虫歯菌も脳内出血へ

 成人の7%ほどが保菌者とみられる特定の虫歯菌が、脳出血のリスクを約4倍高めることを浜松医科大の梅村和夫教授、外村(ほかむら)和也特任助教聖隷浜松病院の田中篤太郎脳神経外科部長らのグループが突き止めた。
9月27日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に発表した。
菌表面に特殊なタンパクがあり、これを標的にした予防薬開発につながる可能性がある。
 このタイプの菌は「Cnm陽性う蝕(しょく)原因菌」と呼ばれ、保菌者の口から、抜歯や歯磨きを介して血液中に入る。
成人の70%以上は何らかの虫歯菌を持つが、うち10%ほどがこの菌の保菌者という。
 研究では、このタイプの菌と普通の虫歯菌を、脳出血を起こしたマウスに投与。違いを調べ、細菌表面にあるコラーゲン結合タンパクが、出血を悪化させている可能性が高いことを突き止めた。
 このタンパクが血管内皮の裏にあるコラーゲン層に結合すると、層を溶かす酵素が活性化するほか、血を止める血小板の凝集を妨げることも分かった。
 また聖隷浜松病院の来院者ら109人の唾液を調べたところ、脳出血患者の27%からコラーゲン結合タンパクを検出。
患者でない人からの検出率と比較して計算すると、脳出血リスクは約4倍になる。
 梅村教授は「口内を衛生的に保てば脳出血患者の再発予防に役立つ可能性がある。
菌は母親から子に移るので、保菌者かどうかが分かれば、移さない予防策をとることも可能になる」と話している。
グループでは菌の判定キットも開発済みで、検査時間短縮など改良を加え製品化する方針。