「弁当がら」

伏見稲荷を上りながら考えた。「弁当がら」(写真)という言葉に似たものは、「吸い殻」「抜け殻」の他に、「籾殻」などがある。「茶殻」もあるな(チャガラなおみという駄洒落はさておき)。

「弁当がら」は辞書に載っていないが、弁当が残りかすを残すものであれば、意味が分かる。しかし、いつ頃からある言葉だろう。弁当を食べたあと、持ち帰らずに棄てる状況が必要のように思える。
探すと、阿川弘之年年歳歳」にあった。

 博多に入港した夜、大尉の襟章と袖章とを脱すと道雄はそっと水に捨てた。重油の浮いた静かな波が、白い紙に包んだ大尉の徽章を弁当殻と一緒に流して行った。船の明りが水に落ちてあれを照らしていた──。
昭和二十一年五月に発表されたもののようだ。新日本文学全集第1巻ndldapの9頁。 新潮文庫ISBN:4101110107ndldap)にも入っているようだ*1

*1:「あれ」の使い方が、ちょっと気になる。新日本文学全集では確かに「あれ」。前後を見ても、「例のあれ」を指すような感じではない。
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