11 コタツでシャンパン 【 山鳥 × 雪平鍋 】


タツシャンパ 山鳥×雪平鍋】




「あ、そーだ理樹。コタツ取りに行こう」
 恭介にもらう約束をしたコタツを受け取りに、散歩が趣味になった鈴が理樹を連れ歩く。交差点を左折して東京の雑踏を横切り河川敷に差し掛かったとき、重いコタツを抱えた理樹に鈴が訊ねた一言は――。
 理樹と鈴が同棲しはじめた最初の夏の日、鈴の言った気まぐれから始まった二人の新しい恋の物語。
『お前の浮気指数は40だ!』




 住宅街の細道を二人と一台で歩いた。時折鈴が猫に引っかかったり、コタツが物理的に引っかかったりしながら、少しずつ家路を踏む。
 こっちに越してきてからずいぶんこういうことをして過ごしているはずなのに、不思議と飽きたりはしない。真人が憎めない馬鹿から憎たらしい馬鹿になってた、みたいな、そんなどうでもいい話をしてずっと歩く。
「疲れた?」
 鈴が僕の一歩前に出て、覗き込むように僕の目を見た。それはいいんだけど、コタツの死角になっててぶつかりそうで怖い。
「いや、全然」
 ともかく気を遣わせるわけにはいかないので、平気を装う。こういう場合、絶対にあたしが持つ! なんて言わせてはならないのだ。
「じゃあ遠回りしよう」
 もちろん後悔もしない。
 鈴は直進すべき道を左折して、僕を手招きした。交差点に出ると陽射しを遮るものがなくなって目に染みる。そして暑い。左手には緑の草に覆われた堤防が、ずっと横に伸びていた。
(コタツシャンパン/P186)