めぐりあいクロニクル

2018-04-11

「宇宙よりも遠い場所」感想

年度替わりの仕事の多忙だとか、
プロ野球開幕だとかいろいろあってすっかり遅くなっちゃったけど、やっぱりこの作品についてはなんか書いておきたいなと。

アニメは1クールに数本、話題どころをつまみ食いしている程度のにわかなのですが、
15・16年に出会った自分史上最高クラスの傑作「響け! ユーフォニアム」の存在が大きすぎて。
まだ映画も残っているとはいえ、
去年の一年間はずっと心にポッカリ穴が空いたような、所謂"ユーフォロス"状態が続いていました。
そんな中、その空白に物凄い勢いで刺さってきたのがこの宇宙よりも遠い場所(以下、公式略称の"よりもい")だったわけです。

序盤、特に2話の歌舞伎町疾走シーン辺りで「お、なんかいい雰囲気の作品だな」と惹かれ、
7話の出港式シーンで「おいおいこの作品やべーんじゃないの」とゾクゾクし始め、
南極に到着してから回収ラッシュが始まる頃には、
もう毎日のように今回の、そして次回の"よりもい"の事で頭がいっぱいになっているという……。
そういやユーフォ1期にハマっていった時も、まさにこんな経緯だったよなあとフラッシュバックするものがありました。

以下、ここが素晴らしかったよ的な感想を徒然と。

演出力と12話ラストの感動

ボケーっと見ているだけで、アニメ演出がどうこうとか語れるような高尚な視聴者ではないのだけれど、
本当に凄いアニメを見ていると、時々全てが噛み合っているように感じて、思わず鳥肌が立つような一瞬があって。
そういう時は、「つまりこのシーンの魅せ方、演出が凄いんだろうな」と何となく伝わってくる。
面白いシナリオ、綺麗な絵、ドンピシャのBGM、声優さんの好演etcみたいな素材の素晴らしさはもちろん、
ただその素材を並べるだけじゃなく、絶妙なバランスで調理されている故の感動……みたいな。
よりもいはそういう調理、すなわち演出の素晴らしさを感じ取れる瞬間が幾度もあった作品だったなあと。
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その究極はやっぱり、本作を象徴する名シーンである12話のラスト・報瀬がPCを開いて母親の死と向き合うシーンでしょう。
「直接その瞬間に立ち会っていない母の死を実感させるには?」という課題に対して、
「自身が母に送り続けた、3年分1000件超の未読メールを突きつける」というアンサーを用意した時点でもう大勝利ものだけど、
それだけに留まらず、あらゆる要素が鮮やかに絡み合ったシーンだったよなあと。

まず、ここに至るまでの過程・積み上げが素晴らしくて。
同じ話数の中に、報瀬が百万円を数え上げるシーンを入れて3年分の時間の重みを実感させたり、
「Dear お母さん。友達ができました」の独白で、一つ一つのメールの内容の濃さが察せられたりと、
クライマックスを盛り上げるための前フリを見事に積み上げている。
何より、母へのメールの描写は1話からずっとこのシーンのために挟み続けていたわけだけれど、
実際に送信しているのか、そもそもちゃんと最後まで書ききってるのかも分からなかったのが、*1
12話のこのシーンにきて初めて、ちゃんと書き上げてたし送信していたんだと気づかされるんですよね。
淡々として見えたその裏で、報瀬は毎日これだけの思いの丈を母に向けて綴っていたのか…とショックを受ける構成も素晴らしい。

そうした前フリを受けて、いざこのシーンに入ってからの魅せ方がもう完璧なわけですよ。
キマリ達からPCを受け取って、お決まりの感動的な挿入歌が流れ始める一方で、
ここからキャラクターの台詞がしばらく消える。
この語るべきところと必要がないところ、説明がなくても伝わるところの見極めが上手いよなあと。
4桁のパスワードを一度間違えてから、
自分の写真を見てもう一度トライするところで、
「母親の誕生日→自分の誕生日の順で試したんだろうな」というのは察せられるし、
未読メールの件数が1000を超えたところで、3年間毎日のように送っていたんだという背景も読み取れる。
ここで余計な説明くさい一人言とかを挟まないから、
PCを眺める報瀬の様子にリアリティが生まれて、緊張感を保ち続けられたんじゃないかなと。
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未読のカウントが淡々と機械的に積み上がっていく無慈悲な光景に、
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報瀬の「あぁ…」という嗚咽が込み上がってきて、
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トドメに、沈黙を破る渾身の叫び「お母さん!」で、こっちの涙腺まで決壊させられる。
なんというかホントにもう、実に過不足なく洗練された見事なシーンだよなあと。
初放送から暫くは、見るたびに毎回未読のカウントに合わせてこみ上げてきて、最後の叫びに合わせて条件反射で涙が零れていました。

"人の死"を題材とした悲しいシーンでありつつも、
同時にこれで報瀬が母への思いに区切りをつけられるという、希望に繋がる前向きな感動もあって。
そのきっかけをくれた仲間達がドア越しに一緒に泣いてくれるというのも素敵。
この何から何まで美しいシーンの衝撃が、よりもいを自分史上トップクラスに名作にまで押し上げてくれました。

このシーンほどではないにせよ、他にも震えるような素晴らしい瞬間が幾度かありましたが、
そのほとんどで、何かしらの挿入歌が流れていたような記憶があります。
「ハルカトオク」を筆頭にいずれも名曲揃いで、
しかも毎回、ここぞという盛り上がりどころにバッチリ合わせて使われていましたもの。
後半になるともう、挿入歌のイントロが流れ始めたところで、「あ、これ今から名シーン来る奴だ」と身構えていました。
最終話で怒濤の3曲使用ラッシュをかましたのは、まさに贅沢な大団円って感じでしたねw

感情の機微

よりもいは感情の機微を凄く繊細に、分かりやすく描いてくれていた作品だった印象があります。
おかげでフィクションの、しかも女子高生のキャラにかつてないほど感情移入しながら観てしまって、
その視聴体験がなかなか貴重なものだったなあ。

主役の女子高生4人組は、いかにもフィクション・ファンタジー感全開というほどの味付けはなされていないけれど、
かといって、"どこにでもいる普通の女子高生"というほど現実的でもない気がします。
世間ずれ気味なタレントの結月とかはもちろん、
一見最も"普通っぽい"キマリなんかも、現実のそこらにありふれていそうかというと、そうでもないんじゃなかなと。
「他の同世代の子たちとは違う感じがしたから、近づきたいと思った」と日向も言っていたことですし。

けれど、彼女たちはどういう人間なのかという人格描写がとてもキッチリしていて
一人の等身大の女子高生・等身大の人間として見ることができたから。
そして今何に悩んでいて、何を求めているのか…その悩みや心の動きを細やかに描いていたから。
だから違う人種であっても自然と彼女たちの心模様に同調・共感できて、一緒に感動する体験が出来たのかなと。
友情の有様に悩む結月に共感していたから、キマリ達からの祝福に対して一緒に嬉しくなった。
日向の陸上部員に対するモヤモヤに共感していたから、報瀬の啖呵を受けて救われたような気持ちになった。
報瀬の母親に対するフワフワした気持ちや、それを思いやる仲間たちに共感していたから、
あの未読メールの山が突き刺さると同時に、母への想いに決着が付いたことを心から祝福できた。
こうして丁寧な感情描写を糧に、登場人物達の思いを追体験出来たことが、
シーンへの感動やキャラクターへの愛の深さに繋がってくれたかと思います。

反骨心を糧に生きる姿

高校生活からドロップアウトした日向や、
"南極"呼ばわりされて周囲から馬鹿にされる報瀬、
そして計画を無謀だと批判される南極観測隊員達など、
本作の登場人物たちはどちらかというとはみ出し者・鼻摘まみ者のような立場にいて、
周囲に、社会に対する反骨心をエネルギーとしている側面があったように思います。
9話で、日本の南極観測の歴史そのものにそういう背景があったことが明かされたときは、
まさに本作の根底に流れるテーマの一つにそういったものがあるようだなあと。

そして、「ざまーみろ!」「ざけんなよ!」などと、
攻撃的な言葉をスカッと爽やかに魅せて、
そうした負の感情で動くことを肯定的にも描いているような本作の姿勢は、
青春ドラマ、特にこういう女子高生○人組モノみたいなアニメとしてはかなり新鮮な気がしました。
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象徴的なのは11話ラストの、陸上部員3人組と報瀬が対峙するシーンでしょうか。
「日向に謝罪したい」と言ってきた3人組に対して、
報瀬はもう日向に関わるなと一方的にまくし立て、「ざけんなよ!」と切り捨てる。
相手の反応や背景事情などは全く描かれないまま、
一方的に報瀬の価値観で責めて、スッキリして…という、ある種独善的ともいえる展開。
もちろん報瀬の「人を傷つけた代償」だという言い分も分かるし、
おそらく、日向が多くを語らないだけで実際はかなり酷い目に合わされたんだろうとか、
カメラ映り気にしながら談笑してるあたり、今回も真剣な謝罪ではなくミーハー気分なんだろうとか、何となく察せられる部分はある。
それでも、もしかしたら彼女たちには彼女たちなりの事情があったのかもしれないし、
そうでなくとも、表面上は謝りたいと言っている以上、形だけでも赦してあげるのが道義的に正しい"大人の対応"なのではないか。
それに物語的にも、お互いわだかまりなくスッキリ和解できるのが、一番綺麗なハッピーエンドになるのではないか。

しかし、そこでそういった"正しい"方向に流れず、
ああいったアンサーを持ってきた辺りが、実にこの作品らしくて素敵だなと。
現実はそんなに善良的な人間ばかりじゃなく、わだかまりは簡単には消えてくれないし、
とりあえず赦してなあなあで済ませたところで、日向の心のモヤモヤは晴れないまま。
報瀬があそこまで日向を想い、憤り、「ざけんな!」という叫びを代弁してくれたからこそ、日向は救われたのだ。
それは絶対的に正しい解決法じゃないかもしれないけれど、でもいいじゃないかと。
負の感情を抱きぶつけること、自分の価値観に従って生きるエゴを肯定してくれる、そういう姿勢が一貫して素敵な作品でした。
みんなハッピーなキラキラ青春ドラマとは一味違う、こういう青春の姿もいいよねと。

小淵沢報瀬の魅力

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メインの4人をはじめ、皆魅力的で好感の持てるキャラクター揃いでしたが、
中でもメインシナリオ上の主役格ともいえる小淵沢報瀬は、突き抜けて強烈なインパクトを残してくれました。
「内に激情を秘めた、我が道を行く孤高の黒髪ロングクールビューティー」みたいな点で、
序盤の頃はユーフォ高坂麗奈とダブらせてみていた部分もあったのですが、
それを裏打ちするだけの能力があって、クールな仮面を簡単には崩さない麗奈と違って、
報瀬はすぐに"ポンコツ"な一面が出てしまう…どころか途中からはそっちが基本形になってすらいたようなところに面白みがありました。

器用に生きられない、すぐ空回りしちゃう"ポンコツ"の報瀬がああいう闘争の日々を生きてきたことにいじらしさを感じちゃうし、
そんな彼女だからこそここぞでビシッと決めて、カリスマ性を発揮するシーンのギャップに痺れるものがある。
本作で一番好きなシーンは、上述した12話ラストのメール受信シーンなんですが、その次点が、
・7話ラスト。出港式での報瀬の挨拶「キャッチーでウィットで〜」
・9話ラストの「ざまーみろ!」
・11話ラストの「ざけんなよ!」
と、いずれも報瀬が持っていくシーンなんですよね。
ホント、ここぞでの爆発力が凄まじいキャラクターだなあと。
あと、そうした報瀬達の姿をを見て大人たちが突き動かされる…という描写が続くのも共通していて、
そういう女子高生組と大人たちとの図式が素敵な作品でもあったかなと。
報瀬と吟隊長の関係性めっちゃ好き。

あと、3話あたりでテンションの振り切り方が極端すぎて少々戸惑っていたら、
後にクールな部分を吟から、エキセントリックな部分を貴子から受け継いでいることが分かって凄く腑に落ちたとか。
対照的なようで、共に反骨心抱えて生きてる者同士な日向との関係性が面白いとか。
断髪シーンフェチだから、ああいう経緯があった上で髪切るのが凄いグッときたとか。
最終話の憑き物が落ちたような吹っ切れっぷり見てるとこっちまで幸せになってくるとか。
……なかなか語りたいことが尽きないキャラクターですね。
土台となる丁寧なキャラ造形・ポンコツ性とカリスマ性等各要素の絶妙なバランスに加えて、
シナリオ上の活躍やら、周囲との関係性やら、いろんなものに恵まれた故の産物ではないかと思います。
1クール・13話程度の単位でここまで中身が濃いキャラを見られることはそうそうないだろうなあ。

濃密すぎる13話を実現した構成力

これ書くために序盤の回を見返したりしていると、
この物語の圧倒的な構成力の高さ、無駄のなさに驚かされます。
1話単位で毎週見ている時も、
会話のテンポが凄く良くて、毎回しっかり見せ場作って物語進めて、凄く濃い24分だなあと思っていたものですが、
改めて全体通してみると、
後々の話に、そして作品全体のテーマにも繋がるよう、重ね重ね意味を持ってくる描写があちこち撒かれているんですよね。
1話冒頭、「澱んだ水が〜」というキマリの語りが、12話ラストの報瀬にも繋がってきたり、
2話の日向の「嘘ついてない感じ」というキマリ達への評価や、綺麗なフォームでの疾走だったり、
3話でキマリに抱きしめられて戸惑ったり、「ねー」というやり取りを見ているだけだった結月だったり、
本当にあらゆる描写に無駄がなく、ちゃんと意味がある。
1クール13話という限られた尺の中に物語を詰め込むために、
徹底的に練りに練られたシナリオだったんでしょうね。
そしてだからこそ、たった13話の中でここまで濃密な物語を味わうことができたのでしょう。

また、ここまでこだわり抜いた構成が出来たのも、
原作の縛りとかなく一から組み上げられた、オリジナル企画ものだった故って側面もあるかなと。
普段あんまり原作ものだとかオリジナルアニメだとか意識して観てないんだけど、
ここまで完成度を突き詰めたものを作るには、やっぱりオリジナルの方が分があるのかなあとか考えたり。

"4部"別の感想

構成の話でいうと、よりもいの各エピソードって、

・1〜3話…仲間集め、南極行き方法模索編
・4〜6話…南極行きへの準備編
・7〜9話…ペンギン饅頭号での船旅編
・10〜13話…南極での生活帰国

こんな感じで、ちょうど円盤商品の区切りに合わせて4分割出来るようになってるんですよね。
こういうところも良く出来てるなあと。(多少強引かもしれないけど)
というわけで、この4部に分けてざっくりと思い出の振り返りを。

・1〜3話…仲間集め編
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序盤はキマリの視点を中心としてた、
「何かしたい」「ここじゃないどこかへ」という形なき青春への憧れみたいなのが眩しくて、そこからハマっていった感じですね。
2話の「私の青春、動いてる!」のシーンなんて、まさにこれから何かが始まりそうなワクワク感に満ちていて素敵だなあと。
後半になってくるとメンバー個人の問題や友情劇なんかの方が中心になってくるけど、
この頃の青春への渇望みたいなのが前面に出ている感じもいいなー。

女子高生がどうやって南極行きを叶えるか」という試行錯誤を楽しむ作品かと当初は思っていたので、
結月とコネ作って3話であっさり達成しちゃって、「これこっから失速しないかな…?」とか危惧していたのですが、今となっては全く無用な心配だったなあと。

・4〜6話…南極行き準備編
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何気にこの間で半年くらい経過しているらしいので、ここでかなり時間飛んでるんですよね。
この期間に南極観測隊員としてのアレコレをいろいろ身につけたと脳内保管すべきか。

めぐっちゃんの話は、まあ巣立っていくキマリと一悶着あるんだろうなとは予想していたけれど、
あれほどの妨害工作までやっていたとは思わなかったので、
そこまでいってたのかー…とちょっと引いたというかショックを受けたというか。
(キマリに責められたいがために誇張している、もしくはあえて多くを語っていない面もあるかもだけど)
なまじキャラクターに感情移入できすぎてしまう作品なだけに、ここはちょっとダメージ大きくて、
今でも唯一引っかかってしまう苦手どころですね。
最後の北極オチとかは好きなんだけどなー。

シンガポールドリアン回は、報瀬と日向の関係がこんなに面白くなるとはなあと。しかもこの後さらに11話も控えてるし。
最初ちょっとユーフォを被せて見てただけに、
あっちの久美子と麗奈みたく、キマリと報瀬の主役コンビが鉄板の組み合わせなんだろうと思ってたし、
一方で報瀬と日向って最初は「友達友達」みたいな感じだったのに、まさかこっちがクローズアップされるとは。
まあ思えば3話の時点で既にかなり打ち解けてたし、
「ざまあみろ!」を動力源に動く者同士、波長があう部分があったんでしょうね。
もちろんキマリと報瀬の組み合わせもそれはそれで良いし、キマリと結月の組み合わせなんかも見てて微笑ましいし、
4人のうちでどう組み合わせても話が成立しそうなのがいいバランスしてんなあと。
強いて言えば報瀬-結月のラインが他よりもちょっと弱いかなってくらいか。

・7〜9話…船旅編
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ここからは、共に南極に向かう大人たちが物語に本格参戦してくるのが印象的ですね。
特になんといっても、出港式での報瀬の演説シーン。
「一緒に南極に行きましょう!」とやけっぱちで拳を突き上げた報瀬に対して、
間髪いれずに快く大音量で応えてくれるあの流れは、
「ああ、これまでの子供たちだけの孤独な戦いに、こんなにも頼もしい同士がいっぱい増えたんだなあ」と、
報瀬と一緒に嬉しくなって震えた記憶があります。
2話の追いかけっことかで、元々はある種"敵"みたいな見え方もあっただけにその反動が余計にデカいんですよね。

9話の「ざまーみろ!」の叫びに対して、
これもやっぱり気持ちよく乗っかってくれるシーンも嬉しかったですねえ。
カッコ良く頼もしく、けれど無邪気さや遊び心も忘れない素敵な大人たちで、
彼らが脇で支えてくれたから、後半の4人の物語がより面白くなっていった面もあるのではないかと。

・10〜13話…南極
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こっからはもう、怒濤の回収編って感じですね。
前述したように、前半の回からのロングパスをどんどん受け取って、
結月の、日向の、報瀬の問題が一つ一つ鮮やかに解決し、その度友情が深まっていく様はとても感動的でした。
どんどん4人の間の、最終的には大人たちとのやり取りにも遠慮がなくなっていく感じも素敵。
しかしこうして見ると、結月回日向回報瀬回と綺麗に続いているだけに、
キマリ回だけないの? と思ってしまうところですが、
12話中盤にあった「報瀬ちゃんのおかげで私、青春できた」という言葉がキマリにとっての終着点にもなっていたので、まあこれで十分かなと。あとは最終回のめぐっちゃんも。

あと、ついに南極に付いたのに、
南極周りの具体的なアレコレよりも、4人の個人的な問題の描写が中心な辺り、
あくまでこの話の主題は"南極もの"ではなく、
青春劇・友情劇がメインであって、南極はそれを展開する舞台要素にすぎないんだなあと。当たり前ながら再確認してました。
しかし、どんな友情劇を展開するかといううえで、
南極という意外な要素がチョイスされたのはなんだか凄く運命的なものを感じますね。
例えそこで選ばれたのが南極じゃなかったとしても、このスタッフなら良い作品に仕上げてきただろうけれど、
それでも果たしてここまでの傑作に成り得たのだろうか、なかなか興味深いところです。

12話までで一通りの問題を片付けた分、
最終話は贅沢に終わりを満喫できる、エピローグ的な話を楽しめたのも嬉しかったですね。
吹っ切れた様子の報瀬の素敵な演説が聞けて、
大人たちの別れをキッチリして、
ベタにオーロラで締めてから、それぞれの日常に戻っていく。気持ちのいい爽やかなラストでした。

その他いろいろ

ここまでで書きそびれた細かい話をいくつか
・しゃくまんえん
1話からずっと、報瀬の傍らにあった、ある種相棒ともいっていい「しゃくまんえん」。
全編を通していろんな形で何度も登場してきて、本当に使い方が上手かったなあと。
1話ではキマリと報瀬を引き合わせるきっかけとして。
2話では南極行きの交渉道具として報瀬が精一杯用意できる、ある種無力さの象徴として。
6話では報瀬の日向や、キマリ結月も含めた皆に対する仲間意識の現れとして。
…ここからしばらく存在を失念していたのですが、
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12話で、報瀬が積み上げてきた3年の重みを表すために再利用されたのは眉唾ものでした。
お金を数えるシーンをこんなにエモーショナルに描けるのかという衝撃もあったし、
あれがあってこその最後の未読メールの感動でしたしね。
そして最後に、そんな3年間の象徴を「南極の"おたから"」として手放して、
7話で出てきた「南極の宝箱」という台詞を回収するというオチも鮮やか。
一つの小道具に幾重もの意味を持たせる、本作の脚本の巧さを象徴するような存在だよなあと。

・デジタルコミュニケーション
小道具の扱いといえば、本作で度々登場した、
現代コミュニケーションツールたるLINE(と思われるもの)の使い方も印象的でした。
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ただ単に、電話やメールと同じような連絡手段として描写するだけじゃなく、
キマリが語っていた、「既読」に関する友情論だとか、
グループからの退室描写、消除描写だとか、
このツールならではの脚本・描写が見られたのが、現代っ子友情劇って感じで新鮮で面白かったです。
それに、彼女たちが友達のことを考えるうえで、
生活に溶け込んだアイテムとして当たり前のようにLINEの存在が挟まっていること自体が、
生活感を漂わせて、シナリオの生っぽさ・リアリティを高める効果もあったかなと。
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同じくデジタルなコミュニケーションツールでいえば、
12話で渾身の演出を炸裂させたメールの使い方も素晴らしかったですよね。
あそこも手書きの手紙とは違う、無機質なメールだからこそといった趣がありましたし。
デジタル文明の時代だからこその持ち味を巧みに生かしていた作品だったとも言えるかもしれません。

・4人の生活圏内
帰国後、わざわざ空港で4人別々に解散したのはキマリの言葉通りの意味と、
あとは、ここから別々に家路につくシーンを描きたいメタ的な事情もあるんだろうなとか考えてたけど、
「一人だけ帰り道が違う結月を気遣ったんじゃないか」って意見を見てなるほどなあと。
最終話の雰囲気に流されて、
なんとなくこれからは皆バラバラの生活に戻っていくんだなあとか感じていたけれど、
考えてみればキマリ・報瀬・日向の三人は生活圏内がかぶってるから、
学校だのコンビニだのでいくらでも会う機会あるんですよね。
一方で結月だけが、実家も遠いうえに仕事のスケジュールの都合とかもあって、なかなか会えない位置にいる。
そう考えると、帰国後に自分だけ疎遠になっていくのでは…という10話の結月の焦りもなるほど納得だよなあと改めて。

・帰りを待つ人
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最後に皆が自分の生活に戻っていく際、
日向の帰りをコンビニ店長が暖かく迎えてくれるシーンが地味に好き。
他の三人に待ってくれている家族・帰れる場所がある中、
そういう描写がなかった日向にも居場所があったんだなあと、ホッとして救われたような気持ちになりました。
この店長ホントいい人ですよね。バイト2人も抜けて大変だったろうに…w
というか全く描写のなかった日向の親ってホント何やってるんでしょうね。
ガネーシャグッズとかから、親は海外勤務してるんじゃないかって推察してた説なんかはけっこうしっくり来ました。
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よく見ると日向のパスポートの取得日も2月だったりするしね。

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帰りを待つ人といえば、最後に報瀬と祖母が並んでて仏壇に手を合わせてる図も素敵。
自分の(おそらく)実子が亡くなった場所に、
今度は孫が旅立って、そしてその孫が大きく成長して帰ってきて…。
あのおばあちゃんの心情を慮ると、凄くグッとくるものがありますよね。

この記事を書くために、ちょこちょこアニメを見返していて感じたのが、
ホントこの作品、何度見ても全然飽きねーなあと。
単にテンポが良くてストレスを感じないというのもあるし、
全体通して凄く練られたお話なだけに、後から見るとニヤっと出来たり、新しい発見が出てきたり…とにかく退屈させられないんですよね
昨年一年間、既に放送が終わったユーフォを何度も見返していたように、
きっとこれから先、よりもいも擦り切れるほど見返していくことになるんだろうなあと。
そういう素晴らしい作品にまた出会えて幸せです。ありがとうございました。

*1:よく見ると5話に送信ボタンを押すシーンがあったみたいだけど、幸運にも(?)見逃していたので…

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