・HEAD研究会シンポジウム『不動産管理の価値を考える〜欧州の事例を通じて〜 "僕らの時代の商売を考える"』

表題シンポジウムのメモ。 http://www.facebook.com/events/204431976383276/

ヨーロッパ視察、ドイツ、オランダ。近代の住宅供給、工業化が日本との類似性。
問題意識、仮説はform follows management。
form follows function、form follows financeからの変遷である。

不動産はこの時代、これからの時代に、何を理解するべきか?がテーマ。しかし、ここにあるのは答えはなく、ヒント。


第一部、田村誠邦明治大学特任教授。
メープルリーフチューインガム工場のリノベーション事例を中心に。
元々はチューインガムの工場。一気にリノベーションするのではなか、工場リノベーションは順次行う。
テナント、入居者はまずアーティストなどを安い賃料で入居してもらう。その情報発信力から地域ブランドの向上を図り、賃料の高い業種もいれていく。現在はメディア関係からクリエイティブ系などが入っている。
資金力が小さくても可能な、コンバージョンディベロッパーの可能性。


建築家、新堀学さん。
東京、ベルリン、アムステルダムの成り立ち。
一つの視点、都市の中の集合住宅。東京の同潤会アパートと同年代のベルリン、アムステルダムの集合住宅は世界遺産に指定されている。百年もつ都市と、五十年で破壊される都市は何が違うのか?制度か?プレイヤーか?建物か?


リビタの長瀬徳之さん。
リビタはリノベーション会社。社宅などを購入し、フルリノベーション、再販。テーマは住宅を使い倒す。
クラインガルテン的庭。庭が使われていることに価値がある。
アムステルダムボルネオ島の連棟住宅。運河の脇に建てられた建築群。よりよい環境を住民で分かち合う。セットバック、スカイラインなどのルールの固定化。


登壇者のディスカッション。
建物と人、というテーマについて。
「私たち」をどうつくっていくか。ドイツは日本の区分所有ではないところもある。住民組合がもつ。ヨーロッパでは土地境界にベンチがおいてあったり。日本の昔で言う井戸。その周りにコミュニティが生まれる。コンバージョンはハードだけの問題ではなく、倉庫から集合住宅など、自由な発想が必要。

不動産と建築の融合。ストックの時代はここを連動させなければならない。


第二部、R不動産、吉里裕也さん。
ベルリンの壁の壁沿い。壁崩壊から二十数年経つが、隔てた東西は全く違う。さらに、誰のモノかわからない空き地があったりするエリア。ゴミ溜だった場所の不法占拠から始まり、現在は株式会社として運営している場所がある。
カフェ、ライブラリー、農業などを含む都市ガーデンが成立している。

株式会社クルーズ、前田利信さん。
バウハウス発祥のデッサウ、環境省本部。サスティナブルスネーク。地中熱交換システム、カラースキーム、曲線の形に感動し、実務にすぐ転換したという。
ウィンドゲートのベンジャミンから紹介されたドイツのリノベーション物件、シュレーゲルヘーフェを実際に買ってやるという話もでている。

株式会社市萬、久保明大さん。
ヨーロッパ視察での重要な気づきは、テナントがもつ力を借りて、物件の価値を上げること。事例はタバコ工場をクリエイティブ向けのオフィスへコンバージョン。起業家向けにし、共存することにより新しい価値を生み出す。情報の発信力があり、人が流れてくる。

テナントが持つ力を開放する仕組みが重要。共用部でのベンチ、時間貸の会議室などに加え、各テナントのエントランスはカーテン、ブラインドは禁止、中で何をやっているかを見えることをルールによって規制する。不動産管理会社として、この仕組みをマネージメントすることによって不動産のブランディング、価値向上を行う必要性。


ロイヤルアネックス代表、青木純さん。
オーナーとして、欧州をみる。
まず、暮らし方のアーティストが多い。管理会社、大家の仕事は住民の能力を開放すること。
ドイツでは、自分の部屋を旅行中に使ってもらうCtoCビジネスがあり、アーティスティックに暮らしている人は人に見てもらいたい、という意識がある。自分の部屋を別の使い方をする。
単に住む、だけでなく、使い倒すことを考えなければならない。


ディスカッション、吉里さんから、人口減少を前提に、都市部での容積率について、容積率の一部はそろそろ利益だけでなく、街の魅力活性化に回るのがリアルに出て来てもいいのではないか、と。
青木さんから、銭湯を使うこと。人の集まる空間をもっと活用していくことなどの提案もあった。

・蔵書キャパシティのゆくえ/DIY棚改善

少し前に、模様替えをした。理由は、読書、書き物環境の改善。
壁に向かって本を読んだりするような2年前の状況とは少し趣向を替え、部屋の中を向いた格好に。これは図書館だとかカフェだとかでいろいろと場所を変えながら試行錯誤してきた結果だ。結論、壁に向かって狭い方を向くよりも、大きな空間に向かう方が心地よい。

しかし、L字型棚との大きな差異は、収納量の違い。L字の短い方は以前までは両面使えていたのが、片面だけになってしまう。これは、日本の昔からの文化であり、壁にタンスなどの収納をつくり、空間の中心を使うことのデメリットの一つだ。壁に固定され、空間の許容量は半分になってしまうことをこういうDIYからはよく発見することができる。




この前の月。

・瀬戸内の可能性

瀬戸内国際芸術祭。

瀬戸内海にある島々を舞台に、アート作品が点在する中を巡る旅。
総合プロデューサーを福武總一郎氏、総合ディレクターに北川フラム、コミュニケーション・ディレクターに原研哉といった蒼々たるメンバーがトップ。
香川県は、イサムノグチ、猪熊玄一郎など、多くの現代美術家の他、今回展覧会の題材となり、香川県に多くの作品を遺した丹下健三など建築家の輩出もある。その素地を使い、香川県行政としても力を入れているようだ。行政、実行委員の経済、投資効果にはいろいろと問題点もあるようだが。
http://tabimanabi.blog110.fc2.com/blog-entry-49.html
http://blogs.yahoo.co.jp/jeepkotani1968/52320936.html
http://www.mentsu-dan.com/diary/bn2010_12.html (12/11付)


それはさておき、今回の芸術祭、広告宣伝にかなり力をいれているのが目に見えてわかるし、来場者も多いようには感じた。ここで思うことにはやはり、来場者の内情、そして島民、地元民の方々の心情といったところ。
来場者には自分の見た中では美大の学生など一般的にはどちらかというとデザインやアートに興味のありそうな人と、今回こういうのをやっているから来てみましたみたいな一般的観光客とは半々くらいの構成かなと感じた。つまり、普段からアートというものにお金を落とす人と、アートを観光資源として今回目的化して訪れた人。もし、後者が多くいるのであれば、少しは身近にアートが浸透してきたのかな、とも感じる。アートを消費資源として認識されれば、それはもうアートではないかもしれない。これだけ「アート」と目されたモノを羅列されると一つの作品に込められた深い思考も「消費」として思考停止に毛が生えたくらいの話でしかない。
今回、パスポートを使わず一つひとつにお金を払った人はシビアにみるとは思うが、4500円のパスポートで見てしまった人にとってはこのトリエンナーレはアートバブルの一遍でしかないかもしれない。通常の観光地との大きな差異は、訪れた人との生活の延長として考えられるかどうか、すなわち自分の生活とはかけ離れた作品群を純粋無垢に受け入れ、蓄積されるか否かにある。名物の食べ物を食べてうまいと感じるのと同様に、アートに感銘を受けようとする人が多くなってきたのであれば、これはこれでおもしろいことだなと思う。



数年前からベネッセコーポレーションを中心に行っているアート事業であるが、島での美術館の建設に加えて、拠点となる港、市街地でも再開発が行われている。

丸亀商店街再開発では、少し変わった方法をとっている。土地の所有を変えずにビルの床をまちづくり会社が取得・運営する事業スキームとし、土地費をイニシャルコストとして事業費に顕在化させない仕組みにしているのだ。地権者はそれぞれの土地を所有し続け、まちづくり会社と定期借地権契約を結び、土地を貸し出す。建物はまちづくり会社が所有、運営。まちづくり会社は、家賃収入から、建物の管理コストなど必要な経費を除いた分を、地権者に分配。地権者はこの事業に土地を投資し、地代という形で配当を得る。こうすることで、土地の利用と所有が分離、土地はまちづくりに望ましい形で合理的に利用されていく。また、まちづくり会社が建物全体を一体的に運営することができ、マネージメントが合理的かつ体系的にできるメリットもある。このような形態においては、地権者の合意を得ることが最大の課題。大きな苦労があったことが想像できる。自分の土地を自分のためだけに活用するのではなく、街全体としてイニシアティブをとりながら、そのリターンについても合意を重ねて行く必要があるからだ。
地権者が土地を「投資する」ということは、「リスク」と「リターン」を伴う事業であること。つまり、地権者はテナントの売上から家賃収入が期待できるが、その額は一定ではなく、テナントの売上によって増減するリスクを含む。これを「オーナー変動地代家賃制」という。このようなしくみの下、地権者は、テナントと協力をして売上増に努めなくてはならない。地権者とテナント、まちづくり会社が同じリスクを背負い、同じ目標を目指して協同で真剣に商売に取り組んでいくことが、町全体の魅力を高めていくことになる。
エリアとしてブランディング向上をしていくことは、元々あるマーケットとの関連性も見据えつつ自分の土地活用をしていく点で土地オーナーにとってはメリットの多い反面、しがらみなどのデメリットもでてくる。これをバランスとるのがまちづくり会社ではあるが、メリットデメリットを一体にして資本増強と言う形で考えれば全体としては良点、ということなのだろうか。以前、まちづくりに参画した西郷氏の講演をきいています。
高松丸亀町商店街HP http://www.kame3.jp/

この再開発は、平成13年に都市計画決定し、権利変換・建築設計などに着手し、平成18年に建築竣工している。
平成17年から18年にかけて、五町が高松市と合併したことを踏まえたとしても、近年人口は微増、生産年齢人口と高齢人口に至っては前者は減少し、後者は増加する。
高松市の課題として、他商店街と同様に、床面積あたりの売り上げの伸び悩み、自動車保有率向上による郊外化などが上げられ、その抜本的解決策としての再開発が行われた





参考:高松市人口統計 

・犬島

犬島は、花崗岩の産出で知られ、大坂城築城のほか、明治以降の大阪港築港の際には礎石の切り出し場となるなど、大阪の建設と縁が深いという。現在のシンボルの前身である犬島精錬所は、岡山県岡山市犬島にかつて存在した銅の精錬所であり、最盛期には三菱、古河、久原など12の精錬所が鉱石の争奪戦を展開。島の人口は3000人を超えた。しかし、島内に自山鉱、電錬所を持たなかったことや銅価格の暴落により1925年に廃鉱になった。現在の人口は50人、とある。





・豊島美術館 設計:西沢立衛

アーティスト内藤礼との作品。安藤忠雄作品とは違い、アートと一体化し、アートそのものといった建築。
西沢氏、SANAAで今まで日本で作ってきたものとも違う、コンクリートワンルーム空間を作った。どう断熱をしているのか、中には暑さが籠るということはなく、皆それぞれ寝転んだり座ったりと思い思いの時間を過ごす。一体のワンルームのはずがそれぞれが違うアクティビティを起こし、それを空間が許容することに何ら違和感を感じない。
水滴を落としたような建築とそれがそのまま空間になる。上部には2つだけ空隙があり、燦々と日光が注ぎ、内藤礼のアートが風に揺らぐ。地面には同じく内藤礼の水滴のアートが何の脈絡もないように動き回る。
境界がないようで、コンクリートには終わりがある。共鳴、響き、どう身動きをとれば良いかわからなくなるほど、空間は広がりと緊張感を兼ね備えていた。