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弁護士中山知行:神奈川県横浜市泉区在住 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-12-08 原判決に審理不尽の違法があるとされた最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

理不尽は,英訳では,例えば,the determination of the court of prior instance is illegal due to the erroneous interpretation and application of laws and regulations as a result of the insufficient examination.

となります。

最高裁判所第二小法廷判決平成28年2月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/681/085681_hanrei.pdf

English : http://www.courts.go.jp/app/hanrei_en/detail?id=1444

【判示事項】 1 労働契約の内容である労働条件は,労働者使用者との個別合意によって変更することができ,このことは,就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても,その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き,異なるものではないとされた例

       2 使用者が提示した労働条件の変更が賃金退職金に関するものである場合には,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても,当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく,当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきであるとされた例

       3 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容および程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯およびその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的理由客観的存在するか否かという観点からも,判断されるべきものと解するのが相当であるとされた例

       4 退職金支給基準の変更について,管理職上告人(二審控訴人・一審原告)Xらは同意書および「合併に伴う新労働条件の職員説明について」の「新労働条件による就労に同意した者の氏名」欄等に署名押印したことにより,組合員上告人(二審控訴人・一審原告)Xらについては,本件労働協約および「新労働条件による就労に同意した者の氏名」欄等への署名押印により,本件基準変更および平成16年基準変更の効力が生じたとした二審判決が破棄され,高裁に差し戻された例

【判決要旨】 1 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきである。

       2 合併により消滅する信用協同組合の職員が,合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において,その変更は上記組合経営破綻回避するための上記合併に際して行われたものであったが,上記変更後の支給基準の内容は,退職金総額を従前の2分の1以下とした上で厚生年金制度に基づく加算年金の現価相当額等を控除するというものであって,自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高かったことなど判示の事情の下で,当該職員に対する情報提供や説明の内容等についての十分な認定考慮をしていないなど,上記署名押印が当該職員の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から審理を尽くすことなく,上記署名押印をもって上記変更に対する当該職員の同意があるとした原審の判断には,違法がある。

最高裁判所第二小法廷判決平成26年10月23日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/084577_hanrei.pdf

English : http://www.courts.go.jp/app/hanrei_en/detail?id=1297

【判示事項】 女性労働者につき妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主措置の,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の禁止する取扱いの該当性

【判決要旨】 女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の禁止する取扱いに当たるが,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営人員の適正配置の確保などの業務上必要性から支障がある場合であって,上記措置につき同項の趣旨及び目的実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらない。本件については,被上告人において上告人につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否か等は明らかではなく,前記のとおり,本件措置により上告人における業務上の負担の軽減が図られたか否か等も明らかではない一方で,上告人が本件措置により受けた不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間の経過後も副主任への復帰を予定していないものといわざるを得ず,上告人の意向に反するものであったというべきであるから,本件措置については,被上告人における業務上の必要性の内容や程度,上告人における業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り,前記(1)イにいう均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできないものというべきである。したがって,これらの点について十分に審理し検討した上で上記特段の事情の存否について判断することなく,原審摘示の事情のみをもって直ちに本件措置が均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないと判断した原審の判断には,審理不尽の結果,法令解釈適用を誤った違法がある。

最高裁判所第一小法廷決定平成26年9月25日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/502/084502_hanrei.pdf

【判示事項】 1 行政組織法上の行政機関以外の組織が行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当する場合

       2 日本年金機構下部組織である事務センターが行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 1 処分行政庁を補助して処分に関わる事務を行った組織は,それが行政組織法上の行政機関ではなく,法令に基づき処分行政庁の監督の下で所定の事務を行う特殊法人等又はその下部組織であっても,法令に基づき当該特殊法人等が委任又は委託を受けた当該処分に関わる事務につき処分行政庁を補助してこれを行う機関であるといえる場合において,当該処分に関し事案の処理そのものに実質的に関与したと評価することができるときは,行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当する。

       2 国民年金法に基づき年金の給付を受ける権利裁定に係る事務の委託を受けた日本年金機構の下部組織である事務センターが日本年金機構法等の定めに従って上記裁定に係る処分に関わる事務を行った場合において,上記事務センターが当該処分に関し事案の処理そのものに実質的に関与したと評価することができるか否かについて審理判断することなく,上記事務センターが行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当しないとした原審の判断には,違法がある。

しかるところ,原審は,上記のような観点から本件事務センターが本件処分に関し事案の処理そのものに実質的に関与したと評価することができるか否かについて,何ら審理判断していない。

上記の点について審理を尽くすことなく,本件事務センターが行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当しないとして本案訴訟がその所在地裁判所管轄に属しないものとした原審の判断には,審理不尽の結果,法令の解釈適用を誤った違法がある。

以上のとおり,原審の判断には裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

最高裁判所第三小法廷判決平成26年1月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/888/083888_hanrei.pdf

【判示事項】 一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可処分又は許可更新処分の取消訴訟と当該処分の対象とされた区域につき既にその許可又は許可の更新を受けている者の原告適格

【判決要旨】 市町村長から一定の区域につき既に一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可又はその更新を受けている者は,当該区域を対象として他の者に対してされた一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可処分又は許可更新処分について,その取消訴訟の原告適格を有する。

上告人の国家賠償法に基づく損害賠償請求については,原審は,前記3のとおり,廃棄物処理法は一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者営業上の利益個別的利益として保護する趣旨を含むものではないとした上で,被上告人は上告人に対してその営業上の利益に配慮しこれを保護すべき義務を負うものではないとして,その余の点について判断するまでもなく上記請求を棄却しているところ,以上に説示したところに照らせば,被上告人が上告人に対して上記のような義務をおよそ負っていないとはいえないから,原判決には審理不尽の違法があるといわざるを得ない。

最高裁判所第二小法廷判決平成25年7月12日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/403/083403_hanrei.pdf

【判示事項】 1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地価格固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合におけるその登録された価格の決定の適否

       2 固定資産評価基準に従って決定される基準年度に係る賦課期日における土地の価格とその適正な時価との関係

【判決要旨】 1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合には、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず、その登録された価格の決定は違法となる。

       2 評価対象の土地に適用される固定資産評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的合理性を有するものであり、かつ、固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における当該土地の価格がその評価方法に従って決定された価格を上回るものでない場合には、その登録された価格は、その評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認される。

本件敷地登録価格の決定及びこれを是認した本件決定の適法性を判断するに当たっては,本件敷地登録価格につき,適正な時価との多寡についての審理判断とは別途に,上記(1)エ1.の場合に当たるか否か(前記2(2)の建ぺい率及び容積率制限に係る評価基準における考慮の要否や在り方を含む。)についての審理判断をすることが必要であるところ,原審は前記3のとおりこれを不要であるとしてこの点についての審理判断をしていない。そうすると,原判決には,土地の登録価格の決定が違法となる場合に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点について審理不尽の違法があるといわざるを得ず,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

また,上記(1)エ2.の場合に当たるか否かの判断に当たっては,本件敷地部分の評価において適用される評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであるか,その評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるか等についての審理判断をすることが必要であるところ,原審は,前記3のとおり評価基準によらずに認定した本件敷地部分の適正な時価が本件敷地登録価格を上回ることのみを理由として当該登録価格の決定は違法ではないとしており,これらの点についての審理判断をしていない。そうすると,原判決には,上記の点についても審理不尽の違法があるといわざるを得ず,この違法も原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

以上によれば,論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち上告人に関する部分は破棄を免れない。そして,上記4(2)ア及びイの各点等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。

最高裁判所第二小法廷判決平成25年7月12日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/401/083401_hanrei.pdf

【判示事項】 原審が,壁面に吹き付けられた石綿露出している建物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時点を明らかにしないまま,同建物の設置又は保存の瑕疵の有無について判断したことに審理不尽の違法があるとされた事例

【判決要旨】 壁面に吹き付けられた石綿が露出している建物で昭和45年から平成14年まで勤務していた間にその石綿の粉じんにばく露したことにより悪性胸膜中皮腫罹患した者の相続人が,同建物の所有者に対し,民法717条1項ただし書の規定に基づく損害賠償を求める訴訟において,原審が,同建物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになったのはいつの時点からであるかを明らかにしないまま,昭和45年以降の時期における同建物の設置又は保存の瑕疵の有無について,平成7年に一部改正された政令及び平成17年に制定された省令の規定による規制措置の導入をも根拠にして直ちに判断をしたことには,審理が尽くされていない違法がある。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年4月23日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/208/082208_hanrei.pdf

【判示事項】 1 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の損害賠償請求権放棄する旨の議会議決の適法性及び当該放棄の有効性に関する判断基準

       2 住民訴訟の係属中にされたその請求に係る市の損害賠償請求権を放棄する旨の市議会の議決が違法であるとした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 1 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の損害賠償請求権を放棄する旨の議会の議決がされた場合において,当該請求権の発生原因である公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響(その違法事由性格や当該職員の帰責性等を含む。),当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有無及び経緯,事後の状況その他の諸般の事情総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であってその裁量権範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となる。

       2 市の合併前の町による土地の購入の代金が過大でありその売買が違法であるとして提起された住民訴訟の係属中に,その請求に係る当時の町長に対する市の損害賠償請求権を放棄する旨の市議会の議決がされた場合において,次の(1)〜(6)など判示の事情の下で,放棄に係る裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無を判断するに当たって考慮されるべき諸般の事情のうち,上記代金額適正価格のほか上記住民訴訟の経緯や当該議案の提案理由書の記載の一部等について考慮しただけで,上記町長の帰責性の程度を判断するに足りる事情を十分に認定,考慮していないなど,上記売買契約締結行為の性質,内容,原因,経緯及び影響,当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響など考慮されるべき事情について十分に審理を尽くすことなく,直ちに当該議決が違法であるとした原審の判断には,違法がある。

(1) 町においては,上記土地を浄水場用地として取得する必要性があったものであり,用地取得の予定時期を数年過ぎても他に適当候補地が見当たらない中で,水道事業管理者としての町長は,用地取得の早急な実現に向けて努力すべき立場にあり,売買の交渉の期間や内容等について相応の裁量も有していた。

(2) 上記土地の売主が高額な代金額を要求した根拠は町の依頼した不動産鑑定士による鑑定評価額であり,町において中立的専門家の関与なしに限られた期間内当事者同士の交渉によって上記売主から代金額の大幅な引下げという譲歩を確実に引き出すことができたか否かは必ずしも明らかではなく,町長と上記売主との交渉の具体的な内容や状況等の事情も原審では明らかにされていない。

(3) 町長において上記代金額と適正価格との差額から不法な利益を得て私利を図る目的があったなどの事情は証拠上うかがわれず,主張もされていない。

(4) 上記代金額は町議会の議決を得た用地購入費の予算の枠内のもので,上記売買により浄水場用地が確保され浄水施設の設置等の早期実現が図られることによって,町ないし市及びその住民全体に相応の利益が及んでおり,町長が上記売買により不法な利益を得たなどの事情は証拠上うかがわれず,主張もされていない。

(5) 市議会における当該議案の提案理由書やこれに賛成した議員らの発言の中で,浄水場の建設は緊急を要しており浄水場用地として上記土地を取得する必要性は高く地元住民の要望も強かった等の指摘もされており,町長の賠償責任を不当な目的で免れさせたことをうかがわせる事情は原審では明らかにされていない。

(6) 浄水場用地の取得という公益的な政策目的に沿って町の執行機関が本来の責務として行う職務遂行過程における行為に関し,上記請求権の行使により執行機関の個人責任として直ちに1億数千万円の賠償責任の徴求がされた場合,長期的な観点からはこのような職務の遂行に萎縮的な影響を及ぼすなどのおそれもある。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年4月20日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/205/082205_hanrei.pdf

【判示事項】 1 普通地方公共団体がその議会の議決により債権の放棄をする場合におけるその長による放棄の意思表示の要否

       2 住民訴訟の係属中にされたその請求に係る市の損害賠償請求権を放棄する旨の市議会の議決が適法であるとした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 1 普通地方公共団体がその議会の議決により債権を放棄する場合には,条例による場合を除き,放棄の効力が生ずるにはその長による執行行為としての放棄の意思表示を要する。

       2 市の非常勤職員への退職慰労金の支給が違法であるとして提起された住民訴訟の係属中に,その請求に係る市長及び担当職員に対する市の損害賠償請求権を放棄する旨の市議会の議決がされた場合において,放棄に係る裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無を判断するに当たって考慮されるべき諸般の事情のうち,当該議決の存在について認定判断するのみで,上記支給に係る違法事由の有無及び性格や市長及び担当職員の故意又は過失等の帰責性の有無及び程度を始め,上記支給の性質,内容,原因,経緯及び影響,当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,上記住民訴訟の経緯,事後の状況などの事情について審理することなく,直ちに当該議決が適法であるとした原審の判断には,違法がある。

原審は,本件訴訟の係属中にその請求に係る市のAらに対する損害賠償請求権を放棄する旨の本件議決がされたという事実関係の下において,上記(2)の諸般の事情の総合考慮による判断枠組みを採ることなく,上記諸般の事情のうち,本件議決の存在について認定判断するのみで,本件退職慰労金の支給に係る違法事由の有無及び性格やAらの故意又は過失等の帰責性の有無及び程度を始め,本件退職慰労金の支給の性質,内容,原因,経緯及び影響,本件議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,本件訴訟の経緯,事後の状況などの考慮されるべき事情について何ら検討をしていない。したがって,これらの考慮されるべき事情について審理を尽くすことなく,原審摘示の事情のみを理由に直ちにAらに対する損害賠償請求権の放棄に係る本件議決が適法であるとした原審の判断には,審理不尽の結果,法令の解釈適用を誤った違法がある。


弁護士中山知行

2016-12-07 宅地建物取引業法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一法廷判決平成28年3月31日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/809/085809_hanrei.pdf

【判示事項】 宅地建物取引業法30条1項前段所定の事由が発生した場合において,同条2項本文所定の公告がされなかったときにおける営業保証金の取戻請求権消滅時効の起算点

【判決要旨】 宅地建物取引業法30条1項前段所定の事由が発生した場合において、同条2項本文所定の公告がされなかったときは、営業保証金の取戻請求権の消滅時効は、当該事由が発生した時から10年を経過した時から進行する。

最高裁判所第二小法廷決定平成16年12月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/073/050073_hanrei.pdf

【判示事項】 民事執行法上の競売手続により宅地又は建物を買い受ける行為と宅地建物取引業法2条2号にいう宅地又は建物の「売買」

【判決要旨】 民事執行法上の競売手続により宅地又は建物を買い受ける行為は,宅地建物取引業法2条2号にいう宅地又は建物の「売買」に当たる。

最高裁判所第二小法廷判決平成16年11月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/568/062568_hanrei.pdf

【判示事項】 宅地建物取引業保証協会宅地建物取引業者からの入会申込みにつき宅地建物取引業協会の会員でなければならないとの資格要件を満たさないことを理由にこれを拒否したことが不法行為とならないとされた事例

【判決要旨】 宅地建物取引業保証協会における宅地建物取引業協会の会員であることを入会資格要件とする定めは,同保証協会が,宅地建物取引業協会及び同協会を会員とする宅地建物取引業協会連合会との間で,宅地建物取引業法64条の3第1項2号所定の研修業務を共同で実施し,同項1号所定の苦情の解決についての業務を委託するなど密接な関係を有しており,宅地建物取引業協会の会員であってその指導監督の下にある宅地建物取引業者であれば,上記研修の実施等により,同項3号所定の弁済業務に係る制度を適切に運営し,これを維持するための関係法令の遵守等が相当程度期待し得るものとして定められたものであること,宅地建物取引業者は,国保証協会に入会しなくても,同法25条に規定する営業保証金を供託することにより宅地建物取引業を営むことができることなど判示の事情の下においては,同保証協会が宅地建物取引業者からの入会申込みにつき上記要件を満たさないことを理由にこれを拒否したことは,不法行為とならない。

最高裁判所第一小法廷判決平成10年6月11日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/823/062823_hanrei.pdf

【判示事項】 1 宅地建物取引業保証協会の社員との間の宅地建物の取引に係る契約における損害賠償額の予定又は違約金に関する定めに基づく債権と宅地建物取引業法64条の8第1項所定の「その取引により生じた債権」

       2 宅地建物取引業保証協会がその内部規約において弁済業務保証金による弁済の対象となる損害賠償債権又は違約金債権の内容及び範囲制限を加えて宅地建物取引業法64条の8第2項所定の認証を拒否することの許否

【判決要旨】 1 宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者とが、その取引に係る契約における損害賠償額の予定又は違約金に関する定めに基づき取得した損害賠償債権又は違約金債権は、特段の事情がない限り、弁済業務保証金による弁済の対象である宅地建物取引業法64条の8第1項所定の「その取引により生じた債権」に当たる。

       2 宅地建物取引業保証協会が、その内部規約において、弁済業務保証金による弁済の対象となる損害賠償債権又は違約金債権の内容及び範囲に制限を加え、右債権につき宅地建物取引業法64条の8第2項所定の認証を拒否することは、許されない。

最高裁判所第二小法廷判決平成元年11月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/722/052722_hanrei.pdf

【判示事項】 一、宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない免許の付与ないし更新をした知事の行為と国家賠償法1条1項の違法性

       二、宅地建物取引業者に関する知事の監督処分権限の不行使と国家賠償法1条1項の違法性

【判決要旨】 一、宅地建物取引業者に対する知事の免許の付与ないし更新が宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない場合であってもの知事の右行為は、右業者不正な行為により損害を被った取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるものではない。

       二、知事が宅地建物取引業者に対し宅地建物取引業法65条2項による業務停止処分ないし同法66条9号による免許取消処分をしなかった場合であっても、知事の右監督処分権限の不行使は、具体的事情の下において、右権限が付与された趣旨目的に照らして著しく不合理と認められるときでない限り、右業者の不正な行為による損害を被った取引関係者に対する関係において国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けない。

最高裁判所第一小法廷決定昭和63年12月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/408/058408_hanrei.pdf

【判示事項】 宅地建物取引業法についての違憲の主張が欠前提処理された事例

最高裁判所第一小法廷決定昭和60年12月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/380/058380_hanrei.pdf

【判示事項】 法人代表者がその法人の行為に関して宅地建物取引業法79条2号の違反行為をしたときの罰条

最高裁判所第二小法廷決定昭和60年12月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/390/058390_hanrei.pdf

【判示事項】 宅地建物取引業者である法人の代表者がその法人の業務に関し、宅地建物取引業法47条に違反する行為をしたときの罰条

最高裁判所第一小法廷決定昭和60年7月15日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/841/061841_hanrei.pdf

【判示事項】 宅地建物取引業者である法人の代表者がその法人の業務に関し、宅地建物取引業法13条(昭和五五年法律第五六号による改正のもの)に違反する名義貸し行為をしたときの罰条

最高裁判所第三小法廷判決昭和60年3月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/320/050320_hanrei.pdf

【判示事項】 宅地建物取引業法49条にいう「帳簿」の意義

【判決要旨】 宅地建物取引業法49条にいう「帳簿」とは、本人の意思ならびにその形式記載内容および保管状況から判断して、宅地建物取引業者がその業務に関し同条所定の事項を記載することを予定して備え付けたと認められる帳簿をいう。


弁護士中山知行

2016-12-06 借地借家法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一法廷判決平成26年9月25日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/488/084488_hanrei.pdf

【判示事項】 借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟確定判決の既判力

【判決要旨】 借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力は、原告特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り、前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずる。

最高裁判所第三小法廷判決平成25年4月9日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/174/083174_hanrei.pdf

【判示事項】 建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾の下に1階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において,建物の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることが権利濫用に当たるとされた事例

【判決要旨】 繁華街位置する建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾のもとに1階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において、建物の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることは、次の(1)〜(4)など判示の事情のもとにおいては、権利の濫用に当たる。

(1) 上記看板等は、上記店舗の営業の用に供されており、建物の地下1階部分と社会通念上一体のものとして利用されてきた。

(2) 賃借人において上記看板等を撤去せざるを得ないこととなると、建物周辺の通行人らに対し建物の地下1階部分で上記店舗を営業していることを示す手段はほぼ失われ、その営業の継続は著しく困難となる。

(3) 上記看板等の設置が建物の所有者の承諾を得たものであることは、譲受人において十分知り得たものである。

(4) 譲受人に上記看板等の設置箇所の利用についてとくに具体的な目的があることも、上記看板等が存在することにより譲受人の建物の所有に具体的な支障が生じていることもうかがわれない。

最高裁判所第三小法廷判決平成25年1月22日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/909/082909_hanrei.pdf

【判示事項】 ゴルフ場経営を目的とする地上権設定契約及び土地賃貸借契約につき借地借家法11条の類推適用をする余地はないとされた事例

【判決要旨】 地上権設定契約および土地賃貸借契約において、ゴルフ場経営を目的とすることが定められているにすぎず、当該土地が建物の所有と関連するような態様使用されていることもうかがわれないという事実関係のもとにおいては、借地借家法11条の類推適用をする余地はない。

最高裁判所第一小法廷判決平成24年9月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/539/082539_hanrei.pdf

【判示事項】 借地借家法38条2項所定の書面が賃借人の認識にかかわらず契約書とは別個独立の書面であることの要否

【判決要旨】 借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,その契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要する。

最高裁判所第二小法廷判決平成22年7月16日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/459/080459_hanrei.pdf

【判示事項】 賃貸人から賃借人に対して借地借家法38条2項所定の書面の交付があったとした原審の認定経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

【判決要旨】 賃貸人が定期建物賃貸借契約の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しいにもかかわらず,賃貸借契約に係る公正証書に説明書面の交付があったことを相互に確認する旨の条項があり,賃借人において上記公正証書の内容を承認していることのみから,借地借家法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面の交付があったとした原審の認定には,経験則又は採証法則に反する違法がある。

最高裁判所第二小法廷判決平成20年2月29日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/877/035877_hanrei.pdf

【判示事項】 賃料自動改定特約のある建物賃貸借契約の賃借人からの賃料減額請求の当否等を判断するに当たり,上記特約による改定前に当事者現実合意した直近の賃料を基にすることなく,上記特約によって増額された賃料を基にして,増額された日から当該請求の日までの間に限定して経済事情の変動等を考慮した原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 賃料自動改定特約のある建物賃貸借契約の賃借人から借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求がされた場合において、当該請求の当否および相当賃料額を判断するにあたり、上記特約による改定前に賃貸借契約の当事者が現実に合意した直近の賃料を基にして、その合意された日から当該請求の日までの間の経済事情の変動等を考慮して判断されなければならないにもかかわらず、上記特約によって増額された賃料を基にして、増額前の経済事情の変動等を考慮の対象から除外し、増額された日から当該請求の日までの間に限定して、その間の経済事情の変動等を考慮した原審の判断には、違法がある。

最高裁判所第三小法廷決定平成19年12月4日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/465/035465_hanrei.pdf

【判示事項】 賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物について,借地権設定者が,借地借家法19条3項に基づき,自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることの許否

【判決要旨】 借地権者が,賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を第三者に譲渡するために,借地借家法19条1項に基づき,賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申立てをした場合において,借地権設定者が,同条3項に基づき,自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることは許されない。

最高裁判所第三小法廷決定平成19年12月4日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/464/035464_hanrei.pdf

【判示事項】 1 賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物について,借地権設定者が,借地借家法20条2項,19条3項に基づき,自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることの許否

【判決要旨】 賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を競売により取得した第三者が,借地借家法20条1項に基づき,賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申立てをした場合において,借地権設定者が,同条2項,同法19条3項に基づき,自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることは許されない。

最高裁判所第一小法廷判決平成18年1月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/620/062620_hanrei.pdf

【判示事項】 登記に表示された所在地番及び床面積が実際と異なる建物が借地借家法10条1項にいう「登記されている建物」に当たるとされた事例

【判決要旨】 借地上の建物の登記に表示された所有地番及び床面積が実際と異なる場合において,所在地番の相違が職権による表示の変更の登記に際し登記官の過誤により生じたものであること,床面積の相違は建物の同一性否定するようなものではないことなど判示の事情の下では,上記建物は,借地借家法10条1項にいう「登記されている建物」に当たる。

最高裁判所第一小法廷判決平成17年3月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/535/062535_hanrei.pdf

【判示事項】 賃借人の要望に沿って大型スーパーストアの店鋪として使用するために建築され他の用途転用することが困難である建物を目的とし3年ごとに賃料を増額する旨の特約を付した賃貸借契約について賃借人のした賃料減額請求権行使を否定した原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 賃借人の要望に沿って大型スーパーストアの店舗として使用するために建築され,他の用途に転用することが困難である建物について,賃貸人が将来にわたり安定した賃料収入を得ること等を目的として,3年ごとに賃料を増額する旨の特約を付した賃貸借契約が締結された場合において,賃料減額請求の当否を判断するに当たり,当初の合意賃料を維持することが公平を失し信義に反するというような特段の事情の有無により賃料減額請求の当否を判断すべきものとして,専ら公租公課の上昇及び貸借人の経営状態のみを参酌し,土地建物の価格等の変動,近傍同種の建物の賃料相場等借地借家法32条1項所定の他の重要な事情を参酌しないまま,賃借人のした賃料減額請求権の行使を否定した原審の判断には,違法がある。

最高裁判所第二小法廷判決平成16年11月8日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/578/062578_hanrei.pdf

【判示事項】 1 いわゆるサブリース契約と借地借家法32条1項の適用の有無

       2 いわゆるサブリース契約の当事者が借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をした場合にその請求の当否及び相当賃料額を判断するために考慮すべき事情

【判決要旨】 1 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間で,あらかじめ賃料額及びその改定等について協定を締結し,これに基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容として締結した契約(いわゆるサブリース契約)についても,借地借家法32条1項の規定が適用される。

       2 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間で,あらかじめ賃料額及びその改定等について協定を締結し,これに基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)を締結した後,借地借家法32条1項に基づいて賃料減額の請求をした場合において,その請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,上記協定及び上記賃料自動増額特約に係る約定の存在を重要な事情として考慮すべきである。

最高裁判所第三小法廷判決平成16年6月29日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/062577_hanrei.pdf

【判示事項】 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において賃料を減額しない旨の特約が存することにより賃料減額請求権の行使を妨げられることはないとされた事例

【判決要旨】 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,3年ごとに賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算又は控除した額とするが,消費者物価指数が下降してもそれに応じて賃料の減額をすることはない旨の特約が存する場合であっても,上記契約の当事者は,そのことにより借地借家法11条1項に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものではない。

最高裁判所第一小法廷判決平成15年10月23日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/541/062541_hanrei.pdf

【判示事項】 一 いわゆるサブリース契約と借地借家法32条1項の適用の有無

       二 いわゆるサブリース契約の当事者が借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をした場合にその請求の当否及び相当賃料額を判断するために考慮すべき事情

【判決要旨】 一 不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ一定期間の賃料保証等についての合意をし、これに基づき、乙からその建物を一括して賃料保証特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても、借地借家法三二条一項の規定が適用される。

       二 不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ一定期間の賃料保証等についての合意をし、これに基づき、乙からその建物を一括して賃料保証特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)を締結した後、借地借家法三二条一項に基づいて賃料減額の請求をした場合において、その請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、当事者が賃料額決定の要素とした事情を総合考慮すべきであり、特に上記特約の存在や保証賃料額が決定された事情をも考慮すべきである。

最高裁判所第三小法廷判決平成15年10月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/299/052299_hanrei.pdf

【判示事項】 一 いわゆるサブリース契約と借地借家法32条1項の適用の有無

       二 いわゆるサブリース契約の当事者が借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をした場合にその請求の当否及び相当賃料額を判断するために考慮すべき事情

【判決要旨】 一 不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ賃料額、その改定等についての協議を調え、その結果に基づき、乙からその建物を一括して賃科自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても、借地借家法三二条一項の規定が適用される。

       二 不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ賃料額、その改定等についての協議を調え、その結果に基づき、乙からその建物を一括して賃科自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)を締結した後、借地借家法三二条一項に基づいて賃料減額の請求をした場合において、その請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、同契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃科自動増額特約等が付されるに至った事情、とりわけ約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係、甲の転貸事業における収支予測にかかわる事情、乙の敷金及び融資を受けた建築資金の返済の予定にかかわる事情等をも考慮すべきである。

最高裁判所第三小法廷判決平成15年10月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/463/062463_hanrei.pdf

【判示事項】 建物賃貸借契約に基づく使用収益の開始前に借地借家法32条1項に基づき賃料増減額請求をすることの可否

【判決要旨】 建物賃貸借契約の当事者は、契約に基づく建物の使用収益の開始前に、借地借家法32条1項に基づいて賃料の額の増減を求めることはできない。

最高裁判所第一小法廷判決平成15年6月12日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/364/052364_hanrei.pdf

【判示事項】 地代等自動改定特約と借地借家法11条1項

【判決要旨】 地代等自動改定特約において、地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の通用を争う当事者は、同特約に拘束されず、同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられない。

最高裁判所第一小法廷判決平成14年3月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/262/052262_hanrei.pdf

【判示事項】 事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了しても賃貸人が信義則上その終了を再転借人に対抗することができないとされた事例

【判決要旨】 ビルの賃貸、管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビル一棟の賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において、賃貸人が、賃借人にその知識経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって、自ら各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れるとともに、賃借人から安定的に賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し、賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたものであること、当該ビルの貸室の転借人及び再転借人が、上記のような目的の下に賃貸借契約が締結され転貸及び再転貸の承諾がされることを前提として、転貸借契約及び再転貸借契約を締結し、再転借人が現にその貸室を占有していることなど判示の事実関係があるときは、賃貸人は、信義則上、賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができない。

最高裁判所第二小法廷決定平成13年11月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/347/052347_hanrei.pdf

【判示事項】 借地借家法20条1項後段の付随的裁判として敷金を差し入れるべき旨を定めその交付を命ずることの可否

【判決要旨】 裁判所は、借地借家法20条に基づく許可の裁判をする場合において、同条一項後段の付随的裁判として、相当な額の敷金を差し入れるべき旨を定め、その交付を命ずることができる。

最高裁判所第一小法廷判決平成9年11月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/043/063043_hanrei.pdf

【判示事項】 期間の定めのある建物賃貸借契約の更新と保証人責任

【判決要旨】 期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人と保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解すべきである。

最高裁判所第三小法廷判決平成9年7月1日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/790/054790_hanrei.pdf

【判示事項】 一体として利用されている二筆の借地のうち一方の土地上にのみ借地権者所有の登記されている建物がある場合において両地の買主による他方の土地の明渡請求が権利の濫用に当たるとされた事例

【判決要旨】 AB二筆の土地の借地権者甲が、ガソリンスタンドの営業のために、A地上に登記されている建物を所有して店舗等として利用し、隣接するB地には未登記の簡易なポンプ室や給油設備等を設置し、右両地を一体として利用していて、B地を利用することができなくなると右営業の継続が事実上不可能となり、甲が右ポンプ室を独立の建物としての価値を有するものとは認めず登記手続を執らなかったこともやむを得ないと見られ、他方、右両地の買主乙には将来の土地の利用につき格別に特定された目的は存在せず、乙が売主の説明から直ちに甲は使用借主であると信じたことについては落ち度があるなど判示の事情の下においては、乙が右両地を特に低廉な価格で買い受けたものではなかったとしても、乙のB地についての明渡請求は、権利の濫用に当たり許されない。



弁護士中山知行

2016-12-05 民事再生法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一法廷判決平成26年6月5日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/246/084246_hanrei.pdf

【判示事項】 再生債務者が支払の停止の前に再生債権者から購入した投資信託受益権に係る再生債権者の再生債務者に対する解約金の支払債務負担が,民事再生法93条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たらず,上記支払債務に係る債権を受働債権とする相殺が許されないとされた事例

【判決要旨】 再生債務者Xが,その支払の停止の前に,投資信託委託会社信託会社との信託契約に基づき設定された投資信託の受益権をその募集販売委託を受けた再生債権者Yから購入し,上記信託契約等に基づき,上記受益権に係る信託契約の解約実行請求がされたときにはYが上記信託会社から解約金の交付を受けることを条件としてXに対してその支払債務を負担することとされている場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,Yがした債権者代位権に基づく解約実行請求により,Yが,Xの支払の停止を知った後に上記解約金の交付を受け,これにより上記支払債務を負担したことは,民事再生法93条2項2号にいう「支払の停止があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たるとはいえず,Yが有する再生債権を自働債権とし上記支払債務に係る債権を受働債権とする相殺は許されない。

(1) 上記解約実行請求は,YがXの支払の停止を知った後にされた。

(2) Xは,Yの振替口座簿に開設された口座で振替投資信託受益権として管理されていた上記受益権につき,原則として自由に他の振替先口座への振替をすることができた。

(3) Yが上記相殺をするためには,他の債権者と同様に,債権者代位権に基づき,Xに代位して上記解約実行請求を行うほかなかったことがうかがわれる。

最高裁判所第一小法廷判決平成26年6月5日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/245/084245_hanrei.pdf

【判示事項】 再生債務者と別除権者との間で締結された別除権の行使等に関する協定における同協定の解除条件に関する合意が,再生債務者がその再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定を受けた時から同協定が効力を失う旨の内容をも含むものとされた事例

【判決要旨】 別除権の行使等に関する協定(別除権の目的である不動産につきその被担保債権の額よりも減額された受戻しの価格を定めて再生債務者が別除権者に対しこれを分割弁済することとし、再生債務者がその分割弁済を完了したときは別除権者の担保権が消滅する旨を再生債務者と別除権者との間で定めたもの)中にある再生手続廃止の決定がされること等を同協定の解除条件とする旨の合意は、再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定がされることが解除条件として明記されていなくても、これを解除条件から除外する趣旨であると解すべき事情がうかがわれないなど判示の事情のもとでは、再生債務者が上記破産手続開始の決定を受けた時から同協定はその効力を失う旨の内容をも含むものと解すべきである。

最高裁判所第一小法廷判決平成25年11月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/748/083748_hanrei.pdf

【判示事項】 民事再生法上の共益債権に当たる債権につき,これが本来共益債権である旨の付記をすることもなく再生債権として届出がされ,この届出を前提として作成された再生計画案を決議に付する旨の決定がされた場合において,当該債権を再生手続によらずに行使することの許否

【判決要旨】 民事再生法上の共益債権に当たる債権を有する者は、当該債権につき再生債権として届出がされただけで、本来共益債権であるものを予備的に再生債権であるとして届出をする旨の付記もされず、この届出を前提として作成された再生計画案を決議に付する旨の決定がされた場合には、当該債権が共益債権であることを主張して再生手続によらずにこれを行使することは許されない。

最高裁判所第一小法廷判決平成23年12月15日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/833/081833_hanrei.pdf

【判示事項】 会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行が,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することの可否

【判決要旨】 会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。

最高裁判所第一小法廷判決平成23年11月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/779/081779_hanrei.pdf

【判示事項】 求償権が再生債権である場合において共益債権である原債権を再生手続によらないで行使することの可否

【判決要旨】 弁済による代位により民事再生法上の共益債権を取得した者は,同人が再生債務者に対して取得した求償権が再生債権にすぎない場合であっても,再生手続によらないで上記共益債権を行使することができる。

最高裁判所第三小法廷判決平成23年3月1日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/116/081116_hanrei.pdf

【判示事項】 届出のない再生債権である過払金返還請求権について,届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定める再生計画と上記過払金返還請求権の帰すう

【判決要旨】 届出のない再生債権である過払金返還請求権について、請求があれば再生債権の確定を行った上で、届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定める再生計画の認可決定が確定することにより、上記過払金返還請求権は、再生計画による権利の変更の一般的基準に従い変更され、その再生債権者は、訴訟等において過払金返還請求権を有していたことおよびその額が確定されることを条件に、上記のとおり変更されたところに従って、その支払を受けられる。

最高裁判所第二小法廷判決平成22年6月4日

【判示事項】 自動車の売買代金の立替払をした者が,販売会社留保されていた自動車の所有権移転を受けたが,購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき所有者としての登録を受けていないときに,留保した所有権を別除権として行使することの可否

【判決要旨】 自動車の購入者から委託されて販売会社に売買代金の立替払をした者が,購入者及び販売会社との間で,販売会社に留保されている自動車の所有権につき,これが,上記立替払により自己に移転し,購入者が立替金及び手数料の支払債務を完済するまで留保される旨の合意をしていた場合に,購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき上記立替払をした者を所有者とする登録がされていない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても,上記立替払をした者が上記の合意に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されない。

最高裁判所第三小法廷判決平成20年12月16日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/283/080283_hanrei.pdf

【判示事項】 いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約の効力

【判決要旨】 いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約は,無効である。

最高裁判所第一小法廷決定平成20年3月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/085/036085_hanrei.pdf

【判示事項】 1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正方法によって成立するに至ったとき」には,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合が含まれるか

       2 民事再生法172条の3第1項1号の趣旨を潜脱し信義則に反する再生債務者らの行為に基づいて再生計画案が可決されたとして,再生計画に同法174条2項3号所定の不認可事由があるとされた事例

【判決要旨】 1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺強迫又は不正な利益供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。

       2 次の(1)及び(2)の判示の事情の下では,再生債務者Xについての再生計画の決議は,民事再生法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し信義則に反するXらの行為によって成立したものというべきであり,上記再生計画には同法174条2項3号所定の不認可事由がある。

(1)民事再生手続による方が破産手続によるよりも債権の回収に不利な債権者がいて,再生計画案が可決されないことが見込まれていた状況の下で,Xが再生手続開始の申立てをする直前に,Xの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったAが,回収可能性のないXに対する債権を譲り受け,その一部を同じくXの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったBに譲渡した。

(2)AとBが再生計画案に同意するものとして議決権を行使したことにより民事再生法172条の3第1項1号の要件を充足し,再生計画案が可決された。

最高裁判所第一小法廷決定平成19年9月27日

【判示事項】 再生裁判所の発令した中止命令違反してされた民法467条所定の通知が有効とした原判決に対する上告および上告受理の申立てについて上告棄却および上告不受理の決定がされた事例

民事再生法31条1項によれば、裁判所は、一定の要件が認められるときは、再生債務者の財産上に存する担保権の実行としての競売の手続の中止を命ずることができるとされているところ、この規定がいわゆる非典型担保の実行手続についても準用されるか否かについては疑問がないではないが、1、2審とも、集合債権譲渡担保の実行手続に対する中止命令については一応適法と解しているものとみられ特に異論のないところであろう。

問題は、抗告特別抗告許可抗告を経て民事再生手続において争うことができなくなった本件中止命令の効力を別訴において争うことができるかどうかということである。

本決定は、本件の事実関係のもとで再生裁判所の発令した中止命令に違反してなされた民法467条所定の通知が有効とした原判決につき、上告棄却・不受理とした。


弁護士中山知行

2016-12-04 金融商品取引法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第二小法廷決定平成27年4月8日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/033/085033_hanrei.pdf

【判示事項】 1 金融商品取引法(平成20年法律第65号による改正のもの)166条1項1号にいう「役員代理人,使用人その他の従業者」の意義

       2 金融商品取引法(平成20年法律第65号による改正前のもの)166条1項1号にいう「その他の従業者」に当たるとされた事例

判決要旨】 1 金融商品取引法(平成20年法律第65号による改正前のもの)166条1項1号にいう「役員、代理人、使用人その他の従業者」とは、上場会社等の役員、代理人、使用人のほか、現実に当該上場会社等の業務従事している者を意味し、当該上場会社等との委任雇用契約等に基づいて職務に従事する義務の有無や形式上地位呼称いかんを問わない。

       2 上場会社の実質的大株主であり、同社の役員、代理人、使用人には当たらないが、代表取締役と随時協議するなどして同社の財務および人事等の重要な業務執行の決定に関与するという形態で現実に同社の業務に従事していた被告人は、金融商品取引法(平成20年法律第65号による改正前のもの)166条1項1号にいう「その他の従業者」に当たる。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年12月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/847/082847_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社が,臨時報告書及び有価証券報告書虚偽記載等の事実公表をするとともに,同日,再生手続開始の申立てをした場合において,金融商品取引法21条の2第2項の規定により損害の額を算定するに当たり,同条4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断違法があるとされた事例

【判決要旨】 多額の債務を負い資金繰り悪化していた株式会社が,転換社債型新株予約権付社債の発行によって得る払込金の使途につき,実際にはこれをスワップに係る契約における支払金に充てる予定であり,上記社債の発行による資金調達は不確実であったのに,上記払込金を債務の返済に充てる旨の虚偽記載等がされた臨時報告書及び有価証券報告書を提出し,その約1箇月半後に上記虚偽記載等の事実の公表をするとともに,同日,再生手続開始の申立てをし,上記会社株式が大幅に値下がりした場合において,以下の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記虚偽記載等の事実の公表前に上記会社の株式を取引所市場で取得した投資者の被った損害の額につき,金融商品取引法21条の2第2項の規定によりこれを算定するに当たり,上記投資者の損害は全て上記虚偽記載等により生じたものであるとして,同条4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断には,違法がある。

(1) 上記会社が再生手続開始の申立てに至ったのは,金融機関融資姿勢厳格化等に伴う資金繰りの悪化によるものであって,上記虚偽記載等や,その事実の公表に起因して,上記の資金繰りの悪化がもたらされたわけではない。

(2) 上記会社は,再生手続開始の申立ての約2箇月前から,米国大手投資銀行等との間で業務・資本提携交渉を開始しており,近々上記会社の株式の公開買付けが実施されることも見込まれていたのであって,上記虚偽記載等がされた当時,上記会社が既に倒産状態又は近々倒産することが確実な状態であったとはいえない。

(3) 上記会社の株式は,上記臨時報告書及び有価証券報告書の提出前から上記虚偽記載等の事実の公表の日に至るまで,ほぼ一貫して値下がりを続けており,上記値下がりには,上記会社の経営状態など上記虚偽記載等とは無関係な要因により生じた分が含まれている。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年12月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/847/082847_hanrei.pdf

【判示事項】 臨時報告書に虚偽記載等がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載等がなければこれを取得しなかった場合における,上記投資者に生じた当該虚偽記載等と相当因果関係のある損害の額

【判決要旨】 臨時報告書に虚偽記載等がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載等がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合,上記投資者に生じた当該虚偽記載等と相当因果関係のある損害の額は,上記投資者が当該虚偽記載等の公表後,上記株式を取引所市場において処分したときは,その取得価額と処分価額との差額を基礎とし,経済情勢,市場動向,当該上場株式を発行する会社の業績など当該虚偽記載等に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して,これを算定すべきである。

最高裁判所第三小法廷判決平成24年3月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/117/082117_hanrei.pdf

【判示事項】 1 検察官は金融商品取引法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たるか

       2 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」の意義

       3 金融商品取引法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」の意義

       4 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券につき,投資者がこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得しこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合における,上記投資者が金融商品取引法21条の2に基づき請求することのできる額の算定方法

       5 金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償債務が遅滞に陥る時期

【判決要旨】 1 検察官は、金融商品取引法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たる。

       2 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」とは、虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実をいう。

       3 金融商品取引法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」とは、投資者が虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券を取得するにあたって実際に支払った額と当該取得の時点において当該虚偽記載等がなかった場合に想定される当該有価証券の市場価額との差額に相当する分の値下がりに限られず、有価証券報告書等の虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりのすべてをいう。

       4 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券につき、投資者がこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得しこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合において、個々の取引ごとの取得と処分との対応関係特定ならびに取得価額および処分価額の具体的な主張、立証がされていないときは、裁判所は、当該有価証券の取得価額の総額と処分価額の総額との差額をもって金融商品取引法21条の2第1項にいう「第19条第1項の規定の例により算出した額」とした上で、当該差額と同法21条の2第2項によって推定される損害額の総額とを比較し、その小さいほうの金額をもって、上記投資者が同条に基づき請求することのできる額とするという算定方法によることができる。

       5 金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、かつ、何らの催告を要することなく、遅滞に陥る。

最高裁判所第三小法廷判決平成23年9月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/615/081615_hanrei.pdf

【判示事項】 1 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得しなかった場合における,上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額

       2 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得しなかった場合における,当該虚偽記載の公表後のいわゆるろうばい売りによる上場株式の市場価額の下落による損害と当該虚偽記載との相当因果関係

【判決要旨】 1 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が、当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合において、当該虚偽記載の公表後に上記株式を取引所市場において処分したときは、上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、その取得価額と処分価額との差額を基礎とし、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して、これを算定すべきである。

       2 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が、当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合において、当該虚偽記載が公表された後のいわゆるろうばい売りが集中することによる上場株式の市場価額の過剰な下落による損害は、当該虚偽記載と相当因果関係がないとはいえない

最高裁判所第三小法廷判決平成23年9月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/614/081614_hanrei.pdf

【判示事項】 1 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得しなかった場合における,上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額

       2 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得しなかった場合における,当該虚偽記載の公表後のいわゆるろうばい売りによる上場株式の市場価額の下落による損害と当該虚偽記載との相当因果関係

【判決要旨】 1 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が、当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合、上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、上記投資者が、当該虚偽記載の公表後、上記株式を取引所市場において処分したときはその取得価額と処分価額との差額を、上記株式を保有し続けているときはその取得価額と事実審の口頭弁論終結時の上記株式の市場価額(上場が廃止された場合においてはその非上場株式としての評価額)との差額をそれぞれ基礎とし、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して、これを算定すべきである。

       2 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合、当該虚偽記載が公表された後のいわゆるろうばい売りが集中することによる上場株式の市場価額の過剰な下落による損害は、当該虚偽記載と相当因果関係がないとはいえない。

最高裁判所第一小法廷決定平成23年6月6日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/389/081389_hanrei.pdf

【判示事項】 証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」の意義

【判決要旨】 証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」をしたというためには、同項にいう「業務執行を決定する機関」において、公開買付け等の実現を意図して、公開買付け等またはそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り、公開買付け等の実現可能性があることが具体的に認められることは要しない。

最高裁判所第二小法廷判決平成22年10月22日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/782/080782_hanrei.pdf

【判示事項】 証券取引法施行令(平成18年政令第377号による改正前のもの)7条5項4号,発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令(平成18年内閣府令第86号による改正前のもの)3条の2の4第1項及び第2項所定の「株券等」に,特定買付け等(同施行令7条5項にいうもの)の対象とならない株券等は含まれるか

【判決要旨】 証券取引法施行令(平成18年政令第377号による改正前のもの)7条5項4号、発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令(平成18年内閣府令第86号による改正前のもの)3条の2の4第1項および第2項所定の「株券等」には、特定買付け等(同施行令7条5項にいうもの)の対象とならない株券等は含まれない。

最高裁判所第一小法廷判決平成21年7月9日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/819/037819_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例

【判決要旨】 株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ、その後同事実が公表されて当該会社の株価が下落し、公表前に株式を取得した株主が損害を被ったことにつき、次の(1)〜(3)などの判示の事情のもとでは、当該会社の代表者に、従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるとはいえない。

(1) 当該会社は、営業部所属する事業部門と財務部門を分離し、売上げについては、事業部内の営業部とは別の部署における注文書検収書の確認等を経て財務部に報告される体制を整えるとともに、監査法人および当該会社の財務部がそれぞれ定期的に取引先から売掛金残高確認書の返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとするなど、通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていた。

(2) 上記架空売上げの計上に係る不正行為は、事業部の部長が部下である営業担当者数名と共謀して、取引先の偽造印を用いて注文書等を偽造し、これらを確認する担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせた上、上記営業担当者らが言葉巧みに取引先の担当者を欺いて、監査法人等が取引先あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し、これを偽造して監査法人等に送付するという、通常容易に想定し難い方法によるものであった。

(3) 財務部が売掛金債権の回収遅延につき上記事業部の部長らから受けていた説明合理的なもので、監査法人も当該会社の財務諸表につき適正意見を表明していた。

最高裁判所第三小法廷決定平成21年5月29日

【判示事項】 株式取得価格決定に対する抗告審の変更決定に対する特別抗告事件について,抗告代理人の抗告理由違憲をいうが,その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって,民訴法336条1項の事由に該当せず,同変更決定に対する許可抗告事件について,原審の判断はその裁量範囲内にあるものとして是認でき,原決定に所論の判例違反はないとした事例

最高裁判所第二小法廷判決平成20年2月15日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/756/035756_hanrei.pdf

【判示事項】 証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は同法にいう発行者等に限られるか

【判決要旨】 証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は,重要な事項について虚偽の表示があり又は重要な事実の表示が欠けている目論見書その他の表示を使用して有価証券を取得させたといえる者であれば足り,同法にいう発行者,有価証券の募集若しくは売出しをする者,引受人若しくは証券会社等,又はこれと同視できる者に限られない。

最高裁判所第一小法廷決定平成19年7月12日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/942/034942_hanrei.pdf

【判示事項】 1 出来高に関し他人に誤解を生じさせる目的は,価格操作ないし相場操縦の目的を伴わない場合でも,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項柱書きにいう「取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」に当たるか

       2 いわゆる自己両建ての有価証券オプション取引(判文参照)は,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項3号にいう「オプション付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引」に当たるか

【判決要旨】 1 出来高に関し他人に誤解を生じさせる目的は,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項柱書きにいう「取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」に当たる

       2 いわゆる自己両建ての有価証券オプション取引は,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項3号にいう「オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引」に当たる。

最高裁判所第一小法廷判決平成18年7月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/320/033320_hanrei.pdf

【判決要旨】 証券取引法79条の20第3項2号に規定する「証券業に係る取引」と証券会社が同取引を仮装して行った取引

最高裁判所第一小法廷判決平成17年7月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/383/052383_hanrei.pdf

【判示事項】 1 証券取引における適合性原則違反と不法行為の成否

       2 証券会社の担当者による株価指数オプションの売り取引の勧誘が適合性原則から著しく逸脱するものであったとはいえないとして不法行為の成立が否定された事例

【判決要旨】 1 証券会社の担当者が,顧客意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となる。

       2 証券会社甲の担当者が顧客である株式会社乙に対し株価指数オプションの売り取引を勧誘してこれを行わせた場合において,当該株価指数オプションは証券取引所の上場商品として広く投資者が取引に参加することを予定するものであったこと,乙は20億円以上の資金を有しその相当部分を積極的に投資運用する方針を有していたこと,乙の資金連用業務を担当する専務取締役らは,株価指数オプション取引を行う前から,信用取引先物取引等の証券取引を毎年数百億円規模で行い,証券取引に関する経験知識を蓄積していたこと,乙は,株価指数オプションの売り取引を始めた際,その損失が一定額を超えたらこれをやめるという方針を立て,実際にもその方針に従って取引を終了させるなどして自律的なリスク管理を行っていたことなど判示の事情の下においては,オプションの売り取引は損失が無限大又はそれに近いものとなる可能性がある極めてリスクの高い取引類型であることを考慮しても,甲の担当者による上記勧誘行為は,適合性の原則から著しく逸脱するものであったとはいえず,甲の不法行為責任を認めることはできない。

弁護士中山知行

2016-12-03 破産法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一法廷判決平成28年4月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/854/085854_hanrei.pdf

【判示事項】 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権破産財団への帰属

【判決要旨】 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして、上記死亡保険金受取人の破産財団に属する。

最高裁判所第三小法廷判決平成26年10月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/582/084582_hanrei.pdf

【判示事項】 公序良俗に反する無効出資配当に関する契約により給付を受けた金銭返還につき,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとされた事例

【判決要旨】 破産者甲との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,乙が当該契約により給付を受けた金銭の返還を求められた場合において,当該金銭は無限連鎖講に該当する事業によって給付された配当金であって他の会員が出えんした金銭を原資とするものであり,当該事業の会員の相当部分の者は甲の破綻により損失を受けて破産債権者の多数を占めるに至っており,甲の破産管財人が破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとするため乙に対して当該配当金の返還を求めているなど判示の事情の下においては,乙が当該配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されない。

最高裁判所第一小法廷判決平成26年4月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/146/084146_hanrei.pdf

【判示事項】 免責許可の決定の効力が及ばない破産債権であることを理由として当該破産債権が記載された破産債権者表につき執行付与の訴えを提起することの許否

【判決要旨】 免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されない。

最高裁判所第一小法廷判決平成25年7月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/407/083407_hanrei.pdf

【判示事項】 1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときにおける利息制限法(平成18年法律第115号による改正のもの)1条1項にいう「元本」の額

       2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権の破産債権該当性

       3 本案請求と民訴法260条2項の申立てに係る請求とが併合されている場合における本案請求に係る部分についてのみの受継又は続行命令の許否

       4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け,破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して違法にされた続行命令の瑕疵治癒されるとされた事例

【判決要旨】 1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され、同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において、過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときには、利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額は、新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいう。

       2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方が破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権は、破産債権である。

       3 本案請求と民訴法260条2項の裁判を求める申立てに係る請求とが併合されている訴訟手続の全部が中断した場合、同申立てについての適法な受継がされないまま、本案請求に係る部分についてのみ、当事者が受継の申立てをし、または受訴裁判所が続行命令をすることは許されない。

       4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け、破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して訴訟手続の続行命令が違法にされた瑕疵がある場合であっても、当該破産手続が既に終結し、かつ、破産管財人が当事者として関与した訴訟手続が全部勝訴判決の送達を受けたことなどにとどまるという事実関係のもとにおいては、当該瑕疵は治癒される。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年10月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/647/082647_hanrei.pdf

【判示事項】 債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為が破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たるとされた事例

【判決要旨】 債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為は,1.上記通知に,上記債務者が自らの債務整理を弁護士に委任した旨並びに当該弁護士が債権者一般に宛てて上記債務者,その家族及び保証人への連絡及び取立て行為の中止を求める旨の各記載がされていたこと,2.上記債務者が単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないことなど判示の事情の下においては,上記通知に上記債務者が自己破産を予定している旨が明示されていなくても,破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たる。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年5月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/285/082285_hanrei.pdf

【判示事項】 1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権の破産債権該当性

       2 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権を自働債権とする相殺の可否

【判決要旨】 1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が主たる債務者である破産者に対して取得する求償権は,破産債権である。

       2 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が取得する求償権を自働債権とし,主たる債務者である破産者が保証人に対して有する債権を受働債権とする相殺は,破産法72条1項1号の類推適用により許されない。

最高裁判所第三小法廷判決平成23年11月22日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/775/081775_hanrei.pdf

【判示事項】 求償権が破産債権である場合において財団債権である原債権を破産手続によらないで行使することの可否

【判決要旨】 弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる。

最高裁判所第二小法廷判決平成23年1月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/009/081009_hanrei.pdf

【判示事項】 1 弁護士である破産管財人は,自らの報酬の支払について,所得税法204条1項2号所定の源泉徴収義務を負うか

       2 弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条2号ただし書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権に当たるか

       3 破産管財人は,破産債権である所得税法199条所定の退職手当等の債権に対する配当について,同条所定の源泉徴収義務を負うか

【判決要旨】 1 弁護士である破産管財人は,所得税法204条1項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負う。

       2 弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条2号ただし書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権に当たる。

       3 破産管財人は,破産債権である所得税法199条所定の退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うものではない。

最高裁判所第三小法廷判決平成22年3月16日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/701/038701_hanrei.pdf

【判示事項】 債務者の破産手続開始の決定後に物上保証人が複数被担保債権のうちの一部の債権につきその全額を弁済した場合に,債権者が破産手続において上記弁済に係る債権を行使することの可否

【判決要旨】 債務者の破産手続開始の決定後に、物上保証人が複数の被担保債権のうちの一部の債権につきその全額を弁済した場合には、複数の被担保債権の全部が消滅していなくても、上記の弁済に係る当該債権については、破産法104条5項により準用される同条2項にいう「その債権の全額が消滅した場合」に該当し、債権者は、破産手続においてその権利を行使することができない。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年4月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/534/037534_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社取締役等の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合における訴えの利益消長

【判決要旨】 株式会社の取締役または監査役の解任または選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても、上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない。

最高裁判所第一小法廷判決平成18年12月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/930/033930_hanrei.pdf

【判示事項】 1 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことが質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反するとされた事例

       2 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害しても質権者に対して善管注意義務違反の責任を負うとはいえないとされた事例

       3 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れた場合において破産管財人は敷金返還請求権の質権者に対して不当利得返還義務を負うとされた事例

【判決要旨】  1 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことは,当時破産財団に上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反する。

        2 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことが,質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反する場合であっても,その義務違反の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う上記義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって,この点について論ずる学説判例も乏しかったことや,破産管財人が上記合意をするにつき破産裁判所の許可を得ているという事情の下では,破産管財人は,質権者に対し,善管注意義務違反の責任を負うということはできない。

        3 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れた場合において,当時破産財団には上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,破産管財人は,敷金返還請求権の質権者に対し,敷金返還請求権の発生が阻害されたことにより優先弁済を受けることができなくなった金額につき不当利得返還義務を負う。


弁護士中山知行

2016-12-02 民事訴訟法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一小法廷判決平成28年6月2日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/927/085927_hanrei.pdf

【判示事項】 外国国家が発行した円建て債券に係る償還等請求訴訟につき当該債券の管理会社が任意的訴訟担当の要件を満たすものとして原告適格を有するとされた事例

【判決要旨】 外国国家Yが発行したいわゆるソブリン債である円建て債券に係る償還等請求訴訟について,当該債券の管理会社であるXらは,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,当該債券の債権者Aらのための任意的訴訟担当の要件を満たし,原告適格を有する。

(1)XらとYとの間において,Xらが債券の管理会社として,Aらのために当該債券に基づく弁済を受け,又は債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する旨の条項を含む管理委託契約が締結された。

(2)上記(1)の授権に係る条項は,Xら,Y及びAらの間の契約関係を規律する「債券の要項」の内容を構成し,Aらに交付される目論見書等にも記載されていた。

(3)当該債券は多数の一般公衆に対して発行される点で社債に類似するところ,上記(1)の授権に係る条項を設けるなどしてXらに訴訟追行権を認める仕組みは,社債に関する商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)の規定に倣ったものである。

(4)Xらは,いずれも銀行であって銀行法に基づく規制監督に服するとともに,上記(1)の管理委託契約上,Aらに対して公平誠実義務や善管注意義務を負うものとされている。

最高裁判所第一小法廷判決平成28年3月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/737/085737_hanrei.pdf

【判示事項】 米国法人がウェブサイトに掲載した記事による名誉等の毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟について,民訴法3条の9にいう「特別の事情」があるとされた事例

【判決要旨】 日本法人とその取締役であるXらが米国法人Yに対してYがインターネット上のウェブサイトに掲載した記事による名誉等の毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償を請求する訴訟について,当該訴訟がその提起当時に既に米国の裁判所に訴訟が係属していたYの株式強制的な償還等に関するXらとYとの間の紛争から派生したものであり,本案の審理において想定される主な争点についての証拠方法が主に米国に所在するなど判示の事情の下においては,民訴法3条の9にいう「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情」があるというべきである。

最高裁判所第二小法廷決定平成28年2月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/705/085705_hanrei.pdf

【判示事項】 検察官被告とする人事訴訟に参加した第三者で訴訟の結果により相続権を害されるものによる上告兼上告受理の申立てが,検察官のための上訴期間経過後であっても適法とされた事例

最高裁判所第一小法廷決定平成27年12月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/663/085663_hanrei.pdf

【判示事項】 抗告提起の手数料の納付を命ずる裁判長補正命令を受けた者が,当該命令において定められた期間の経過後にこれを納付した場合の抗告状の効力

【判決要旨】 抗告提起の手数料の納付を命ずる裁判長の補正命令を受けた者が,当該命令において定められた期間内にこれを納付しなかった場合においても,その不納付を理由とする抗告状却下命令が確定する前にこれを納付すれば,その不納付の瑕疵は補正され,抗告状は当初に遡って有効となる。

最高裁判所第一小法廷判決平成27年12月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/543/085543_hanrei.pdf

【判示事項】 本訴請求債権が時効消滅したとされることを条件とする、反訴における当該債権を自働債権とする相殺の抗弁の許否

【判決要旨】 本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として,反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許される。

最高裁判所第一小法廷判決平成27年11月30日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/507/085507_hanrei.pdf

【判示事項】 1 訴訟上の和解が成立したことによって訴訟が終了したことを宣言する第1審判決に対し被告のみが控訴した場合と不利益変更禁止の原則

       2 訴訟上の和解が成立したことによって訴訟が終了したことを宣言する第1審判決に対し被告のみが控訴した場合において,控訴審が,当該和解が無効であり,かつ,請求の一部に理由があるが第1審に差し戻すことなく自判をしようとするときの判決主文

【判決要旨】 1 訴訟上の和解が成立したことによって訴訟が終了したことを宣言する終局判決である第1審判決に対し、被告のみが控訴し原告が控訴も附帯控訴もしなかった場合において、控訴審が第1審判決を取り消した上原告の請求の一部を認容する本案判決をすることは、不利益変更禁止の原則に違反して許されない。

       2 訴訟上の和解が成立したことによって訴訟が終了したことを宣言する終局判決である第1審判決に対し、被告のみが控訴し原告が控訴も附帯控訴もしなかった場合において、控訴審が、当該和解が無効であり、かつ、請求の一部に理由があるが第1審に差し戻すことなく自判をしようとするときには、控訴の全部を棄却するほかない。

最高裁判所第二小法廷判決平成27年9月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/326/085326_hanrei.pdf

【判示事項】 訴訟の目的である金銭債権の数量的な一部に対応する訴え提起の手数料につき訴訟上の救助を付与する決定が確定した場合において,請求が上記数量的な一部に減縮された後の訴えを却下することの許否

【判決要旨】 金銭債権の支払を請求する訴えの提起時にされた訴訟上の救助の申立てに対し、当該債権の数量的な一部について勝訴の見込みがないとはいえないことを理由として、その部分に対応する訴え提起の手数料につき訴訟上の救助を付与する決定が確定した場合において、請求が上記数量的な一部に減縮されたときは、訴え提起の手数料が納付されていないことを理由に減縮後の請求に係る訴えを却下することは許されない。

最高裁判所第三小法廷決定平成27年5月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/112/085112_hanrei.pdf

【判示事項】 労働基準法114条の付加金の請求の価額は,同条所定の未払金の請求に係る訴訟の目的の価額に算入されるか

【判決要旨】 労働基準法114条の付加金の請求については、同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは、民事訴訟法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償または違約金の請求に含まれるものとして、その価額は当該訴訟の目的の価額に算入されない。

最高裁判所第二小法廷決定平成27年3月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/992/084992_hanrei.pdf

【判示事項】 別件で刑事施設に収容されている再審請求人の届出住居に宛てて行った同人に対する再審請求棄却決定謄本の付郵便送達が有効とされた事例

【判決要旨】 再審請求人が,住居の届出をした後,裁判所に対してその変更届出等をしてこなかった一方で,裁判所も,同人の所在を把握できず,その端緒もなかったなどの判示の事実関係の下では,同人が別件で刑事施設に収容されていたとしても,上記届出住居に宛てて行った同人に対する再審請求棄却決定謄本の書留郵便に付する送達は,刑訴規則63条1項によるものとして有効である。

最高裁判所第一小法廷決定平成26年11月27日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/661/084661_hanrei.pdf

【判示事項】 当事者が準備書面の直送をするためにした支出民事訴訟費用等に関する法律2条2号の類推適用

【判決要旨】 当事者が準備書面の直送をするためにした支出については,民事訴訟費用等に関する法律2条2号の規定は類推適用されない。

最高裁判所第二小法廷決定平成26年10月29日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/588/084588_hanrei.pdf

【判示事項】 岡山県議会議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例

【判決要旨】 岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。

(1) 岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)においては,平成21年岡山県条例第34号による改正により,政務調査費の交付を受けた議員は収支報告書に1万円を超える支出に係る領収書の写しその他の議長が定める書類を添付して議長に提出しなければならず,何人も議長に対してこれらの書類の閲覧を請求することができることとされた。

(2) 上記条例の委任を受けた岡山県議会の政務調査費の交付に関する規程(平成13年岡山県議会告示第1号。平成24年岡山県議会告示第2号による改正前のもの)においては,政務調査費の支出につき,その金額の多寡にかかわらず,議員に対して領収書その他の証拠書類等の整理保管及び保存が義務付けられており,上記改正後の上記条例の下では,上記領収書その他の証拠書類等は,議長において上記条例に基づく調査を行う際に必要に応じて支出の金額の多寡にかかわらず直接確認することが予定されているものである。

(3) 会計帳簿は,領収書その他の証拠書類等を原始的な資料とし,これらの資料から明らかとなる情報が一覧し得る状態で整理されたものであるところ,上記条例の委任を受けた上記規程においては,政務調査費の支出につき,議員に対して会計帳簿の調製及び保存が義務付けられており,上記改正後の上記条例の下では,上記会計帳簿は,議長において上記条例に基づく調査を行う際に必要に応じて直接確認することが予定されているものである。

最高裁判所第一小法廷判決平成26年9月25日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/488/084488_hanrei.pdf

【判示事項】 借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力

【判決要旨】 借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力は、原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り、前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずる。

最高裁判所第二小法廷判決平成26年7月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/334/084334_hanrei.pdf

【判示事項】 開示請求の対象とされた行政文書行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟における当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことの主張立証責任

【判決要旨】 開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負う。

最高裁判所第一小法廷決定平成26年7月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/333/084333_hanrei.pdf

【判示事項】 1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格

       2 当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの独立当事者参加の申出の適否

【判決要旨】 1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。

       2 独立当事者参加の申出は,参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されない。

最高裁判所第一小法廷判決平成26年4月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/147/084147_hanrei.pdf

【判示事項】 1 人事に関する訴え以外の訴えにおける民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無の判断基準

       2 違法行為により権利利益侵害され又は侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えと民訴法3条の3第8号の「不法行為に関する訴え」

       3 違法行為により権利利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えにおける民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」の意義

       4 違法行為により権利利益を侵害され又は侵害されるおそれがあるとして差止請求を認めた外国裁判所の判決について民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無を判断する場合において,民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」が当該外国裁判所の属する国にあるというために証明すべき事項

【判決要旨】 1 人事に関する訴え以外の訴えにおける民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無については、基本的我が国の民訴法の定める国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、外国裁判所の判決を我が国が承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判断すべきである。

       2 民訴法3条の3第8号の「不法行為に関する訴え」は、違法行為により権利利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えをも含む。

       3 違法行為により権利利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えについては、民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」は、違法行為が行われるおそれのある地や、権利利益を侵害されるおそれのある地をも含む。

       4 違法行為により権利利益を侵害され、または侵害されるおそれがあるとして差止請求を認めた外国裁判所の判決について民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無を判断する場合において、民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」が当該外国裁判所の属する国にあるというためには、被告が原告の権利利益を侵害する行為を同国内で行うおそれがあるか、原告の権利利益が同国内で侵害されるおそれがあるとの客観的事実関係が証明されれば足りる。

最高裁判所第一小法廷判決平成26年2月27日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/983/083983_hanrei.pdf

【判示事項】 権利能力のない社団構成員全員に総有的に帰属する不動産につき所有権登記名義人に対し当該社団の代表者個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟と当該社団の原告適格

【判決要旨】 権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。

最高裁判所第二小法廷判決平成26年2月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/947/083947_hanrei.pdf

【判示事項】 共同相続人のうち自己相続分の全部を譲渡した者と遺産確認の訴えの当事者適格

【判決要旨】 共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。

最高裁判所第一小法廷決定平成25年12月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/835/083835_hanrei.pdf

【判示事項】 1 国立大学法人が所持しその役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てと民訴法220条4号ニ括弧書部分の類推適用

       2 民訴法220条4号ロにいう「公務員」には国立大学法人の役員及び職員も含まれるか

【判決要旨】 1 国立大学法人が所持し,その役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てには,民訴法220条4号ニ括弧書部分が類推適用される。

       2 民訴法220条4号ロにいう「公務員」には,国立大学法人の役員及び職員も含まれる。


最高裁判所第一小法廷決定平成25年11月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/758/083758_hanrei.pdf

【判示事項】 1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格

       2 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決と民訴法338条1項3号の再審事由

       3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるとされた事例

【判決要旨】 1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。

       2 新株発行の無効の訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民事訴訟法338条1項3号の再審事由がある。

       3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において、次の(1)〜(4)など判示の事情のもとにおいては、上記訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができないものとして、上記確定判決には民事訴訟法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地がある。

(1) 当該第三者は、上記訴えに係る訴訟の係属を知らず、上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかった。

(2) 当該第三者は、上記訴訟の係属前から、上記株式会社に対して自らが発行を受けた株式につきその発行の有効性を主張するなどしており、仮に上記訴訟の係属を知れば、上記訴訟に参加するなどして株式の発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり、かつ、上記株式会社はそのような状況にあることを十分に認識していた。

(3) 上記株式会社は、上記訴訟において請求を全く争わず、かえって、請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し、自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出した。

(4) 上記株式会社は、当該第三者に対して上記訴訟の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず、これを知らせなかった。

最高裁判所第二小法廷決定平成25年11月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/735/083735_hanrei.pdf

【判示事項】 更生債権に関する訴訟が更生手続開始前に係属し受継されることなく終了した場合における当該訴訟に係る訴訟費用請求権の更生債権該当性

【判決要旨】 更生債権に関する訴訟が更生手続開始前に係属した場合において,当該訴訟が会社更生法156条又は158条の規定により受継されることなく終了したときは,当該訴訟に係る訴訟費用請求権は,更生債権に当たる。

最高裁判所第一小法廷判決平成25年7月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/407/083407_hanrei.pdf

【判示事項】 1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときにおける利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額

       2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権の破産債権該当性

       3 本案請求と民訴法260条2項の申立てに係る請求とが併合されている場合における本案請求に係る部分についてのみの受継又は続行命令の許否

       4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け,破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して違法にされた続行命令の瑕疵が治癒されるとされた事例

【判決要旨】 1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され、同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において、過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときには、利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額は、新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいう。

       2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方が破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権は、破産債権である。

       3 本案請求と民訴法260条2項の裁判を求める申立てに係る請求とが併合されている訴訟手続の全部が中断した場合、同申立てについての適法な受継がされないまま、本案請求に係る部分についてのみ、当事者が受継の申立てをし、または受訴裁判所が続行命令をすることは許されない。

       4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け、破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して訴訟手続の続行命令が違法にされた瑕疵がある場合であっても、当該破産手続が既に終結し、かつ、破産管財人が当事者として関与した訴訟手続が全部勝訴判決の送達を受けたことなどにとどまるという事実関係のもとにおいては、当該瑕疵は治癒される。

最高裁判所第一小法廷判決平成25年6月6日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/305/083305_hanrei.pdf

【判示事項】 1 いわゆる明示的一部請求の訴えに係る訴訟において,債権の一部消滅の抗弁に理由があると判断されたため判決において上記債権の総額の認定がされた場合における,残部についての消滅時効の中断

       2 いわゆる明示的一部請求の訴えの提起と残部についての裁判上の催告としての消滅時効の中断

       3 消滅時効期間の経過後,その経過前にした催告から6箇月以内にした催告と消滅時効の中断

【判決要旨】 1 数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示した訴えに係る訴訟において、債権の一部が消滅している旨の抗弁に理由があると判断されたため、判決において上記債権の総額の認定がされたとしても、当該訴えの提起は、残部について、裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。

       2 数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合、債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど、残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り、当該訴えの提起は、残部について、裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生じ、債権者は、当該訴えに係る訴訟の終了後6カ月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより、残部について消滅時効を確定的に中断することができる。

       3 消滅時効期間が経過した後、その経過前にした催告から6カ月以内に再び催告をしても、第1の催告から6カ月以内に民法153条所定の措置を講じなかった以上は、第1の催告から6カ月を経過することにより、消滅時効が完成し、この理は、第2の催告が数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起されたことによる裁判上の催告であっても異ならない。

最高裁判所第二小法廷決定平成25年4月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/225/083225_hanrei.pdf

【判示事項】 1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に債務者につき更生手続開始の決定がされた場合における上記担保の被担保債権の性質

       2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合において債務者につき更生計画認可の決定がされた後であっても供託金の還付請求権を行使することの可否

【判決要旨】 1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に,債務者につき更生手続開始の決定がされた場合,その被担保債権である損害賠償請求権は,更生担保権ではなく,更生債権に当たる。

       2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合,被供託者は,債務者につき更生計画認可の決定がされても,会社更生法203条2項にいう「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」として,供託金の還付請求権を行使することができる。

最高裁判所第三小法廷決定平成25年4月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/206/083206_hanrei.pdf

【判示事項】 全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書が民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により……公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たるとされた事例

【判決要旨】 全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書は,個人の特定に係る事項が一定の範囲で除外されていても,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により……公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たる。

(1) 基幹統計調査である全国消費実態調査においては,被調査者の任意の協力による真実に合致した正確な報告が行われることが極めて重要であり,調査票情報の十全な保護を図ることによって被調査者の当該統計制度に係る情報保護に対する信頼を確保することが強く要請される。

(2) 上記準文書に記録された情報は,被調査者の家族構成や居住状況等に加え,月ごとの収入や日々の支出等の家計の状況,年間収入,貯蓄現在高や借入金残高等の資産の状況など,個人及びその家族の消費生活経済状態等の委細にわたる極めて詳細かつ具体的な情報であって,金額等の数値もその大半が細目にわたり報告の内容のまま記録されている。

(3) 上記準文書が訴訟において提出されると,被調査者との関係等を通じて被調査者に係る上記(2)の情報の一部を知る者などの第三者において,被調査者を特定してこれらの情報全体の委細を知るに至る可能性がある。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年12月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/846/082846_hanrei.pdf

【判示事項】 将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものとされた事例

【判決要旨】 共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しない。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年4月6日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/179/082179_hanrei.pdf

【判示事項】 第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合における当該建物の明渡請求と併合されている他の請求の当否等についての控訴審の判断

【判決要旨】 第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合には、控訴審は、当該建物の明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や同請求に対する抗弁において主張されている敷金返還請求権の存否についても、当該明渡しの事実を考慮することなく、判断すべきである。

最高裁判所第一小法廷判決平成24年2月23日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/018/082018_hanrei.pdf

【判示事項】 仮差押命令により保全される債権の範囲

【判決要旨】 仮差押命令は、当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても、これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば、その実現を保全する効力を有する。

最高裁判所第三小法廷判決平成24年1月31日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/948/081948_hanrei.pdf

【判示事項】 当事者が土地賃借権そのものを有することの確認を求め,地代額の確認まで求めたとはいえないにもかかわらず,判決の主文で地代額を確認することの適否

【判決要旨】 当事者が土地賃借権そのものを有することの確認を求め,地代額の確認まで求めたとはいえないにもかかわらず,地代額の確認をも求めているものとして主文で地代額を確認した判決には,当事者が申し立てていない事項について判決をした違法がある。

最高裁判所第三小法廷決定平成23年10月11日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/690/081690_hanrei.pdf

【判示事項】 弁護士会の綱紀委員会議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するとされた事例

【判決要旨】 弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。

(1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会に対し事案の審査を求めるに当たって提出すべき綱紀委員会の調査記録等にも,その議事録は含まれていない。

(2) 上記部分は,当該弁護士会の綱紀委員会内部における意思形成過程に関する情報が記載されているものである。

最高裁判所第三小法廷決定平成23年9月30日

【判示事項】 補助参加を許可する旨の原々決定を即時抗告の相手方に不利益なものに変更するに当たり,即時抗告申立書の副本の送達又はその写しの送付をしなかった原審の措置には,抗告審における手続保障の観点から見て配慮に欠けるところがあったものの,その審理手続に裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとはいえないとされた事例

憲法32条所定の裁判を受ける権利が性質上固有の司法作用の対象となるベき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは,当裁判所の判例最高裁昭和26年(ク)第109号同35年7月6日大法廷決定・民集14巻9号1657頁,最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁)の趣旨とするところである。補助参加の許否の裁判は,民事訴訟における付随手続についての裁判であり,純然たる訴訟事件についての裁判に当たるものではないから,原審が,抗告人(原審における相手方)に対し,即時抗告申立書の副本の送達をせず,反論の機会を与えることなく不利益な判断をしたことが憲法32条に違反するものではないことは,上記判例の趣旨に照らして明らかである。本件抗告理由のうち憲法32条違反の主張には理由がない。

 また,本件抗告理由のその余の部分については,原審の手続が憲法31条に違反する旨をいう点を含めて,その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって,民訴法336条1項に規定する事由に該当しない。

 なお,原々決定を即時抗告の相手方である抗告人に不利益なものに変更するに当たり,即時抗告申立書の副本の送達又はその写しの送付をしなかった原審の措置には,抗告審における手続保障の観点から見て配慮に欠けるところがあったことは否定することができないが,本件記録によれば,原審においては,抗告人に補助参加の利益が認められるか否か等の補助参加の許否をめぐる純粋の法的問題のみが争点となっていて,その前提となる事実関係が争点となっていたわけではなく,上記の法的問題については,原々審において攻撃防御が尽くされ,原審において新たな法的主張が提出されたわけでもないから,その審理手続に裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとはいえない。

最高裁判所第二小法廷判決平成23年6月3日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/374/081374_hanrei.pdf

【判示事項】 土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき,確認の利益を欠くとされた事例

【判決要旨】 表題部所有者の登記も所有権の登記もない土地を時効取得したと主張する者が、当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして、国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えは、次の(1)〜(3)の事情のもとでは、確認の利益を欠く。

(1) 国は、当該土地が国の所有に属していないことを自認している。

(2) 国は、上記の者が主張する取得時効の起算点よりも前に当該土地の所有権を失った。

(3) 上記の者において、当該土地につき自己を表題部所有者とする登記の申請をした上で保存登記の申請をする手続を尽くしたにもかかわらず所有名義を取得することができなかったなどの事情もうかがわれない。

最高裁判所第二小法廷決定平成23年5月30日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/369/081369_hanrei.pdf

【判示事項】 民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟につき同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されるか

【判決要旨】 民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって、いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて、同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。

最高裁判所第二小法廷決定平成23年5月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/339/081339_hanrei.pdf

【判示事項】 民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟につき同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されるか

【判決要旨】 民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって、いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて、同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。

最高裁判所第二小法廷決定平成23年4月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/253/081253_hanrei.pdf

【判示事項】 即時抗告申立書の写しを即時抗告の相手方に送付するなどして相手方に攻撃防御の機会を与えることなく,相手方の申立てに係る文書提出命令を取り消し,同申立てを却下した抗告裁判所の審理手続に違法があるとして職権により破棄された事例

【判決要旨】 時間外勤務手当の支払を求める訴訟を提起したXの申立てにより、受訴裁判所が、使用者であるYに対し、Xのタイムカードの提出を命ずる決定をしたため、Yが上記タイムカードを所持している事実を争って即時抗告をした場合において、次の(1)〜(4)など判示の事情のもとでは、抗告裁判所が、即時抗告申立書の写しをXに送付するなどしてXに攻撃防御の機会を与えることのないまま、上記タイムカードが存在していると認めるに足りないとして、上記決定を取り消し、上記申立てを却下するというXに不利益な判断をしたことは、明らかに民事訴訟における手続的正義の要求に反するというべきであり、その審理手続には、裁量の範囲を逸脱した違法がある。

(1) 上記訴訟において、上記タイムカードは、Xが労働に従事した事実および労働時間を証明する上できわめて重要な書証である。

(2) Yが上記タイムカードを所持しているとの事実の存否の判断は、当事者の主張やその提出する証拠に依存するところが大きい。

(3) 上記即時抗告申立書には、Yが上記タイムカードを所持していると認めた上記決定に対する反論が具体的な理由を示して記載され、かつ、上記理由を裏付ける証拠として、上記決定後にその写しが提出された書証が引用されていた。

(4) Xにおいて、Yが即時抗告をしたことを知っていた事実や、そのことを知らなかったことにつきXの責めに帰すべき事由があることはうかがわれない。

最高裁判所第三小法廷決定平成23年3月9日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/152/081152_hanrei.pdf

【判示事項】 抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解と抗告の利益

【判決要旨】 抗告人と相手方との間において、抗告後に、抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解が成立した場合には、当該抗告は、抗告の利益を欠く。

最高裁判所第二小法廷判決平成23年2月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/081/081081_hanrei.pdf

【判示事項】 簡易生命保険契約の保険金受取人が無断で保険金等の支払を受けた者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において上記の者が損害の発生を否認して請求を争うことが信義誠実の原則に反し許されないとされた事例

【判決要旨】 簡易生命保険契約の保険金受取人であるXが、無断で保険金等の支払を受けたY1およびY2に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において、次の(1),(2)など判示の事情のもとでは、上記支払が有効な弁済とはならず、Xが依然として上記保険金等の支払請求権を有しているとしても、Y1およびY2がXに損害が発生したことを否認してXの損害賠償請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されない。

(1) Y1およびY2は、郵便局員から上記保険金等の支払請求権がXに帰属する旨の説明を受けていながら、Xに無断で、X名義の支払請求書兼受領証を作成するなどして、支払請求手続を執った。

(2) Y1およびY2が上記保険金等の支払を受けた後、Xは、日本郵政公社に上記保険金等の支払を請求したが拒絶された。

最高裁判所第一小法廷決定平成23年2月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/087/081087_hanrei.pdf

【判示事項】 1 数人の提起する養子縁組無効の訴えにおいて共同訴訟人の一人が上告を提起した後にされた他の共同訴訟人による上告の適否

       2 数人の提起する養子縁組無効の訴えにおいて共同訴訟人の一人が上告受理の申立てをした後にされた他の共同訴訟人による上告受理の申立ての適否

【判決要旨】 1 数人の提起する養子縁組無効の訴えにおいて,共同訴訟人の一人が上告を提起した後に他の共同訴訟人が提起した上告は,二重上告として不適法である。

       2 数人の提起する養子縁組無効の訴えにおいて,共同訴訟人の一人が上告受理の申立てをした後に他の共同訴訟人がした上告受理の申立ては,二重上告受理の申立てとして不適法である。





弁護士中山知行

2016-12-01 会社法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第一小法廷判決平成28年6月2日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/927/085927_hanrei.pdf

【判示事項】 外国国家が発行した円建て債券に係る償還等請求訴訟につき当該債券の管理会社任意的訴訟担当の要件を満たすものとして原告適格を有するとされた事例

【判決要旨】 外国国家Yが発行したいわゆるソブリン債である円建て債券に係る償還等請求訴訟について,当該債券の管理会社であるXらは,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,当該債券の債権者Aらのための任意的訴訟担当の要件を満たし,原告適格を有する。

(1)XらとYとの間において,Xらが債券の管理会社として,Aらのために当該債券に基づく弁済を受け,又は債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する旨の条項を含む管理委託契約が締結された。

(2)上記(1)の授権に係る条項は,Xら,Y及びAらの間の契約関係を規律する「債券の要項」の内容を構成し,Aらに交付される目論見書等にも記載されていた。

(3)当該債券は多数の一般公衆に対して発行される点で社債に類似するところ,上記(1)の授権に係る条項を設けるなどしてXらに訴訟追行権を認める仕組みは,社債に関する商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)の規定に倣ったものである。

(4)Xらは,いずれも銀行であって銀行法に基づく規制監督に服するとともに,上記(1)の管理委託契約上,Aらに対して公平誠実義務や善管注意義務を負うものとされている。

最高裁判所第二小法廷判決平成28年3月4日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/725/085725_hanrei.pdf

【判示事項】 ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えの適否

【判決要旨】 ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。


最高裁判所第一小法廷決定平成27年3月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/016/085016_hanrei.pdf

【判示事項】 非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことの可否

【判決要旨】 非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ、裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に、非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできない。


最高裁判所第一小法廷判決平成27年2月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/873/084873_hanrei.pdf

【判示事項】 非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない場合

【判決要旨】 非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない。

最高裁判所第一小法廷判決平成27年2月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/875/084875_hanrei.pdf

【判示事項】 1 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま権利が行使された場合における同条ただし書の株式会社同意効果

       2 共有に属する株式についての議決権の行使の決定方法

【判決要旨】 1 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではない。

       2 共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられる。

最高裁判所第一小法廷決定平成26年7月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/333/084333_hanrei.pdf

【判示事項】 1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格

       2 当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの独立当事者参加の申出の適否

【判決要旨】 1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。

       2 独立当事者参加の申出は,参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されない。

最高裁判所第一小法廷判決平成26年1月30日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/896/083896_hanrei.pdf

【判示事項】 1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率

       2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務履行遅滞となる時期

【判決要旨】 1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は、民法所定の年5分である。

       2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。

最高裁判所第一小法廷決定平成25年11月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/758/083758_hanrei.pdf

【判示事項】 1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格

       2 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決と民訴法338条1項3号の再審事由

       3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるとされた事例

【判決要旨】 1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。

       2 新株発行の無効の訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民事訴訟法338条1項3号の再審事由がある。

       3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において、次の(1)〜(4)など判示の事情のもとにおいては、上記訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができないものとして、上記確定判決には民事訴訟法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地がある。

(1) 当該第三者は、上記訴えに係る訴訟の係属を知らず、上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかった。

(2) 当該第三者は、上記訴訟の係属前から、上記株式会社に対して自らが発行を受けた株式につきその発行の有効性を主張するなどしており、仮に上記訴訟の係属を知れば、上記訴訟に参加するなどして株式の発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり、かつ、上記株式会社はそのような状況にあることを十分に認識していた。

(3) 上記株式会社は、上記訴訟において請求を全く争わず、かえって、請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し、自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出した。

(4) 上記株式会社は、当該第三者に対して上記訴訟の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず、これを知らせなかった。

最高裁判所第二小法廷判決平成24年10月12日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/628/082628_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社を設立する新設分割と詐害行為取消権

【判決要旨】 株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新たに設立する株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割をする株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。

最高裁判所第三小法廷判決平成24年4月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/215/082215_hanrei.pdf

【判示事項】 1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けた取締役会が定めた新株予約権の行使条件をその発行後に変更する取締役会決議の効力

       2 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法によってされた募集株式発行の効力

       3 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権の行使条件に反した当該新株予約権の行使による株式発行に無効原因がある場合

【判決要旨】 1 取締役会が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は,上記行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効である。

       2 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合,当該特別決議を欠く瑕疵は上記株式発行の無効原因になる。

       3 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは,上記行使条件に反した新株予約権の行使による株式の発行には,無効原因がある。

最高裁判所第二小法廷決定平成24年3月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/174/082174_hanrei.pdf

【判示事項】 1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合における,社債等振替法154条3項所定の通知の要否

       2 会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が当該株式を失った場合における,当該株主による同法117条2項に基づく価格の決定の申立ての適否

【判決要旨】 1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が、同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において、同請求をした者が株主であることを争った場合には、その時点で既に当該株式について振替期間の取扱いが廃止されていたときであっても、その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。

       2 会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が同請求に係る株式を失った場合は、当該株主は同法117条2項に基づく価格の決定の申立ての適格を欠くに至り、同申立ては不適法になる。

最高裁判所第二小法廷決定平成24年2月29日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/063/082063_hanrei.pdf

【判示事項】 1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」の意義

       2 株式移転における株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率が公正なものとされる場合

       3 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」を算定するに当たって参照すべき市場株価として,株式買取請求がされた日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることが,裁判所の裁量の範囲内にあるとされる場合

【判決要旨】 1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は、原則として、株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には、当該株式買取請求がされた日における、株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが、それ以外の場合には、株式移転計画において定められていた株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率が公正なものであったならば当該株式買取請求がされた日においてその株式が有していると認められる価格をいう。

       2 相互に特別の資本関係がない会社間において、株主の判断の基礎となる情報が適切に開示された上で適法に株主総会で承認されるなど一般に公正と認められる手続により株式移転の効力が発生した場合には、当該株主総会における株主の合理的な判断が妨げられたと認めるに足りる特段の事情がない限り、当該株式移転における株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率は公正なものである。

       3 株式移転計画に定められた株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率が公正なものと認められる場合には、株式移転により企業価値の増加が生じないときを除き、株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」を算定するにあたって参照すべき市場株価として、株式買取請求がされた日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることは、裁判所の合理的な裁量の範囲内にある。

最高裁判所第三小法廷決定平成23年4月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/307/081307_hanrei.pdf

【判示事項】 吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合に消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」の意義

【判決要旨】 会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に、同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は、原則として、当該株式買取請求がされた日における、吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいう。

最高裁判所第三小法廷決定平成23年4月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/262/081262_hanrei.pdf

【判示事項】 1 吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合に消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」の意義

       2 株式買取請求がされた日における吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格を算定するに当たって参照すべき市場株価として,同日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることが,裁判所の裁量の範囲内にあるとされる場合

【判決要旨】 1 会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に、同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は、原則として、当該株式買取請求がされた日における、吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいう。

       2 会社法782条1項所定の吸収合併等により企業価値が増加も毀損もしないため、当該吸収合併等が同項所定の消滅株式会社等の株式の価値に変動をもたらすものではなかった場合には、株式買取請求がされた日における吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格を算定するにあたって参照すべき市場株価として、同日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることは、当該事案の事情を踏まえた裁判所の合理的な裁量の範囲内にある。

最高裁判所第三小法廷決定平成22年12月7日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/915/080915_hanrei.pdf

【判示事項】 社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合における,社債等振替法154条3項所定の通知の要否

【判決要旨】 社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が、裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において、申立人が株主であることを争った場合には、その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。

最高裁判所第一小法廷判決平成22年7月15日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/447/080447_hanrei.pdf

【判示事項】 A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例

【判決要旨】 不動産賃貸あっせんのフランチャイズ事業等を展開するA社が、事業再編計画の一環としてB社を完全子会社とする目的で同社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において、次の(1)〜(3)など判示の事情のもとでは、株式交換に備えて算定された上記株式の評価額が1株当り6561円ないし1万9090円であったとしても、上記株式の買取価格をB社の設立時の株式の払込金額を基準として1株当り5万円とする決定をしたことについて、A社の取締役が取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。

(1) B社の株主には、A社が事業の遂行上重要であると考えていた上記フランチャイズ事業の加盟店等が含まれる。

(2) 非上場株式である上記株式の評価額には相当の幅があり、事業再編の効果によるB社の企業価値の増加も期待できた。

(3) 上記の決定に至る過程で、A社の役付取締役全員により構成される経営会議において検討がされ、弁護士意見も聴取されるなどの手続が履践された。

最高裁判所第三小法廷判決平成22年3月16日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/700/038700_hanrei.pdf

【判示事項】 株主総会の決議を経て内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金につき,集団的画一的な処理が制度要請されているという理由のみから,内規の廃止により未支給の退職慰労年金債権を失わせることの可否

【判決要旨】 株主総会の決議を経て、役員に対する退職慰労金の算定基準等を定める会社の内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金について、退任取締役相互間の公平を図るため集団的、画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから、上記内規の廃止の効力をすでに退任した取締役に及ぼし、その同意なく未支給の退職慰労年金債権を失わせることはできない。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年12月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/280/038280_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 株式会社が退任取締役に対し株主総会の決議等を経ることなく支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をする場合において、?当該会社では発行済株式総数の99%以上を保有する代表者が内規に基づく退職慰労金の支給を決裁することにより株主総会の決議に代えてきた、?退任取締役が上記内規に基づく退職慰労金の支給を催告したところその約10日後に上記金員の送金がされ、これにつき代表者の決裁はなかったものの、当該会社が退任取締役に対しその返還を明確に求めたのは送金後1年近く経過してからであったなど判示の事実関係のもとにおいては、代表者が上記送金をその直後に認識していた事実や退任取締役が従前退職慰労金を支給された退任取締役と同等以上の業績を上げてきた事実の有無等につき審理判断することなく、当該会社による上記請求は信義則に反せず、権利の濫用に当たらないとした原審の判断には、違法がある。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年11月27日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/194/038194_hanrei.pdf

【判示事項】 農業協同組合代表理事が,補助金の交付を受けることにより同組合資金的負担のない形で堆肥センター建設事業を進めることにつき理事会の承認を得たにもかかわらず,その交付申請につき理事会に虚偽の報告をするなどして同組合の費用負担の下で同事業を進めた場合において,資金の調達方法を調査,確認することなく,同事業が進められるのを放置した同組合の監事に,任務のけ怠があるとされた事例

【判決要旨】 農業協同組合の代表理事が、補助金の交付を受けることにより同組合の資金的負担のない形で堆肥センター建設事業を進めることにつき理事会の承認を得たにもかかわらず、補助金の交付申請につき理事会に虚偽の報告をするなどして同組合の費用負担のもとで同事業を進めた場合において、代表理事が、1.理事会において、それまでの説明に出ていなかった補助金の交付申請先に言及しながら、その申請先や申請内容について具体的な説明をすることなく、補助金の受領見込みについてあいまいな説明に終始した上、2.その後の理事会においても、補助金が入らない限り同事業に着手しない旨を繰り返し述べていながら、補助金の受領見込みを明らかにしないまま、同組合の資金の立替えによる建設用地の取得を提案したなど判示の事実関係のもとにおいては、代表理事に対し、補助金の受領見込みに関する資料の提出を求めるなどして、建設資金の調達方法を調査、確認することなく、同事業が進められるのを放置した同組合の監事は、その任務を怠ったものというべきである。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年11月27日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/196/038196_hanrei.pdf

【判示事項】 A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例

【判決要旨】 A銀行が、県から要請を受け、県において再建資金の融資を計画していたB社に対し、上記融資が実行されるまでのつなぎ融資として9億5000万円を融資した後に、B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で、これをしなければB社が破綻、倒産する可能性が高く、県のB社に対する融資により回収することを予定していた上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で、B社に対し、約3年の間に数十回にわたり合計8億5000万円余りの追加融資をした場合において、1.上記追加融資を続ける過程で、A銀行は、県の担当者から、知事がB社の創業者であるCおよびその親族をB社の経営から排除することを県のB社に対する融資の条件とする意向を示している旨の連絡を受けたこと、2.その当時、法的手続を通じてCおよびその親族をB社の経営から排除することは困難な状況にあり、その後も、同人らを排除することができない状況が続いたこと、3.その間、A銀行は、県に対し、2度にわたり期限を定めて県のB社に対する融資の実行を求めたにもかかわらず、県は2度目の期限も徒過し、その時点で、上記1.の連絡を受けてから10か月以上が経過していたこと、4.上記時点までには、A銀行自身も、資産査定において、B社の債務者区分を要注意先から破綻懸念先に変更するに至っていたことなど判示の事情の下では、上記時点以後は、A銀行の取締役らにおいて、上記つなぎ融資の回収原資をもたらす県のB社に対する融資が実行される相当程度の確実性があり、その実行までB社を存続させるために追加融資をした方が、追加融資分が回収不能になる危険性を考慮しても全体の回収不能額を小さくすることができると判断することは、著しく不合理であり、上記時点以後の3億0500万円の追加融資については、これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反がある。

最高裁判所第一小法廷判決平成21年7月9日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/819/037819_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例

【判決要旨】 株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ、その後同事実が公表されて当該会社の株価が下落し、公表前に株式を取得した株主が損害を被ったことにつき、次の(1)〜(3)などの判示の事情のもとでは、当該会社の代表者に、従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるとはいえない。

(1) 当該会社は、営業部所属する事業部門財務部門を分離し、売上げについては、事業部内の営業部とは別の部署における注文書、検収書の確認等を経て財務部に報告される体制を整えるとともに、監査法人および当該会社の財務部がそれぞれ定期的に取引先から売掛金残高確認書の返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとするなど、通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていた。

(2) 上記架空売上げの計上に係る不正行為は、事業部の部長が部下である営業担当者数名と共謀して、取引先の偽造印を用いて注文書等を偽造し、これらを確認する担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせた上、上記営業担当者らが言葉巧みに取引先の担当者を欺いて、監査法人等が取引先あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し、これを偽造して監査法人等に送付するという、通常容易に想定し難い方法によるものであった。

(3) 財務部が売掛金債権の回収遅延につき上記事業部の部長らから受けていた説明は合理的なもので、監査法人も当該会社の財務諸表につき適正意見を表明していた。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年4月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/534/037534_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社の取締役等の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合における訴えの利益の消長

【判決要旨】 株式会社の取締役または監査役の解任または選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても、上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年4月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/535/037535_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をしたことを理由に同取引の無効を会社以外の者が主張することの可否

【判決要旨】 株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、当該会社以外の者が取締役会の決議を経ていないことを理由にその無効を主張することは、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、許されない。

最高裁判所第三小法廷判決平成21年3月31日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/502/037502_hanrei.pdf

【判示事項】 1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付したが,監事において,当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があった場合における,上記組合員の提起した代表訴訟の適法性

       2 農業協同組合の合併契約に,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項がある場合,被合併組合の理事会で上記契約の締結に賛成した理事等は上記条項に基づく責任を負うか

       3 農業協同組合の合併契約中の,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項が,被合併組合に貸倒引当金過少計上があったときには,故意又は重過失のある被合併組合の役員に引当不足額相当額をてん補する義務を負わせる趣旨を含むとされた事例

【判決要旨】 1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が、同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付した場合であっても、監事において、上記請求書の記載内容を正確に認識した上で当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったときは、上記組合員が提起した代表訴訟を不適法として却下することはできない。

       2 農業協同組合の合併契約に、被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために新設組合が損害を受けたときは、そのことに故意または重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項が含まれている場合、被合併組合の理事会に出席して上記契約の締結に賛成した理事またはこれに異議を述べなかった監事は、個人として上記条項に基づく責任を負う旨の意思表示をしたものとして、新設組合との関係で、上記責任を免れない。

       3 農業協同組合の合併契約中の、被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために新設組合が損害を受けたときは、そのことに故意または重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項は、次の(1)、(2)などの判示の事実関係の下では、被合併組合において、不良債権が適正に評価されておらず、貸倒引当金が過少に計上されていることが判明したときには、過少に計上したことに故意または重過失のある被合併組合の理事および監事に対して、引当不足額相当額を新設組合にてん補する義務を負わせる趣旨を含むものと解される。

(1) 上記契約は、新設組合に引き継がれる被合併組合の財産が貸借対照表等どおりのものであることを前提とするものであり、被合併組合の総会では、不良債権であるのに、そうでないように見せ掛けるなどした場合に、被合併組合の役員が上記条項に基づく責任を負うことになるなどの説明がされている。

(2) 被合併組合および新設組合では、不良債権を適正に評価し、必要な貸倒引当金を計上し、自己資本比率の維持、向上を図っていくことが重要な課題となっていた。

最高裁判所第三小法廷判決平成21年3月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/404/037404_hanrei.pdf

【判示事項】 株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれるか

【判決要旨】 株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には、同法266条1項各号所定の責任など同法が取締役の地位に基づいて取締役に負わせている責任のほか、取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれる。

最高裁判所第三小法廷判決平成21年2月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/305/037305_hanrei.pdf

【判示事項】 株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例

【判決要旨】  いわゆる持株会が採用した株式譲渡ルールに従い,株式会社の従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意は,次の(1)〜(4)などの判示の事情の下では,会社法107条及び127条の規定に反するものではなく,公序良俗にも反せず,有効である。

(1) 上記株式譲渡ルールは,日刊新聞の発行を目的とし,日刊新聞法1条に基づき定款で株式の譲受人を事業に関係ある者に限ると規定して,株式の保有資格を原則として現役の従業員等に限定する社員株主制度を採用している当該会社において同制度を維持することを前提に,これにより譲渡制限を受ける株式を円滑に現役の従業員等に承継させるためのものである。

(2) 非公開会社である当該会社の株式にはもともと市場性がなく,上記株式譲渡ルールにおいては,従業員が持株会から株式を取得する際の価格も額面額とされていた。

(3) 当該従業員は,上記株式譲渡ルールの内容を認識した上,自由意思により持株会から額面額で株式を買い受けた。

(4) 当該会社が,多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたというような事情はない。

最高裁判所第一小法廷決定平成21年1月15日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/203/037203_hanrei.pdf

【判示事項】 子会社会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした親会社の株主につき,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)293条の8第2項が不許可事由として規定する同法293条の7第2号に掲げる事由があるというためには,当該株主に閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要するか

【判決要旨】 子会社の会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした親会社の株主につき、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)293条の8第2項が不許可事由として規定する同法293条の7第2号に掲げる事由があるというためには、当該株主が子会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り、当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しない。

最高裁判所第三小法廷判決平成20年6月10日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/426/036426_hanrei.pdf

【判示事項】 会社分割に伴いゴルフ場の事業を承継した会社が預託金会員制のゴルフクラブ名称を引き続き使用している場合における上記会社の預託金返還義務の有無

【判決要旨】 預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられている場合において、会社分割に伴いゴルフ場の事業が他の会社または設立会社に承継され、事業を承継した会社が上記名称を引き続き使用しているときには、上記会社が会社分割後遅滞なく当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情がない限り、上記会社は、会社法22条1項の類推適用により、会員が分割をした会社に交付した預託金の返還義務を負う。

最高裁判所第三小法廷判決平成20年2月26日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/802/035802_hanrei.pdf

【判示事項】 会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者に対する解任の訴えの許否

【判決要旨】 会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者の職務の執行に関し不正の行為または法令若しくは定款に違反する重大な事実があった場合において、同法854条を適用または類推適用して株主が訴えをもって上記の者の解任請求をすることは許されない。

最高裁判所第二小法廷判決平成20年2月22日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/796/035796_hanrei.pdf

【判示事項】 1 会社の行為が商行為に該当することの主張立証責任

       2 会社の貸付けが当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものとみる余地があっても,当該貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるとされた事例

【判決要旨】 1 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負う。

       2 会社の貸付けが当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものとみる余地があっても,それだけでは当該会社の事業と無関係であることの立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しない以上,当該貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たる。


弁護士中山知行

2016-11-30 独占禁止法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第三小法廷判決平成27年4月28日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/064/085064_hanrei.pdf

【判示事項】 音楽著作権管理事業者放送への利用の許諾につき使用料徴収方法を定めるなどの行為が,独占禁止法2条5項にいう「排除」の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有するとされた事例

【判決要旨】 音楽著作権の管理事業を行う既存の事業者が,その管理する音楽著作物の放送への利用の包括的な許諾につき,ほとんど全ての放送事業者との間で年度ごとの放送事業収入に所定の率を乗じて得られる金額又は所定の金額による使用料の徴収方法を定める利用許諾契約を締結しこれに基づくその徴収をする行為は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,音楽著作物の放送への利用の許諾に係る市場において,独占禁止法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有する。

(1) 上記の市場においては,放送事業者にとって,上記管理事業の許可制から登録制への移行後も大部分の音楽著作権につき管理の委託を受けている当該既存の事業者との間で,包括的な許諾による利用許諾契約を締結しないことがおよそ想定し難い状況にあった。

(2) 上記の徴収方法は,当該既存の事業者の管理する音楽著作物の利用割合が使用料の金額の算定に反映されないものであるため,放送事業者が他の事業者に使用料を支払うとその負担すべき使用料の総額が増加するものであった。

(3) 当該既存の事業者による上記行為の継続期間は,7年余に及ぶものであった。


最高裁判所第二小法廷判決平成26年12月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/705/084705_hanrei.pdf

【判示事項】 共同企業体請負人とする請負契約における請負人「乙」に対する公正取引委員会排除措置命令等が確定した場合「乙」は注文者「甲」に約定賠償金を支払うとの約款の条項解釈

【判決要旨】 AおよびBを構成員とする共同企業体を請負人とする請負契約において、注文者を「甲」、請負人を「乙」とし、「乙」に対する公正取引委員会の排除措置命令または課徴金納付命令が確定した場合「乙」は「甲」に約定の賠償金を支払うとの請負契約約款の条項がある場合に、上記条項において排除措置命令等が確定したことを要する「乙」の意味が当該共同企業体のほか「A又はB」か「A及びB」かは上記契約の文言一義的に明らかではないのに、「乙」の後に例えば「(共同企業体にあっては、その構成員のいずれかの者をも含む。)」などの記載もないなど判示の事情の下では、「乙」とは当該共同企業体または「A及びB」をいうものとする点で合意が成立していると解すべきである。


最高裁判所第一小法廷判決平成24年2月20日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/009/082009_hanrei.pdf

【判示事項】 都市基盤整備事業を行う法人特定地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について複数ゼネコンがした受注予定者の決定等に関する合意が,独禁法(平成14年法律第47号による改正のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たるとされた事例

【判決要旨】 市町村から委託を受けるなどして都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について入札参加資格を有する複数のゼネコン(広域総合建設業者)がした,1.上記法人から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,当該工事若しくは当該工事の施工場所との関連性が強い者又は当該工事についての受注の希望を表明する者が1名のときはその者を受注予定者とし,複数のときはそれぞれの者の上記関連性等の事情を勘案してこれらの者の話合いにより受注予定者を決め,2.受注すべき価格は受注予定者が決定し,それ以外の者は受注予定者がその価格で受注できるように協力する旨の合意は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たる。

(1) 上記法人は,入札参加資格を有する入札参加希望者の中から指名競争入札の参加者を指名していた上,規模の大きい工事や高度な施工技術が求められる工事については,同法人の付した格付順位の上位の事業者を優先して指名しており,上位に格付けされていた上記ゼネコン及び上記地域で事業活動を行う他のゼネコンを指名することが多かった。

(2) 上記合意をしたゼネコンは,上記合意に基づく個別の受注調整において,上記(1)の他のゼネコンからの協力が一般的に期待でき,入札に参加する地元業者の協力又は競争回避行動も相応に期待できる状況の下にあった。

(3) 実際に発注された上記土木工事のうち相当数の工事において上記合意に基づく個別の受注調整が現に行われ,そのほとんど全ての工事において受注予定者が落札し,その大部分における予定価格に対する落札価格の割合も極めて高いものであった。


最高裁判所第二小法廷判決平成22年12月17日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/941/080941_hanrei.pdf

【判示事項】 自ら設置した加入者光ファイバ設備を用いて戸建て住宅向けの通信サービスを加入者に提供している第一種電気通信事業者が,他の電気通信事業者に対して上記設備を接続させて利用させる法令上の義務を負っていた場合において,自ら提供する上記サービスの加入者から利用の対価として徴収するユーザー料金の届出に当たっては,光ファイバ1芯を複数の加入者で共用する安価方式を用いることを前提としながら,実際の加入者への上記サービスの提供に際しては光ファイバ1芯を1人の加入者で専用する高価な方式を用いる一方で,その方式による上記設備への接続の対価として他の電気通信事業者から取得すべき接続料金については自らのユーザー料金を上回る金額の認可を受けてこれを提示し,自らのユーザー料金が当該接続料金を下回るようになるものとした行為が,独禁法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するとされた事例

【判決要旨】 自ら設置した加入者光ファイバ設備を用いて戸建て住宅向けの通信サービスを加入者に提供している第一種電気通信事業者が、他の電気通信事業者に対して上記設備を接続させて利用させる法令上の義務を負っていた場合において、自ら提供する上記サービスの加入者から利用の対価として徴収するユーザー料金の届出にあたっては、光ファイバ1芯を複数の加入者で共用する安価な方式を用いることを前提としながら、実際の加入者への上記サービスの提供に際しては光ファイバ1芯を1人の加入者で専用する高価な方式を用いる一方で、その方式による上記設備への接続の対価として他の電気通信事業者から取得すべき接続料金については自らのユーザー料金を上回る金額の認可を受けてこれを提示し、自らのユーザー料金が当該接続料金を下回るようになるものとした行為は、次の(1)〜(5)など判示の事情のもとにおいては、独禁法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当する。

(1) 当時東日本地区において既存の加入者光ファイバ設備に接続して上記サービスを提供しようとする電気通信事業者にとって、その接続対象は、上記第一種電気通信事業者に事実上限られていた。

(2) 上記サービスは、主として事業の規模によって効率が高まり、かつ、加入者との間でいったん契約を締結すれば競業者への契約変更が生じ難いという特性を有していた。

(3) 上記第一種電気通信事業者は、自らの加入者への上記サービスの提供において安価な方式を用いることを前提としてその接続料金の認可を受けることなどにより、上記第一種電気通信事業者のユーザー料金が接続料金を下回るという逆ざやの発生を防止するために行われていた行政指導を始めとする種々の行政規制実質的に免れていた。

(4) 上記第一種電気通信事業者は、上記サービスの市場において他の電気通信事業者よりも先行していた上、その設置した加入者光ファイバ設備を自ら使用するとともに、未使用の光ファイバの所在等に関する情報も事実上独占していた。

(5) 上記サービスの市場が当時急速に拡大しつつある中で、上記第一種電気通信事業者の当該行為の継続期間は1年10カ月にわたった。


最高裁判所第一小法廷決定平成20年3月6日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/954/035954_hanrei.pdf

【判示事項】 公正取引委員会の排除措置命令に違反した者を独禁法97条の定める過料に処さないこととした原審の判断是認された事例

【判決要旨】 商品原産国について不当な表示を行った者が,公正取引委員会から,一般消費者の誤認を排除するための措置として,上記表示が事実と異なるものであり,一般消費者に誤認される表示である旨を速やかに公示すること等を命じる旨の審決を受けたにもかかわらず,その履行をけ怠していた場合において,上記の者が同審決を受ける約2年半前に上記表示を取りやめた上,ウェブサイト店頭告知で不当な表示をしていた事実を公表し,商品の回収や代金の返還にも応じて,一般消費者の誤認やその結果の排除に努めていたなどの事情に照らせば,上記の者を独禁法97条の定める過料に処さないこととした原審の判断は,結論において是認することができる。


最高裁判所第一小法廷判決平成19年4月19日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/545/034545_hanrei.pdf

【判示事項】 郵便番号自動読取区分機類に関する入札談合の事案につき公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)54条2項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当するとしてした排除確保措置を命ずる審決が同法57条1項及び同法54条2項の規定に違反しないとされた事例

【判決要旨】 公正取引委員会が,郵政省一般競争入札の方法により発注する郵便番号自動読取区分機類について,被審人ら2社が,おおむね半分ずつを安定的に受注するため,入札執行前に郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者のみが受注予定者として入札に参加することにより受注することができるようにしていたものであって,これは不当な取引制限の禁止の規定に違反する行為であるとし,上記の情報の提示が行われなくなったこと等により上記違反行為が既になくなっているものの,特に必要があると認めて,被審人らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前のもの)54条2項の規定により,当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずる審決をした場合において,その審決書には,同項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の判断の基礎となった認定事実が同法57条1項所定の「公正取引委員会の認定した事実」として明確に特定しては示されていないものの,上記の情報の提示がなくとも他の手段をもって上記違反行為をすることが可能であることは明らかであり,そのような見地から審決書の記載を全体としてみれば,(1)被審人らが,上記の情報の提示を主体的に受け入れ,上記違反行為と同様の行為を一般競争入札の導入前から長年にわたり恒常的に行ってきたこと,(2)被審人らが,一般競争入札の導入に反対し,上記の情報の提示の継続を要請したこと,(3)被審人らが違反行為を取りやめたのは,自発的意思に基づくものではないこと,(4)区分機類の市場は上記審決当時も被審人らを含む3社による寡占状態にあり,一般的にみて違反行為が行われやすい状況にあったこと等の各認定事実を基礎として「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨判断したものであることを知り得るという事情の下では,審決書には上記判断の基礎となった認定事実が示されているということができ,また,上記認定事実に基づく上記判断が公正取引委員会の裁量権範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものということはできず,上記審決は同項及び同法54条2項の規定に違反しない。


最高裁判所第二小法廷決定平成17年11月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/074/050074_hanrei.pdf

【判示事項】 防衛庁調達実施本部の実施する指名競争入札の運用が同本部の提示した最低価格で落札されることが長年続くなど形がい化していたとしても指名業者による受注調整行為について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成14年法律第47号による改正前のもの)89条1項1号の罪が成立するとされた事例

【判決要旨】 防衛庁調達実施本部の実施する指名競争入札の運用が当初入札が不調となった後同本部の提示した最低価格で落札されることが長年続くなど形がい化していたとしても,同本部においてこれを指示,要請し,あるいは主導したものではなく,指名業者の入札における自由競争が妨げられていたわけではないなど判示の事情の下では,指名業者が,長年の慣行に従って,前年度の受注実績を勘案して受注予定会社を決定した上,同社が受注できるような価格で入札を行うように受注調整をした行為について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成14年法律第47号による改正前のもの)89条1項1号の罪が成立する。


最高裁判所第三小法廷判決平成17年9月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/374/052374_hanrei.pdf

【判示事項】 1 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項所定の「売上額」の意義

       2 損害保険業の事業者団体構成事業者につき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律8条の3において準用する同法7条の2第1項所定の「売上額」

【判決要旨】 1 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項所定の「売上額」は,事業者の事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の数値をいう。

       2 損害保険業の事業者団体の構成事業者である損害保険会社について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律8条の3において準用する同法7条の2第1項所定の「売上額」は,損害保険会社が損害保険の引受けの対価として保険契約者から収受した保険料の合計額である。


最高裁判所第三小法廷判決平成15年9月9日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/551/062551_hanrei.pdf

【判示事項】 地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に違反する行為の被害者である地方公共団体に代位して住民訴訟を提起した住民と同法69条にいう利害関係

【判決要旨】 地方自治法(平成一四法四号改正前)二四二条の二第一項四号に基づき、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に違反する行為の被害者である地方公共団体に代位して、上記違反行為を対象とする審判事件の被審人に対し損害賠償請求する住民訴訟を提起した住民は、上記審判事件につき同法六九条にいう利害関係人に当たる。


最高裁判所第二小法廷判決平成15年3月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/442/062442_hanrei.pdf

【判示事項】 個人事業者組合員とする協業組合に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成一一年法律第一四六号による改正前のもの)七条の二第二項所定の課徴金算定率の適用の有無

【判決要旨】 公正取引委員会が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平一一法一四六号改正前)七条の二第一項に基づき、個人事業者を組合員とする協業組合に対し課徴金の納付を命ずる場合において、当該協業組合の常時使用する従業員数に各組合員が常時使用する従業員数を加えたものが同条二項に規定する「会社」及び「個人」に関する従業員数の要件に該当するときは、当該協業組合には同項所定の課徴金の軽減算定率が適用される。


最高裁判所第二小法廷決定平成15年1月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/039/050039_hanrei.pdf

【判示事項】 公務員が請託を受けて公正取引委員会の委員長に対し同委員会調査中の審査事件を告発しないよう働き掛けることとあっせん収賄罪の成否

【判決要旨】 公務員が、請託を受けて、公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反の疑いで調査中の審査委事件について、同委員会の委員長に対し、これを告発しないように働き掛けることは、刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)一九七条ノ四にいう「職務上相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク」あっせんすることに当たる。

最高裁判所第二小法廷決定平成12年9月25日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/215/051215_hanrei.pdf

【判示事項】 指名競争入札等に関する合意が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律二条六項にいう「公共利益に反して」された不当な取引制限に当たるとされた事例

【判決要旨】 指名競争入札等に参加する者らが、従前の受注割合と利益を維持することを主要な目的とし、幹事社会が入札ごとに決定して連絡する受注予定会社、受注予定価格のとおり受注できるように入札等を行うこととした合意は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の目的に実質的に反しないと認められる例外的なものには当たらず、同法二条六項にいう「公共の利益に反して」の要件に当たる。


最高裁判所第三小法廷判決平成10年12月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/821/062821_hanrei.pdf

【判示事項】 卸売業者が特約店契約によりいわゆるカウンセリング販売を義務付けている小売業者に対して特約店契約を締結していない小売店等に対する卸売販売を禁止することと独占禁止法19条

【判決要旨】 卸売業者が小売業者に対していわゆるカウンセリング販売を義務付ける特約店契約中の約定が独占禁止法19条に違反しない場合には、右小売業者に対して特約店契約を締結していない小売店等に対する卸売販売を禁止することも、同条に違反しない。


最高裁判所第三小法廷判決平成10年12月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/542/052542_hanrei.pdf

【判示事項】 一 卸売業者等が小売業者に対して販売方法に関する制限を課することと昭和五七年公正取引委員会告示第一五号(不公正な取引方法)の13に定める拘束条件付取引

       二 特定のメーカー化粧品の卸売業者が小売業者に対して特約店契約によりいわゆる対面販売を義務付けることが昭和五七年公正取引委員会告示第一五号(不公正な取引方法)の13に定める高速条件付き取引に当たらないとされた事例

【判決要旨】 一 卸売業者等が小売業者に対して商品の販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けるなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは、それが当該商品の販売のためのそれなりに合理的理由に基づくものと認められ、かつ、他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、昭和57年公正取引委員会告示第15号(不公正な取引方法)の13に定める拘束条件付取引に当たらない。

       二 特定のメーカーの化粧品の卸売業者が小売業者に対して特約店契約によりいわゆる対面販売を義務付けることは、それが他の商品とは区別された当該化粧品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を保持しようとする理由に基づくものでそれなりの合理性があり、右卸売業者が他の取引先とも同一の約定を結んでいるなど判示の事実関係の下においては、昭和57年公正取引委員会告示第15号(不公正な取引方法)の13に定める拘束条件付取引に当たらない。


最高裁判所第三小法廷判決平成10年10月13日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/832/062832_hanrei.pdf

【判示事項】 カルテル行為について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件において罰金刑を科せられるとともに不当利得返還請求訴訟を提起されている者に対し課徴金の納付を命ずることと憲法39条、29条、31条

【判決要旨】 カルテル行為について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件において罰金刑を科せられるとともに取引の相手方である国から不当利得返還請求訴訟を提起されている者に対し同法7条の2第1項の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、憲法39条、29条、31条に違反しない。


最高裁判所第一小法廷判決平成元年12月14日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/729/052729_hanrei.pdf

【判示事項】 地方公共団体が原価を著しく下回る認可料金を徴収してと蓄場事業を行うことが昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の五にいう「不当に低い対価をもって」した行為及び昭和五七年同委員会告示第一五号(不公正な取引方法)の6にいう「正当な理由がないのに」した行為に当たらないとされた事例

【判決要旨】 地方公共団体が原価を著しく下回る認可料金を徴収してと蓄場事業を行う場合において、その意図・目的、競争の地理的範囲、競争事業者の認可額及び実徴収額の実情、と蓄場市場の状況等につき判示のような事実関係があるときは、右行為は、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の五にいう「不当に低い対価をもって」した行為及び昭和五七年同委員会告示第一五号(不公正な取引方法)の6にいう「正当な理由がないのに」した行為に当たらない。




弁護士中山知行

2016-11-29 民事保全法に関する最近の最高裁判例 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

最高裁判所第二小法廷決定平成28年3月18日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/764/085764_hanrei.pdf

【判示事項】 建物の区分所有等に関する法律59条1項に規定する競売請求する権利を被保全権利として民事保全法上の処分禁止仮処分申し立てることの可否

判決要旨】 建物の区分所有等に関する法律59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として,民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。

最高裁判所第二小法廷決定平成27年1月22日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/795/084795_hanrei.pdf

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/796/084796_hanrei.pdf

【判示事項】 仮処分決定により干拓地の潮受堤防排水門を開放してはならない旨の義務を負った者が第三者の提起した訴訟確定判決により上記排水門を開放すべき義務を負っているという事情がある場合における上記仮処分決定に基づく間接強制決定の許否

【判決要旨】 仮処分決定により干拓地の潮受堤防の排水門を開放してはならない旨の義務を負った者が第三者の提起した訴訟の確定判決により上記排水門を開放すべき義務を負っているという事情があっても,執行裁判所は上記仮処分決定に基づき間接強制決定をすることができる。

最高裁判所第一小法廷判決平成24年2月23日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/018/082018_hanrei.pdf

【判示事項】 仮差押命令により保全される債権範囲

【判決要旨】 仮差押命令は、当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても、これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば、その実現を保全する効力を有する。

最高裁判所第二小法廷決定平成23年2月9日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/131/081131_hanrei.pdf

【判示事項】 権利能力のない社団債務者とする金銭債権を有する債権者が,当該社団の構成員全員に総有的に帰属し,当該社団のために第三者がその登記名義人とされている不動産に対して仮差押えをする場合における申立ての方法

【判決要旨】 権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を有する債権者が、当該社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産に対して仮差押えをする場合において、上記不動産につき、当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは、上記債権者は、仮差押命令の申立書に、上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属する事実を証する書面を添付して、当該社団を債務者とする仮差押命令の申立てをすることができ、上記書面は、強制執行の場合とは異なり、上記事実を証明するものであれば足り、必ずしも上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団および上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書であることを要しない。

最高裁判所第二小法廷判決平成21年4月24日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/543/037543_hanrei.pdf

【判示事項】 保全すべき権利が発令時から存在しなかったものと本案訴訟の判決で判断され,仮処分命令が事情の変更により取り消された場合において,当該仮処分命令の保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,不当利得返還請求をすることができるか

【判決要旨】 仮処分命令における保全すべき権利が、本案訴訟の判決において、当該仮処分命令の発令時から存在しなかったものと判断され、このことが事情の変更に当たるとして当該仮処分命令を取り消す旨の決定が確定した場合には、当該仮処分命令を受けた債務者は、その保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき、債権者に対して不当利得返還請求をすることができる。

最高裁判所第三小法廷決定平成21年1月27日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/249/037249_hanrei.pdf

【判示事項】 特許権又は専用実施権侵害差止めを求める仮処分事件において特許法105条の4第1項に基づく秘密保持命令の申立てをすることの許否

【判決要旨】 特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,上記仮処分事件においても,同項に基づく秘密保持命令の申立てをすることが許される。

最高裁判所第一小法廷判決平成18年7月20日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/333/033333_hanrei.pdf

【判示事項】 第三債務者が、仮差押命令の送達を受けた時点で、仮差押えの対象となった債権の弁済のために取引銀行に対し先日付振込みの依頼をしていた場合において,上記送達後にされた振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することの可否

【判決要旨】 第三債務者が,仮差押命令の送達を受けた時点で,仮差押えを受けた債務の弁済のために取引銀行に対し先日付振込みの依頼をしていた場合において,上記送達後にされた振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することの可否

最高裁判所第一小法廷決定平成17年1月20日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/618/062618_hanrei.pdf

【判示事項】 定期金の給付を命ずる仮処分の執行と民事保全法43条2項

【判決要旨】 定期金の給付を命ずる仮処分の執行で,仮処分命令の送達の日より後に支払期限が到来するものについては,民事保全法43条2項の期間は,当該定期金の支払期限から起算する。

最高裁判所第三小法廷決定平成16年8月30日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/423/052423_hanrei.pdf

【判示事項】 第三者との間で会社営業移転等に関する協議を行うことなどの差止めを求める仮処分命令の申立てについて保全の必要性を欠くとされた事例

【判決要旨】 甲社と乙社らとの間で乙社らグループから甲社グループに対する乙社の営業の移転等から成る事業再編等に関して交わされた基本合意書中に,第三者との間で基本合意目的抵触し得る取引等に係る協議を行わないことなどを相互に約する旨の条項があり,甲社が,乙社らにおいてこの条項に違反したことなどを理由として,乙社らが第三者との間で上記営業の移転等に関する協議を行うことなどの差止めを求める仮処分命令の申立てをした場合において,乙社らが上記条項に違反することにより甲社が被る損害は,上記基本合意に基づく最終的な合意が成立するとの期待が侵害されることによるものにとどまり,事後の損害賠償によっては償えないほどのものとまではいえないこと,甲社と乙社らとの間で上記最終的な合意が成立する可能性は相当低いこと,上記申立てが認められた場合に乙社らが被る損害は相当大きなものと解されることなど判示の事情の下では,上記申立ては,保全の必要性を欠く。

最高裁判所第二小法廷決定平成15年1月31日

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【判示事項】 既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき異なる目的物に対し更に仮差押命令の申立てをすることの許否

【判決要旨】 特定の目的物について既に仮差押命令を得た債権者は、これと異なる目的物についてさらに仮差押えをしなければ、金銭債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、またはその強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときには、既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき、異なる目的物に対し、さらに仮差押命令の申立てをすることができる。

最高裁判所第二小法廷判決平成14年6月7日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/495/062495_hanrei.pdf

【判示事項】 債権に対する仮差押えの執行後に本執行がされた場合において仮差押えが取り下げられたときの仮差押えの執行後本執行前にされた被差押債権の弁済の差押債権者に対する効力

【判決要旨】 債権に対する仮差押えの執行後に本執行がされた場合において、仮差押命令及びその執行の申立てが取り下げられたときは、第三債務者は、仮差押えの執行後本執行前にした被差押債権の弁済をもって差押債権者に対抗することができる。

最高裁判所第二小法廷判決平成13年3月16日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/434/062434_hanrei.pdf

【判示事項】 いわゆる自動継続特約付きの定期預金債権に対する仮差押えの執行と同特約に基づく自動継続の成否

【判決要旨】 いわゆる自動継続特約付きの定期預金債権に対する仮差押えの執行がされても、同特約に基づく自動継続の効果は妨げられない。

最高裁判所第一小法廷決定平成11年3月12日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/232/052232_hanrei.pdf

【判示事項】 高等裁判所のした保全抗告についての決定と許可抗告の対象

【判決要旨】 高等裁判所のした保全抗告についての決定は、許可抗告の対象となる。

最高裁判所第三小法廷判決平成6年6月21日

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/459/052459_hanrei.pdf

【判示事項】 仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消しと時効中断の効力

【判決要旨】 仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押解放金の供託により仮差押えの執行が取り消された場合においても、なお継続する。



弁護士中山知行