Hatena::ブログ(Diary)

クロサキイオンの徒然草

2017-05-19 遠田潤子「アンチェルの蝶」

アンチェルの蝶」遠田潤子/光文社文庫

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大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。

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先に読んだ月桃夜、雪の鉄樹の2冊とも素晴らしく、他も読みたかったのですが探せどもなかったのでアマゾンで購入。月桃夜のフィエクサが妹に恋い焦がれる兄、雪の鉄樹の雅雪がたらしの家で生まれ育った愚直な庭師で、さてこの物語はと……。最初の30ページだと、いきなりズブロッカを一本開けて飛ばしてくれるアル中予備軍……かと思ったら、

うわあ。うわああ。うわああああ。


いやいや、この方の小説、沼だ。


序盤は説明文の通り、中学の同級生・秋雄が藤太のもとにほづみという女の子と連れてきて「暫く預かってほしい」と言って消えていきます。戸惑い、不器用ながらもほづみと藤太は心を通わせていくが、その間にも、1)秋雄のマンションが全燃、本人行方不明、2)ほづみの父と名乗る男が現れる(こいつが後後のキーパーソンになる)、3)藤太が酔っ払ってグダグダ。ほづみに八つ当たりしては泣かせる→謝る、の無限ループ、4)意外に優しい常連客、等々の見どころが沢山あり……。

しかし100ページ超えたあたりから、時間が25年以上引き戻されます。飲んだくれで酔っ払っては息子をぶん殴る父を持つ藤太と、飲んだくれで麻雀狂いの父を持つ秋雄が出会い、その縁で神さまにハマる母・麻雀狂いで借金持ちの父親を持つ父を持つほづみと、この3人が仲良くなります。しかしこの3人は決して仲がいいだけではなく、凄惨な記憶が存在して……。というのが本書の内容の一部。


何この絶望。何このどうにもならん感じ。運が悪かった。親に恵まれなかった。で済ませたくないこの暗黒感。

いやねあの、途中でいづみちゃんが「あたしもういやや。私より辛い子は沢山おるけどこんなん耐えられへん」っていうんですけど、ほんっとこれ、耐えたくないっつーか、耐えられへんっつーか。「世の中にはもっとつらいことあるよ」って言えんわ辛すぎるわ!!と思ったり。大阪弁も勝ってバカ父らのえげつなさが洒落にならないぐらいマジでエグかったり、途中で「俺、あいつら殺すから」って言った藤太の心情が、読者にもどうにもこうにも止められんのよ。結局3人全員のその後の人生に暗い影を落とすことになるけど、「おいやめろ」とか思えないのよ。

藤太はその後、中卒で居酒屋を経営しフォークリフトで膝を潰されて狭い居酒屋の店内と市場を往復する人生を送り……その藤太の泥沼の人生を救うのが、いづみの子供のほづみでした。そのほづみちゃんの存在が大きけれど、40の男が「どうにもならん泥沼」から人生を取り戻すラストは圧巻の一言。

「早く救われてくれ!」と読者も泥の中で祈りながら目をそむけたくなりながらも、人の熱量と物語の底知れぬ闇の力、その沼にどっぷりハマったら最後。

この作家のファンになってます。


そういえばですね。主人公の藤太がほづみを連れて警察に行ったとき、自分のことを「俺は中卒で居酒屋」と説明していましたが……ちなみに「雪の鉄樹」の雅雪は、世話をしている遼平少年にこう言う場面がある。「せめて高校は出ろ。俺ですら出た」

……なんでしょう。藤太がこういうシーンは超序盤のあたりなんですが、作品を超えてブーメランを感じてしまったのは。

2017-04-29 紺野アスタ「尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る」

紺野アスタ「尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る」ダッシュエックス文庫

久佐薙卓馬は廃墟と化したデパートの屋上遊園地で、傷だらけの古いカメラを持った不思議な少女―尾木花詩希と出逢う。卓馬の通う高校で“心霊写真を撮ってる変わった女”と噂される詩希に「屋上遊園地に出るといわれる“観覧車の花子さん”を撮ってほしい」と依頼するのだが、「幽霊なんていない」と取り合ってもらえない。しかし、諦めきれない卓馬は写真部を訪ね、詩希を捜そうとするのだが、彼女がいるのは“心霊写真部”だと教えられて…。卓馬が逢いたいと願う“観覧車の花子さん”を、詩希は写すことができるのか―。少年の想いが少女の傷を癒す、優しく切ない青春譚。

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この小説を読んで、一番残ったのが下の二つの言葉。

「私はキレイの欠片を映したい」

「写真は嘘つきだ。けど、どうしようもなく正直者でもある」

……なんという写真愛に満ち溢れた言葉!! というこの二文字だけでもくらっと来ました。写真を題材にしたちょいと苦めの青春譚。ちょいとミステリ風味あり。風味なのは少年少女の青春譚に重きが置かれているからかな、と思ったけれど、写真が主役なのでこれはこれ。むしろ、風味であるから主役である写真の邪魔をしていないバランスが凄く好きだ。意外に変……に見せかけて変に見られることを気にしているカメラ少女の詩希が可愛かったり意外に誠実……のように見せかけて割と自分の都合で詩希を振り回している卓馬とのやり取りが、ちぐはぐでかわいらしく、なんというかほろ苦い。その苦さを残しつつ、少しずつ、少しずつ変わっていく女の子を見るのは本当に至上の喜びです。

意外に最近のラノベでは少ないのかなぁ、こういう青春もの。ビターな青春ものが好きな人と、野村美月の「文学少女」シリーズが好きな方にはぜひともお勧めしたい。

2017-02-28 紅玉いづき「ブランコ乗りのサン=テグジュペリ」

紅玉いづき「ブランコ乗りのサン=デグジュペリ」角川文庫

20世紀末に突如都市部を襲った天災から数十年後、震災復興のため首都湾岸地域に誘致された大規模なカジノ特区に、客寄せで作られたサーカス団。花形である演目を任されるのは、曲芸学校をトップで卒業したエリートのみ。あまたの少女達の憧れと挫折の果てに、選ばれた人間だけで舞台へと躍り出る、少女サーカス。天才ブランコ乗りである双子の姉・涙海の身代わりに舞台に立つ少女、愛涙。周囲からの嫉妬と羨望、そして重圧の渦に囚われる彼女を、一人の男が変える。「わたし達は、花の命。今だけを、美しくあればいい」。

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ここ久しぶりに読書の日々を送っている。しかし「汚職刑事が笑いながら拷問する」→「姫騎士を捕まえていじめて屈服させてハートフルスパンキング」→「うふふと笑いながら「野菜/ケツ/突っ込む」を連呼する天才美少年」ときて紅玉いづきさんの「ブランコ乗り」を読み……読了後のまずの感想は、まるで自分がまっとうな読書をしているのではないかという奇妙な感覚を覚える、でした。なぜ私はこんな美しい装丁の美しい少女たちの物語を読んでいるのか。それは買ってしまったからである。

ついでに言っておくといやあ、割と「札幌アンダーソング」はオブラートに包み込めていませんことよ変態性を。

物語は「ブランコ乗り」の8代目サン=テグジュペリの片岡涙海が練習中に大けがをしたところから始まります。涙海は「怪我をした自分の代わりに舞台に立ってほしい」と双子の妹の愛涙に懇願します。そこから一人の男と出会ったところで、姉妹の運命が急速に変わっていきます。

この二人の運命を軸に、同じように舞台に立つ少女たちのが受ける重圧・嫉妬、舞台への恐怖や決意等が潔く描かれていきます。カジノでの陰謀と舞台に立つものの重圧、それによって受ける嫉妬、少女サーカスの団長は何を考えているのか。歌姫のアンデルセンは「妹の方が才能はある」、「でも舞台に立つのは姉だ」といい、姉は「妹の方が才能がある。そんなのはずっとわかっていた」と嘆く。

さて、病室で苦悩する姉と舞台に恐怖を覚える妹の運命は。

「カジノ特区に客寄せで作られた少女サーカス」「そこでは曲芸学校を卒業したエリートの少女が」「文豪の名前を借りて舞台に立つ」という設定ですが、まずカジノ特区というところが健全ではなく、その舞台もまたしかりなような気がしますが、そこを「少女たちが目指す最高にして至上の舞台」にきちんと見せているのは紅玉さんの描く少女のしたたかさと美しさ、そして文章の品のよさでしょう。この曲芸学校が何とも言えずにズカっぽいのがいいですね。(ヅカの学校も2年生だった筈)

この物語に出てくる女の子って、深く悩んでいても決断し、強くなる時に美しくなるというか、その瞬間がどうしようもなく潔く、刹那的で美しいです。刹那的なのは少女たちの特権ですからね!

だからこの最後、姉の方の、本当の8代目サン=テグジュペリが選んだ行動に「いやいや、よく考えれ」と思う大人はいるとは思うし、私はそれを一瞬考える程度には大人になってしまった。しかし「剱山にしか咲けない花はあるのだ」という作中の言葉の通り、一瞬であることが永遠の美へと昇華されるからそれでいいのです。

これからの姉の、8代目サン=テグジュペリに幸あれ。妹にも幸あれ。

2017-02-24 小路幸也「札幌アンダーソング」

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北海道は札幌の雪の中で全裸死体が見つかった。若手刑事の仲野久ことキュウは、無駄にイイ男の先輩・根来と捜査に乗り出すが、その死因はあまりにも変態的なもので、2人は「変態の専門家」に協力を仰ぐことに。その人物とは美貌の天才少年・志村春。彼は4代前までの先祖の記憶と知識を持ち、あらゆる真実を導き出せるというのだ。春は変態死体に隠されたメッセージを解くが!?平凡刑事と天才探偵の奇妙な事件簿、開幕! (「BOOK」データベースより)

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作者の小路幸也さんが、北大路公子大先生の「苦手図鑑」の解説をなさっていた+「天才美少年で変態の専門家」という単語で二つ返事のように購入。「出会ったその瞬間にピンときて購入を決める本」「その時に買わなかったけどむずむずと自分の中で残っていた本」というのは私にとってアタリで(今までそれで当たった本は割と多い。アフリカン・ゲーム・カートリッジズもそうだったし、月桃夜、おいしいベランダもそうだった)、今回は後者でした。

で、この本。

変態死体を通して天才二人が間接的にそして挑発的に会話する、もちろん死体が上がるので何かしらの事件性がありそれを二人の刑事が調べるのですが、緊張感があるようなないような。ミステリというよりも「天才美少年がアドバイザー的に事件にかかわっていき、それを解決すべき二人の刑事や美少年の周りの人間があらゆる面でカヴァーする」もので、ストーリーはディープでブラックなネタが多いわりに主人公のキュウちゃんの語り口がほんわりしているので、変態性はあってもそのほわっと感で緩和されている印象があります。

まぁ、「刑事のわりにキュウちゃんの感性が普通」というので語り口がゆるふわな感じは納得できますが、春くんは「4代前の記憶を持ち」「札幌の裏の歴史に通じている」「あらゆる五感が発達している」というハイスペック天才美少年。そしてこの「天才美少年にして変態の専門家」なんですが、この子がとても恐ろし無邪気可愛い。設定盛り過ぎなんでは、と思うんですが、それを差し引いてもカワイイ。こたつでごろごろしてたり「僕は友達なんて必要ないんだよ」と言いながら、「自分は普通じゃない」ことを自覚しつつ家族のことをめっちゃ大事にしていたり。

キュウちゃんの普通な語り口と意外にニュートラルな春くんが、変態事件をライトゆるふわミステリーにしているのかもしれません。

とりあえず1)見た目中坊な美少年(19歳)、2)甘えん坊気質あり、3)女物の服が似合う、4)あらゆる知識を持ち合わせ、4代前までの祖先の記憶を持つ少年が、「うふふ」と無邪気に笑いながら猟奇殺人を眺め見て、「野菜/ケツ/突っ込む」を連呼している姿は、たまらない。

そんな美少年が「野菜/ケツ/突っ込む」を連呼しているのを見たい人には一見の価値はあります。

意外にあたりだったので続編も読みたい。とにかく春くんが超カワイイので、設定もり過ぎでも一巻が「続きます」みたいな感じに中途半端に終わっても許す(苦笑)。

2017-02-08 深見真「姫騎士征服戦争」

深見真「姫騎士征服戦争」富士見ファンタジア文庫

魔族の末裔が支配する帝国で「祖魔の姫騎士」と呼ばれるルアナには野望があった。それは、敵国の美しい姫騎士を捕らえ、いじめ、屈服させること。そんな彼女に従うのは、目つきは悪いが彼女に忠実な従騎士・ベニー、変態アサシン・カナタ、インテリオークのイアン軍曹。くせ者揃いの部下たちに支えられ、破竹の勢いで姫騎士を堕としていくルアナ軍団の行く末は―この戦に正義も大義もない。ただあるのは、欲望のみ!姫騎士の姫騎士による姫騎士征服ファンタジーが、今ここに開戦!

ファンタジア文庫の紹介文より)

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最近の読書はほぼ積読で買ってはため買っては溜めを繰り返していたので、積読していた本をとりあえず読む。再び深見真先生。サイコパスの劇場版の直前に発売されたものです。

………姫騎士これくしょんって艦これじゃねーか!!(当時読んだ人間がしたであろう突っ込みを今更してみる)

お話としては「動力鎧で戦う姫騎士(主人公ルアナ)がやっぱり姫騎士をとらえていじめて屈服させてこれくしょんにする。そのために周りのスタッフがあれこれ頑張る」というものです。ざっくり書きましたが嘘は書いていない。

お話のメインとなるのが「姫騎士をとらえていじめて屈服させ」のところなんですが、この「とらえて以下略」の部分が地下室で微エロ微拷問。割と直球にエロいことがあります。どんなことがあるかと思ったら「祖国と家に捨てられた姫騎士をくすぐり攻めの拷問で神経をイカれさせる」「姉妹のこじれすぎて絡まった糸を優しくときほぐすハートフル拷問」などがあります。嘘は書いてない。

うん。この本は、愛だね。

何でしょうかこのハートフル拷問は。 深見先生、狙ってやったのでしょうか。

「ちょっとかわいいアイアンメイデン」の1話で、「拷問に第三者はいない。される側かする側か」と言ってますが、この本はまさしく「屈服する側の人間」と「される側の人間」がメインです。そして、「拷問をする」側のルアナには(姫騎士を屈服させてこれくしょんにしたいという欲望しかありませんがその欲望がもうびんびんにありつつも)愛があります。

屈服する人間というのは愛がなくてはいけません。屈服される人間は支配される喜びを感じる種類の人間ですが、屈服する人間からの愛がなくてはその喜びを感じることがない……のではないかと思います。その幸せを感じちゃっているのがマリカやアナスイなんですよねー。

あと「とりあえずみんな楽しそうではある」に、この家とルアナのやっていることは異常なんだけどみんな楽しそうだからいいじゃない!というざっくり幸せで纏めちゃった感が雑でいいです。

まあでもこれ、「姫騎士ハーレムでウハウハしている姫騎士」の物語……なんですが、「主の姫騎士のために姫騎士ハーレムをつくるのに頑張っている最強の従者」が実は主人公だったのでは……と思ったり。お話としてはかなりアンバランスなんですよね。やっぱりベニーが最強すぎて浮いている感が否めないし、ベニーの最強さ加減がべつの話になっちゃってるなぁというか、……ベニーが戦い始めたら、怪我もあったけどルアナがフェードアウトしてしまったのが悔しい。もっと戦闘シーンでルアナの活躍が見たかったなぁ。

そこはルアナが戦ってでしょ!!!

でもまぁ、こんな深見真作品もたまにはいいものです。だってなんといっても、拷問する側もされる側もちょっと楽しそうだもんね!!

「ゴルゴダ」「ブラッドバス」「ライフルバード」「ヴァイス」などのハードな深見真ではなく、ライトエロライト拷問全体的にライトタッチな深見真作品。深見先生の作品の、血と硝煙の匂いを嗅ぎすぎたらこちらにこよう。

2017-02-02 深見真「ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査」

深見真「ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査」角川文庫

麻布警察署刑事課二係は、管轄内の重要犯罪を隠蔽することを目的に組織された。トップアイドルの覚醒剤疑惑、大物政治家の賄賂…。手段は問わない。二係のエース、仙石は誰よりもスマートに残虐に、犯罪を揉み消す。そんな仙石の行動を見張るため、細川巡査部長は、仙石の部下として、二係内で潜入捜査を始める。極限の騙し合いの勝者はどちらか。“悪を以って悪を制す”汚職警官を描いた本格警察小説。

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祝!深見真、小説に帰還!!(だと勝手に思っている)

最近の深見真の仕事といえば漫画原作が多く、最近の小説は「サイコパス」が多かったし、オリジナルの小説はおそらく2014年に発表された「姫騎士征服戦争」「開門銃の外交官と、竜の国の大使館」以来じゃなかろうか。深見先生もブログで「久しぶりにサイコパス以外の小説書いた」と言っておりましたし。

久しぶりに発表したこの「ヴァイス」は警察もの。麻布、六本木を舞台に汚職警官・仙石重一が下半身のスキャンダルをもみ消したり犯人を拷問したり正義のヒーローのように颯爽と現れたり上司を潰したりのちょう大活躍するという内容です。嘘はついていない。うん。なんつったってこの小説はのっけから、集団系アイドルグループのメンバーが、ヤリまくって覚醒剤キメて彼氏をぶっ殺してその事実を主人公の汚職警官にもみ消してもらいましたという、ハイブリットなイヤガラセを書いてますよ!これぞ深見真!!(爆笑)

その汚職警官を監察するのが、内務監査として麻布警察署刑事二係に配属された細川瑠花。二係の仕事をこなしつつ、内務監査として仙石重一を、黒いところがないかぼろを出していないかと監視します。こうしてこの小説は「監視される」汚職警官と、「監視する」内務監査官のコンビという、少し変わったバディものになったわけです。

この「監視する」「監視される」という構図は「シビュラシステム」と「シビュラ支配下の人間」、また「(クリアカラーの監視官に)監視される執行官」「(潜在犯である執行官を)監視する監視官」という構図にも見えるので、この小説は深見先生がサイコパスの共同脚本を経てかけたものなのかな、とも想像しております。あかねちゃんというキャラクターを経て、「細川瑠花」がかけたのではないかという想像。

この物語は「仙石の物語」というよりは、「監視しながらも汚職の沼に足をからめとられ、その底であがきながら成長する女刑事の物語」にもなるような気がします。

物語のなかで、彼女は刑事としてキャラの中では未熟です。その未熟さを露呈しつつ、物語の後半に家族を人質に取られ、そこから人間的に変わらざるを得なくなります。「ああそうだ、こいつを殺すんだった」「人類の数パーセントは人を殺しても何も思わないキラーエリートだ。細川ももしかするとその数パーセントに入るのかもしれない」。その結果として、内務監査を果たしつつも仙石の「本当の仲間」になることになるのです。

その彼女がこれから、どう、刑事として成長していくのか。

もっと深い沼につかるか、それとも沼にからめとられつつ、監視役としての役目を全うするのか。

文庫オリジナルらしいですが、続編がぜひ読みたい。仙石の行動を見つつ、警官として成長していくであろう「細川瑠花」の物語を、もう少し読みたいと思う。

オネシャス! 深見先生!!!

2017-01-02 2016年読書大掃除

2017年になりました。あまり更新のないブログですが、今年もよろしくお願いいたします。

……結局ユーリの感想2話で止まってしまったあああああああああ。


そんなわけでタイトル通り、2016年に読んだ(つってもそんなに読んでない)ものの整理。感想のようなそうでもないようなの列挙です。


「おいしいベランダ。午前1時のお隣りご飯」竹岡葉月/富士見L文庫

考えてもみよう。あなたの部屋の隣に若い男性が住んでいる。ひょんなことからであった彼は29歳(亜潟さん)のスーツが似合うイケメンだ。フリーランスだから在宅で仕事をしている。家にいるときは大体ジャージで、自分が食べられるだけのものを育てているだけと称して部屋中ベランダ中を食える植物で埋め尽くしていて、ついでに作る料理はかなりうまく、隣に住む女子大生(主人公)にふるまっている。

……ありのままの植物男子にやられてしまえばいいよ!!!!


「おいしいベランダ。2 二人の相性とトマトシチュー」 竹岡葉月/富士見L文庫

ありのままの植物男子に以下略ではまったのですが、この小説は、この2巻に出てくる亜潟さん(29歳)の甥の気分になって「29歳のおっさんが女子大生と付き合っているなんて羨ましすぎるそこかわれ!!!」という見方が出来るのではないかと思った。


「雪の鉄樹」 遠田潤子/光文社文庫

祖父や父が日々女を連れ込む、たらしの家で育った庭職人・曽我雅雪。彼は13年前から両親のいない少年・遼平の世話をしている。遼平の祖母からは日々屈辱的な扱いをされているが、少年を世話をする理由は昔のある事件の贖罪のためでもあった。……というのが本書の内容。

その前に読んだ「月桃夜」がとてもよかったので続けて読書。過去にとらわれる人々の熱い愛憎。もう触るだけで火傷しそうなぐらい熱くて激しい。これがドロドロの愛憎劇というとかなり軽いニュアンスになってしまうのですが、東海テレビ的昼ドラになっていないのは雅雪の行動の勤勉かつ素直な愚直さにあるのだと思う。

「あなたが一生をかけて償うというのなら、私は一生かけて恨む。死んでも地獄の底から恨む」

劇中で遼平の祖母が雅雪に言い募るシーンがある。人からこうまで言われる男は過去一体何をしたのか。そして、人からこうまで言われてまで少年の世話をする理由は一体何なのか。その熱量からページをめくる手が止まらなくなる。……だけど最後の一ページに行ったらほっとした気分になったなぁ。ああ終わった、という安堵感が強い。「月桃夜」にしびれた人は是非読んで頂きたい一冊。


「このたびはとんだことで 桜庭一樹奇譚集」 桜庭一樹/文春文庫

直木賞作家(っつってもあの作品はそんなに好きではないのだが)桜庭一樹の初めての短編集。「青年のための読書クラブ」の前身である「青年のための推理クラブ」や、直木賞後に雑誌で掲載された「冬の牡丹」等を収録。

特に「冬の牡丹」「モコ&猫」はよいぞ。社会に出て少しでもつらいと思った人間はぐぐっとくるはずだ。この二作は、男女の微妙な距離(冬の牡丹)と男女の微妙な偏愛(モコ&猫)で、読みつつ、この「微妙さ」が桜庭一樹的でもあり。

「ひとしずくの星」淡路帆希/富士見L文庫

数年に一度訪れる天災「星の災禍」で家族を亡くしたラッカウス。神官として聖都で暮らしていた彼の頭には一つの疑問があった。「星の災禍」とはなんなのか。調べるべく入った禁忌の森で無垢な少女と出会い……。

読んだのおととしですが(苦笑)。童話のような詩的なような、静かで美しい恋の物語。あとそんなに長くないので冬休みの読書としてもおすすめ。


「バットカンパニー」深町秋生/集英社文庫

やべえ。超イイ女だよ野宮綾子。「おはようございます。イカれた女です」と言いながらヤクザの目の前ににこやかに現れる。怖すぎる。怖すぎるぐらいイイ女だ、野宮綾子。

野宮綾子社長率いる人材派遣会社・NAS。ここはまっとうな人材派遣会社ではなく、金さえ積まれればヤクザの護衛やテロリストとも相手するちょう無茶ぶりの会社だ。勿論降りかかる仕事もただの仕事ではない。裏カジノに潜入、訳あり少女への護身術の指導、挙句の果てにはヤクザとドンパチ。確かな修羅場(命のやり取りという意味で)の行間から醸し出されるバイオレンスな血の匂いにノックダウンされてください。そして野宮の無茶ぶりに泣き言を言いながら振り回されている社員の姿に萌えてください。「デート&ナイト」(監督:ショーン・レヴィ)みたいなジェットコースタームービーが大好きなひとに特におすすめ。

「レディ・ガンナーの冒険」茅田砂胡/角川文庫

破天荒お嬢様の冒険譚。ファンタジーではあるけれど、ファンタジー(幻想)、ではなく、アドベンチャー(冒険)の小説。15年前の良きジュブナイル。

とにかく主人公のお嬢様、キャサリン・ウィンスロウがなんと魅力的なことか!!行動力があり、曲がったことが大嫌い。そして義を重んずるという。そんなかっこかわいい14歳の少女です。そして銃の腕もなかなか(ポイント高いよ!!)


「視線」永嶋恵美/光文社文庫

劇団員の夏帆は副業でやっている住宅調査員の仕事で、昔住んだことのある閑静な住宅街を訪れる。偶然再会した同級生と会う約束をし、再び住宅街を訪れたその夜、通り魔に襲われる。同じ夜にその住宅街で人が一人なくなっていて……。

永嶋恵美お得意の「イヤ汁100%」。どのぐらいイヤ汁100%というのと「泥棒猫ヒナコ」シリーズや「一週間のしごと」みたいな比較的軽いタッチ(っつってもこれもイヤ汁50パーセントぐらいだが)から知った人は結構ドン引きするかもしれない。

それぐらい主人公の女がヤな女(最大の褒め言葉です)。「あんなオバさん族」とかつての同級生をよくよく見ながらその実「あんなオバさん族」になるのを過剰なまでに恐れている(ようにも見える)。あんたと違うんだから、と思いながら、自分がその分類に行きつつあるのを認めようとしない、というか。


さあ今年の読書はジョニー・ウィアーの自伝からだ!!!

2016-10-15 ユーリ!!!オンアイス2話

【前回までのあらすじ】

初めてのGPファイナルで惨敗した主人公・勝生勇利は傷心のまま故郷の九州に帰る。現役続行か引退かハーフハーフのまま地元にいるが、ひょんな事から世界選手権5連覇中の王者ヴィクトル・ニキフォロフに興味を持たれる。勇利の実家の温泉にやってきたヴィクトルは、ウホっいい身体&クワドの飛べそうな引き締まったケツを視聴者に堪能させながら「勇利!今日から俺は君のコーチだ!」と全裸で華麗に宣言し……


○2話総括

1.ヤコフいいコーチじゃねーか!!

2.15歳の美少年の半ケツと27歳美青年のTKBというマニア向けの映像が

3.君たちは愛について考えたことはあるかい? → 君たちは自分が思っているよりも無個性で凡庸であることを自覚した方がいいよっていうかよくそれで個性とか言えるよね観客から見たら君たちはせいぜい子豚ちゃんと子猫ちゃんだよ。


さて、2話はまずヴィクトルが日本にくる直前に遡ります。雪が降りしきるサンクトの街で、コーチのヤコフがヴィクトルの日本行きに反対します。「今休んだら戻れなくなるぞ!」というヤコフの言葉が刺さります。

……戻ってこれるか来れないかはともかくとして、いくら世界選手権5連覇中の絶対王者でも1年のブランクというものは馬鹿にできません。1年休んだだけで若い伸び盛りの選手たちはもりもり出てきますし、技術革新もかなり進んでしまうものです……ちゃんと受け持った選手の今後の競技生活のことを心配して考えて、ヤコフはいいコーチじゃないですか(1回目)。

しかしヴィクトルの意思は固く、ヤコフコーチの耳元でロシア語でさよならと告げながら「言うこと聞けなくてごめん」……と去っていきます。どうもヴィクトルは今までも大してコーチの言うこと聞いてこなかったようです。奔放すぎる選手を受け持つと大変です。コーチの血圧は大丈夫でしょうか。

そんなこんなで勇利のところにやってきたヴィクトルですが、まず(温泉を堪能し酒も飲み爆睡したのちにカツ丼をドカ食いしながら)勇利に「痩せろ」とかなりきつめに厳命します。

一方で「君のことを知りたいんだ……」と、じっくりと勇利に近づき、手を重ね、一方の手は頬に添え……ヴィクトルさん!浴衣がはだけてTKB丸見えですよ!!

一方の勇利も唐突にコーチングに来たヴィクトルの行動にうろたえつつ赤面しつつ、あこがれのヴィクトルがいることに「うれしい」と気が付きます。……お前の反応乙女だ!!!

それにしてもヴィクトル、日本を堪能し過ぎ&くつろぎ過ぎ&なじみ過ぎです。畳に布団しいて犬を抱っこしながら上半身裸で寝ています。犬はどうやって連れてきたんだ!説明しろ!!!


一方ロシア本国では「ヴィクトル・ニキフォロフが日本の勝生勇利のコーチになる」ということで大騒ぎになっていました。大量に押し寄せる記者たちにヤコフは「今はモチベーションが上がらない。一年休んで進退を考えたい」と丁寧に答えます。……自分勝手に消えた教え子のことをちゃんと答えるあたり、ヤコフはいいコーチじゃないですか(2回目)。

そんなこんなのうちにロシアのユーリ君がヴィクトルの居場所をひょんなことから突き止め……。


ロシアのユーリ君、(コーチに内緒で)来日。そのヒョウのシャツ日本の商店街で買ったんかい!! 商店街でTシャツを買ったりダサい(ユーリ君談)銅像に写メったり日本を堪能している中、ヤコフから「どこに行ったんだ!戻ってこい!!」と電話で怒鳴られます。まぁユーリ君が子供で未成年であるということもありますが、黙って勝手に消えた教え子に電話して怒鳴ってくれるなんて、ヤコフはいいコーチじゃないですか(3回目)。

はせつ町のリンクに来たユーリ君、まずはあいさつ代わりに勇利に芸術的かつファンタスティックな飛びまわし蹴りをくらわします。身のこなしが軽すぎ。そして勇利は吹っ飛び過ぎ。……この飛び回し蹴り、演技に入れてくれないかしら。キレのあるアティチュードポジションのバレエジャンプが出来そうです。ゆうゆうと滑るヴィクトルに「約束忘れたのか!」と吠えます。

そのユーリ君とヴィクトルの約束について、話はユーリ君が今よりも幼い時分に遡ります。

ユーリ君は今よりも幼い自分から才能豊かで、試合でクワドサルコウを飛んで観客を驚かせ優勝したりしていました。コーチのヤコフが「成長期の身体にクワドは負担になるからやめろ」と言ってもどこ吹く風です。

最近はジュニア選手でもフリーでクワドを入れる選手は少なくはないのですが(SPは禁止されています)、そもそもクワドジャンプ自体シニアの選手でも「1本あっただけでプログラムの緊張感が違う」と言われるほど負担のあるものです。現在は「ジュニアでもクワドがないと世界ジュニアが優勝できない」という、ひと昔前では考えられない状態なのですが、身体に負担になることは変わりありません。……成長期の選手のこともちゃんと考えて、ヤコフはいいコーチじゃないですか!!(4回目)

そんなヤコフコーチとユーリを諫める感じでヴィクトルが語り掛けます。

「君ならクワドがなくても勝てる」→「じゃあ、俺が世界ジュニアで優勝したら、ヴィクトルが振り付けてよ!」→「ああ、いいよ。最高のシニアデビューにしよう」

クワドなしでユーリが世界ジュニアで優勝したら、シニアデビューの振り付けは兄弟子。ヴィクトル自身が振り付けたプログラムがジャッジからの評価が高かったら、振り付けてほしいとも思うわけですよ。それをあっさりと了解してくれたのですから、ユーリ君にとってはこの上なく幸せな状態です。コーチの次に自分に近い人物が振り付けてくれる上に、振り付けは一級品なわけですし。それに、ちょっと論点は違いますがコレオグラファー料は置いとくとしても、ヴィクトルがユーリと同じサンクトにいるため、振り付けのために移動費や滞在費はかからないわけですし。

しかしヴィクトル約束忘れて来日。約束をすっぽかされたユーリ君は怒る……。

……ん? ちょっと待てよ。多分回想の時のユーリ君は今よりも背が低くて顔だちが幼いから、13,14歳ぐらいだと考えていいですよね? でそれでクワドサルコウ……


お前はケヴィン・レイノルズか!!!(ケヴィン・レイノルズ……カナダ、バンクーバー出身のスケーター。13年四大陸選手権優勝。軸が細く回転の速いクワドが特徴で、フリーでクワド×3を実行した人類6人目。なお、彼に関しては覚えたジャンプがクワドサルコウ→クワドトウ→3Aという噂あり)


約束を果たしてもらうためにやってきたユーリと体脂肪を落とした勇利を見て、ヴィクトルが提案したのは、2人に同じプログラムを滑って一週間後に勝負してもらう、そして「勝った方のいうことをヴィクトルが聞く!」ということでした。一週間後に、温泉オンアイスが開催されます。

そんなこんなで結局ユーリ君もはせつに、しかも勇利の家に滞在。15歳の少年のあどけない背中とケツをチラ見せさせてカツ丼をドカ食いし(お前もかよ)、しまいには勇利の姉(いました。1話に出てきていました)からユリオと命名されます。いやあ、ヴィクトルの全裸が出てきたときはゲラゲラ笑ったんですが、15歳の少年のケツが!!電波に乗ってしまった!!! この回、27歳美青年のTKBといい15歳美少年の入浴シーンといい(しかもちらっととはいえ割としっかり尻を見せている)、いろいろマニア向けです。

……なんか勇利とユーリと書くのが結局ごっちゃになりそうなので、ユーリ君には申し訳ないのですがこちらの感想でもユリオと書かせていただきますね。ユリオ。ユリオと勇利。うん、うまい具合に区別できましたね。

* *

さて、2話の本題。氷上練習初日。氷の上に降り立った二人にヴィクトルが二つの曲を聞かせます。

「この曲には異なったテーマによる2つのアレンジがある。君たちにはその2つのうち、どちらかのプログラムを滑ってもらう」

共通のテーマは愛。しかし、一曲はアガペーとしての愛。もう一曲はエロスとしての愛だとヴィクトルは言います。エロ……エロ……は!


すみません、「スケート、エロ」なだけで、フィリップ・キャンデロロ版のセッボン思い出した私は阿保です。

まぁ、ロロ版セッボンの胸やけするほど本人のエロさだだもれなのはともかく、ひとつのテーマがエロ、もう一つがアガペーですが、ユリオはエロスの方の曲に反応し、勇利はアガペーの方に反応します。……まてー!!いくらヤンキーでもあんたは15歳のしょーねんでしょうが!!!いくらテーマとはいえエロいのすべったらあーかーんー!!!事案になってしまうだろうが!!!

二人の反応を見たヴィクトルの答えは……

ユリオがアガペーで、勇利がエロス!!

ありがとうヴィクトル。ユリオにエロスとか言わなくてありがとう!!私の思いをくみ取ってくれてありがとうヴィクトル!15歳の少年にエロいテーマのもの滑らせたら振付師の正気を疑います。(まぁ、振り付け次第ですし、良プロならいいぞもっとやれとか言いますけどね!)

このチョイス,私はごく自然だと普通に思いますが、勇利とユリオは不服。「どっちの個性とも逆だろ!」と反論します。が……ヴィクトルは「逆のことをやらないと驚かないだろ」とまず言います。そして……。

君たちは自分が思っているよりも無個性で凡庸であることを自覚した方がいいよっていうかよくそれで個性とか言えるよね観客から見たら君たちはせいぜい子豚ちゃんと子猫ちゃんだよ。

結構言いますヴィクトル。何も言い返せなくなり、固まる勇利とユ―リ。

う、うーんヴィクトル。現世界王者のあんたの言いたいことは(まだユリオの演技も勇利の演技も全く見てませんが)わからないでもない。でもさ、そもそも考えてみようよ。

シニアの(ジュニアとは言わない)GPファイナルまでこれた選手が「無個性で凡庸」っていうのはありえなくないですか!!?

そもそもGPシリーズ自体門戸が狭いものです。6大会あってシングルは1大会につき最大12人までという上限があります。そしてシリーズは一人2大会まで出ることが可能です。枠は6×12の72枠ですが、2大会出場する選手が20人以上いるので、実際はもっとエントリーできる選手は少ないのです。よってシリーズに出られる、という時点でかなりの実力と技術そして個性があるのです。


……という私のばばくさい思いはともかく。1週間後にヴィクトルを満足させられなかったら振り付けはなしになりますが、勝負がついたら勝った方の言うことをヴィクトルは聞くことになっています。

ユリオの要求は「ロシアに帰って俺のコーチになれ」

そして……勇利の要求は「ヴィクトルと一緒にカツ丼食べたい」

「何回でも食べたい。これからも何回でも勝って、一緒にカツ丼食べたい。だから、全力でエロス!やります!」

つまりそれは、「ヴィクトルが自分のコーチになってほしい」! というところで……次回に続く!

* * *

えーっと、今回の感想ですが、とにかくヤコフコーチ大変そうだなと。方や聞く耳持たないロシアンヤンキー、方や言うことを聞かない奔放すぎる男。でもあっちこっちで対応して、追いかけて、諫めて、心配して……いいコーチじゃないですか(5回目)。

あと今回、上のレビューでは書かなかったんですが、勇利がヴィクトルと一緒にいるのがいかにうれしいかというのと、ユリオが現れたことによる不安、というのも描いていてすごいよかったです。……そうだよね、、ユリオの方がヴィクトルと距離近いもんねというのもありますし(あります)、シニアデビューを控えた将来有望なユリオとシニア5年目であまりいい成績が残せていない自分というどんなスポーツにもある残酷な生々しさの表れとか。1話でもそれはありましたけれど。

あ、すごい今更感ある突っ込みなんですが、YOIの世界って男子の特別強化選手一人だけなの?っていうか、「どこにでもいる特別強化選手」と言ってますが特別強化選手どこにでもいねーからな!!! それを映像で見せちゃってるからな!!!


そんなわけで3話に続きます。

2016-10-07 ユーリ!!!オンアイス 1話

10月から始まったアニメ「ユーリ!!!オンアイス」。

存在は知っていたけどあまりチェックもせず、友人からPVが送られてきたのですが……これがもうすごい!フィギュアの動きが半端ないうえに、振り付けがオール宮本賢二!!!監修に元全日本チャンプの横谷花絵さん!!しかも本田武史まで声で出ている!!スケオタとしても垂涎の作品が始まる!!!ということで。

そんなわけで見始めました。

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雑に1話に出てきたキャラクター紹介。

○勝生勇利……主人公。ガラスのハートを持つ23歳。GPファイナル最下位で惨敗し、それまで契約していたコーチとの関係を解消し地元に戻る。カツ丼が大好物。

○ヴィクトル・ニキフォロフ……世界選手権5連覇中の27歳。勇利が惨敗したGPファイナルで優勝したロシアのレジェンド。スコアが335点って無事人間を卒業したすごい人。鼻が赤い。1話の最後にすごい尻が見られる。

○ユーリ・プリセツキー……ジュニアGPファイナル優勝。可愛い顔のガラの悪いロシアヤンキーで服装のセンスはただのガチンスキー(EDより。つまりセンスは聞くな)。ヴィクトルと同門。

1話総括。

1.アイスバーグのトイレってあんなおシャンティなんですね。

2.フリー4クワド(しかも全部種類が違う)を実施する27歳って体力どうなってんのよ。

3.尻がすべてを持って行った。


最初はソチで開催されたGPファイナルから始まります。場所はどう見てもアイスバーグ。そこで勇利は最下位と惨敗してしまいます。

……まあ、GPファイナル自体、シーズン序盤な上にシリーズを勝ち抜いた6人しか出られないので「惨敗」という単語はどうかと思いますが。(割とGPシリーズを「勝ちに行く」というより「調整」として見ている選手もいる。ジュベールははっきりと「ユーロとワールドのための調整」って言ってた)……そういえば放送局のテレビ朝日ってGPシリーズを「世界一決定戦」と位置付けていましたね。いらないチャチャをいれてしまいました。

ちなみに1位ヴィクトルと最下位勇利の点数(小数点切り捨て)の差を見てみると……

1位 ヴィクトル・ニキフォロフ 335点

6位 勝生勇利 232点

……100点差がある!!!! 1位の点数は無事人間を卒業した選手の点数ですね!!どうなってんのよ!!!

でも勇利君、「惨敗」「演技がボロボロ」という割に232点は出ているんですから、地力はあるってことですね。でもまぁ100点差がつくと確かにボロボロと言わざるを……そういえば去年のGPファイナルの男子が似たような結果でした。(小数点切り捨てで、1位羽生330点、6位ムラデー235点)。そのときムラデー君が「惨敗した」とは、少なくとも報道ではなかったように覚えておりますがどうなんでしょう。

そんなこんなで結果が残せなかった勇利君はトイレで泣いてしまいます。…アイスバーグのトイレって個室が赤くなってるんですね。なんておシャンティ。このトイレに羽生君も入ったのかしら。そこに現れたのがユーリ・プリセツキー。JGPファイナルの優勝者です。

「来年、俺はシニアに上がる。二人もユーリはいらない。才能ない奴はさっさと引退しろ。バーカ!!」

ロシアンヤンキー丸出しの本性で勇利にタンカを切り……いやいやいやちょっと待ってよあんた。「二人もユーリはいらん」てあんた。あんたの国にはユーリが二人どころか、同じ時代にアレクセイは2人いたし(ウル様とヤグディン)、セルゲイも2人以上(ヴォロノフとドブリン。ベラルーシにもダビドフという苗字のセルゲイがいて、3選手が一緒に活動した時期はちょっとだけかぶっています)いただろ!!ついでの2人のアレクセイはアレクセイという名前のコーチ(ミーシン)に同時期ついてたじゃんね! あんたの国だけで名前の重複こんだけおるんだから、日本の勇利君がちょっと失敗したからって二人もユーリはいらんなんて、そんなこと言わんといてや!!!


・・・そして時間はファイナルが開催された12月から一気に年を越して4月。勇利君はファイナルの失敗を引きづったまま全日本に臨み、再び惨敗し、その後の国際大会に派遣されずにシーズンを終えます。4CC、ワールドはもちろん、ユニバーシアードにも派遣されません。コーチとの関係も切り、デトロイトから地元の九州に戻ってきます。ああ温泉。温泉いいなぁ……。実家が温泉とか神だろ!!! アスリートにとってすごいいい環境です。

シーズンが終わり、大学を卒業した勇利の心は引退か現役続行かがハーフハーフでした。大体の大学生スケーターは卒業と同時に引退になってしまいます。大学卒業した彼にとって、続けるかやめるかどうかの瀬戸際にありました。

同時期、東京では世界選手権が開催され、ヴィクトル・ニキフォロフが5連覇へと挑戦中でした。

さて。

1話での見どころはなんといっても、世界選手権でのミヤケン振り付けのヴィクトルのフリープログラム。そしてそのヴィクトルのプログラムを幼馴染の前で完全にコピーする勇利君。

勇利君は幼いころからヴィクトルにあこがれ、地元のリンクで幼馴染と一緒にヴィクトルの動きの真似までやってます。愛犬の名前もヴィクトルで実家の自分の部屋もヴィクトルのポスターだらけ……お前ただのファンじゃねーか!!www

このヴィクトルのジャンプ構成なんですが、非常にクレイジー。無事人間を卒業した人の構成です。

それがどんなものかというと……


○フリーで4クワド(種類はすべて違う。ルッツ、フリップ、サルコウトウループ

○カウンター3A。(羽生君がよくやってるやつ)

○3Aからのコンビネーションで3ループ入り(そもそも3ループをコンボで付けられる男子選手はごく稀。)

○最後のクワドは4回転トウ+3回転トウ(乳酸どうなってる?)

……………体力どうなってんのおおおおお!!!?点数よりもまずそこ!!

いやあ、確かに肉体のピークっていうのは人それぞれですよ。32歳でSP2クワドやってたコンスタンティンメンショフという鉄人もいらっしゃいましたし。でも、1)27歳で、2)クワドの種類が4つで、3)かつノーミスで滑れる、ということは、彼の周りだけ何か違う磁場が働いて重力を感じなくなっていたのだな!!イコール、無事人間卒業。……としか考えられません。

ちなみにこのシーン、バタフライを下から映したり、ルッツフリップのエッジをちゃんと分けていたり、ステップターンのところなんてただの神。スピード感が出ててマジで神です。

勇利君のコピーシーンでもありましたが、彼のシーンではエッジの深さやスケーティングを強調してやっていたような気がします。最後のスピンでふらふらしたのはそれっぽい。


なお、この勇利のヴィクトル完コピの演技なんですが、1)幼馴染の子供によって動画でアップロードされ、2)光の速さで拡散され、3)ヴィクトルの手元に届き……。温泉旅館に本人登場。

「今日から俺がお前のコーチだ。お前をGPファイナルで優勝させるぞ!」

温泉で!堂々たる宣言!!もちろん全裸!!!尻!!!!これはクワドの飛べる尻!!!!!!

………いやー!!まさかフィギュアスケートのアニメで尻を見るとは思わなんだあっはっは。でもあの尻はクワドが飛べる尻だよ!!!尻がすべて持って行った感はあるよあっはっは。

* * *

そんなわけで雑に1話の感想を書きましたが、早く2話がみたいです。次は九州にロシアンヤンキー・ユーリ君も現れるみたいだしどうなるのよ!!早く来週になれ!!!

2016-05-15 羽生君のお殿さま姿見てきたよ

「殿、利息でござる!」を見てきた。つまり、お殿さま姿の羽生結弦選手を見てきた。

大事なことなので2回言う。殿さま姿の羽生結弦を見てきた。場所は地元のユナイテッドシネマ。

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映画の感想については映画ファンの方が語って下さると思うので、羽生くんの事だけ書きます。

多分映画館にいた何割かは羽生君目当てで来てる人がいただろうとは確信している。何故ならば私がそれだから。今更感モリモリなことをかく。2015年に紅白歌合戦の特別審査員、家庭画報の和装姿等々を見ている人は絶対に確信しているだろうが、羽生君は、和装が恐ろしく似合うのである。 和装になると、凛々しさ、清涼感が3割増しになるのである。ボーン姉さんもきっと「狩衣はユヅに着せるしかないわ」「ユヅが狩衣着ると清涼感増すに決まってんじゃないのよ」とか考えながら「SEIMEI」の振り付けをしたんじゃなかろか。

そんな羽生君が若殿役である。仙台藩第7代藩主訳である。要するに、和装+ちょんまげである。ちょっとまって、和装+ちょんまげだろ!?


似合うにきまっている!!!


そんなわけで3分ほど出演していた羽生君は、立ってるだけで本当にお殿さまでした。白い足袋、白袴、水色の紋付は見ようによってはパガニーニの衣装と同じ色に見えるね!(重症)

またこの映画、主要登場人物たちが出会っていく人物がだんだんと偉くなっていくのだが、その偉いトップとして最後に現れるのが羽生君である。まさに王者。まさに! まさに若様!! 友情出演と書いてあったが案外台詞は多く、城から宿場町のある造り酒屋の家に行き、用事を済ませると「籠も馬もいらぬ!歩いて城まで帰る!」と言ってスタスタ去っていく。最後のこのテンションはいつものはぬーくんじゃね? と私が思っていると彼は風のように去っていくのである。

何という3分。羽生君が現れた瞬間は、少ない観客(30人ぐらい?)がマジでざわついたぜ。私のテンションは勿論上がらざるを得ない。

あ、映画自体は面白かったです。「武士の家計簿」にもっとコミカルな部分を足した感じだと言えばよろしいでしょうか。もう一回見ようかな。

あの3分はあと10回見ても足りません。