歌人の荻原裕幸さんはすごい。

以下、荻原さんの日記から転載。

一九八〇年代の半ばあたりに書かれた短歌論には、同時代の表現として他ジャンルには負けていられない、といった自負や焦慮がかなり高い頻度で見られたと思う。それがいつの頃からか、短歌には短歌にしかできない表現の領域がある、無理せずにできることをする、という論調が増えはじめた。おそらくはその延長線上に、短歌史を再考したり、歌人論を掘り下げたり、何よりも一首を精緻に読解しようとしたり、そうした動きがあるのだろうと思う。短歌論としては健全な道筋をたどっていると言えそうだ。ただ、それが、全体に、短歌にあらたな世界を拓こう、という類の意欲を冷えこませている気もする。大風呂敷をどんどん広げるばかりでも困るが、広げた大風呂敷を丁寧に畳んでゆく人ばかりでもやはり困るのではないか。広げることと畳むこととのバランスが崩れるのは、たぶんジャンルにとってあまり望ましいことではないだろう。厄介な問題である。

これ、20世紀の音楽、作曲のジャンルにおいてはどうなんだろうか。たとえば吉松隆は。どんなように思っていたのか。あんなように思っていたのだろうが、それはこの、荻原さんの思っていることと、どうリンクするのか、しないのか。吉川(吉川和夫)先生が「とりあえず調性とか無調とかそういうのにばかりこだわるのはやめにしませんか」(表記曖昧ごめんなさい)といったことの真意を自分はこの荻原さんの文章に見る気がするのですが。

さて、「本間雅夫の音楽’10」もいよいよ今月22日に迫ってきました。
http://chromaticscale.yumenogotoshi.com/index.html
どうぞよろしくお願いします。