まるでダメなオッサンの日常

2009-08-09

夏休みの宿題・読書感想文のススメ

ファストフードが世界を食いつくす

ファストフードが世界を食いつくす

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

そんな話題が特に好き、というわけではないのですが、エリック・シュローサーの『ファストフードが世界を食いつくす』を読みました。

ちょっと前の本なのですが、アメリカの産業構造と苛烈なまでの資本主義経済政策の「自由」が生み出している暗部を明らかにした全米ベストセラーノンフィクション・ルポタージュ(この言い回しはおかしい?)です。

内容は、マクドナルドに代表されるファストフードチェーンと関連企業が、市場効率や利潤を最大限に求めた結果、アメリカの社会構造に大きな弊害をもたらしている・・・といったよくある警鐘モノなんですが、これが非常によく書かれています。

翻訳のせいか少し分かり難い部分もありますが、400ページの分厚い本で読みごたえもあり、上に挙げた『貧困大陸アメリカ』と合わせて読むと、経済効率と合理性を理想とする国。アメリカが抱えている矛盾の一端が見えくるのではないでしょうか。

日本も規制緩和の折、某大手流通企業が農業に参入してコストダウンを目指している、という報道がありましたが、効率化の行き着く先にあるものは・・・なんて考えると、とても他人事とは思えませんね。


しかしまあ、この手の読み物が好きな人に限って、「アメリカの世界支配が云々」とか「政府が『勝ち組・負け組み』の構造を意図的に作り出して、人々を戦場に送ろうとしている」とか、安易な善悪二原論を展開しがちですが、「誰が悪い」「何が悪い」といった単純な問題ではなく、こういう矛盾の内実は、僕たちが生活している世界の構造そのものの矛盾が発露した結果なんじゃないかな、なんて思います。

言い換えれば、企業の目的は「利潤の追求」なのだから、儲かるならば何でもするわけだし、そのための社会に対する働きかけ(例えば、政治や立法にたいする業界のロビー活動)も当然と言えば当然なわけで、そこでは個人的な倫理観やそのほかの価値の意義は、比較として小さいものとなっても、これもまた当然の帰結といえるわけです。

そうであるならば、統合による市場の独占も、効率化による労働力搾取的運用も、社会の階級化も「誰が悪い」「何が悪い」といった性質の議論ではなく、企業や政治に携わる個々人は「己の為すべき事を為している」にすぎず、企業や政治そのものも、存在意義としての「目的」があるにすぎない。そこに「何が悪い」といった単純な議論を持ち込むならば、「資本主義そのものが悪い」としか言いようが無いわけです。

しかしながら、決定的に構造化した、現代の僕達の生活も恩恵を受けている「世界」そのものを、簡単には否定できないわけで、いずれにしても暫時に解決できる問題ではありません。

まあこの辺の、資本主義市場原理主義消費者主義、等々に対する議論は、19世紀から様々な人々がしてきた問題なので、ことさら言及しませんが、要は、似たような本ばかり読んで、それを真に受けて、複雑な事象が絡み合って存在してる問題を単純化して、簡単に「答え」を出すな、という事です。

よく「本の毒にあたる」なんて言いますが、純粋でまっすぐな(であろう)中高生は、熟読よりも多読を心がけてくださいね。特に社会科学時事問題政治思想系は、反対論者の本も合わせて読みたいところです。(そんな若い奴が、こんなブログを読んでるわけない気もしますが)





さて、今回の本題・読書感想文

子供の頃からそこそこ読書はしていた僕ですが(西村京太郎とかだけど)、「感想文」とか言われると、非常に困ったんですね。「この本を読みました。面白かったです。」でいいだろうと。「感想」なのに「面白かった、つまらなかった」以外に何があるのかと。

それがどうしたことか、今はこうやって紛いなりにもブログなんか書くようになったわけですから、体験的に培った「書き方のコツ」みたいなものと、を少し紹介します。

対象は、感想文が苦手な中高生ですから、読書好きな方、作文が得意な方は読み飛ばしてください。


本の選び方


読書感想文は、学術論文ブログのように多数の読者に向けて書くものではありません。先生(国語教師)一人に向けて書くものですから、本選びにも相応の注意が必要です。

たとえ流行っていようが、面白かろうが、教師ウケする作品を選ばなくてはなりません。ライトノベルなんてもってのほかです。「純文学」に分類される作品を選びましょう。

といっても、マルキ・ド・サドソドム百二十日』とか、マゾッホ『毛皮を着たビーナス』とか、沼正三家畜人ヤプー』なんかは問題外です。文学的評価がされてようがダメです。下手すると学校に親が呼ばれたり、カウンセリングを受けさせられるハメになりかねません。ともすれば三島由紀夫谷崎潤一郎でも危ないです。注意しましょう。

太宰治夏目漱石などの、ある意味スタンダードな作品もお薦めできません。

貴方の作文を評価する先生の年齢が幾つか分かりませんが、相手は国語教師です。大学では、まったくツブシの利かない「文学」なんてものを専攻した変わり者(?)ですから、きっと学生時代から本の虫、古典文学なんかはきっと何度も読んでいて、独自の文学論をサークルや同人達と語り明かしたに違いありません。

こんな連中に向かって「僕は先生とKに対する心情が理解できます」とか、「『自分』は人間失格と理解したがゆえに、世界から解放されたのだ」とかのたまわれば、「ふざけんなクソガキが!、お前に漱石(太宰)作品の何が分かる!」と思われかねません。

加えてこれら古典小説は誰もが感想文を書きますから、作文が苦手で読書嫌い、感性も乏しいであろう貴方の拙い感想文が、読書大好き優等生のもやしっ子が書く秀逸な感想文と比較されて、相対的に評価が下がります。

なおかつ古典小説というものは、文章、表現が現代人には難解です。時代背景や当時の人間の感覚みたいなものに対する理解が必要であるため、ゆとり教育の被害者でありゲームやインターネットやマンガばかり読んでいるであろう貴方が読んでも、ちっとも面白くないことでしょう。面白くなければ読み進めるのも苦痛だろうし、感想文も書けません。



では、どんな本を選べばいいのでしょうか。


その ティーンエージャー、もしくは世代が近い、若い作家の作品

個人的な推察ですが、面白いと感じるかどうかは、「どれだけ感情移入できるか」、「どれだけリアルか」の問題だと思います。

突拍子もない事件や、荒唐無稽な世界観を描いた作品も面白いことは面白いのですが、作品世界の整合性や主人公の行動や感情があまりに突飛では常人には理解できませんし、感想文も書きにくいでしょう。

僕も経験があるのですが、ティーン小説の大家なんて評される作家先生の書く作品を読んでいて、物語しては面白いのだけれど、言葉の使い方や感覚、感性がズレていて、なんだか違和感を覚えたが最後、徹頭徹尾それが気になってしまう・・・なんてことになったら、感想どころではありません。

まあ、そういう作家の「ズレ」を一つ一つあげつらって、作家性を論評する、というのも一つの手ではありますが。

ともかく中高生に近い年代の作家の作品であれば、きっと貴方と共通の感性もあって容易に作品世界に入り込めるでしょう。

しかも先生は普段、岩波文庫中央公論新書や、芥川・直樹賞、三島由紀夫山本周五郎賞本屋大賞あたりの作品は読んでいても、この手の小説は読まないでしょうから、安心して感想文が書けます。ポイントは「先生が読んでいない」というところです。

お薦めは、木堂椎『りはめより100倍恐ろしい』、白岩玄野ブタ。をプロデュース』、島本理生『リトル・バイ・リトル』。

物語の舞台も学校や家庭ですから、作品世界に自分を投影して、終始「僕が○○だったら・・・」とか「○○な事件は、現実に僕の周りでも・・・」と、お茶を濁しておけば、中高生らしいナイスな感想文が書けることでしょう。

りはめより100倍恐ろしい (角川文庫)

りはめより100倍恐ろしい (角川文庫)

野ブタ。をプロデュース (河出文庫)

野ブタ。をプロデュース (河出文庫)

リトル・バイ・リトル (講談社文庫)

リトル・バイ・リトル (講談社文庫)


その◆映画化・マンガ化された作品

ゆとり教育の被害者であり、ゲームやインターネットやマンガばかり読んでいるであろう貴方が、普段しない読書をするのは非常に苦痛だと思います。「映画やマンガを読んで感想文書けばいいんじゃね?」という安易な発想に陥るのは当然です。

しかし世の中そう甘くはありません。映画やマンガを見ただけで、いざ感想文を書こうと思うと、所定の枚数を埋めることに苦労することになるでしょう。

作文が得意、「自分の体験」をでっち上げて、作品に関連付けて書くのが大得意、という表現力豊かな人間でなければ、だらだらとあらすじを書いて埋めることになり、感想文としての体をなさないものとなるでしょう。

ことさら表現力が乏しければ、あらすじを書いてやっと原稿用紙一枚、なんてことになりかねません。ですから映像作品は、あくまで補助的なものとして利用しましょう。

そもそも文体も内容も軽い現代文学の作品なんて、1日2日かあれば余裕で読めます。テレビやネットやゲームさえしなければ余裕です。

注意したいのは、先に映画やマンガを見ないことです。売れた作品というのは、起承転結あってそれなりに面白いはずです。しかし映画やマンガを先に見てしまうと、筋が分かってしまい、ただでさえ苦手な読書がより退屈なものとなります。注意しましょう。

サッと読んで、そのあとに映画やマンガでおさらいして感想文に取り掛かります。

映画化・マンガ化されていれば、文学作品単体より多くの人の目に触れていて各所で感想が述べられているはずですから、それらを積極的に利用しましょう。読書好きの書評なんてものは、ちょっと教養じみていて言い回しも何だか高尚で、中高生の感想文の参考にはしにくいですから、一般的な映画好き、マンガ好きの感想を パクリ 参考にします。そうですね、amazonよりもmixiのレビューほうがバタ臭くて参考にするには適しています。できるだけ若年(女子大生あたり)のレビューを参考にしましょう。

あとは筋を追いながら自分のリアルな経験をでっち上げて心情を吐露したり、「この描写の意味するところは〜」とか適当に書いておけば、それなりに様になります。

それで文字数が埋まらなければ、「この作家のほかの作品では○○であったが、本作では○○となっていて、心境の変化が伺える」という、他作品に関連づけるのも手です。比較する作品は原作を読んでいなくても構いません。どうせ1行か2行のことですから。

この手を使うならば、伊坂幸太郎あたりの角川作家の作品を選びましょう。

あと、間違っても「主役の豊川悦司がカッコよかった」とか書かないように。

お薦めは、奥田英郎『サウスバウンド』、滝本竜彦NHKにようこそ!』、市川拓司そのときは彼によろしく』、伊坂幸太郎アヒルと鴨のコインロッカー』等々

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

そのときは彼によろしく (小学館文庫)

そのときは彼によろしく (小学館文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)


その:反戦モノ

作文は苦手、文章力や感性は乏しいけど、高評価を得たい、内申点を上げたいという貴方は反戦文学をお薦めします。

大体、教師になろうなんて奇特な人間は、純粋まっすぐな教条主義者に決まっています。間違いありません。特に 授業や校内行事で政治的信条を明らかにされるようなアレな先生であれば 平和教育に熱心な真面目な先生であれば、その効果は絶大です。

上手くいけば校内優秀作として表彰や、先生の勧めで地元の新聞に投稿されて商品が貰えるかもしれません。そうなれば受験の時に有利です。これはもう書くしかありません。

ポイントは、とにかく「戦争は悪い」「軍人は悪い」「すべての人間は権力の被害者、犠牲者」と一貫して主張すること。

「この時代には、これが正義である」とか「敵軍に対しての自衛戦争の側面もある」とか「価値観・倫理観は、時代や場所、見る人間によって変わる」なんて、間違っても書いてはいけません。とにかく戦争や軍隊や権力は悪なのです。場合によっては「国があるからいけない」ぐらい書いても構いません。

たとえ貴方が大東亜共栄圏の理想に燃えていようが、日本再軍備核武装論者だろうが、反中反韓レイシストだろうが、貴方の目的は先生の高評価を得る事なのですから、徹底して反戦を書きましょう。

どうせ大人になって社会にでれば、自分の理想や信条を貫くなんてことはできません。たまにそういう人もいますが、世間からは「独り善がりの社会不適合者」扱いされて冷や飯を食わせれるのが関の山です。

「目的のために自分を曲げる」「理想よりも実利をとる」、それが大人への第一歩です。

かくいう僕も、学生時代に180度信条の異なる、活動家崩れのアレな先生が日本国憲法の講義をしていましたが、テストでは「権力と衆愚が生み出す暴力であり、暴走を許さない為にも、我々市民の監視の目が必要である!」と、力強く書いてA+の評価を戴いた経験があります。これぞ大人の選択というやつです。

というわけで、迎合してでも高評価を得たいならば、反戦文学で感想文を書きましょう。いざ戦わん、いざ、奮い立ていざ!


お薦めは、大岡昇平野火』、遠藤周作『海と毒薬』、ちょっと高尚ぶるならレマルク『西部戦線異状なし』もいいかも。

応用としては、冒頭で紹介したような反資本主義もいいかもしれませんが、こちらは少し素養が必要かも。文学作品としてはスタインベック怒りの葡萄』とか。

野火 (新潮文庫)

野火 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

西部戦線異状なし (新潮文庫)

西部戦線異状なし (新潮文庫)

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)





最終手段:本を読まなくても感想文は書ける!

あまりお薦めはできませんが、提出期限が迫ってきてどうしようもない人のために、最後の手段を紹介します。

想像力と作文力に自身がある人向けではありますが、永岡書店という出版社からこんな本が出ています。

日本・名著のあらすじ (コスモ文庫)

日本・名著のあらすじ (コスモ文庫)

その名も『日本・名著のあらすじ』!

作品の冒頭文、内容の要約、作品の読みどころや、作者・作品の略歴とエピソードなんかが紹介されている本で、本来はレファレンスとして使うべき本なのでしょうが、感想文にも応用できると思います。

とは言っても、一冊のつき5,6ページの解説なので丸写しで紙幅を埋めるのは到底不可能です。そもそも丸写しは著作物の盗用ですし、パブリックドメインだったとしても、モラルに外れる行為です。中高生のうちからそんなことをしていては、ロクな大人になりません。

同じパクるにしても、自分なりに改変して、パクリに独創性を持たせましょう。前述のmixiレビューの参考にも言えますが、たとえば他人の感想文を参考にしたとしても、そのまま丸写しはせず、自分の言葉で組み替えるのです。

それだけではまだまだ盗用の域を出ませんから、さらに他の感想文も参考にします。最低3,4の感想を参考にして、自分の言葉で書き換え、コラージュするのです。

それでも後ろめたいのであれば、「これ読むまで気づかなかったけど、俺もそう思った!」部分だけ戴くわけです。くどいようですが、表現はあくまで自分の言葉に書き換えること。

あとは想像力で適当にでっち上げる。前述の『日本・名著のあらすじ』から冒頭文を再引用して、想像をめぐらして紙幅を稼ぎます。ちょっとやってみましょう。

作品は、川端康成雪国



 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。

 向側の座席から娘が立ってきて、島村の前のガラス窓を落とした。雪の冷気が流れ込んだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、

 「駅長さあん、駅長さあん」

 明かりをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。

この本を選んだ理由は、この冒頭の文に惹かれたからだ。僕の父親の田舎は新潟にあるので、毎年冬休みは家族で帰省する。今は新幹線で窓も開かないし、三等客車もないのだけれど、冬には必ず積もっている雪と寒さと、「長いトンネルを抜けると雪国」という景色は、毎年僕が見ている雪国そのものだ。


はい、なんかソレっぽいでしょう?。ちなみに僕は父の実家が新潟でもなければ、越後湯沢に行ったこともないのですが、そこは想像力でカバーです。

実際に自分が書いているのは1行半なのですが、このように引用+感想を上手に使って導入し、内容については他人の感想文をコラージュしてでっち上げ、最後の3,4行を再度自分の言葉で締めれば、それなりの体になるはずです。

あとはこの辺のサイトを利用するのも手ですが、くれぐれも丸写しは駄目ですからね。

自由に使える読書感想文は学校提出目的に限り著作権フリーです

一部の読書人に捧げる!「本読みHP」トビラページ

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))


とまあ、長々と書いて来たんですが、自称読書好きな僕としては、感想文はともかくとして本を読んでほしいわけです。中高生でなくとも、ちょっと面白そうだなと思えば是非読んで貰いたい。

ゲームやマンガ、映画、その他の趣味に比べれば、読書なんてお金のかからない趣味ですし、知識や見識の陶冶というか、読書で得られるモノってあると思うんですよね。amazonのリンクを貼ってるのも、読書のきっかけになればという思いからです。(アフィ嫌いの方に念のため断っておくと、僕が紹介するような商品で得られる金額なんて、一冊売れて十数円です。単行本、文庫など複数商品がある場合は、必ず安いほうを紹介するように心がけています。ちなみに2月からの累計実績は120円くらいです。買ってくれた方、ありがとうございました。)

人間も本も、付き合ってみないと分からない、読んでみないとわからりませんから、より多くの本を読んで自分の人間性を育てていければいいんじゃないですかねえ。

某宗教団体機関紙のラジオCMでも言っているように(?)、「本嫌いは食わず嫌いと同じ」なのかもしれませんね。って、何の話だこれは。

ともあれ、読まずに感想文を書こうと思ってる人は、来年はちゃんと「読書」感想文を書いて下さいね。

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