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弁護士中山知行:神奈川県横浜市泉区在住 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-06-28 検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出不許可処分 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第三小法廷決定平成24年6月28日

刑事確定訴訟記録法に基づく判決書の閲覧請求について、「プライバシー部分を除く」とする限定趣旨を申立人に確認することなく、閲覧の範囲検討しないまま、民事裁判においてその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由同法4条2項4号および5号の閲覧制限事由に該当するとして判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官処分には、同条項解釈適用を誤った違法がある。

判例タイムズ1376号144頁

弁護士である申立人が,民事訴訟等の準備を目的として,既に確定している刑事被告事件の第1審判決書について,「プライバシー部分を除く」とした上で刑事確定訴訟記録法(記録法)に基づき閲覧請求をしたところ,保管検察官が閲覧を全部不許可とし,準抗告棄却されたことから,特別抗告に及んだという事案。 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S62/S62HO064.html

刑事確定訴訟記録の閲覧の仕組み

刑事確定訴訟記録の閲覧に関しては,刑訴法53条に一般規定があるが,その詳細は,記録法に規定されている。同法は,刑事事件の確定記録は,第1審の裁判をした裁判所対応する検察庁の検察官が保管するものとし,閲覧請求はこの保管検察官に対して行うことになる。そして,閲覧要件を規定する記録法4条は,まず,1項で,「保管検察官は,請求があったときは,保管記録を閲覧させなければならない」旨規定し,保管記録の原則公開を規定する[記録公開の原則]が,2項本文で,政治犯罪など憲法絶対公開が要請されている事件のものである場合を除き,同項1号ないし6号に定める事由に該当するときには,保管検察官は記録を閲覧させないものとする旨規定して,閲覧制限事由[例外]を定め,さらに,2項ただし書で,訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者の場合は,閲覧制限事由があっても閲覧させると規定している[例外の例外]。


       主   文

 原決定を取り消す。

 被告人A及び被告人Bに対する各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録について,平成23年12月5日岡山地方検察庁検察官が申立人に対してした閲覧不許可処分を取り消す。

       理   由

 本件抗告の趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑事確定訴訟記録法8条2項,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。

 所論に鑑み,職権で判断すると,本件は,申立人が,弁護士を代理人として,民事訴訟等の準備のために被告人A及び被告人Bに対する各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「本件被告事件」という。)に係る刑事確定訴訟記録のうち本件被告事件の第1審の判決書(以下「本件判決書」という。)の閲覧請求をしたのに対し,同記録の保管検察官が,法4条2項4号及び5号に当たるとして閲覧を不許可とした(以下「本件不許可処分」という。)ので,申立人が準抗告を申し立てたという事案である。

 原決定は,申立人の本件判決書の閲覧目的について,申立人が代理人を務める株式会社甲(以下「依頼会社」という。)に対し,同社の株主であるCから株主の地位に基づいて株主総会招集等の請求がされているところ,Cは,本件被告事件の被告人両名がそれぞれ代表取締役専務取締役を務める株式会社乙(以下「本件会社」という。)の前任の代表取締役であり,被告人両名が本件会社の活動として行った本件被告事件の判決書を閲覧して,本件会社が以前から組織的犯罪行為を行っていたことを明らかにすることによって,Cの依頼会社に対する請求が権利濫用であるとの主張を根拠付けるためというものであるとし,その上で,本件判決書の閲覧を許可した場合には,Cらとの間の民事裁判において本件判決書の内容が明らかにされ,被告人両名の前科存在及びその内容並びに本件会社関係者犯行に関与した事実不特定多数の者の知るところとなるおそれがあるとして,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当すると認めた。そして,弊害の内容及び程度と比較して,申立人に本件判決書を閲覧させる必要性は低いと言わざるを得ないから,閲覧につき正当な理由があると認めることもできないとして,準抗告の申立てを棄却した。

 しかしながら,本件で申立人が閲覧請求をしている刑事確定訴訟記録である第1審判決書は,国家刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録として,裁判の公正担保の目的との関係においても一般の閲覧に供する必要性が高いとされている記録であるから,その全部の閲覧を申立人に許可した場合には,Cらとの間の民事裁判において,その内容が明らかにされるおそれがあり,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に当たる可能性がないではないが,そのような場合であっても,判決書の一般の閲覧に供する必要性の高さに鑑みると,その全部の閲覧を不許可とすべきではない。本件では,申立人が「プライバシー部分を除く」範囲での本件判決書の閲覧請求をしていたのであるから,保管検察官において,申立人に対して釈明を求めてその限定の趣旨を確認した上,閲覧の範囲を検討していたとすれば,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由には当たらない方法を講じつつ,閲覧を許可することができたはずであり,保管検察官において,そのような検討をし,できる限り閲覧を許可することが,法の趣旨に適うものと解される。

 以上によれば,本件判決書の閲覧請求について,「プライバシー部分を除く」として請求がされていたにもかかわらず,その趣旨を申立人に確認することなく,閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判においてその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当するとして本件判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官の処分には,同条項の解釈適用を誤った違法があると言わざるを得ない。そうすると,これをそのまま是認して準抗告を棄却した原決定にも,決定に影響を及ぼすべき法令違反があり,これらを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。本件については,保管検察官において,「プライバシー部分を除く」との趣旨につき申立人に確認した上,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に当たらない範囲での閲覧について改めて検討すべきである。

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弁護士中山知行

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2016-06-27 民法194条の盗品の引渡を拒む際の使用収益権 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第三小法廷判決平成12年6月27日

盗品又は遺失物の占有者は、民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、代価の弁償の提供があるまで盗品等の使用収益権を有する。:盗品の占有権が民法194条に基づき盗品の引渡しを拒むことができる場合において、被害者が代価を弁償して盗品を回復することを選択してその引渡しを受けたときには、占有者は、盗品の返還後、同条に基づき被害者に対して代価の弁償を請求することができる。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52234

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判例タイムズ1037号94頁

事案の概要

Xは、所有する土本機械をBらに盗取された。経緯は不明であるが本件機械は無店舗中古機械の販売業を営むAに持ち込まれ、Yは、Aから善意無過失で本件機械を300万円で購入した。なお、本件機械は、建設機械抵当法に基づく登記がされた機械ではない。Xは、Yに対して、盗難の時から2年以内に所有権に基づき本件機械の返還を求めるとともに、不当利得又は不法行為理由として、訴状送達の日の翌日から引渡済みまでの本件機械の使用利益ないし賃料相当損害金の支払を求めて本件訴えを提起した。Yは、返還請求に対しては、民法194条に基づき、代価である300万円の弁償を受けない限り引き渡さないとの抗弁を提出し、金銭請求についても根拠がないとして争った。

民法

(盗品又は遺失物の回復)

第194条

占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

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要旨1 

1 盗品又は遺失物の被害者又は遺失主が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。けだし、民法194条は、盗品等を競売若しくは公の市場において又はその物と同種の物を販売する商人から買い受けた占有者が同法192条所定の要件を備えるときは、被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができないとすることによって、占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定であるところ、被害者等の回復請求に対し占有者が民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する結果となるからである。また、弁償される代価には利息は含まれないと解されるところ、それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが両者の公平に適うというべきである。

これを本件について見ると、上告人は、民法194条に基づき代価の弁償があるまで本件バックホーを占有することができ、これを使用収益する権限を有していたものと解される。したがって、不当利得返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権に基づく被上告人の本訴請求には理由がない。これと異なり、上告人に右権限がないことを前提として、民法189条2項等を適用し、使用利益の返還義務を認めた原審の判断には、法令解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由がある。

2 本件において、上告人が被上告人に対して本件バックホーを返還した経緯は、前記一のとおりであり、上告人は、本件バックホーの引渡しを求める被上告人の本訴請求に対して、代価の弁償がなければこれを引き渡さないとして争い、第一審判決が上告人の右主張を容れて代価の支払と引換えに本件バックホーの引渡しを命じたものの、右判決が認めた使用利益の返還債務負担の増大を避けるため、原審係属中に代価の弁償を受けることなく本件バックホーを被上告人に返還し、反訴を提起したというのである。

要旨2

右の一連の経緯からすると、被上告人は、本件バックホーの回復をあきらめるか、代価の弁償をしてこれを回復するかを選択し得る状況下において、後者を選択し、本件バックホーの引渡しを受けたものと解すべきである。このような事情にかんがみると、上告人は、本件バックホーの返還後においても、なお民法一九四条に基づき被上告人に対して代価の弁償を請求することができるものと解するのが相当である。大審院昭和四年(オ)第六三四号同年一二月一一日判決・民集八巻九二三頁は、右と抵触する限度で変更すべきものである。

そして、代価弁償債務は期限の定めのない債務であるから、民法412条3項により被上告人は上告人から履行の請求を受けた時から遅滞の責を負うべきであり、本件バックホーの引渡しに至る前記の経緯からすると、右引渡しの時に、代価の弁償を求めるとの上告人の意思が被上告人に対して示され、履行の請求がされたものと解するのが相当である。したがって、被上告人は代価弁償債務につき本件バックホーの引渡しを受けた時から遅滞の責を負い、引渡しの日の翌日である平成9年9月3日から遅延損害金を支払うべきものである。それゆえ、代価弁償債務及び右同日からの遅延損害金の支払を求める上告人の反訴請求は理由がある。そうすると、反訴状送達に先立つ履行の請求の有無につき検討することなく、被上告人の代価弁償債務が右送達によってはじめて遅滞に陥るとした原判決の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由がある。

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弁護士中山知行

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2016-06-26 賃貸借保証会社による未払賃料の代位弁済の効果 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一小法廷決定平成26年6月26日

賃貸借保証会社による未払賃料の代位弁済は建物賃借人による賃料の不払という事実消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因の発生という事態を妨げるものではないと判示として建物賃貸人による債務不履行解除を有効判断した原判決に対する上告受理申立てについて,受理しない決定をした事例

判例秘書

本件建物の賃貸人である被控訴人X1が,賃借人の控訴人に対し,賃料不払を理由とする催告による債務不履行解除を原因として本件建物の明渡しを求め,控訴人との間で賃借人の債務の保証委託契約を締結して,本件賃貸借契約の保証人となった被控訴人X2が,控訴人に対し,被控訴人X2が控訴人の未払賃料等の5か月分について代位弁済した金員の支払を求める事案であり,第1審の神戸地方裁判所尼崎支部平成25年5月29日判決が被控訴人らの請求を全部認容したところ,控訴人が控訴し,その控訴審である大阪高等裁判所平成25年11月22日判決が,前提となる事実,争点及び当事者の主張並びに当裁判所の判断のいずれも第1審判決を引用せずに記載した判示をした上で,これと同旨の原判決を相当として控訴を棄却した事例における上告受理申立事件である。

一般に,第三者による弁済の要件及び効果については,民法474条1,2項が規定しており,その第三者の弁済の効果として債権消滅することになるが,弁済による代位(民法499条以下)が生ずる場合には,債権者との関係における相対的消滅の効果が生ずることになると解されている。

保証人や連帯債務者による弁済は,実質的には他人の債務の弁済であるが,これらの者は,債務を負担し,弁済をなすべき義務を負うべき者であるから,同条2項の定める「債務者の意思に反」するかどうかを問題にする余地がないと解されている(我妻栄「新訂債権総論」245頁)。

そして,弁済による代位の要件及び効果については,民法499条以下に規定されているとおりであり,通説は,弁済による代位の性質について,債権者の債権は,弁済によって債権者・債務者間においては消滅するが,弁済者のためにはなお存続し,この弁済者が旧債権者に代わって債権者となると解しており,この説によれば,弁済による代位は,一種法律上の債権移転ということになると解されている。

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一般社団法人全国賃貸保証業協会(LICC)」「公益財団法人家賃債務保証事業者協議会」では業務適正化のための自主規制ルール策定して会員会社に遵守を求めるほか、独自の賃貸保証データベース機関設立し、2010年2月より信用情報登録をしている。その一方で、個人情報のデータベース化に反対する保証会社が集まって2009年11月に「一般社団法人賃貸保証機構(LGO)」を設立するなど、業界内での取り組みも異なる状況だ。これらの団体に属さない信販系、その他独立系の家賃保証会社も数多くある。

家賃保証会社を利用する場合には、入居申込み時に審査が行われる。審査方法は家賃保証会社や加盟する団体などによって異なり、提出を求められる書類所得証明源泉徴収票など)も違うが、賃料に見合う一定収入があり、金融事故歴などがなければそれほどハードルの高い審査ではないだろう。

ただし、「賃貸保証データベース」を活用する家賃保証会社の場合、過去に家賃の滞納記録があれば審査に通ることが難しくなる。データベースには、氏名、生年月日、運転免許証番号など個人を特定する情報とともに、過去の保証内容に関わる情報や代位弁済残高などが登録される。また、明け渡しの際の費用負担などをめぐるトラブルで未払いがあれば、それが正当かどうかに関わらずブラック情報として登録されるようだ。自分が悪くなくても、貸主や管理会社との間で問題を起こせば次の賃貸借契約で不利になることがあるため、十分に注意したい。

http://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00146/

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弁護士中山知行

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2016-06-25 証拠開示決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第三小法廷決定平成20年6月25日

犯罪捜査に当たった警察官犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,捜査の経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面は,当該事件公判審理において,当該捜査状況に関する証拠調べが行われる場合刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令対象となり得る。警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものか否かの判断は,裁判所が行うべきものであり,裁判所は,その判断のために必要があるときは,検察官に対し,同メモの提示を命ずることができる。

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所論は,原々決定が開示を命じた「本件保護状況ないし採尿状況に関する記載のある警察官A作成のメモ」(以下「本件メモ」という。)は,同警察官が私費で購入してだれからも指示されることなく心覚えのために使用しているノートに記載されたものであって,個人的メモであり,最高裁平成19年(し)第424号同年12月25日第三小法廷決定・刑集61巻9号895頁にいう証拠開示の対象となる備忘録には当たらないから,その開示を命じた原々決定を是認した原決定は違法であると主張する。

しかしながら,犯罪捜査に当たった警察官が犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,捜査の経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面は,当該事件の公判審理において,当該捜査状況に関する証拠調べが行われる場合,証拠開示の対象となり得るものと解するのが相当である(前記第三小法廷決定参照)。そして,警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものであるか否かの判断は,裁判所が行うべきものであるから,裁判所は,その判断をするために必要があると認めるときは,検察官に対し,同メモの提示を命ずることができるというべきである。これを本件について見るに,本件メモは,本件捜査等の過程で作成されたもので警察官によって保管されているというのであるから,証拠開示命令の対象となる備忘録に該当する可能性があることは否定することができないのであり,原々審が検察官に対し本件メモの提示を命じたことは相当である。検察官がこの提示命令に応じなかった本件事実関係の下においては,本件メモの開示を命じた原々決定は,違法ということはできない。したがって,本件メモの開示を命じた原々決定を是認した原決定は結論において相当である。


判例タイムズ1275号89頁

本件は,期日間整理手続における証拠開示の対象範囲及び提示命令の可否が問題となった事案である。

被告人は,覚せい剤取締法違反自己使用)被告事件について福岡地方裁判所起訴され,同事件は期日間整理手続に付されたが,弁護人は,警察官らによる採尿手続及びそれに先行する保護手続の適法性を争い,被告人の尿の鑑定書等が違法収集証拠であると主張し,いずれも双方申請に係るA警察官らの証人尋問採用された。そして,弁護人は,上記主張に関連する証拠(刑訴法316条の20第1項)として,A警察官らの供述調書,捜査報告書及びメモ等の開示を検察官に求めたが,開示を求めた証拠が存在しないなどの理由でいずれも開示されなかったことから,上記証拠等の開示命令を申し立てた(同法316条の26第1項)。

刑訴法316条の27第1項は,裁判所は,証拠開示命令等の請求について決定をするに当たり,必要があると認めるときは,検察官等に対し,当該請求に係る証拠の提示を命ずることができると規定した上で,この場合,裁判所は,何人にも,当該証拠の閲覧又は謄写をさせることができないとして,いわゆるインカメラによる審査を規定している。

本決定は,「警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものであるか否かの判断は,裁判所が行うべきものである」と判示する。これは,開示命令が請求された場合において,当然の事理を判示したものともいえるが,本件において,検察官等が,本件メモが個人的メモであることを理由に,これに対する提示命令すら違法である旨,あたかも個人的メモであるか否かの判断主体は捜査機関であることを前提とするかのような主張をし,結局,提示に至らなかったこと等から,あえてこのような判示がされたものと思われる。

参考

犯罪捜査規範

(備忘録)

十三条  警察官は、捜査を行うに当り、当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し、および将来の捜査に資するため、その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。

刑事訴訟法

第316条の26

裁判所は、検察官が第316条の14若しくは第316条の15第1項(第316条の21第4項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)若しくは第316条の20第1項(第316条の22第5項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるとき、又は被告人若しくは弁護人が第316条の18(第316条の22第4項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により、決定で、当該証拠の開示を命じなければならない。この場合において、裁判所は、開示の時期若しくは方法指定し、又は条件を付することができる。

裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。

第1項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

証拠開示

訴訟当事者が相手方当事者に訴訟の審理期日(口頭弁論又は公判)に手持ちの証拠を閲覧させること。ディスカバリー(〔英〕discovery)の訳語

民事訴訟法は証拠開示の制度を設けていないが,アメリカ法を参考にしてわが国への導入を主張する立法論が存在する。もっと文書提出命令の制度に関して,近年,文書提出義務の範囲が判例学説によって拡張され,それを受けて現行民事訴訟法で,所持者は所定の除外事由がない限り提出義務を負うものとされた(一般義務化)。また,当事者照会制度が導入され,さらに平成15年改正(法108)で訴えの提起前における証拠収集の処分等の手続が設けられたことは,わが国でも開示制度の導入に向けて制度改正が進みつつあるものと評価される。

供〃沙訴訟法は,取調べを請求する手持証拠について相手方への開示を各当事者に義務づけている〔刑訴299<1>〕。しかし,それ以外の手持証拠の開示については,明文規定がない。一般に捜査機関が強力な権限行使して証拠収集を行うため,証拠開示の問題を生ずるのは,実際上常に検察官手持証拠に対する被告人側からの閲覧請求である。起訴状一本主義がとられていなかった時代には,検察官は公訴提起と同時に書類・証拠物を裁判所に提出していたから,弁護人は裁判所でこれを閲覧し,謄写することができた〔刑訴40参照〕。しかし,現在では,弁護人は検察官に開示を求めるほかはない。検察官は,求めに応じる場合が多いが,争いの激しい事件では,法的根拠の不明確さを理由に開示を拒み,紛議を生ずることも少なくなかった。最高裁判所は,裁判所の訴訟指揮権に基づく開示命令を是認し(最決昭和44・4・25刑集23・4・248),問題の解決を図ったが,必ずしも十分なものではなく,立法による解決も提案されていたところ,司法制度改革審議会意見書は,刑事裁判の充実・迅速化のために,十分な争点整理と証拠開示の拡充が必要だと強調し,これを受けた刑事訴訟法改正(平成16法62)で,公判前整理手続が導入されるとともに,この手続において,公判前の証拠開示が大幅に実現することになった。検察官による証拠開示は,争点及び証拠を整理する手続の進行に応じて,段階的に行われる(取調べ請求証拠,類型該当証拠,争点関連証拠)〔刑訴316の14・316の15・316の20〕。被告人側の証拠開示〔刑訴316の18〕,裁判所の裁定〔刑訴316の25〕,裁判所による開示命令〔刑訴316の26〕等も定められ,公判前整理手続事件に関しては,手続が整備された。⇒公判前整理手続

[株式会社有斐閣 法律学辞典第4版補訂版]


弁護士中山知行

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2016-06-23 財産のある認知症高齢者との養子縁組 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

養子縁組無効確認訴訟にも遺言無効確認訴訟と同様な問題があります。つまり,身分行為(遺言・養子縁組)における「意思能力」の問題です。問題は,遺言や養子縁組が単なる身分行為にとどまらず,財産処分行為にもなっていることです。遺言も養子縁組も,認知症高齢者の財産収奪手段として利用されないようにするにはどうしたらいいかということです。遺言能力・養子縁組の縁組意思を単なる「意思能力」として考えるのではなく,財産処分を伴う時は,「行為能力」にできるだけ近づけた解釈必要になるのではないでしょうか。

広島高等裁判判決平成25年5月9日

認知症の高齢者を養親とする養子縁組について,縁組当時,同人の意思能力又は縁組意思がなかったと認めることは困難であるなどとして,養子縁組無効確認請求を認容した原判決を取り消し,請求を棄却した事例

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判例タイムズ1410号125頁

民法802条は,届出の不存在(同条2号)のほか,「人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき」に限り,縁組を無効とするが(同条1号),これは,縁組当事者において意思能力を有し,その縁組の届出をしたにもかかわらず,人違いその他の事由により,その効果を欠く場合のみならず,縁組当事者が意思能力を有しないにも関わらず縁組の届出をしたときにも適用があるものである(大判大正6年12月20日・大審院民事判決禄23輯2178頁参照)。

近時は,認知症の高齢者について縁組意思(意思能力)の存否が問題とされる事例が増加している。

縁組意思があるとされた事例として,東京高裁昭和60年5月31日判決,東京地裁平成14年12月6日判決,長野家裁諏訪支部平成24年5月31日判決等がある。

縁組意思がないとされた事例として,東京高裁平成2年5月31日判決,岡山地裁倉敷支部平成14年11月12日判決,東京地裁平成16年11月11日判決,東京地裁平成18年2月20日判決,東京高裁平成21年8月6日判決,名古屋家裁平成21年11月20日判決,名古屋高裁平成22年4月15日判決,名古屋家裁平成22年9月3日判決等がある。

これらの裁判例は,いずれも,認知症の高齢者の意思能力や縁組意思の欠如の有無について,様々な間接事実検討して,総合判断している。上記裁判例において検討された間接事実として,認知症の発症時期,縁組当時における医学判断長谷川式簡易スケール等の認知症の程度のテストの結果,主治医意見書記載等),介護認定,縁組届の署名の筆跡,養子との従前の人間関係日常言動第三者への相談の有無,弁護士司法書士等の専門職の関与の有無等がある。

本判決は,長谷川式簡易スケールで4〜6点との結果であった認知症の高齢者の縁組意思の存否が問題となった事案において,上記(2)で挙げた各裁判例と同様,間接事実を詳細に検討し,これを総合判断して,意思能力及び縁組意思を肯定したものである。

本件事案には,主治医が,本件第1縁組の約2年後に行われた本件第2縁組の縁組届への署名に立ち会い,Aの縁組意思が明確でその意味理解している旨の覚書を作成し,Aの診療録と一緒に保管していたとの特殊事情があり,本判決がAの意思能力を肯定する上で重要な要素となったのではないかと思われる。

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争点に対する判断

 (1) 本件第1縁組について

 ア 被控訴人は,Aは本件第1縁組(平成17年9月×日)当時意思能力を欠いていて,養子縁組の意思表示をすることはできず,また,縁組意思もなかったと主張する。

 イ 確かに,Aは,平成13年ころから認知症に罹患していたものとうかがわれ,C医師が平成17年12月×日に作成した平成17年意見書は,Aの診断名を認知症,うつ状態胃癌とした上,短期記憶について「問題あり」,日常の意思決定を行うための認知能力について「判断できない」,自分の意思の伝達能力について「伝えられない」とし,問題行動として「幻視幻聴妄想昼夜逆転徘徊」があり,記銘力障害,うつ状態が徐々に強くなり,最近では徘徊,妄想が出現するようになったとしている。また,Aが通所していたDの職員の平成17年12月×日作成の平成17年調査票も,Aについて,日課の理解について「できない」,面接直前の行為を思い出すについて「できない」,季節の理解について「できない」としており,広島市から,要介護3と認定されていたのである。

 ウ しかし,Aは,上記当時,Dのデイサービスショートステイなどで,計算問題や漢字問題を解答したり,料理教室や貼り絵などのレクリエーションに参加したり,他の利用者と一緒に歌を歌ったりして過ごし,他の利用者と雑談をしたり,職員に「かわいいのよ」などと孫の話をし,上記計算問題(簡単な四則計算)をほぼ間違いなく解答しており,漢字の読みのテストもほぼ正解し,職員との間の意思疎通に格別の問題は生じていなかったのである。また,平成17年調査票によっても,意思の伝達について「できる」,介護者の指示への反応について「ときどき通じる」,生年月日・年齢を答えるについて「できる」,自分の名前を答えるについて「できる」,自分がいる場所を答えるについて「できる」とされ,問題行動はなく,介護する上で必要なその場の指示は通じる(何度か言う)とされていたのである。さらに,Aは,日常的に世話をしてくれる控訴人X1に感謝の気持を有していたところ,控訴人X1に対し,「X1さん,良くしてくれるから,何かあなたにしてあげたい。」などと言うようになり,知り合いのE税理士に相談し,その提案に従って,控訴人X1を養女にすることを考えたのであり,証人となることを依頼されたE税理士及びF税理士から,「X1さんと養子縁組されますか。」と尋ねられると,いずれも「よろしくお願いします。」と返答し,E税理士及びF税理士の面前で,本件第1縁組の養子縁組届の養母欄に署名捺印したものであり,その署名は,やや震えているものの,落ち着いてきちんと書かれたものであって,その筆跡から意思能力が疑われるようなものではなかったのである。その上,認知症は時間の経過とともに悪化していくものであるが,Aの主治医であるC医師は,本件第1縁組の約2年後に行われた本件第2縁組について,Aに意思能力がある旨の本件覚書を作成していたのである。

 エ 上記ウの事実に照らせば,上記イの事実から,Aが,本件第1縁組(平成17年9月×日)当時,意思能力を欠いていて,本件各縁組の意思表示をすることができず,縁組意思もなかったと認めることは困難であり,他に,被控訴人の上記アの主張を認めるに足りる証拠は存しない。

 むしろ,上記ウの事実からは,Aは,本件第1縁組当時,意思能力及び縁組意思を有していたものと認めるのが相当である。

 なお,被控訴人は,Aの長谷川式簡易スケールの検査結果(平成13年から平成15年)が高度の認知症を示していると主張するが,上記検査はそもそも簡易なものである上,Aにはうつ状態の持病もあったのであるから,これが直ちに客観的なものということはできない。むしろ,Aの認知症の程度は,日常生活を観察して判定すべきものである。

 したがって,被控訴人の上記アの主張は理由がないというべきである。

 (2) 本件第2縁組について

 ア 被控訴人は,Aは本件第2縁組(養子縁組届を作成したのは平成19年8月×日)当時意思能力を欠いていて,養子縁組の意思表示をすることはできず,また,縁組意思もなかったと主張する。

 イ 確かに,Aは,平成13年ころから認知症に罹患していたとうかがわれ,D職員が平成19年12月×日に作成した平成19年調査票は,意思の伝達について「ほとんどできない」,毎日の日課の理解について「できない」,面接直前の行為を思い出すについて「できない」,季節の理解について「できない」としている。また,C医師が平成19年12月×日作成した平成19年意見書は,診断名として,認知症,胃瘻症,慢性呼吸不全,その他の精神神経症状としてうつ状態とし,認知症が続いており,尿失禁,便失禁あり,短期記憶について「問題あり」,日常の意思決定を行うための認知能力について「判断できない」,自分の意思の伝達能力について「伝えられない」とし,「認知症が少しずつ進行,全ての生活に介助を要する,夜間不穏になる」としており,○○市から要介護4と認定されていたのである。

 ウ しかし,Aは,上記当時,Dのデイサービスやショートステイにおいて,計算問題や漢字問題をしたり,他の利用者と一緒に歌を歌ったり,塗り絵をしたりして過ごしていたが,簡単な四則計算はほぼ間違いなく計算することができ,漢字の読みのテストもほぼ正解し,職員と一般的な会話をすることもでき,職員が意思疎通に困ることはなかったのである。

 また,C医師は,平成19年8月×日,Aを往診した際,養子縁組の話を聞き,Aに対し,控訴人X2,控訴人X3,控訴人X4を養子にするのかと質問したところ,Aは,そうする旨返答した上で,同控訴人らが予め署名押印した本件第2縁組の各縁組届に,署名押印しており,上記署名は落ち着いてきちんと書かれたもので,その筆跡から意思能力が疑われるようなものではなかったのである。C医師は,上記状況から,Aが控訴人X2,控訴人X3,控訴人X4の3人を養子にする意思は明確であり,その意味を理解しているものと判断し,同月×日,「A氏はX2とX3とX4の3人の養子縁組届に署名しておりますが,A氏はこの3人を養子にする意思は明確でその意味を理解しています。」と記載した本件覚書を作成し,Aの診療録と一緒に保管していたのである。さらに,E税理士とF税理士は,平成19年8月×日,本件第2縁組の証人となるため,B方に赴き,Aに対し,本件第2縁組の各養子縁組届に署名したか尋ねると,Aは「私がしました」と答え,控訴人X2,控訴人X3,控訴人X4と養子縁組をするようになっているが,これでよろしいかと尋ねると,Aは,「お願いします」と答えたので,本件第2縁組の各養子縁組届の証人欄にそれぞれ署名押印しているのである。加えて,D職員が作成した平成19年調査票は,介護者の指示への反応について「通じる」,生年月日・年齢を答えるについて「できる」,自分の名前を答えるについて「できる」,自分がいる場所を答えるについて「できる」とし,問題行動はないし,介護する上で必要なその場の指示は通じる(何度か言う)というものであったのである。

 エ 上記ウの事実に照らせば,上記イの事実から,Aが,本件第2縁組(届出書を作成したのは平成19年8月×日)当時,意思能力を欠いていて,本件各縁組の意思表示をすることができず,縁組意思もなかったと認めることは困難であり,他に,被控訴人の上記アの主張を認めるに足りる証拠は存しない。

 むしろ,上記ウの事実からは,Aは,本件第2縁組当時,意思能力及び縁組意思を有していたものと認めるのが相当である。

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弁護士中山知行

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2016-06-22 自筆証書遺言作成者の遺言能力が否定された最近の判決例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

自筆証書遺言作成者遺言能力否定された最近判決例4件

(1)アルツハイマー老年認知症発症し,その影響により中等度知能低下の状況にあり,記憶見当識が著しく悪化し,整合性のある判断能力に欠ける状態にあった遺言者の遺言能力を否定した東京地判平成27・9・3

(2)アルツハイマー病の疑いがあるとの診断を受け,社会的判断力,見当識及び遂行機能の低下,失行妄想幻覚失認等の症状が多数発現し,意思伝達能力が具体的要求に限られ,伝達にあたっては相手確認や働きかけを要する場合があった遺言者の遺言能力を否定した東京地判平成27・3・18

(3)亡Aの自筆証書遺言に関し,亡Aの子である原告が同被告に対し,該遺言の無効確認と被告の詐欺又は偽造行為により作成されたとして被告が相続人地位を有しないことの確認及び不当利得返還の各請求をした事案。裁判所は,アルツハイマー型痴呆であった亡Aの本件遺言当時の遺言能力を否定し,遺言の無効確認請求を認容した長野地方裁判所松本支部判決平成28年3月17日

(4)最も重い要介護度5との認定がされ,長谷川式簡易知能評価スケール検査結果が30点中10点であって高度認知症と判定された遺言者の遺言能力を否定した東京地判平成26年11月6日

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東京地方裁判所判決平成27年9月3日

亡Aの遺言書(2通)による遺言により本件土地の遺贈を受けたとする原告が,被告に対し,Aから被告への遺贈を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続きを求めたところ(本訴),被告が,原告に対し,原告が検認を受けた前記2通の遺言書による遺贈はいずれも無効であることの確認を求めた(反訴)事案。裁判所は,亡Aは,原告が主張する原因となる2通の遺言作成時点において,亡Aは既に中等度知能低下の状況にあり,遺言能力を有していなかったと認めるのが相当であるとして,本訴請求を棄却し,反訴請求を認容した事例

東京地方裁判所判決平成27年3月18日

相続人Xらが相続人Yに対し,被相続人Aの自筆証書遺言が無効であることの確認とYが同遺言を偽造・隠匿し,相続欠格事由があるとして,Yに相続人の地位にないことの確認を求めた事案。裁判所は,本件遺言書はAが自署したものと認められるが,Aは同遺言書作成当時やや高度の認知症と評価され,遺言事項の意味内容や遺言することの意義を理解する能力はなかったとして,同遺言を無効とした上で,Yの相続欠格事由は認められないとした事例

長野地方裁判所松本支部判決平成28年3月17日

亡Aの自筆証書遺言に関し,亡Aの子である原告が同被告に対し,該遺言の無効確認と被告の詐欺又は偽造行為により作成されたとして被告が相続人の地位を有しないことの確認及び不当利得返還の各請求をした事案。裁判所は,アルツハイマー型痴呆であった亡Aの本件遺言当時の遺言能力を否定し,遺言の無効確認請求を認容したが,被告の詐欺,偽造行為までは認められないとして,被告が相続人の地位を有しないことの確認請求は棄却した。不当利得については,原告主張の一部を認め,返還請求の一部を認容した事例

Aは,平成5年からは病院において老人性痴呆と診断されて通院治療を受け,平成12年1月19日から同年2月2日までC大学附属病院老年科に検査入院し,MRI検査の結果も踏まえアルツハイマー型認知症と診断されたこと,平成12年4月から平成18年9月まで一貫して要介護度2(記憶力・思考力が明らかに衰え,日常動作にも支援必要である)以上と判定されていたことが認められるとした。そして,アルツハイマー病により一度失われた脳細胞は元には戻せず細胞消失慢性的に進むので,アルツハイマー型認知症は絶えず進行し,治療に対する反応が極めて少ないことが認められるから,Aの上記病院退院後の判断能力は同病院入院時のそれを上回ることはないと推認した。

そして,本判決は,以上に照らして検討を行い,「遺言能力は,遺言事項を具体的に決定し,その法律効果を弁識するのに必要な判断能力たる意思能力であると解されるところ……遺言は,自己の所有する財産についての正確な認識を前提として,遺言者自身生活史を踏まえ,財産形成の経緯や受贈者や法定相続人との関係考慮するなどしてなされるものである」とした上で,Aは,本件遺言当時,自分の所有する財産について明確な認識がなかったため,全ての財産をあげるということによって具体的に何をあげることになるのかは理解しておらず,Aの上記病院退院後の判断能力は,同病院入院時のそれを上回ることはないと推認することができるから,Aが本件遺言当時,自己の生活史を踏まえ,財産形成の経緯や受贈者や法定相続人との関係を考慮するなどした上で遺言をすることができたとは考えられず,Aは,本件遺言当時,遺言能力を欠いていたと認め,本件遺言は無効であると判示した。

東京地方裁判所判決平成26年11月6日

遺言者が遺言能力を欠いていたとして,自筆証書遺言が無効とされた事例

Aについては,7月頃には記憶障害,見当識障害及び意欲低下が出現し,8月頃には被告Y2においてAの預金通帳及び銀行届出の印章を預かるようになり,9月に入ると,Aにはつじつまの合わない言動等があってせん妄様の症状が続いていたものであって,要介護認定申請に基づき要介護度を判定するために10月1日に杉並区担当者訪問調査を行った際,Aについて意思の伝達につき「ほとんど不可」,毎日の日課及び短期記憶のいずれについても「できない」,日常の意思決定につき「日常的に困難」となっているとされ,同月28日には最も重い要介護度5との認定がされ,また,同月頃には,Aは,抑鬱的となって「殺してちょうだい」とか「刺して」と発言するようになり,同月末頃から身の回りのことができなくなっていたもので,更に11月6日頃の時点では排便しても気付かずに手で拭いてしまうことがあり,同月25日にはMMSE検査を実施しようと試みるも実施できずにせん妄と診断され,12月1日には長谷川式簡易知能評価スケールの検査結果が30点中10点であって高度認知症と判定されたまま判断能力が回復しなかったものであることが認められる。

以上のとおりのAの意識状態等に係る一連の状況を見ると,第2遺言書が作成された10月28日時点において,Aの判断能力は相当程度低下していたことが認められ,Aにおいて,第2遺言の内容を理解し,判断する能力を有していたとは認め難い。

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遺言無効 チェックリスト

長谷川式簡易知能評価スケールとミニメンタルステート試験の結果

入通院記録・医療記録と看護記録・MRIやCT等の画像診断結果(脳萎縮の有無)

介護認定の要介護度・認定の日

介護認定審査資料主治医意見書

医師に処方して貰っている薬に認知症治療薬や進行度を遅らせる薬があるか

公正証書遺言の場合は原案は誰が作成し遺言者はそれを公証人に「口授」ができたのか

公正証書遺言の証人弁護士弁護士事務所職員が証人になっていないか(被相続人や他の相続人との間で利益相反はないか)

自筆証書遺言の場合は全文が自書か(添付図面や添付目録自筆か)

自筆証書遺言に署名捺印・日付は入っているか

公証役場お抱えの証人が公正証書の証人になっていないか:公証役場お抱え証人の場合は,年間に何度くらい証人になり,毎回いくら報酬を貰っているのか

長谷川式簡易知能評価テストで100−3の計算ができていないのに,遺言内容は分数相続割合指定したりしていないか

運転免許証更新していないか


遺言を無効にする方法

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弁護士中山知行

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2016-06-21 遺言無効 チェックリスト このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

遺言無効 チェックリスト

長谷川式簡易知能評価スケールミニメンタルステート試験の結果

入通院記録・医療記録と看護記録・MRIやCT等の画像診断結果(脳萎縮の有無)

介護認定の要介護度・認定の日

介護認定審査資料主治医意見書

医師に処方して貰っている薬に認知症治療薬や進行度を遅らせる薬があるか

公正証書遺言場合原案は誰が作成し遺言者はそれを公証人に「口授」ができたのか

公正証書遺言の証人弁護士弁護士事務所職員が証人になっていないか被相続人や他の相続人との間で利益相反はないか)

自筆証書遺言の場合は全文が自書か(添付図面や添付目録自筆か)

自筆証書遺言に署名捺印・日付は入っているか

公証役場お抱えの証人が公正証書の証人になっていないか:公証役場お抱え証人の場合は,年間に何度くらい証人になり,毎回いくら報酬を貰っているのか

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2016-06-20 遺言無効とundue influence このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

undue influence日本遺言無効確認訴訟でも使えると思うのですが,主張しても,理解出来る裁判官ほとんどいないのです。

日本語の文献もあるのですよ。

http://www.moj.go.jp/content/001128517.pdf

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書平成 26 年 10 月公益社団法人 商事法務研究会

要は,認知症などで暗示にかかりやすくなっている被相続人に近づいて不当な影響を及ぼし,不自然自分に有利な遺言をさせた場合,影響を受けた部分を無効にする判例法です。

Undue Influence

There are three ways of establishing undue influence.

At common law, to make a prima facie case for undue influence, the claimant must show

(1) the testator has a weakness that made him susceptible,

(2) the wrongdoer had access to the testator,

(3) it is the wrongful act that got the gift, and

(4) an unnatural result.

Where the plaintiff prevails, only that portion of the will affected by undue influence is invalid. That part goes to the residuary, the heirs by intestate succession, or by constructive trust.


遺言を無効にする方法

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2016-06-19 長谷川式簡易知能評価スケールが30点満点中0点でも遺言能力を肯定 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

長谷川式簡易知能評価スケールが30点満点中0点でも,遺言能力否定しなかった判決例があります。時期が違うという点もありますが,認知症に対する裁判官認識ってこんなものです。

主観的な,遺言能力=意思能力がないという立証は,非常に困難だということですね。

ですから,客観的な「口授」の要件欠缺等で攻める方が可能性が高いということになります。

アルツハイマー型認知症の進行スピード http://ninchisho-online.com/dementia/symptom/

アルツハイマー型認知症は、ある日突然発病するわけではありません。その潜伏期間は長く、人によっては20年以上におよぶ長い潜伏期間があり、その間じわじわと脳細胞が変性していきます。その進行ステージ(段階)は、軽度認知障害(MCI)⇒軽度⇒中等度⇒高度と変化します。


東京地方裁判所判決平成27年12月18日

1 争点(1)について

(1) 原告は,亡Bには,平成19年8月20日当時,遺言能力はなかったから,本件遺言は無効であると主張する。

  (2) 前提事実のとおり,被告は,亡Bに関する成年後見開始の申立てに当たって作成した後見開始申立書のうち「申立ての実情」欄に,亡Bについて「5年前から物忘れの兆候が現れ,日常的に必要な買い物も1人ではできない状態になる。」と記載し,「申立事情説明書」のうち「第2 本人の状況について」「3 本人の病歴」欄に,亡Bが「平成21年6月認知症の診断,脳梗塞」と記載していたことを認めることができる。

    また,前提事実のとおり,平成21年11月30日付け医療法人慶仁会城山病院のG医師作成の「診断書(成年後見用)」には,亡Bに関して,元々認知症があり,精神上の障害の程度も重度であって,平成21年11月30日に実施した長谷川式簡易知能スケールの検査結果も,30点満点中0点であった旨が記載されていることを認めることができる。

  (3) しかしながら,被告が作成した上記文書の記載内容によっても,亡Bは,平成17年頃から物忘れの兆候が現れ,日常的に必要な買い物も一人ではできない状態となっていた可能性を否定できないというにとどまり,亡Bについて,平成19年8月20日当時,本件遺言の内容を理解し得ない程度に認知能力が減退していたことを直接に明らかにするものであるとはいえない。また,亡Bに関する上記診断書の記載内容は,亡Bが本件遺言を作成した後の症状を明らかにするものであって,これをもって本件遺言をした当時の亡Bの遺言能力の有無を認定することができないことは明らかである。そのほか,亡Bが平成19年8月20日当時において本件遺言をすることができない程度にまで認知能力が減退していた事実を認めるに足りる証拠は何ら提出されていない。

  (4) したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。

長谷川式簡易知能評価スケール

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%9D%E5%BC%8F%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB

総合点以外にわかること

HDS-Rを行うことで以下のようなことがわかることもある。

意識、注意

意識レベルや注意集中力を評価できる。課題に対する注意が注がれており無関係なことに注意が向かないかということである。

態度

診察にふさわしい態度がとれているのかという点である。アルツハイマー型認知症では保たれやすいが、前頭側頭型認知症ではそぐわない場合が多い。

発動性、自発性

ボーとしているなどは意識、注意の評価となるが。考え不精などがあるかどうかも判定する。考え不精は前頭側頭型認知症や皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺で認められる。

言い繕い

記憶障害をごまかすための言い訳があるかどうか。日付がわからないときに「今日新聞をみていない」といった発言がある場合はアルツハイマー型認知症を疑う。

依存

自分が考える前に付き添いの家族の方を向き代弁を求める仕草をする場合はアルツハイマー型認知症を疑う。

精神運動スピード

思考緩慢があるかどうかである。皮質下性認知症の特徴であり、血管性認知症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症などで認められる。

記憶

アルツハイマー型認知症では直後再生作業記憶)は保たれているが、遅延再生の障害が高度となりヒントも有効ではない場合がある。再認課題も障害される。一方、皮質下認知症では注意障害のため直後再生が障害されることがある。思考緩慢のため遅延再生も障害されるがヒントが有効であり、再認もできることが多い。

語想起

想起のスピード、野菜の種類のサブカテゴリーが保たれているか、想起数が十分かを評価する。アルツハイマー型認知症では脈絡なく4〜5個列挙したあと止まってしまったり、上位カテゴリーで答えることが多い。皮質下認知症では制限時間内に答えることが困難となり、前頭側頭型認知症では途中でやめてしまう。

保続

アルツハイマー型認知症ではレビー小体型認知症より認めやすい。「野菜語想起」の後に「5品の視覚的記銘」と試験の順番を変えると保続は検出しやすくなる。


実際のテスト内容

http://www.treatneuro.com/wp-content/uploads/hdsr.pdf


遺言を無効にする方法

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2016-06-18 遺言無効確認訴訟の印紙額と調停前置 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

遺言無効確認訴訟の訴訟物の価額(印紙代)ですが,私の場合は,訴訟物の価額は算定不能として160万円であるとして,ほとんど通してきましたが,時々,裁判官によっては,「遺贈等によって処分された財産の価額×原告法定相続分」で計算しろと言ってくることがあります。

私が訴訟物の価額が160万円だという根拠ですが,同様の無効確認訴訟である「解雇無効確認訴訟」や「養子縁組無効確認訴訟」が訴額算定不能として160万円とされているからなのです。遺言無効が裁判所によって確認されて遺言が無効となっても,自動的に,他の相続人に渡った遺産が戻って来るわけではなく,その後,相続登記抹消請求訴訟や不当利得返還請求訴訟や遺産分割調停をしなければなりませんので,遺言無効確認訴訟で訴訟物の価額を「遺贈等によって処分された財産の価額×原告の法定相続分」で計算しておれば,2重課税されているようなものだからです。

(裁判官がこだわるならば,後の上告理由を確保しておくことにもなりますので,それはそれでいいと思います。)

家事事件手続

(調停前置主義

第二百五十七条  第二百四十四条規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所家事調停の申立てをしなければならない。

2  前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。

3  裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。

遺言無効確認訴訟は地裁管轄です

調停前置主義の適用があるといわれていますが,遺言が無効だということは,遺言が偽造されたとか,遺言者の意思能力問題だとかということが基本にあるわけですから,家裁で調停をしても,不調に終わることはほぼ確実ですから,私の場合は,家裁の調停は時間お金無駄だと考えて,いきなり地裁に訴訟提起する場合がほとんどです。

それで,地方裁判所から文句が出たことは一度もありません。


遺留分減殺請求との関係

遺留分減殺請求をするということは,遺言は有効であることが前提となっています。ただ,1年の時効期間がありますので,予備的・仮定的に,内容証明郵便で,遺留分減殺請求をしてから,遺言無効確認訴訟を提起しています。そうでない場合は,後に弁護過誤責任を問われるおそれがあります。

東京地方裁判所判決平成27年3月25日

Xらが遺言無効確認訴訟を委任した弁護士Yに対し,Xらの遺留分減殺請求権行使せず,時効消滅した等と主張して損害賠償を請求(本訴)し,YがXらは本訴において,Yの名誉を毀損したとして損害賠償を請求(反訴)した事案。裁判所は,別件遺留分減殺請求訴訟において,裁判所が示した和解案の金額をXらの遺留分相当額と認めた上で,Yが遺留分減殺請求権の行使について適切に意向確認等をしていれば,Xらは同金額を取得できたとして,同訴訟の和解金との差額についてYの善管注意義務違反との相当因果関係を認め,Xらの精神慰謝料としてX1に30万円,X2に10万円を認め,Xらのその余の請求及びYの反訴請求を棄却した事例。

遺言を無効にする方法

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