという。また、これを知った高校教師が地理の等高線を説明するのに、立面に高さの横線を入れるだけで視点を変えれば地図上では襞状になっていることを説明したという。

プレゼンが終わると、中谷氏司会でフリートークが始まる。主に今回の展示について。五十嵐氏のTeddyが「骨抜き」をしていながら動いている「動作原理」の話や、プログラムとリアルの混じり合いはセンサーなどパターン化していることに対して今回の展示は革新性があることなど。中村氏は「アニマ」がプログラムで動くことに興味があり、その原理が透けて見えるのが骨らしい、と。