宇宙ステーションレポ

kuroken2007-08-22

猛暑が続く8月20日、宇宙医学実験が行なわれている愛知医科大学へ遊びに行ってまいりました。

入り口には、いきなりこんなサプライズ。
嬉しかったです。
中へ入ると、昨年の夏に僕をさんざん苦しめたあのマシーンがぐるぐる回っている最中でした。
うわあ、懐かしいなあ。
もう一度乗りたいとは思わないけど。

さてさて。今回、なにに一番驚いたって、コレですよ、コレ。

部屋がキレイだああああああっ!

ちなみに、こちら↓は去年の写真。

ベッドの上から撮影したものなので、ちょっと比較しにくいかもしれませんけど。
今年はカーテンレールが天井に固定されているため、ものすごくスッキリしてるんですよね。
テレビやインターネットの配線は天井に通され、ナースコールのボタンもコードレスとなったため、昨年みたいに大量のコードが床を這ったりはしていません。昨年はストレッチャーが通るたびに、床の配線やカーテンを動かしていましたが、これならいつもプライバシーを守ることができて快適♪
ちなみに、ナースコールも、被験者ごとにメロディーが異なっていて、誰が鳴らしたか即座にわかるようにできていました。昨年の反省を活かして、いろんなところがバージョンアップされた模様。

……長々と書き綴ってきたこのブログですが、このあたりでとりあえずの幕引きということで。
またいつかお会いできる日を楽しみにしております。

名古屋タイムズ

kuroken2007-08-03

ここ数日、高熱を出して寝込んでおりました。
生まれつき扁桃腺が大きいため、1年にほぼ1回のペースで発熱してくたばってしまうひ弱な黒田です。ふにゃあ。
昨年は実験を終えた9月に発病したんですけど、もしあれが実験中だったらと思うとぞっとしますね。
「寝てるだけなんだからいいぢゃん」と思われるかもしれませんが、体調のすぐれないときに、自由を束縛されるっていうのは、やはりそーとーツラいもんがあります。まあ、周りが医者と看護師さんばかりというのは、かなり心強い状況ですけど。
なにはともあれ、もし今年も実験に参加していたら、もろに病気と重なって、大変なことになるところでした。ほっ。
あ。もう元気ですので、ご心配なく。


さてさて。
今年の宇宙旅行もついにスタート。
ってなわけで、本日付けの名古屋タイムズに宇宙医学実験に関する記事が載った模様。サイト上にも転載されております。こちら
掲載された自分の写真を見て、とても懐かしい気持ちになっちゃいました。
今年参加してる皆さんも、こんなふうにご飯を食べてるのかなあ。

テレビ出演

kuroken2007-07-27

今日は暑かったですね。
いつも泳ぎに出かけているプール。ビニールハウス内にあるので、温水設備が整っていないにも拘わらず、11月くらいまで泳げちゃったりするんです。
だけど、反対にこの季節はキツイ。

本日の室温37度、水温34度

ひいいいいいっ。鼻血出そうでした。
先輩がたの話によると、夏本番になれば、室温は軽く40度を超えるそーな。ちょっとしたサウナだな、こりゃ。

さて。
昨年のベッドレスト中には、地元テレビ局や新聞社の取材を受けたり、実験後もラジオに出演したりエッセイを書いたりと、あちこちでベッドレストについて語ってきた僕ですが、いやあ、やはり全国ネット――しかもゴールデンタイムのテレビ番組の力はスゴイです
今年の5月1日、オリエンタルラジオが進行役を務める「週刊オリラジ経済白書」という番組内で、宇宙医学実験が取り上げられました。
「オリラジ経済白書」は、一般的には知られていない情報を、経済やお金に絡めて紹介する情報バラエティ番組。その回のテーマは「楽して稼げるバイト」。いや、決して楽して稼げるわけじゃないんだけどね。
僕はアルバイト体験者の一人として取材を受けました。オンエアされたものを観たら、


ををを、北島三郎とツーショットだよ!(写真参照)


僕が映ったのはわずか数秒なんですが、それでも放映直後から「テレビに映ってたぞ!」「なにやってんだ、おまえ?」と、たくさん連絡をいただきました。嬉しくもあり、恥ずかしくもあり。
あの番組を観て、今回の実験に応募されたかたってどのくらいいるんでしょうね?
番組内では、恐怖の遠心分離器についてはまったく語られなかったからなあ。

おひさしぶりです

kuroken2007-07-26



おひさっ!


時が経つのって、ホントあっという間ですね。
昨年の疑似宇宙旅行から、まもなく1年が経とうとしています。
ひとつ年を重ねた以外は、ほとんどなにも変わらず、毎日を過ごしている黒田です。
いや、健康にはずいぶんと気を遣うようになりましたよ。
酒の量は思いきり減りましたし、毎日のトレーニングも欠かしていません。
おかげで、昨年の今頃よりはかなりスリムになりました(たぶん)。

さて。
この夏も、昨年同様、愛知医科大学で宇宙医学実験が行なわれます。
テレビのバラエティー番組で紹介されたこともあり、今年はずいぶんとたくさんの応募があったそうです(本年度の募集要項はこちら)。
すでに、パイロット16名は決定した模様。
7月30日から事前測定が始まり、8月2日から順次、宇宙旅行に旅立つそうです。

先日、今年の被験者予定のかたからメールをいただきました。


耳かきや爪切りなどは、準備しておくべきでしょうか?


というご質問。
確かに、なにを準備していけばいいのか、わからないことだらけですよね。いちいち、大学側に問い合わせるのも気がひけますし……。
ってなわけで、このブログを今年の被験者の皆さんの交流の場に使っていただけたらと思います。
実験開始まで、もうあまり時間はありませんけど、今年の被験者の皆さん、素朴な疑問などありましたら、遠慮なく書き込んでください。
僕が先輩面してお答えいたします(笑)。
自己紹介なども待ってますよ〜。

あ。先ほどの質問の回答ですが、耳かきや爪切りは必要だと思います。とはいっても、日用品全般は病院の売店にも売ってますから、事前測定の間に買えばオッケーですけどね。実験が始まってからでも、スタッフのかたにお願いすれば、いろいろと買ってきてくださると思います。
ついでに付け加えておくと、せっかく用意したのに無駄になっちゃったのは下着類。実験中は正確な体重測定を行なうため、全員が同じ下着を身につけますから、とくにオニューの下着を用意する必要はありません(あくまで昨年の話ですが)。

さてさて。
僕はと申しますと、今年はぜひとも、実験に参加している皆さんを外側から眺めてみたいと思っております。
ときどきお邪魔させていただくかもしれません。そのときはどうぞよろしく!

さよなら夏の日

kuroken2006-08-31

ベッドレスト生活が終わったあとも、午後11時半就寝、午前6時起床という、実に健康的な毎日を送っている黒田です。
朝6時になると自然に目が覚めちゃうんですよね。ベッドレスト生活前は昼近くに起きていたため、朝飯抜きの1日2食だったんですが、早起きのおかげで朝もしっかり食べるようになりました。
せっかく減った体脂肪をそのまま維持したかったので、食事内容や量にも気をつかっています。酒の量も減りました。
水泳も今まで以上に頑張っていますし、血圧や呼吸数、脈拍数にも気を配るようになりました。
エアロバイクが届いたら、そちらも頑張る予定。
……ってなわけで僕、ものすごく健康に配慮するようになっちゃいました。
寝たきり生活の不便さを知り、いつまでも健康でいたいと思った故の結果であります。
まさかここまで気持ちが変化するなんて、実験前は思いもよらなかったんですけどね。


寝たきりの生活は本当につらいですよ。
健康な肉体を持っていて、20日間限定だとわかっていたから、なんとか耐えてこられたんだと思います。
もし、こんな生活が一生続いたら……そう思うとぞっとします。
でも、そんなつらい生活を続けている人が、世の中には大勢いるんですよね。
以前の僕なら、寝たきりで生活する人を見たら、その人自身よりも、まず介護する側を気の毒に思ったでしょう。
だけど……当たり前のことなんですが、本当に苦しいのは介護されている側なんですよね。
正直、これまでは介護なんて面倒なものだという認識しかありませんでした。
でも、20日間のベッドレスト生活で、ずいぶんと意識が変わったみたいです。
今後は積極的に、介護などにも関わっていきたいと思っています。


今年の夏はどこにも遊びに出かけられませんでした。
海にも山にも行かずじまい。
梅雨明けと同時に宇宙へ旅立ち、帰還後すぐに涼しくなってしまったため、真夏の陽射しを浴びることもほとんどありませんでした。
だけど、これまで生きてきた37年間で、もっとも思い出に残り、そしてもっとも自分の意識が変化した特別な夏であったことは疑いようがありません。


「報酬の30万円はなにに使いますか?」
出所するとき、ケアスタッフのかたにそう訊かれました。
「もったいなくて使えません」
それが正直な僕の答えです。
こんなにもつらく、こんなにも楽しく、そしてこんなにも刺激的な夏は、おそらくもう二度とやって来ないでしょう。
だから思い出の品として、30万円はそのまま残しておくつもり(笑)。


というわけで、約50日間にわたってレポートしてきた僕の宇宙旅行体験記。
これにてひとまずおしまいということにさせていただきます。
今後はベッドレスト実験に関する話題があったときのみ、不定期更新していくつもりです。
通常の日記は、本家サイトのほうでどうぞ。

駄文につき合ってくださり、皆様、ありがとうございました。
では、またそのうち!

訃報

kuroken2006-08-30

宇宙旅行の真っ最中だった8月3日、元講談社編集者の宇山日出臣さんが亡くなった。
中学時代、宇山さんが編集していた雑誌「ショートショートランド」で創作の面白さを知り、大学時代、宇山さんが仕掛けた「新本格ミステリ」でその世界にはまり込み、そして宇山さんに認められてメフィスト賞を受賞し、作家デビューを果たした僕。
デビューしたとき、「これで人生が狂っても責任は持ちませんよ」といわれたが、その前から僕は宇山さんによって人生をコントロールされていたような気がする。
宇山さんに出会っていなければ、おそらく作家にはなっていなかっただろうし、もしかすると読書好きにさえなっていなかったかもしれない。


8月4日。いつものようにベッドの上でネットを徘徊しているとき、知り合いの作家さんのサイトで訃報を知った。
6月に行なわれた本格ミステリ大賞のパーティーで元気そうなお姿を拝見したばかりだったので、しばらくは信じられなかった。
ブログにはなにも書けなかった。起き上がれないという特殊な状態で、大切な人の訃報を書き記せば、ますますつらくなることは目に見えていたからだ。


告別式は11日に行なわれたが、ベッドの上を離れられない僕は、弔電を送ることしかできなかった。
ちょうど、宇宙旅行も半ばにさしかかった頃である。
やりきれなかったが、どうしようもない。
宇山さんの星を訪ねるために、僕はこの旅行に参加したんだ──そう思うことにした。


宇山星はとても大きく、とても厳しく、そしてとても暖かかった。
「これで人生が狂っても責任は持ちませんよ」
赤ら顔でそう口にする宇山さんに、今なら自信を持ってこう伝えられる。


人生を狂わされたこと、本当に感謝しています。


……ご冥福をお祈りいたします。